欧州全般の意匠権および商標権に対する英国 EU 離脱の影響 先月のニュースレターでは、特許権に対する英国の EU 離脱の影響について書きました。 そこ で書いたように、統一特許裁判所(UPC)がいつ、どのように設置されるかについて不透明性 が増したという以外に、英国の EU 離脱は、欧州の特許保護に関する申請手続きを全般的に阻 害するものではありません。申請者はこれまでどおり、欧州特許庁で特許申請の中央審査を受 け、その後で、許諾された権利をドイツ、フランス、イタリア、そしてさしあたって英国な ど、欧州連合(EU)で大きな商業市場をもつ欧州特許庁(EPO)の加盟国、そしてスイス、ノ ルウェー、トルコ、そしていずれは英国などのように EU の加盟国でなくとも EPO の加盟国と なっている国々で発生させることができます。 残念ながら、意匠権および商標権の一元的な保護を保証できるかどうかについては、少なくと も英国の EU 離脱後に関してははっきりと見えていません。 現在のところ、商標権と意匠権の 申請者は、各国で国別の権利を取得する(例えば、ドイツ、英国、フランスのような 1 つまた は複数の国における保護を直接申請する)か、または EU の全加盟国に対する保護を求めるよ うな欧州連合全体にわたる商標権または意匠権を申請することができます。ただし、欧州連合 知的財産庁(EUIPO)を介して EU 全体に意匠権および商標権を登録するのは、EPO の加盟国を 統制するのとは別の条約に基づいて可能となるものであり、EU の加盟国に限定されています。 英国が EU からの離脱を決めたため、EUIPO での登録が英国にも適用されるかどうかは現段階で はわからなくなってしまいました。 これに鑑みて、英国で意匠権と商標権の保護を受けようとする申請者は、近いうちに費用と確 実性のバランスを見ながら方策を考える必要がありそうです。最も慎重な展望では、EUIPO へ の登録だけでは、その効力は英国に自動的に及ぶことはなくなるとみられています。この最も 慎重な展望を基にすれば、EUIPO とは別に英国での保護を申請するか、または、その他利害関 係のある EU 加盟国での国別の保護に加えて英国の国別の保護を求めるかのいずれかが必要と なります。 英国と EUIPO の登録、または国別の登録のいずれを選ぶにせよ、事務処理が増え、 費用がかさむことになりそうです。 EU 全体の権利を英国での国別の権利に変更するのに、何らかの形で妥協策が講じられ、従って 権利が失われることにはならないだろうというのが多くの評論家たちの推測です。そうした妥 協策が講じられる可能性は大変高くなっています。しかし、そのような妥協策が講じられるま では、最も慎重な戦略は、英国と残りの EU 加盟国の両方の権利を個別に保護することでしょ う。 プラスの面としては、英国知的財産庁(UKIPO)に商標権および意匠権を申請するのは、EU 知 的財産庁(EUIPO)に対する実務を既に経験している申請者にとってなじみのあるものだとい うことです。 英国での権利を得るための費用は比較的低くてすみます。例を挙げれば、EUIPO に対するのと同様に、UKIPO に複数の意匠を一括申請することが可能です。近いうちに、EU 離 脱の混乱のさなかにある英国に対して「追加の」保護が講じられれば、安心して比較的低コス トで現行の英国市場における業務を行えるでしょう。
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