研 究 報 告 書 の 概 要 氏名 大橋 裕太郎 所属 日本工業大学 研究題目 シニアのための豊かな生涯学習実現のために -フィンランドの成人教育を事例として目的・概要 学校を卒業した成人であっても、雇用可能性を高めるため、新しい知識や技術を 習得し、学び続けることのできる仕組みの必要性は国際的にも議論されており、生 涯学習や成人教育の更なる発展が期待されている(21世紀教育国際委員会, 1997)。日本では、生涯学習が高齢者にとって生きがいとなり、生活の質を高める ことにも役立つと考えられている(文部科学省,2012)。より若い層にとっては、 生涯学習が雇用可能性(Employability)を高めると期待されている。こうした背 景から、成人教育に関する先進的な取り組みに関して整理を試みることは、日本の 生涯学習ならびに成人教育制度をどのように発展させていくかを検討する上で有意 義と考える。 本研究では、成人教育への市民の参加率の高いフィンランドで実施されている成 人教育に着目した。OECDがヨーロッパ22カ国を対象にした調査International Adult Literacy Survey (IALS) によれば、フィンランドは成人教育への参加率が 参加国の中で最も高く、58%であった。日本国内では、フィンランドの成人教育に 関する調査研究や報告は少なく 、調査研究の意義があると考える。 本研究では、以下の2点のリサーチクエスチョンを設定した。 ・ フィンランドの成人教育は、どのように実施されているのか ・ フィンランドの成人教育の参加率が高い要因は何か 筆者はフィンランドに滞在し、ケース・スタディの手法を用い、フィンランドで 成人教育がどのように運用されているのかについて調査を行った。具体的には、関 連文献の収集、統計情報の収集と分析、成人教育を実施している施設の視察、成人 教育関係者に対するインタビュー、受講者に対する質問紙調査を実施した。 本研究では、以下の3種類の成人教育機関について、それぞれの歴史、目的、講 座の特徴の整理を試みた。 ・成人教育センター ・オープンユニバーシティ ・図書館における成人教育 3つの機関に着目し、それぞれの歴史を概観した上で、フィンランドの成人教育 がどのように実施されているのかを整理し、フィンランドで成人教育への参加率が 高い要因を探った。 その結果、参加率を高めている要因として、(1) 財政的な支援が充実しているこ と、(2) 異なる利用者層への多様な教育機会が提供されていること、(3) それぞれ の機関の資源と強みを生かしたサービスが提供されていること、という3つの仮説 を導き出した。 なお、本研究の成果をまとめた論文「フィンランドの成人教育に関する考察 成 人教育センター、オープンユニバーシティ、図書館に着目して」が、地域活性学会 の研究論文集「地域活性研究 Vol.5」に「研究ノート(査読付)」として掲載され ることが決定した。研究内容の詳細については、そちらを参照されたい。 -1- 助成金使途の項目と金額(領収書の添付は不要です) 項目 金額 フィンランド現地調査のための旅費・滞在費(3ヶ月分) 600,000 調査用資料(書籍・海外論文誌)購入費 フィンランド滞在中のインターネット通信費 150,000 10,000 現地調査時記録用機器(デジタルビデオカメラ)購入費40,000 -2-
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