相続士業者の 職域関連条文

 28.6.2 相続士業者の 職域関連条文
(関係条文抜粋) ・弁護士法 ・税理士法 ・司法書士法 ・行政書士法 (条文解釈する上での注意事項) ★学習用に関連する重要な条文だけ書き出しました。 ★実務で運用するには、この記載内容では不十分です。 一般社団法人全国相続協会
円満相続支援士認定委員会制作
弁護士法 弁護士法と円満相続遺言支援士との関係
■円満相続遺言支援士(以下「支援士」という。
)は依頼者からの求めに応じて適切な士業者を選択し、依頼者の相続が
円満に運ぶように支援する資格をいいます。弁護士法では無償で法律相談会を開催し、または有償でも法律事件でない
法律事務は非弁行為にならないとする解釈がありますが、支援士の名称を使って、たとえ無償であっても法律事務の助
言、診断、鑑定、和解及び相談等をすることはできません。また、弁護士の周旋もできません。
■支援士は、家族間における相互扶助の推進を応援していることから、支援士の名称を使って相続のセミナー、講演会、
講習会、研究会又は学習会を開催することはできます。
■弁護士の業務は有償独占です。無償独占ではありません。
第一章 弁護士の使命及び職務
第三条 (弁護士の職務) 第 3 条 (弁護士の職務) 弁護士の職務は一般の法律事務を行うことであるとされて
います。 弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱
によって、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立
3 条 弁護士は当事者その他関係人の依頼等によって法律事務を
て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する
行うことを職務とします。 行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。 2 弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うこ 第 72 条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止) とができる。 (成立要件) ①弁護士でない者 ・非弁護士の法律事務のとり扱いについて規定されていま
第九章 法律事務の取扱いに関する取締り
す。 ②報酬を得る目的であること 第七十二条 (非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
・法律事件に関して、法律事務の取り扱いのための主と
して精神的労力に対する対価をいい、現金に限らず、物
弁護士又は弁護士法人でない者は、
報酬を得る目的で訴訟
品や供応を受けることも含まれ、額の多少や名称のいか
事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求
んも問わない(大判昭和 15.4.22)とされています。 ・報酬を得る目的でなく法律上の助言や指導(無料法律相
等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に
談)
を行う事は違反にならないと解することができます。
関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務
(条解弁護士法第3版 677 頁) ③法律事件に関する法律事務を取り扱い又は周旋すること を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とするこ
・法律事件とは法律上の権利義務に関し争いの疑義があり、
とができない。 又は、新たな権利義務関係の発生する案件をいうものと
されています。 ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、
(東京高判昭和 39.9.29 高刑集17巻 6 号 597 頁) この限りでない。 ④業とすることができない。 ・反復的に又は反復継続の意思を持って法律事務の取扱等
をし、それが業務性を帯びるに至った場合をいいます。 第 4 章弁護士の権利義務 (大判昭和 13.2.15 判決全集 29 巻 4 号 317 頁) 25
条 第二十五条(職務を行い得ない事件)
(立法の趣旨) 弁護士は、次に掲げる事件については、その職務
・弁護士がひとつの事件に対し、その一方の側に立って関
与した場合、もう一方の側に立って関与することはでき
を行ってはならない。
ないことを意味しています。 一 相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼
・弁護士が所定の事件について職務を行うことが、さきに
を承諾した事件 当弁護士を信頼して協議又は依頼した相手方の信頼を裏
二 以下略
切ることになり、このような行為は弁護士の品位を失墜
させるのでこれを未然に防止することにあります。
(最大
判昭和 38.10.30) 弁護士職務基本規定 弁護士法と支援士との関係
■弁護士は、依頼者の代理です。民法の代理の条文で、当事者双方の代理人となることを原則禁止しています。
■支援士は、依頼者とその相手方との円満な人間関係を構築することが本来の目的です。依頼者の代理は致しません。
第二節 職務を行い得ない事件の規律 27 条
第二十七条(職務を行い得ない事件) 弁護士は、次の各号のいずれかに該当する事件につい ては、その職務を行ってはならない。 一 相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承 諾した事件 第二十八条(同前) 弁護士は、前条に規定するもののほか、次の各号のい ずれかに該当する事件については、その職務を行って はならない。 ただし、第一号に掲げる事件についてその依頼者が同 意した場合、この限りでない。 一 相手方が配偶者、直系血族、兄弟姉妹又は同居の 親族である事件 民法
本条1号の「相手方」とは、民事、刑事を問わず、同
一案件における事実関係において利害の対立する関
係にある当事者をいいます。ここでの利害の対立は、
実質的なものでなければならず、形式的なものは含み
ません。
利害が対立するように見えても実質的に争いのない
場合は、本条1号の「相手方」には当たりません。
28 条
相続において争いに発展する可能性が無い案件でも、
弁護士は、職務上相手方と対立する関係を作る可能性
があります。しかし、支援士は、現在の円満な人間関
係をさらに発展させ、あるいは維持する方向に進ませ
ることを目指しています。
第百八条(自己契約及び双方代理)
)
同一の法律行為については、相手方の代理人となり
又は当事者双方の代理人となることはできない。 民法 108 条
民法では、同一の法律行為について当事者双方の代理
人となることを原則認めていません。
税理士法 税理士法と支援士との関係
■税理士の業務範囲は①税務署等に対する申告に係る申告書等の作成・②税務代理・③税務署等に対する申告等の
課税標準の計算等に関する事項についての相談です。 ■一般的な税法の解釈や研修での税額の計算は税務相談に該当しませんが、支援士は支援士の名称を使って税務に関す
る助言、診断、鑑定、相談等はできません。
■支援士は、家族間における相互扶助の推進を支援することを目的としていることから、支援士の名称を使って相続の
セミナー、講演会、講習会、研究会又は学習会を開催することはできます。
■税理士業務は有償無償の独占です。税理士以外の者は無償であっても税理士の業務を行うことはできません。
第二条(税理士の業務) 2 条 税理士は、他人の求めに応じ、租税に関し、次に掲げ
税理士の業務範囲が規定されています。 る事務を行うことを業とする。 ①税務代理 一 税務代理 税務官公署に対する申告書等の代理をおこないます。 税務官公署に対する申告等に関し税務官公署に対して
②税務書類の作成 する代理をいう。 税務官公署に対する申告書等の書類を作成すること
をいいます。 二 税務書類の作成 税務官公署に対する申告等に係る申告書等の書類を作
③税務相談 成することをいう。 税務官公署に対する申告、申告書等の作成に関して租
三 税務相談 税の課税標準等の計算に関する事項について相談に
税務官公署に対する申告等の第1号に規定する申告書
等の作成に関し、租税の課税標準等の計算に関する事
項について相談に応ずることをいう。 第五十二条 (税理士業務の制限) 応ずることをいいます。 税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段
の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行って
はならない。
税理士法と支援士との関係
①財産評価通達の設定の届出の行為は通達に基づく届出ですから税務代理に該当しません。
②申告ソフトは税務書類を作成する道具にすぎず、道具の販売又は配布することは、税務書類の作成に該当しません。
この道具をつかって、支援士が業として申告書を作成すると税理士法違反となります。
(問答式「税理士法の実務」大蔵財務協会出版参照)
司法書士法 司法書士法と支援士との関係
■司法書士は、登記に関する事務や法務局に提出する書類の作成のほか、これらの事務の相談にも応じることを行うのが
業務ですから、支援士の名称を使って、たとえ無償でも司法書士の業務や相談等はできません。
■支援士は、家族間における相互扶助の推進を応援していることから、支援士の名称を使って相続のセミナー、講演会、
講習会、研究会、学習会を開催することはできます。
■司法書士の業務は、有償無償の独占です。司法書士の業務を司法書士以外の者が無償であっても行うことはできません。
司法書士会の提案と支援士との関係 ■平成 25 年 6 月 21 日開催した日本司法書士会連合会総会で、司法書士法でいう管理人を法的管理人に限定せず私的契約
に基づく管理人としての業務を司法書士が行えば市民の利益に寄与できるのではないかという提案がありました。 例えば、被相続人名義になっている預貯金や株券等の有価証券の解約、配分又は書換え等の手続き、相続財産の預託、管
理若しくは処分をする業務をいいます。 ■支援士は相続人間の円満な相続を推進するために、円満な相続達成に法的な知識が必要な場合は、依頼者と士業者を橋
渡しするのが役割と考えます。従って、司法書士会が提案したこの業務を仮に支援士が行っても、問題は無いとされてい
ますが、支援士の名称を使って当該業務を行うことはできません。
第三条(業務)
司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。 一 登記又は供託に関する手続について代理すること。
二 法務局又は地方法務局に提出する書類を作成すること。ただし、同号に掲げる事務を除く。
三 (地方)法務局長に対する登記又は供託に関する審査請求の手続について代理すること。
四 簡裁訴訟代理等関係業務を行うこと。
五 前各号の事務について相談に応ずること。
第七十三条 (非司法書士等の取締り)
司法書士会に入会している司法書士でない者は、第3条(業務)第1項第1号から第5号までに規定する業務を
行つてはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
第二十九条 (業務の範囲)
司法書士法人は、第三条第一項第一号(業務)から第五号(相談事務)までに規定する業務を行うほか、定款で
定めるところにより、次に掲げる業務を行うことができる。
<司法書士法施行規則>
第三十一条 (司法書士法人の業務の範囲) 法第二十九条第一項第一号 の法務省令で定める業務は、次の各号に掲げるものとする。
一 当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、管財人、管理人その他これらに類する地位に就き、他
人の事業の経営、他人の財産の管理若しくは処分を行う業務又はこれらの業務を行う者を代理し、若しくは
補助する業務
行政書士法 行政書士法と支援士との関係
■行政書士でない者は、遺言書等の権利義務又は事実証明に関する書類の作成のほか、これらの業務の相談に応じるこ
とはできません。
■支援士が受ける相談には、相続人間の権利義務に係る案件が多いといえます。この業務を有償で行うのは行政書士の
仕事です。しかし、行政書士業務範囲は多岐に渡ることから相続に精通している行政書士は限られています。そこで、
支援士には社会的に信頼され且、倫理観のある相続業務に精通した行政書士を見つけだすことが求められます。
これらの業務を無償で行うことは行政書士法違反とならないとされていますが、支援士の目的は円満相続を実現するこ
とで家族の絆を深めることですから、支援士の名称を使って権利義務等に関する業務を行うことはできません。
■支援士は、家族間における相互扶助の推進を応援していることから、支援士の名称を使って相続のセミナー、講演会、
講習会、研究会又は学習会を開催することはできます。
■行政書士は有償独占です。無償独占でありません。
行政書士の業務は大きく分けると次の 3 つです。 1.官公署に提出する許認可等の申請書類の作成及
び提出手続きの代理 行政書士の業務(第一条の二以降抜粋) 2.権利義務又は事実証明に関する書類の作成 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、以下に掲げる
3.上記1.2.以外の、成年後見、ADR などの新し
事務を業とすることとされています。ただし、その業務を
いサービス 行うことが他の法律において制限されているものについて
は、業務を行うことができません。 権利義務に関する書類の作成 (1)官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に 権利義務に関する書類とは、意思表示その他手続行
関する書類を作成すること 為等によって権利又は義務を発生・変更・消滅させ
(2) 略 る法的効果に関わる文書をいいます。 (3) 略 (例)遺産分割協議書、各種契約書、念書、示談書、
(4)契約その他に関する書類を代理人として作成すること 協議書、内容証明、告訴状、告発状、嘆願書、請願
(5)行政書士が作成することができる書類の作成について 書、陳情書、上申書、始末書、定款等 相談に応ずること 事実証明に関する書類の作成 事実証明に関する書類とは、社会的に証明を要する
事項について自己を含む適任者が自ら証明するため
第八章 雑則
に作成する文書をいいます。 (例)実地調査に基づく各種図面類(位置図、案内図、
第十九条 (業務の制限)
現況測量図等)
、各種議事録、会計帳簿、申述書等 行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第一
条の二(業務)に規定する業務を行うことができない。
民法 第三節 代理 第 99 条(代理行為の要件及び効果) 代理人がその権限内において本人のためにすることを示
した意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。