疾患別 リハビリ

現場スタッフに役立つ
円背悪化予防の体操(腰の曲がりの予防にも共通して行えます)
進め方
初級
中級
肩甲骨を意識した
姿勢づくり
肩甲骨をダイナミックに
動かす
中級の 運動
姿勢が意識できたら、次は
上級
上肢を動かしていきます。
づくりと腸腰筋を鍛え
りょう けい きん
【肩甲骨周囲筋・菱形筋】
肩甲骨周囲筋
肩甲骨にはたくさんの筋肉が付いていて、姿勢
道具を使い抵抗を
かけていく
に大きな影響を与えています。
菱形筋
肩甲骨周囲筋と菱形筋には脊柱に肩甲骨を引き
寄せる作用があります。
初級の 運動
肩甲骨を意識した姿勢
疾患別 リハビリ
ちょう よう きん
【腸腰筋とは】
だい よう きん
大腰筋
ちょうこつ きん
る骨盤体操を行い、同
大腰筋と腸骨筋を合わせて腸腰筋と呼びます。
時に顔を上げて良い姿
主に股関節を屈曲させる働きをしていますが、腰椎のS
勢で座っていられるよ
字型を維持する働きも併せ持っており、腸腰筋のトレー
うにします。
ニングは円背や腰の屈曲の予防に有効です。
腸骨筋
腸腰筋
棒体操
イスに座った状態で棒 ※を使い、肩甲骨を意識した動きをします
※新聞などを筒状に丸めて棒を作ります
① 剣道のようにまっすぐ上下
に棒を振ります
い
ざ
い
体幹ひねり体操(椅座位)
② 背すじを伸ばし、棒を横に
③ 棒を持って手を上にあげ、頭の
持ち、胸に引き寄せたり、
後ろに回し、再び手を上げて膝
離したりします
の上に戻します
②
① イスに座り、左手でイスの背を持ち、右手を左の膝に当てて体を左にひねり、
①
4カウントします
② 両手を膝に戻しながら体を正面に戻します
③ 反対側にも同様に行います
注意点
骨盤はなるべく動かさ
ないようにします。
ポイント 「後ろの景色が見えるように」と
③
声かけします。
姿勢改善の(前後・左右)骨盤体操 転倒予防のバランス訓練にもなります
舟こぎ体操 肩甲骨を脊柱に引き付けている菱形筋を活性化します
骨盤を前後に動かす体操
骨盤を左右に動かす体操
両腕を前方に伸ばし、舟をこぐように腕を体に引き付ける体操です。肩甲骨の大きな動きと脊柱の伸展した姿勢
を引き出すことができます。歌などに合わせてリズムよく行うなど工夫しましょう。
① 座った状態でお腹を突き出し胸を反らします
① 左のお尻を浮かせます(上半身は水平を保つ)
② 次にお腹を引っ込めて腰を丸めます
② 右のお尻を浮かせます(上半身は水平を保つ)
① 舟をこぐように前のめりになり、両腕を前に出します
② 上体を起こしながら両肘を引きつけます。このとき、胸を張ります
胸を
そらす
ソーラン節などをゆっくりと歌いながら行うとよいでしょう
腰を
丸める
胸を張る
ポイント
骨盤を前後に動かすと姿勢が変わる(前傾で背すじが伸び、
姿勢が良くなる)
ことを体感します。
94 月刊デイ Vol.197
ポイント
かかとを浮かすと骨盤が上げやすくなります。
両肘を引く
ポイント
職員は運動中に利用者の肩甲骨に
触れ、内側・外側に誘導します。利
用者に、肩甲骨が脊柱に寄ることで
背すじが伸びることを実感してもら
いましょう。
舟をこぐように腕を動かし、上体を起こしながら
両肘を引きつけたときに胸を張ります
Vol.197 月刊デイ 95
現場スタッフに役立つ
上級の 運動
疾患別 リハビリ
腰がひどく曲がっている人(腰部の屈曲)に対する体操
機器を使った体操で肩甲骨周囲に負荷をかけます。
進め方
ローイング 肩甲骨を脊柱に引き寄せることで、自然に背すじが伸びます
① マシンに座り、腕を伸ばした状態で座面の位
初級
ぎょう が
中級
い
仰臥位(あお向けに寝た状態)で行う
上級
座位で行う
立位で行う
初級(仰臥位)
置を調整します
腰が曲がっている場合、あお向けに寝ること自体がつらい場合があります。お風呂上がりにリラックスして行うなど
② 肘と肩甲骨を意識しながらレバーを引きます
工夫しながら、まずは仰臥位をとることに集中しましょう。
注意点
ツイスト運動 少し股関節をねじり、腰部の柔軟性を高めます
負荷をかける運動のため、適切な負荷に配慮しま
しょう。
体が後方に傾いてしまう代償動作や過度の疲労が
あるようなら、負荷が強過ぎるため、調整します。
① あお向けに寝て両膝を立ててそろえます
② 上体は動かさず、足の重みを利用し、腰から下をゆっくりと両膝を床の上まで倒します
③ 力を抜いて、左右交互に行います
注意点
痛みの無い範囲で行い
ましょう。
ポイント
自然に腰の筋肉が引き
伸ばされるので、ぎっく
り腰の予防にもなります。
セラバンド体操 ローイング同様、肩甲骨を脊柱に引き寄せる菱形筋の活動を促します
りょう けい きん
① セラバンドを柱に回します
ヒップアップ 大殿筋を鍛えます
だい でん きん
注意点
② イスに座り、セラバンドの
セラバンドの強度を何種類か用意し、
ソフト (弱)・マイルド(中度)・ハード
(強)と使い分けるとよいでしょう。
ローイングと同様、体が後方に傾いて
しまう代償動作や過度の疲労があれば
負荷が強すぎます。
両端を引っ張ります
③ さらに肘を引き、胸を張り
ます
① あお向けに寝転びます
ポイント 手で支えずに行うと、さら
② 両手のひらを床に着け、お尻を上げます
に負荷が大きくなります。
③ 4カウント数えたら下ろします
1、
2、
3、
4
ポイント
チューブを柱などに結び、両端を引っ
張る運動でも可能です。
腹筋体操
片膝上げ体操 腸腰筋のストレッチ
両腕を組んであお向けに寝て両膝を立て、
① 床にあお向けになります
おへそをのぞき込むように頭を起します
② 右足の膝を曲げて抱えます。反対側も同様に行います
理学療法士の視点
注: 左側の足が曲がってしまう場合は
スタッフが伸ばします
姿勢不良は普段の生活とも関
係します。ご利用者に畑仕事、
座イスに座る姿勢など、普段の
生活での過ごし方を聞き、家で
の姿勢が悪くなっていないか、
ポイント
意識してもらいましょう。
座イスに仙骨座り
96 月刊デイ Vol.197
背すじを伸ばして座る
痛みのある人は、頭を少し上げおへそをのぞ
き込むぐらいの負荷から始めるとよいでしょう。
体力によって負荷(頭を上げる高さ)を調節します。
ポイント
腸腰筋に短縮が見られる人は、片足を曲げるともう一方の伸ばして
いる足が曲がってきてしまうので、職員が介助し、曲がってくる足を
伸ばします。
Vol.197 月刊デイ 97
現場スタッフに役立つ
疾患別 リハビリ
中級(座位)
上級(立位)
膝裏のストレッチ 膝が曲がらないように気を付けます
股関節を伸ばす運動(後方振り出し)
太ももの裏側の筋肉が伸ばされる感覚を感じてもらいましょう。膝が曲がってしまうと筋肉のストレッチがうま
くいかないので、曲がってしまう人はまず膝を伸ばすことを優先して行います。
大殿筋の活性化が腰の曲がりを止め、姿勢の改善につながることをねらいとして行います
① 平行棒か平行棒が無いときはイスの背を持
ち、片膝を高く上げます
伸ばす
ポイント
デイでのお風呂上が
りを利用しましょう!
大腿の後面ハムスト
リングス※がストレッ
チされる感覚を感じ
てもらいます。
② 上げた足をゆっくり後ろに下げ伸ばします
③ 反対側も同様に行います
※ 後面ハムストリングス
イスに浅く座り、片足を
背すじをまっすぐ
背すじを伸ばしたまま
前に伸ばします
伸ばします
上半身を倒します
太ももの裏側の筋肉(半膜様
筋・半腱様筋・大腿二頭筋)
平行棒後ろ歩き 後ろ歩きで大殿筋、脊柱起立筋群を刺激。姿勢改善効果が期待できます
反対側も同様に行います
平行棒を持ち後ろ歩きをします。一歩一歩、足を後方に
出す際に、背すじを伸ばすように意識します
そけい部のストレッチ 骨盤周囲の筋肉の柔軟性を高め、姿勢を改善
ポイント
ポイント
鏡を見ながら、姿勢が伸びるのを確認してもらいましょう。
大腿の前面、大腿四
頭筋、股関節の付け
根 、腸 腰 筋 が スト
レッチされる感覚を
感じてもらいます。
背すじのばし体操
80㎝
ろく ぼく
壁や肋木に手を伸ばし、手の先に視線を持って行き、
イスに座り、開脚します
上体を後ろにひねりながらそけい部(足の付け根の部分)
100㎝
顔も上げるように意識して行います
を伸ばし、背もたれを持ちます
60㎝
40㎝
ポイント
最高到達点にカラーテープやシールを貼るなどして、目標
を持ってのぞめるように工夫しましょう。
理学療法士の視点
あまり下ばかり向かずに歩くように声かけを
しましょう。
実は腰が曲がった人は図2のような持ち方は
好評です
難しいので、図3のような「黄門様持ち」のほ
月刊デイのホームページから松本健史先生の「居宅訪問でご利用者の生活環境を把握しよう」がご覧になれ
うがよいかもしれません。「黄門様持ち」がし
ます。プログラムを提供するときは、ご利用者の生活から導いた目標設定をすると、主体的に取り組んでもら
やすい直杖の使用を検討するなど、使いやすい
杖の選定にも配慮しましょう。
98 月刊デイ Vol.197
図2 普通の杖の持ち方
(T字杖)
図3 黄門様持ち
(直杖)
えます。個別機能訓練などの参考にぜひご覧ください!
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Vol.197 月刊デイ 99