1.業界ヒアリング・アンケート (2)直面している経営上の課題・問題点 県内の学習塾の現状を把握するため、ヒアリン 直面している経営上の課題・問題点について尋 グおよびアンケートを実施した。以下はその結果 ねたところ、「塾生数の減少」が 67.4%で最も多か の概要である。 った。次いで東・南予地域の中堅塾を中心に回答 業界ヒアリング・アンケートの概要 調査対象 愛媛県内の学習塾 調査方法 訪問および郵送 調査時期 2009 年 10∼12 月 回答先数 43 先 が多かった「講師の育成・確保」が 39.5%、「競争 の激化」が 18.6%となった。 図表 1-2 直面している経営上の課題・問題点 (複数回答 n=43) 0 (1)塾生数、年間売上高と市場規模 10 20 30 40 上高について尋ねたところ、塾生数は「50 人未満」 講師の育成・確保 が 37.2%で最も多く、次いで「50∼100 人未満」が 競争の激化 (県外資本の進出など) 25.6%となっており、塾生数が 100 人未満の学習 塾生や保護者との コミュニケーション不足 塾が全体の約 6 割を占めている。年間売上高も 事業承継 (後継者の不在など) 「1,000 万円未満」が 60.5%と最も多く、県内の 学習塾の大半が小規模塾であることがわかる。 なお、県内の市場規模を、業界ヒアリングやア 70 (%) 39.5 18.6 16.3 14.0 経費の上昇 (人件費、家賃の上昇など) 11.6 知名度不足 11.6 その他 11.6 ンケート結果、学校基本調査などを基に IRC で推 60 67.4 塾生数の減少 小学生から高校生までの塾生数と直近の年間売 50 計したところ、100 億円程度となった。 2.保護者アンケート 図表 1-1-1 塾生数(n=43) 保護者の学習塾に対するニーズなどを把握する ため、小学生から高校生までの子どもを持つ保護 300人以 上 16.3% 者を対象に、インターネットアンケートを実施し た。以下はその結果の概要である。 50人未満 37.2% 100∼300 人未満 20.9% 調査対象 50∼100 人未満 25.6% 調査方法 図表 1-1-2 直近の年間売上高(n=43) 調査時期 回答者数 5億円以上 4.6% 1億円∼5 億円未満 11.6% 5,000万円 ∼1億円未 満 7.0% 1,000万円 ∼5,000万 円未満 16.3% 回答者 住 所 1,000万円 未満 60.5% 2 保護者アンケートの概要 全国の小学生から高校生までの 子どもを持つ保護者 当社が運営するホームページを 通じたインターネットによるア ンケート 2009 年 12 月∼2010 年 1 月 1,504 名 北海道・東北 180 名 12.0% 関東 476 名 31.6% 北陸・東海 194 名 12.9% 近畿 227 名 15.1% 中国 105 名 7.0% 四国(愛媛を除く) 33 名 2.2% 愛媛 163 名 10.8% 九州・沖縄 126 名 8.4% を通じた情報よりも口コミ情報に左右される業界 (1)利用している学校以外の学習機関 であることが改めてわかる。 子どもが学校以外の学習機関を利用しているか 図表 2-2 現在の学習塾を選んだ主な理由 尋ねたところ、愛媛では「利用していない」との回 答が 46.6%で最も多く、次いで「学習塾」が 39.3%、 (複数回答 愛媛 n=64 愛媛を除く全国 n=499) 「通信教育」が 19.0%となった。 0 学年別にみると、小学校低学年(1∼3 年生)と 10 20 30 40 50 60 通塾するのに便利な立地 (学校や自宅から近い) 高校生の 6 割以上が「利用していない」と回答して 62.5 59.3 知人などからの紹介や子どもの希望 (子どもの友達が通っているなど) いる一方で、小学校高学年(4∼6 年生)と中学生 42.2 43.3 進学実績 (有名校への合格実績が高い) の 5 割以上が学習塾を利用していると回答してい 29.7 34.7 入塾前の無料体験授業などを受けて、 印象が良かった る。 図表 2-1 利用している学校以外の学習機関 70 (%) 26.6 16.0 10.9 10.0 月謝の安さ 愛媛 (「利用していない」以外は複数回答 愛媛 n=143) 0 10 20 30 40 50 60 9.4 新聞広告、チラシ、テレビCMなどを見て 愛媛を除く全国 5.6 70 (%) 12.5 その他 8.2 39.3 19.6 51.3 学習塾 (3)成績の向上以外に期待するサービス 58.1 28.6 子どもが通塾している保護者に、学習塾に対し 19.0 13.0 25.6 25.6 通信教育 11.4 その他 (家庭教師等) て成績の向上以外に期待する(今後取り組んで欲 全体 3.1 2.2 小学校低学年 (1∼3年生) 小学校高学年 (4∼6年生) 中学生 しい)サービスを尋ねたところ、愛媛では挨拶や 高校生 講座」との回答が 40.6%で最も多く、次いで将来 言葉遣いの指導といった「子どもに対するマナー 7.7 0.0 2.9 の職業や進路の指導といった「子どもに対するキ 46.6 学校以外の学習機関を 利用していない 65.2 ャリア講座」が 37.5%となった。 28.2 32.6 60.0 学年別にみると、小・中学生の保護者を中心に、 子どもに対するマナー講座やキャリア講座を望む (2)現在の学習塾を選んだ主な理由 回答が多くなっている。 子どもが通塾している保護者に、現在の学習塾 図表 2-3 成績の向上以外に期待するサービス を選んだ主な理由を尋ねたところ、愛媛では「通塾 するのに便利な立地」との回答が 62.5%で最も多 (「成績の向上以外期待しない」以外は複数回答 く、次いで「知人などからの紹介や子どもの希望」 愛媛 n=143 愛媛を除く全国 n=499) が 42.2%、「進学実績」が 29.7%となった。 0 5 10 15 20 25 30 35 40.6 子どもに対するマナー講座 (挨拶や言葉遣いの指導など) 37.7 を設置しても、通塾を検討している子どもの自宅 子どもに対するキャリア講座 (将来の職業や進路の指導など) 37.5 36.1 や学校から遠ければ塾生は集まらない。現在は、 キャンプなどのレクリエーションや ボランティア活動 30∼40 坪程度の教室を、児童・生徒数が多い学校 eラーニング (インターネットなどを用いた 在宅学習システム) 塾関係者へのヒアリングにおいても、「大型教室 の近くや交通の利便性が高い各市町の中心部に設 体験型学習 (理科の実験など) 置するようにしている」との声があった。 また、 「塾 特待生制度 (成績優秀者に対する 月謝の免除など) 生の大半は、保護者間の口コミ情報が決定打とな 45 (%) 40 20.3 7.2 10.9 15.6 9.4 14.2 9.4 愛媛 13.4 愛媛を除く全国 その他 (学童保育、保護者教室など) って入塾してくる」との声もあり、マスメディア 成績の向上以外に 期待するサービスはない 3 10.9 18.6 26.6 17.6 (4)『子ども手当』の使途 「学習系の学校外教育」に充てる傾向があった。 全国の小学生から中学生の子どもを持つ保護者 年収が多い世帯は、既に子どもを通塾させてい に、2010 年度から支給される『子ども手当』の使 る場合が多く、『子ども手当』によって通塾率が 途を尋ねた。 その結果、 『子ども手当』の使途として、「貯金」 大きく上昇することは考えにくい。受講科目の追 が 23.2%で最も多く、次いで給食費や制服代とい 加による 1 人当たりの月謝の上昇も限界があり、 った「学校関係費」が 20.1%となった。「貯金」と 学習塾業界にとって、『子ども手当』はプラス要 「学校関係費」以外の使途としては、年収が少な 因ではあるものの、業界全体を大きく底上げする い世帯では食費や住宅費といった「日常生活費」に、 効果までは期待できないと考えられる。 年収が多い世帯では学習塾や通信教育といった 図表 2-4 子ども手当の使途(世帯年収別 0% 20% 全体 23.2 年収300万円未満 23.2 年収300∼500万円未満 22.8 年収500∼1,000万円未満 40% 20.3 年収1,000万円以上 60% 18.3 80% 20.1 24.1 13.3 20.2 21.4 23.9 14.0 11.4 18.9 23.5 11.7 9.7 21.0 9.6 全国 n=1,142) 15.8 18.2 100% 4.1 9.6 5.5 10.8 3.6 12.8 16.1 4.3 2.3 貯金 日常生活費 (食費、住宅費など) 学校関係費 (給食費、制服代など) 学習系の学校外教育 (学習塾、通信教育など) 習い事 (スポーツ教室、音楽教室など) 子どものお小遣い、衣料費など 子ども保険 その他 7.8 1.5 6.4 1.3 7.8 1.2 8.4 1.9 7.6 2.4 (注) 子ども手当の使途を金額の多い順に最大3つ選択してもらい、1位=5点、2位=3点、3位=1点でポイント 化して集計した。 3.今後の方策 B.学童保育事業の展開 (1)講師の育成強化 共働き世帯の増加に伴い、放課後などに子ども 講師の育成強化のため、(社)全国学習塾協会 を預かってくれる学童保育(国では、放課後児童 が実施している学習塾講師検定制度を利用するこ クラブという名称を用いている)の登録児童数は とも 1 つの方策である。 増加している。このような状況の中、首都圏の学 (2)指導対象学年の拡大 習塾を中心に、宿題のサポートや夜間までの預か 中学生の通塾率は他の学年に比べて高く、今後、 り時間といったサービスを強味として、学童保育 大きく上昇することは期待しにくい。塾生を確保 事業を展開する動きがみられる。今後も学童保育 するには、指導対象学年の拡大は欠かせず、特に を利用する児童は増加するとみられ、小学校低学 小学校低学年の獲得が重要になると考えられる。 年をはじめとする塾生の獲得につながる新たな市 (3)子育て支援事業の展開 場として期待される。 A.マナー、キャリア講座の設置 保護者は、言葉遣いをはじめとするマナー教育 や、将来の職業・進路について考えるキャリア教 4.おわりに 育を学習塾に期待するようになっている。これら 今後、県内の学習塾が子どもと保護者のニーズ の講座を設けることが差別化の 1 つになるのでは を的確につかみ、「子どもの教育を支える機関」と ないだろうか。 してさらに発展することを期待したい。 4
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