会社説明会成功のポイント

<人材確保を考えるシリーズ>
会社説明会成功のポイント
レポート No.
801451
本レポートは、経営者や人事担当者の方を対象として、
新卒採用のための会社説明会を実施する際のポイントについて紹介する目的で作成しています。
1章 会社説明会の目的
会社説明会は、企業と学生との最初の出会いの場です。積極的な広報活動や宣伝広告を行ってい
ない大多数の中小企業にとっては、自社を認知してもらうための非常に重要な機会でもあります、
一方、学生のほうでは主催企業に関心はあるものの、まだ志望先にまでいたってない場合が少な
くありません。そういった学生に、ひとりでも多く自社を理解してもらい、関心や好感をもっても
らうことが、会社説明会の狙いです。その目的は、大きく、次の2つに分けられます。
・自社を理解してもらい、関心を高めること
・学生の一次選考を行うこと
1.自社を理解してもらい、関心を高めること
これまでの「大企業=よい就職先」という意識が薄れた今、学生は企業の名前よりも、
その企業でどのように自分をいかせるか
を重視しています。中堅中小企業においても優秀な学生を採用することは十分に可能です。彼らに
自社の将来性や仕事のやりがい、また、事業を通じ、社会にどのような貢献をしようとしているか、
そういった自社のビジョンを示し、
「この会社の考えには共鳴できる」
「ここでなら自分の能力をい
かすことができる」というイメージを与えるのです。
同時に、自社で働くことで、入社後の彼らの能力はどのように高まっていくか、それが彼らのキ
ャリアにどのようにつながっていくか、会社はそのためにどのようなサポートができるかという説
明も必要です。
なお大企業より中堅中小企業を選ぶような学生は、入社後できるだけ早い時期から、重要な役割
を果たせるようになりたいと期待しています。その期待を実現するための、明確な方向性を示すこ
とが、彼らを引きつけるポイントになります。
2.学生の一次選考を行うこと
多くの会社説明会では説明終了後に筆記試験や小論文などで、
参加者の一次選考を行っています。
それは会社として「このような能力や考え方をもっている人に入社してほしい」という意思表示で
あり、
「採用する側」
、
「応募する側」の、最初の調整作業と位置づけられます。
その後の面接などの採用ステップを円滑に進めるために、一次選考の段階から自社の必要とする
人材像を明確にしておくことが大切です。
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2章 会社説明会の概要
会社説明会はおおむね次のような流れで行われます。
・会社および業界説明(60分程度)
・質疑応答(30~60分程度)
・一次選考(90~120分程度)
1.会社および業界説明
はじめに、自社の事業内容や入社後の仕事内容などについて詳しく説明します。説明は、
「経営方
針の説明(社長)
」
、
「具体的な業務内容・やりがいなどの説明(社員)
」
、
「人事制度の説明(人事部)
」
といった流れで行われるのがよく見られるパターンです。配付資料として会社案内や商品案内、パ
ブリシティ(新聞などに自社が取り上げられた記事)などを準備すると理解が深まります。
(1)経営方針の説明
経営方針の説明については、社長が自分の思い(会社、社会、社員、仕事、人生など)を語りか
けることが大切です。なぜなら会社のビジョンをもっとも熱く語り、企業戦略についても正確に話
せる人物は社長自身だからです。
参加者にしても「トップの話」こそもっとも聞きたい話であるはずです。社長を知ることはその
会社全体の姿、会社の本当の姿を知ることにもつながります。
社長の思いに共鳴した参加者は「この社長と一緒に働きたい」と強く感じるでしょう。逆に、共
鳴できない参加者については、この段階で辞退してもらったほうがお互いのためです。ビジョンを
実現するために、
「自社が求める人材、求めていない人材」についてもはっきりと示すようにしまし
ょう。
<社長による説明のポイント>
経営理念、ビジョン、経営戦略、事業内容、創業から現在までの経緯、会社や仕事に対する熱意、
自社の強み、社員に対する考え方など
(2)具体的な業務内容・やりがいなどの説明
社長の経営方針説明を踏まえて実際に現場で活躍している社員たちがより具体的な説明を行いま
す。説明は、各部門のベテラン社員、若手社員など複数の社員が担当するのが効果的です。ベテラ
ン社員は参加者の理解を深めるために事業の詳細や自身のこれまでのキャリアなどを中心に、若手
社員は参加者に親近感をもってもらうために若手ならではの体験談や実際の仕事の内容などを中心
に説明します。
なお、一人ひとりの社員が個別に説明するだけではなく、複数の社員によるパネルディスカッシ
ョン形式で進めることも考えられます。
<ベテラン社員による説明のポイント>
業界動向、自部門の戦略、求めている人材像、自身の入社から現在までの仕事内容など
<若手社員による説明のポイント>
現在の仕事内容・1日の時間の過ごし方、入社前にもっていたイメージと入社後の感想、仕事の
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やりがい、入社してよかったと感じること、自身のキャリアプラン、会社への思いなど
(3)人事制度の説明
キャリアパス、人事考課、福利厚生など会社の人事制度全般について説明します。参加者に対し
て、
「会社は社員をいかに大切にしているか」
、
「頑張った社員はどのように評価されるか」などにつ
いて説明し、入社への不安を払拭することで、入社意欲の促進に努めます。
2.質疑応答
参加者からの質問に対してはできるだけ丁寧に対応します。経営戦略に関する質問には社長自身
が答えるなど、質問の内容に応じてもっともふさわしい者が回答します。
業界全体や自社の抱えている問題点など、マイナス情報についても誠実に回答することが大切で
す。表面だけ取り繕うような話をしても、参加者はそれを敏感に感じ取り不信感を抱きます。何も
かもを伝える必要はありませんが、伝えるべきことは正直に伝えましょう。本音で話せば、相手も
本音で応えてくれるものです。
また、
「業界はこのような不安材料を抱えているが、我が社はこのような戦略でそれを克服し、一
層の成長を狙っている」といった、具体的な企業戦略を語ることができれば、より参加者の関心を
ひきつけられるでしょう。
3.一次選考
一次選考の方法には専門業者が提供している適性検査や、会社が独自に作成する知識テスト、小
論文や作文などがあります。選考の目的を明確にして適切な方法を選択しましょう。
たとえば、業者作成の適性検査はビジネスマンに求められる基本的な資質を判定するものです。
これに対し会社が独自に課題を作成する場合は、業界に特化した専門知識を確認したり、小論文に
おいてもテーマ次第で時事問題への関心度、論理的思考力、職業観などを問うことができます。
一次選考の結果の位置づけについても、
「一定以上の得点が面接試験へ進むための絶対条件」
、
「面
接と併せた総合評価の一部」
、
「参考程度(極端に悪くない限りはOK)
」など、あらかじめ結果をど
のように扱うかを明確にしておきましょう。
3章 準備段階のポイント
1.日時の設定
開催日時を設定する際の留意点としては、
・学生が就職活動を始める時期とマッチしているか
・学生が参加しやすい時期か
・他社と比べて有利な時期であるか
などがあげられます。
大学生の就職活動は、
「採用選考に関する指針」などの変更もありますので、最新の状況・スケジ
ュールを把握することが必要です。2016年卒生の際は、3年生の3月(2015年3月)から
の広報開始、4年生の8月(2015年8月)からの選考開始とされたため、採用活動が長期化す
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る形となりました。2017年卒生では、3年生の3月(2016年3月)からの広報開始、4年
生の6月(2016年6月)からの選考開始となっています。なおあくまでも「採用選考に関する
指針」は経団連(日本経済団体連合会)の加盟会社に向けたものであり、外資系企業や中小企業で
は、それよりも前倒しして募集活動を行なっているケースもあります。会社説明会の開催時期を考
える際には、就職活動を行っている学生がどのような状況におかれているか、十分理解しておくこ
とが大切です。
また、会社説明会は1回だけではなく、小規模に、複数回に分けて実施することもできます。そ
うすることで「学生のスケジュールの都合がつきやすい」
、
「会場の手配がしやすい」
、
「会社側の開
催ノウハウが蓄積されていく」
、
「少人数の参加者で行うほうがより密度の濃いコミュニケーション
が可能になる」といったメリットがあります。
知名度が低い、宣伝広告に多くを割けないという場合は、自社単独でなく、商工会議所などの公
的機関や、民間の就職支援企業主催による「合同企業説明会」に参加する方法も有効です。一定の
制約は受けますが自社単独で行うよりも高い集客力が期待できます。利用する際には、費用や日程
の確認、早期の意思表明が必要です。
2.会場の設定
会場に関しては、自社で行うか、外部会場を利用するかのどちらかになりますが、できるだけ自
社で行うほうが望ましいでしょう。
会社説明会は、学生にとっては企業を知る貴重な場です。自社が会場なら、会社説明の後に社内
を見学させ、より興味をもってもらうこともできます。
やむを得ず会場を借りる場合は、費用の問題や予約状況による会場確保の問題もあるため、早め
に準備する必要があります。
3.インターネットでの告知
多くの企業が自社のウェブサイトをもっており、そのなかで求人情報についても公開しているこ
とがほとんどです。
ウェブサイトを活用すれば、求人に関する専用のページを設け、求める人材像、具体的な仕事内
容、自社の将来性、トップのメッセージなど、学生に直接訴えかけることができます。また、説明
会スケジュールを公開し、サイト上から直接参加申し込みを受け付けることもできます。
ただし、知名度の低い企業の場合は、自社のウェブサイトにたどり着いてもらうこと自体が難し
いようです。そのような場合は、確実に学生の目に触れるであろう、求人情報サイトに自社の情報
を掲載してもらうことが有効です。掲載には費用がかかりますが、効果的なアピール手段のひとつ
として、検討してみる価値はあるでしょう。
4章 説明会当日のポイント
1.運営面
多くの学生にとって会社説明会はその会社との初めての直接的な接点であり、説明会運営の巧拙
も志望意欲に大きく影響します。十分な準備が行われずに不手際が目立てば、会社の管理能力にも
疑問を抱かれることになります。
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<運営面のチェックポイント>
・受付などスタッフの人数・配置は適切か、笑顔で挨拶ができているか
・会社の入り口に会場の案内図を掲示しているか
・配付物の準備は万全か
・司会者の話し方、態度、挨拶などは適切か
・プロジェクターなどの説明用機器や使用するパソコンのテストは行ったか
・会場の広さ、レイアウト、明るさ、音響、空調などは適切か
・進行役や説明者はリハーサルなどの準備を行っているか
・入り口やトイレなど学生の目につく部分は清潔に保たれているか
・職場見学を行う場合は整理・整頓は十分になされているか
・筆記試験を行う場合は十分な広さの机を準備しているか
・説明会の開始時刻、終了時刻は守られているか
2.内容面
学生は説明会全体の内容や、それぞれの説明者の表現力・熱意などから会社の実力や姿勢を感じ
取ります。
<内容面のチェックポイント>
・時間配分も含め、適切なプログラムになっているか
・業界説明は学生でも理解できるようにわかりやすく工夫されているか
・ウェブサイトや会社案内でわかる範囲の説明に終始していないか
・参加者に意見を求めるなど、飽きさせない工夫がなされているか
・想定される質問については回答の準備をしているか
・自社に都合の悪い質問に対しても誠実に応えているか
・社員の具体的な働き方が理解できる内容になっているか
・会社の経営理念や事業戦略などが理解できる内容になっているか
・わかりにくい業界用語、専門用語、社内用語などは使っていないか
・説明者によって経営理念や経営戦略の解釈にバラツキがないか
・参加者全員に対して何らかの有益な情報を与えたいという誠意をもっているか
発行:2016年4月
-以 上-
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