編集室 - 一般社団法人広島県医師会

(79)2010年(平成22年)
10月5日
広島県医師会速報(第2097号)
昭和26年8月27日 第3種郵便物承認
天からの授かり物
この度は「釣り三昧」で書いた「天からの贈
夜になるとノッソリと出てきて、目の前にき
り物」のクエの話をしましょう。
た獲物を大きな口でパクッと一呑み一目散で巣
40数年釣りをしていますが、この様な巡り合
穴にもぐり込む習性があるので、ベテランのク
わせは、ジャンボ宝くじで3億円とまではいき
エ釣師たちはその習性から食わせたら道糸を絶
ませんが、1千万円くらいの確率です。
対にゆるめません。それもそのはず、穴に潜り
その幸運は、数年前の4月29日「みどりの日」
込んだが最後、両エラを張って金輪際出て来な
に突然訪れました。釣り仲間6人で山陰の浜田
いからです。乱獲が祟って最近は幻の魚になり
沖にある高島に釣りに行った時のことです。2
つつあり、滅多に釣れることがないそうです。
人を高島の磯に渡してわれわれ船釣組みは、は
この度、クエがなぜ波間に浮かんでいたのか
やる心を抑えて釣りポイントに向かいました。
疑問が多いのですが、春先の冷たい雪解け水の
釣り始めて2時間くらい経ち、35cmくらい
海底と上層の温度差と、突然の春の嵐による波
の鯛3匹釣ったところで急に風が北西に変わり、
が海底をかき混ぜたためにクエが浮袋の調節に
海が時化てきて、釣りどころではなくなりまし
失敗して浮かび上がり仮死状態となった可能性
た。
が高いと思われます。鳴門の渦潮で大鯛が突然
急いで仕掛けをしまい、磯の仲間を船に引き
浮き上がる現象とよく似ていますが、いずれに
揚げるために高島に向かっていると、携帯電話
しても美味しい拾い物でした。
に仲間より磯から70mくらいの所にクエが浮い
旬は冬~春先で目玉も内臓も捨てるところが
ているとの連絡が突然入った。
「よその船に拾わ
なく、上品な味で刺身、煮焼き、しゃぶしゃ
れたら大変」と船頭を急かして全速力で現場に
ぶ、から揚げ、ひれ酒、特にクエ鍋は絶品です。
到着。
「見つけました!」奴はお腹の一部を上に
大相撲九州場所で優勝した力士に「たにまち」
して時折胸びれをピクピク動かして、でんぐり
がアラを贈るのをテレビなどで観ることがあり
返って波間に浮かんでいたのです。
ますが、このクエは旬の時期には1kg、1万円
船を寄せてもらい、素早く玉網で掬おうとし
もする高級魚で、優勝力士に相応しい引き出物
たら、網が小さくて頭が入らず、慌てて一番大
と納得できるはずです。
きいので掬い船上に引き揚げようとしたところ、
この度は数々の幸運が重なり「天からの授か
なんと重たくて上げることができません。「う
り物」を大変美味しくいただきました。これも
そ?そんなに大きいの!」と、いった感じで改
釣一筋40年と理解ある?かみさんのおかげと感
め て、こ ん 身 の 力 で 引 き ず り 上 げ た ら 何 と
謝しており、このような幸運が再びあるような
110cm、30kgの大クエだったのです。
気がして、飽きもせず海に通っています。
クエはハタ科の仲間で、成魚は10
0~150cm
「永遠に、幸せになるには、やはり釣りです
で30~50kgくらいになります。棲家は岩礁地帯
ねー(*^_^*)」
の岩穴や洞窟に単独で生息しており、夜行性で
待ち伏せ型のフィッシュ・イーターです。
(澤崎 晋一)