艦隊これくしょん 艦娘に呼び出された提督の話&提督を探し

艦隊これくしょん 艦
娘に呼び出された提督
の話&提督を探しに来
た姉の話 特別編短編
集
しゅーがく
︻注意事項︼
このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にPDF化したもので
す。
小説の作者、
﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作品を引用の範囲を
超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁じます。
︻あらすじ︼
※下記はあらすじではありません。小説の説明です※
ハーメルンで展開している艦これ二次創作﹃艦隊これくしょん 提督を探しに来た姉
﹂的な人も出てくる予定
言い方を変えれば外伝やスピンオフに当
の話﹄とその前作﹃艦隊これくしょん 艦娘に呼ばれた提督の話﹄に投稿予定だった特
別編を短編独立化
双方の作風とは違う物語を投稿します
たりますので、その辺はご了承下さい。
短編集ですので、その都度内容は変わります。﹁お前誰だよ
!
!
!!
ですのであしからず。
このような形を取った訳ですが、本編の中に点々とある特別編のせいで読みにくいと
い う こ と で し た の で、こ の 形 を と る こ と に 致 し ま し た。新 規 の 方 々 は ご 了 承 下 さ い。
︵必ずお読み下さい︶
︵最もタイトル的に見に来る人は読んでいる人だけでしょうけど︶
※注意
︶
!
https://novel.syosetu.org/84182/
艦隊これくしょん 提督を探しに来た姉の話︵連載︶
https://novel.syosetu.org/61274/
艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話︵完結︶
本編←
分あります。ご了承下さい。︵アルンジャネェカ
・特にないですが、これは新規読者には分かり辛い内容の短編も出てくる可能性が十
!
これで結婚ねっ その
目 次 おめでとう
これで結婚ねっ その
1 ││││││││││││││
!
!
2 ││││││││││││││
14
おめでとう
1
!
!
おめでとう
これで結婚ねっ
その1
!
急に剥がすなっ⋮⋮って⋮⋮
﹂
そんな至福を味わっていた俺の毛布を剥ぎ取る輩が居た。
思うんだ。
エアコンをガンガンにつけた状態で、毛布に丸々ことってこれ以上ない至福だと俺は
!
?
﹂
!
おめでとうっ
これで
!
めた。
﹂
結婚ねっ
﹁はい
?
!
そんな俺を無視して、俺の目の前に居た艦娘数人のうちの1人。赤城が何かを話し始
そして俺の今置かれている状況が掴めない。
かれていた。
その紙があまりに特徴的だったので、目を凝らして見ると、それには﹃婚姻届﹄と書
起きた俺の目の前に居たのは、ある紙を握り締めた艦娘数人。
﹁おいっ
!
﹁﹃艦隊これくしょん 提督を探しに来た姉の話﹄特別編っ
おめでとう! これで結婚ねっ! その1
1
﹂
ドンドンパフパフ言わせている中、俺だけが状況を掴めていない。
﹁早く﹂
﹁印を﹂
!
﹂
!
﹁あったよ。紅提督の印鑑﹂
その何処かが、俺がもっと早くに気付いていれば良かったのだ。
もしているので、何処かに居るんだろう。
誰に迫られているかというと、赤城と金剛。鈴谷、秋津洲、夕立。ちなみに時雨の声
じわじわと前線が押し上げられている俺は、壁際まで迫られていた。
﹁力づくで、かも
﹁出さないのなら﹂
﹁寄越しなさいっ
﹂
ちなみににじり寄ってきている艦娘は全員で6人。
あとは、俺が持っている印を押すだけみたいだ。
れられていた。夫の欄に。
その手には、かなり記入が済んでいる婚姻届がある。そして、何故か俺の名前まで入
そんな訳が分からない俺に、ずいずいとにじり寄ってくる艦娘。
﹁いやぁ∼。そんなわけだからさ、紅提督ぅ
?
2
﹁何っ
﹂
ところに群がる。
そして、俺がベッドから降りて確認するころには、時既に遅し。
﹂
ドヤ顔で皆が婚姻届を見せつけてくるのだ。
﹁え〟っ
じゃないですよ。さっき言ったじゃないですか﹂
﹂
結婚ねっ
﹁はい
﹂
﹁いや、ですから⋮⋮﹂
﹂
呆れたような素振りを見せて、赤城は言う。
﹁そういうことですよ、旦那様
ーーーーー
﹂
朝一番で俺の絶叫が鎮守府でこだました。
﹁はいぃぃぃいいいいぃぃぃぃ
?! ?
おめでとうっ
!
そう言って、赤城はプラ板で出来た看板を俺に見せてきた。
﹁え
?
!
これで
俺の目と鼻の先までにじり寄ってきていた5人が光の如く消え、時雨がいるであろう
?!
?
!
?
﹁﹃艦隊これくしょん 提督を探しに来た姉の話﹄特別編っ
おめでとう! これで結婚ねっ! その1
3
ーーー
ー
﹂
俺はそのまま6人にひっつかれながら食堂に行くんだが、通る艦娘の目が痛いの何
の。
美少女6人に囲まれて幸せでしょ
というか何で皆、泣きそうな顔しているんだ
﹂
﹁んふふ∼。紅ぅ
﹁そうよね
?
?
﹂
?
﹁なぁ、今思ったんだけどさ﹂
そう言いながら、脇腹から離れない赤城に今更だがツッコミを入れる。
﹁まぁまぁ、旦那様は何にしますか
皆、俺を見る視線がなんとも言い難い。痛いんだけど。
ながら食堂に入る。
たから見たら、もしかしたら合体ロボかなんかに見えているだろうな、とか現実逃避し
なんというか、動きづらい。ちなみに、赤城は右側の脇腹、金剛はその反対側だ。は
と時雨。
俺の両手を自分の身体に巻き付けて言う鈴谷に、背中から身体を密着させてくる夕立
﹁僕もそう思う﹂
?
?
4
﹁はい﹂
﹁何で俺
は
つか﹃艦隊これくしょん 提督を探しに来た姉の話﹄ってなんだよ﹂
?
﹂
?
話でしたからね﹂
世界のハーレム金剛さんが云々って話や年末年始、バレンタインデーとホワイトデーの
﹁あぁ、それはお気に入り登録者1000人突破記念の時ですね。それ以来、どこぞの異
た提督の話﹄っていう題名があるんだが﹂
﹁いや、知らないし。というか、遠い記憶に﹃艦隊これくしょん 艦娘たちに呼び出され
続編で、旦那様のお姉様が旦那様を探しに来るという話ですけど
﹁えーと⋮⋮ですね⋮⋮⋮⋮前作﹃艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話﹄の
?
待った﹂
?
﹁おーい、大井
﹂
る。助けてもらった後に、一緒に探せばいいからな。
そうすると大井が居た。なんだか誰かを探しているみたいだが、俺は構わず声を掛け
そう言いながら俺は、取り囲まれた席から辺りに助けを呼べそうな艦娘を探す。
﹁脈絡がおかしい上に、訳わからん﹂
﹁待ちませんよ。それと、今は私たちの旦那様なんですから﹂
俺はカウンターで注文を言って、そのまま席に座って赤城に止めを入れる。
﹁うん
おめでとう! これで結婚ねっ! その1
5
!
そう俺が呼ぶと、大井は慌てながら小走りで来てくれた。
なんだか俺の記憶にある大井って、もうちょっと落ち着きのある艦娘だと思ってたん
だが。
﹁探しましたよ、紅さん
﹂
はいっ サインと印鑑お願いしますっ
と印鑑押してくださるのなら、私は全力で助けてあげますよ
!
コレにサイン
!
コレでっ
私はっ
!
〝結婚〟っ
!
﹂
!!
幸せだったのかもしれない。
来ましたわー
!
!
がら気付いた。
﹁ということで、さぁ
あなた、こっちに﹂
刻々と目の前に起きる状況は、時が過ぎていく程に酷くなっていくことにも、今更な
完全に思考を放棄した方が良いのかもしれないとさえ、思ってしまう程だった。
状況を全く掴めず、置いていかれてばかりの俺の目の前、もう訳が分からなかった。
﹁んふふ∼
!!
その紙を渡す間際に、俺は見ちゃいけないものを見てしまった。否。気付かない方が
たちの妨害を受けながらもなんとかサインと印鑑を押すことに成功。
この全く状況の掴めないところで、俺は何も言わずに大井から紙を受け取って、赤城
?
!
言い切る前に、大井に遮られた。とんでもない言葉で。
﹁あー、ありがとう。大井。それでだな。ちょっと赤城たちを引き剥がして﹂
6
手を差し出され、反射的に手を取ると、そのままその場から引っこ抜かれた。まるで
人参の様に。
﹂
そして、そんな人参の目の前ではとんでもない事が起きていたのだ。
﹁私の旦那様になしているんですか
﹂
?
もう滅茶苦茶だ。
ている。場所は食堂。
そして、さっきまで俺の横に居た金剛、鈴谷、秋津洲、夕立、時雨も艤装を身に纏っ
た。
辺りが光に包まれて晴れたかと思うと、そこには艤装を身に纏った大井と赤城が居
﹁あら、私のよ
?
﹂
?
40mmでも余裕で貫通するもんね﹂
﹁大艇ちゃんの桜花の攻撃、喰らいたいかも 金剛さんと鈴谷さんは無理でも他なら、
ニヤニヤしながら鈴谷は言うが、どうしてニヤニヤ出来るのか俺には分からない。
﹁いんや∼、鈴谷のだよー
俺の声も聞こえてない、完全に目のハイライトが消えた金剛が大井を睨んでいた。
﹁おい、金剛。いつぞやの金剛に戻ってるぞ﹂
﹁違いマース。〟私〟のダーリンデース﹂
おめでとう! これで結婚ねっ! その1
7
?
多分、効果ないと思う。意味ないぞ、秋津洲。
それに、君たちじゃ、
﹁〟 私 〟 の な ん だ け ど ⋮⋮ 皆、何 好 き 勝 手 言 っ て く れ る の か し ら
遠 方 か ら 単 艦 で
今は少し距離を置いて傍観しているだけだが、これまでに聞いたこともないような怒
言っていて恥ずかしいが、何も気付かない俺のせいでこうなってしまったのだ。
その後、俺を中心に艦娘7人によるバトルが始まってしまった。
ー
ーーー
ーーーーー
発言︶、ここからは皆さんに見せられない。あれ、俺何を言って⋮⋮。
放送禁止用語が大量に出てきたので、少し本文では消させてもらったが︵※急なメタ
﹁そもそも、貴女たちでは旦那様をまn︵自主規制︶﹂
夕立は怒髪天を衝いていたので、俺は目を逸らした。触れない方が良いと思う。
帰ってこれるくらいに、屈強な艦娘じゃないとそれこそ、〟私の〟主人は守れないわ﹂
?
二になったんだろうか。
なんだか時雨がこれまでに見たことないオーラを発している。そして、いつの間に改
〟僕〟の夫は守れないからね。駆逐艦に守れないものはないからね﹂
﹁最近出てきただけの、クレイジーサ○コレ○が何言ってるの
?
8
号が飛び交い、ザ・女同士の喧嘩みたいになっている。
指揮官の立場としては、あれの仲裁をしなければならないんだろうが、元凶は俺なの
でそんなことは出来ない。俺に飛び火が来ることは確実だったからだ。
そんな俺にどこから来たのか、加賀が話しかけてきた。
﹁提督﹂
﹁おはよう、加賀﹂
﹁おはようございます﹂
隣の席に座った加賀は、俺と同じ方向を向いてバトルを傍観する。
てっきり加賀なら止めに入ると思ったんだが、どうやら止めないみたいだ。
﹂
?
﹁状況が掴めてない上に、俺って⋮⋮いいや、言っても仕方ない。それよりも、まだ練度
﹁何故ですか
なるとは思わなかった。
これくらいいいだろう、そう思ってのことだ。だが、この発言が火に油を注ぐことに
淡々と話す加賀に、俺は少しばかり愚痴を溢した。
﹁そうですか﹂
﹁あぁ。⋮⋮俺は今、とてつもなく胃薬が欲しい﹂
﹁やってますね﹂
おめでとう! これで結婚ねっ! その1
9
は99に到達してないだろう
﹂
この前の出撃で全員の練度が99になりました。それと﹃番犬艦隊﹄と
?
﹂
?
﹁え
いや⋮⋮いつの間に
﹂
?
俺はマジマジと見て、それの題名を読み上げる。
加賀が長い袖から出して俺に見せたものは、何というか始めてみたものだ。
届いたのはつい昨日のことです。あとコレも﹂
﹁結構前から掛けあっていましたので、どこでとは言えませんね。ですけど、戸籍抄本が
?
今更気付いたが、加賀も俺のことを﹃提督﹄とは呼ばずに名前で呼んでいた。
んと結婚するためですし﹂
﹁だからケッコンではなく結婚なんですよ。まぁ、皆さんが戸籍を作ったのは全て、紅さ
﹁は
あり、軍属ということになっている。年齢は20みたいだ。
が、加賀に隠されてしまった。だが、戸籍抄本によれば住民票は横須賀鎮守府に置いて
戸籍抄本と書かれたその紙に、加賀の顔写真が貼られている。姓名もあるみたいだ
そう言って加賀はあるものを俺に見せてきた。
論、私たちもですが﹂
秋津洲さんはそもそも出撃出来ませんので、政府に掛けあって戸籍を作りました。勿
﹁してますよ
?
10
﹁雑誌か
ゼ○シィ
あー⋮⋮﹂
?
じゃあ
﹂
!!
匿って下さい
急にどうしたんですか
﹂
﹂
飛び込んできた俺に驚いた武下さんは、座っていた椅子から立ち上がって、俺の方に
﹁うおっ
!
?
!
階段を駆け上がって、武下の居る部屋に飛び込んだ。
勿論、匿って貰うためだ。すぐにロビーを通り過ぎて、門兵に挨拶をするとそのまま
本部棟を逃げ回り、外に出た俺はそのまま警備棟に走り込んだ。
ー
ーーー
ーーーーー
うか怖いのだ。
後ろからは追いかけてくる足音が何人とあった。だが、俺は立ち止まらない。何とい
動き出した艦娘を見て、俺は走る速度を上げて食堂を飛び出していく。
艦娘たちが、待ってましたと言わんばかりに動き出した。
加賀の返事も聞かずにそのまま俺は走る。そんな俺をバトルしている7人を除いた
﹁ちょっと悪い。急用思い出した
!
完全に寝耳に水だ。俺はすぐに加賀から離れ、立ち上がる。
?
?!
﹁急にすみません
おめでとう! これで結婚ねっ! その1
11
来る。
﹂
?
﹁そうですか。⋮⋮分かりました。ですが、匿ってもらいますよ
﹁はい﹂
﹂
﹁いつまで持つか分かりませんが、とりあえずは休んでいて下さい﹂
てきました。
武下さんはそう言って、廊下に居た門兵を呼んであれやこれやと言って、部屋に戻っ
?
と、怒る気にもなれなかった。
まったことと、結果を想像出来なかったことを申し訳なさそうに話す武下を見ている
俺のことを﹃紅提督﹄と呼ぶのにも違和感がある。だが、そんなことよりも動いてし
督に知らせること無く動き出してしまい、このようなことに⋮⋮﹂
﹁部下が艦娘から戸籍に関して相談されたらしいんです。それを聞いて私たちは、紅提
息が戻らない俺は、途切れ途切れに訊く。
﹁どういう、意味、ですか
﹁その騒ぎ、私たちも加担してます。すみません。こんな大事になるとは⋮⋮﹂
肩で息をする俺の肩に手を置いた武下さんは、俺にあることを教えてくれた。
そう言うと、武下さんは何かを察したみたいだった。
﹁なんだか艦娘がおかしくて⋮⋮戸籍だとか結婚だとか言って⋮⋮﹂
12
そう笑った武下さんの背後にあったものに、俺は目が離れる訳がなかった。
何故ならそこにはゼ○シィの名前が大きく書かれていたダンボールがあったからだ。
︶
?!
俺は心の中で叫んだのであった。
︵武下さんもグルかっ
おめでとう! これで結婚ねっ! その1
13
おめでとう
これで結婚ねっ
その2
!
非常に困っているのだ。
内容は聞き取れないが、門兵の表情は見て取れる。
と口論をしているようだった。
窓から少しだけ外を見下ろすと、入り口付近には艦娘が集まっており、なんだか門兵
警備棟の外は騒がしくなっていたのだ。
武下に匿って貰うことにはなったものの、やはり時間がものを云う。
!
﹂
﹁あー、もう嗅ぎ付かれましたか。残念ですが提督、すぐに逃げた方がいいと思いますよ
14
そう言った武下は俺にあることを忠告してきた。
﹁いえいえ﹂
﹁そうかも知れませんね。匿って頂いてありがとうございます﹂
その通りかもしれないと、俺は立ち上がった膝を払う。
そう武下は俺に言った。
?
どういう意味で⋮⋮﹂
﹁ですが提督。注意して下さい。逃げきれるとは思わない方が良いです﹂
﹁え
れた人物が居た。
?
ていた。
目から光が消えれている金剛が居たのだ。そして、その片手には﹃婚姻届﹄が握られ
﹁ヘーイ、提督ぅー。何で逃げるノ
﹂
言いかけた刹那、扉が開かれた。そちらに驚いて俺が目線を向けると、そこには見慣
?
﹁わ、訳分からないだろうが
んだが
俺が
﹂
いきなり複数人に言い寄られて
金剛に加わっていた鈴谷が答えた。
そう言っては見るが、どうなんだろうか。
?!
!
﹂
!
﹁そんなことさせないし。第一、法律なんかココじゃ意味ないじゃん
﹂
?
?!
﹁しかも婚姻届に勝手に印をするし、複数人用意しているし 第一、重婚したら捕まる
俺は少し凄んで言ってみる。
!
れたエンジン音。艦載機だ。多分、彩雲だろう。
俺は後ずさる。今気付いたが、開いている窓からエンジン音が聞こえるのだ。聞き慣
﹁何でって⋮⋮﹂
おめでとう! これで結婚ねっ! その2
15
︵そうだったー
横須賀鎮守府の敷地内は治外法権だった
︶
!!
だが、そう考えるとなんだか変な点が多いことに気付いた。
!!
﹂
観念して私たちと一緒に行かないと、ここに未記入の婚姻届を握り
締めた艦娘が押し寄せてくるけど
?
いいかを考えるのだ。
こんなにも紅のことを想ってる艦娘がいるってのにさぁ
それよりサー﹂
?
﹁それはちょっと勘弁⋮⋮﹂
﹁あ、ひっどーい
﹁ねぇ提督ぅ
鈴谷がプリプリと怒る。
!
プリプリ怒る鈴谷の横で、金剛が俺に訊いてきた。
?
﹂
どうするのが最善か。というか状況は最悪だが、これ以上酷くしない為にどうすれば
そう鈴谷は言う。それを聞いて俺は考えた。
?
﹁で、どうするぅ
そもそも、結婚する相手くらい俺に決めさせて欲しいものだ。
て、逃げることだけを考える。
そんなことを考えるが、ただの思い過ごしだったかもしれないと自分に言い聞かせ
してたような気が⋮⋮︶
︵よくよく考えてみれば、なんだか変だな。確か、金剛と鈴谷ってなんかあった時に口論
16
今の騒動関連だろうけども、金剛なら変なことは訊いてこない筈だ。
﹂
﹁私たちは勝手に書いたけど、大井のはダーリンが書いたネ。それってそういう意味ナ
ノ
﹄ってことだろう。
?
そういうことを訊いてきているのだ。
なんだか自分で考えていて、自分の頭がどれだけおめでたいかとか考えてしまうが、
は大井と結婚したいってことナノ
手に婚姻届を書いたけど、大井の婚姻届にはダーリンが書いたネ。それって、ダーリン
遠回しに直接的な言葉は使わなかったが、直接的な言葉を使うとすれば﹃私たちは勝
金剛は不安そうに訊いてくる。
?
﹂
?
﹂
?
﹁公文書は本人が書かないと無効になるんですよ。というか重罪になります﹂
俺はこれを聞いてなんとなく分かった。武下が何を聞きたかったのか。
﹁自分で書いたネー。なんか悪いことありマシタ
﹁金剛さん。その婚姻届は、紅提督が書いたんじゃ⋮⋮
そんな俺と金剛の会話を聞いていた武下が金剛に尋ねた。
なんだか、どんどん追い込まれているような気がしなくもない。
﹁デモ、ダーリンは自分で書いたネ﹂
﹁いや⋮⋮そういう意味じゃないけど⋮⋮﹂
おめでとう! これで結婚ねっ! その2
17
それを聞いた金剛と鈴谷の目が点になった。
ダーリン、そこ動いちゃダメデスカラ
﹂
そしてその目は自分が持っている婚姻届に向き、スッと後ろを向く。
﹂
﹁新しいの持って来マース
﹁鈴谷もっ
!!
外出する訳ではない。もし外出しようものなら、艦載機が街中を飛び回ることにな
そんなところを中腰になりながら、あるところを目指していた。それは、門だ。
生のようだ。
ている。茂みと表現したが、それは道のすぐ脇だけだ。その奥は綺麗になっている。芝
とりあえず道を歩かずに、道の脇にある茂みの中を歩いている訳だが、結構整備され
本部棟に帰ることはせず、そのまま鎮守府の中を逃げ回ることになった。
ー
ーーー
ーーーーー
出ていき際に、武下に礼を言うのはぬかりない。匿ってもらったからな。
ここにもう隠れて等いられないからだ。
俺はその足で同じように部屋を出て行った。
過ぎ去る台風が如く、とてつもない速度で部屋を飛び出していった2人を見送ると、
!
!!
18
り、大騒ぎになりかねないからだ。
ならなぜ門に向かうのか。それは、鎮守府を囲んでいる塀の一部。門になっていると
ころは、塀の一部が塔みたいになっているのだ。そこはいわゆる、詰所みたいになって
いるのだ。その日のその門の担当である門兵が数人、勤務時間外はそこで休憩してい
る。そこに匿ってもらうのだ。もし、塔に登ってしまえば、艦載機に見つかってしまう。
だから、詰所に入ることにしたのだ。
茂みをいくつも乗り越え、何度も艦娘に見つかりそうになりながらも、俺はやっとの
思いで門に辿り着いた。
軍の補給物資の運び入れに使う門だ。毎日開く門だが、補給部隊と門兵しかそこには
寄り付かないのだ。
﹂
?
﹁間違えましたー。失礼しまーす﹂
置いておく。全艦娘に追われていることには変わりはない。
なんだかんだいって、飛龍との絡みが少なかったような気がしなくもないが、それは
にこやかに笑っている飛龍がいたのだ。
﹁紅提督。いかがされましたか
そう言って俺は詰所の引き戸を開くと、そこには見覚えのある顔があった。
﹁すみません、少し匿って下さい﹂
おめでとう! これで結婚ねっ! その2
19
中には飛
﹄という飛龍の声が聞こえるが、そんなことはどう
とだけ言って、引き戸を閉めて走りだす。
俺の背後では﹃何で逃げるのー
でもいい。
少し離れて茂みに飛び込む。
そんなことを独りで呟いて息を整える。
龍以外居なかったような気が⋮⋮﹂
﹁まさか居るとは思わなかった。というか、門兵さんたち何処行ったんだ
?!
するかによる。艦娘の味方をしていたとしたら、艦娘を呼ばれかねない。
とゴチャゴチャしていて、身体を隠すには丁度いいだろう。だが、妖精がどんな対応を
そんな中、遠くではあるが隠れられる場所を検討する。先ずは工廠だ。あそこは色々
メンズである俺にとって、1人で入るにはかなりの抵抗がある。
ノ。
洋菓子や和菓子を置いているところもあるが、一部だけだ。九割九部はレディースモ
売場の殆どはレディースモノの日用品や衣服しか置いてないからだ。家電製品や家具、
酒保に隠れてもいいが、何というか食料品売場以外には行きづらい。何故なら、他の
多分だが、警備棟から離れて、酒保の近くだろう。多分だが。
今、自分が居る現在地を茂みの向こう側に見える建物で大体と検討を付ける。
?
20
次に地下牢だ。メリットもデメリットも半々の場所だ。長時間の潜伏にはあまり向
かないだろう。さらに、倉庫だ。これは工廠と同じメリットどデメリットがあるため割
愛。最後に艤装だ。埠頭に停泊しているであろう艤装に入り込み、どこかに隠れればい
いだろう。これは工廠と倉庫と同じメリットどデメリットがあるが、数が多い分、当た
りがあるかもしれない。
俺は一度工廠に行った後、埠頭にある艤装に隠れようと決め、動き出す。
だが、現実はそんなに甘くなかった。
のであった。
もうこれで完全に動きを止められてしまった俺は、そのままドナドナされてしまった
久々に﹃ぽい﹄と言ってる夕立が既に、俺の脇腹に腕を回してホールドしているのだ。
﹁逃がさないっぽい﹂
だが、時既に遅し。
心臓が飛び出る思いをして、すぐに逃げ出す。
ボサボサになったことで、とんでもなく怖い少女になってしまった時雨を見て、俺は
てしまったのだ。
物音を立てたことで、近くを通りかかった髪がボサボサになっている時雨に見つかっ
﹁みぃ∼つけたぁ∼﹂
おめでとう! これで結婚ねっ! その2
21
ーーーーー
ーーー
ー
俺が夕立と時雨にドナドナされた先は食堂だった。
﹂
そこには全艦娘が集結しており、無理やり椅子に座らされた。
﹁ぜ、全員集まってるのか
﹁構わんぞ﹂
﹁あ、あぁ。⋮⋮何が始まるか分かるが、その前にひとつ訊いてもいいか
﹂
そう言って夕立は俺にペンと印鑑を手渡してきた。印鑑は勿論俺のものだ。
﹁はい﹂
ていた。布でされているが、なんだかこの光景を前に見た気がする。
なぜだか俺の横で同じく座らされてる艦娘がいるのだ。両腕を縛られ、猿ぐつわされ
それよりも気になることがある。
うか、アレ以外にこうなった理由はないだろう。
どういう理由があって置いたか知らないが、とてつもなく嫌な予感しかしない。とい
時雨はそう言って俺の目の前に机を置いた。
﹁そうだね﹂
?
?
22
﹂
長門がそう言ったので、俺は訊いてみる。
﹁何故、大井も
﹂
座っていて見えないが、座る前には全艦娘が居る様子だったし。
うか。
というかこの状況を見ると、俺って全艦娘に言い寄られてるということになるのだろ
り端折ったが、そんな理由だ。
さらっとそんなことを言う。つまり、俺が勢いで婚姻届を書いたからだそうだ。かな
﹁あぁ。⋮⋮それはだな、自分だけ正式に書いてもらったからだな﹂
?
それを何故、付き合うとかをすっ飛ばして結婚なのだろうか。
見せれる程良いとも思ってない。性格も変に曲がっているだろう。
はなんだが、顔だって良いわけではない。身長は高いと自負しているが、体格は人様に
それに、こんな風に好意を寄せられるようなことをしてきただろうか。自分で言って
そもそもなぜこんな状況に陥ってしまったのか、見に覚えが全く無いのだ。
それを見て俺は少し考える。
そういった長門と陸奥が俺の両脇に立ち、目の前に婚姻届を置いた。
﹁私たちのも勿論書いてくれるわよね
?
﹁さて、紅﹂
おめでとう! これで結婚ねっ! その2
23
﹁ちょっと待て。皆はそれで本当に良いのか
﹁何が
﹂
そんな艦娘たちに俺はそう問いかけた。
﹂
俺が見える範囲でもかなりの艦娘が婚姻届を握り締めて待っていた。
?
﹂
?
﹁そもそも法律がだな﹂
翔鶴に言い切る前に防がれた。
﹁新瑞さんからGOサインは出ていますよ﹂
﹁そ、そうだ。⋮⋮大本営には﹂
そんな光景に俺は焦りを感じ始め、どうにか止めさせれないかと考える。
そう訊くと、一斉に皆が頷く。
﹁他の皆もか
しながら俺は答えた。
ニコッと笑う足柄に﹃なんじゃそりゃ﹄と内心思いつつ、少しドキッとしたことを隠
﹁貴方じゃないと嫌よ。私は﹂
端的に短く訊くと、考える間もなく返答が返ってくる。
﹁結婚相手が俺で﹂
足柄が聞き返してきた。
?
24
﹁私たちは人間じゃないわよ。艦娘。それに、横須賀鎮守府は治外法権内でやりたい放
題じゃない﹂
今度は伊勢に防がれた。しかもこのことは警備棟の中で俺は考えていたことだった。
否、ただの時間稼ぎだ。そういうことにしておこう。
﹁第一だな、俺が良しと言うと﹂
﹁言わないんですかぁ⋮⋮司令官さんっ⋮⋮﹂
半泣きの羽黒に防がれた。
﹁どうした
紅。私と結婚するか
﹂
?
﹁あら
紅と結婚するのは私よ
?
﹂
そんな刹那、陸奥も口を開くが俺に対してじゃない。
どうしてそうなるんだと内心思いつつも、何も言わない。
?
もう抵抗するだけの術も失い、俺は黙ってしまう。
この後も抵抗を続けるものの、ことごとく跳ね返されてしまった。
今度は神通に防がれた。
然普通なんですが⋮⋮﹂
﹁事ある毎に艦載機が飛び交い、砲に砲弾が装填されているものを持ち歩いていても全
﹁というかモラルがだな﹂
おめでとう! これで結婚ねっ! その2
25
?
そう。陸奥が長門に突っかかったのだ。
﹂
たみたいだ。
!
﹁あなたっ
﹂
せられるだけだが。
けてもし、長門たちにバレたらどうなるか分かったもんじゃない。といっても、結婚さ
だが、俺は迷っていた。普段なら2つ返事で助けるんだが、状況が状況だ。ここで助
モゴモゴ言いながらそんなことを俺に言ってくる。
﹁助けて下さいっ
﹂
猿ぐつわ唾液で濡れてきたのか、体積が小さくなって辛うじて声が出せるようになっ
だったのでそのまま立ち去ろうとすると、コチラを大井が見ていた。
その状況をしめたと思い、俺は椅子から静かに立ち上がる。そして背中側はがら空き
言うが、俺と結婚できるのは1人までらしい。
だ。勿論、誰が俺と結婚するかについて。どうやら、治外法権云々、俺が法律云々とは
一度、食堂を逃げ出した時の比ではない。全艦娘︵大井を除く︶が口論をしているの
そんな光景をほんの少しだけ見ていたら、食堂は大混乱に陥っていった。
突っかかった陸奥に対抗してか、長門もそれに抗う。
﹁私とだ
!
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!
おめでとう! これで結婚ねっ! その2
27
普段は﹃提督﹄って呼んでいたと思うんだが、まぁ回りの感化を受けただけだろう。そ
う決めつける。
だが、本当に解放してしまっても良いのだろうかと考えてしまう。
心の中であることを考えていた。
ここで大井を助けずに逃げたら、艦娘はまた俺を見失う。今度は朝とは違い、隠れる
検討もちゃんとつけているので、段取り良く逃げ回れる自信があるのだ。
大井を助けたとして、逃げ出したらそれだけタイムロスになってしまう。より短い時
間で、目星をつけた避難場所に入らなければならなくなってしまう。
だったら大井を置いて逃げた方がいい。そう考えたのだが、一方で俺の良心が働いた
のだ。
こんな状況でなければ、俺は迷わず大井を助けていただろう。
こんな風に足を止めている時点でタイムロスをしていることに気付き、俺はやけくそ
になって大井を解放することにした。というのは建前で、良心が勝ったのだ。
大井の猿ぐつわを外し、縄を解いて足音を立てずに小走りで食堂から出て行く。
それには大井も付いてきていた。多分、また捕まってしまうからだろう。
食堂の入り口から中を見ると、まだ艦娘たちは口論をしていた。俺が椅子から立った
ことに気がついていないみたいだ。
しめたと思い、そのまま俺は廊下を走って棟を移り、階段を駆け上がって執務室に飛
び込んだ。
とりあえず、ここに逃げ込んだのだ。それにもし、接近してきたとしても隠し扉に入
れば分からないだろうと踏んでいたのだ。
肩で息をして、少し出ていた額の汗をハンカチで拭って姿勢を戻すと、さっきまで猿
次ぐつわをしていた艦娘が俺の目の前に居た。
ちなみに、俺よりも体力の回復は遅い模様。
﹁はぁ⋮⋮はぁ⋮⋮﹂
追いかけてきたのかっ
﹂
そんな艦娘、大井に俺は声をかける。
﹁え〟っ
﹁はぁ⋮⋮もち、ろんですっ⋮⋮﹂
?!
そんな大井から視線を外して、俺はこれからどうしようかと考え始めたのだった。
だったからだ。この先は言わない。
何というか、目に毒だったのだ。髪が汗で少し張り付いていたのと、姿勢が前のめり
そんな風に答える大井に少しだけドキッとしたが、俺はすぐに視線を外した。
?!
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