シリーズ! 活躍する2016年度国際活動奨励賞受賞者 その1 - ITU-AJ

この人
・あの時
会合報告
シリーズ! 活躍する2016年度国際活動奨励賞受賞者 その1
あがた
あきら
縣 亮
KDDI株式会社 オプティカルネットワーク部 マネージャ
http://www.kddi.com
ITU-Tでの基地局収容向け次世代光アクセス方式の基礎となるホワイトペーパー策定において、 日本の方針を
反映させるだけでなく、 エディタとして策定作業に寄与するなど活動の中心的役割を果たした。
基地局収容向け次世代光アクセス方式の基礎となるホワイトペーパーの策定(FSAN)
この度は、日本ITU協会賞国際活動奨励賞 功績賞分野
地局を収容する光アクセス回線の必要帯域は従来と比べ約
という栄誉ある賞を頂き、誠に光栄に存じます。日本ITU
16倍にもなるため、既存の光アクセス方式では対応できな
協会ならびに関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。
いという課題がありました。
私は、
“将来光アクセス”の技術議論を行っている国際
このような背景を基に、基地局収容向け次世代光アクセ
業界団体FSAN(Full Service Access Networks)
に2014年
ス方式の検討とホワイトペーパーの策定作業が2014年に
5月から参加し、基地局収容向け次世代光アクセス方式の
FSANで開始されました。現在、2016年中の策定完了に向
基礎となるホワイトペーパー策定に携わって参りました。
けてホワイトペーパーの最終化が進められています。私は、
FSANは、ITU-T Study Group 15(SG15)において次世
この検討の開始当初より審議に参加し、日本の国内環境に
代光アクセスシステムの国際標準化を進めている Question 2
適した光信号波長帯や光ファイバ網構成を考慮することな
(Q2)と密接な関係がある団体です。
近年、スマートフォンや多機能端末の急速な普及により、
モバイルデータトラフィックが 爆 発的に増加しています。
どを提案し、ホワイトペーパーに反映させるだけでなく、エ
ディタとして策定作業に寄与して参りました。
ホワイトペーパーの策定作業で最も苦労したのは、O-band
CISCOによる最新の予測では、モバイルデータトラフィック
の光信号波長帯の扱いでした。参加各社からは、O-band
は2015年から2020年にかけて、年平均の増加率にして53%
波長帯を既に他の光アクセスサービスで使用済みのため
(当該5年間で約8倍)の速度で増加すると見込まれておりま
次世代光アクセス方式では当該波長帯を避けたいという
す。特に人口密集地域において急増するモバイルデータトラ
意見や、高速光信号の安定した伝送や光部品の低コスト
フィックを収容するには、多数の基地局を高密度で設置す
化が期待できる同波長帯を使いたいとの意見などがあり、
る必要がありますが、その際、基地局間での電波干渉によ
どのように意見を集約しドラフトに整理するかが問題とな
る無線品質の低下をいかに防ぐかが大きな課題となります。
りました。最終的には、ホワイトペーパー上で、次世代光
この課題の有効な解決策として、多数の基地局を集中制
アクセス方式を新規に展開する場合と、同一光ファイバ網
御し協調 動 作させる、C-RAN(Centralized Radio Access
上において既存方式に共存させる形で展開する場合とを
Network)と呼ばれる基地局網構成があります。これまで
分けて記述し、それぞれのケースに適した光信号波長帯
の基地局網構成は、それぞれの基地局が独立に動作して
を記述することで各社からの合意を取り付けることができ
いたため、基地局間での電波干渉が課題でした。これに
ました。
対して、C-RAN構成では複数の基地局を集中制御し協調
ホワイトペーパーの策定は2016年中に完了する予定です。
動作させることで、基地局間の干渉を抑制します。これに
今後は、これを基にITU-Tでの標準化を進め、最終的に
より、3GPPで標準仕様化されたLTE-Advancedの干渉制
は人々のコミュニケーション手段の発展に役立てることが
御機能などを最大限に活用でき、端末の無線通信品質を
重要です。そのために、国際会議や研究会等での講演発
大幅に向上させることができます。
表や、IEEEのNGFI(Next Generation Fronthaul Interface)
その反面、C-RAN構成ではADC(Analog-to-Digital
などの関連する標準化団体参加者との意見交換を進めて参
Converter)にてデジタル化された無線信号波形そのもの
りました。今回の受賞を励みに、今後も世の中の情報通信
を各基地局と集中制御局の間で伝送する必要があり、基
手段の発展に取り組んで参りたいと思います。
58
ITUジャーナル Vol. 46 No. 8(2016, 8)
あら い
けん じ ろう
荒井 健二郎
日本電信電話株式会社 ネットワークサービスシステム研究所 研究主任
http://www.ntt.co.jp/inlab/org/ns.html
IMSにおける呼制御方式の3GPP/ TTC標準化に貢献。 国際活動として3GPP/ IETFに参画し、 3GPPで
は事業者網間の網間インタフェース仕様の新規フレームワーク(事業者間協議項目の一覧化等)の仕様化を
提案し、 議論を主導した。 2013年からは、 3GPP CT WG3の副議長を務め国際標準化の議論を主導すると
ともに、 3GPP標準を基にした移動網・固定網共通の国内相互接続標準の策定を実現した。
IMS標準化の取組みと今後に向けて
この度は、日本ITU協会賞 国際活動奨励賞という名誉
3GPP参加当初は、標準化会合における仕様化の進め方、
な賞を頂き、誠に光栄に存じます。日本ITU協会並びに関
合意形成の方法が分からず、社内外・国内外の諸先輩方
係者の皆様に御礼申し上げます。
からご指導をいただきながら、何とか新規ワークアイテム及
私は、PSTNマイグレーションを実現する上で必須となる
びIP網間インタフェースの詳細仕様の提案・策定を行って
国際・国内事業者間のIP網間インタフェースの標準仕様策
おりました。初めて3GPPに参加した時は、各社からの参
定のため、2 010年度 から3GPP(The 3rd Generation
加者の技術・標準仕様に関する知識の広さに驚かされ、十
Partnership Project)CT WG3(以下CT3)及びTTC 信
分に他社の代表と議論し合えるように、IMS装置の技術要
号制御専門委員会への参加を開始し、2013年度より3GPP
素となるIETFのRFCを何本も読み、その後3GPP仕様で
CT3の副議長を、2014年度よりTTC 信号制御専門委員会
の使い方を把握する、という訓練に悪戦苦闘していたこと
配下のSIP SWGのリーダを務めております。
が非常に印象的です。
3GPP CTでは、
SAで検討されるサービス・アーキテクチャ
2010年度からの活動を経て、2013年に商用ベースの相互接
仕様をベースにプロトコルレベルの実装方式(Stage3)の
続仕様として十分と考えられるレベルまでIP網間インタフェース
標準仕様化の検討が行われ、最も重要な検討項目の一つ
の3GPP標準仕様を仕上げ、同年国内でも移動網・固定網共
に音声を中心とした各種マルチメディア通信の提供基盤と
通の相互接続仕様としてTTC標準を策定しております。
なるIMS(IP Multimedia Subsystem)の検討があります。
現在、3GPP CTではVoLTEローミング方式の標準化や
CT3ではIMSの検討のうち、異事業者間のIMS相互接続
各種IMSの改善・拡張が進められており、国内(TTC)で
仕様、IMS-PSTNインタワーク仕様等、異なる事業者・異
はPSTNマイグレーションに向けた標準化検討が本格化し
なるプロトコルをサポートする網を接続するための標準仕様
ようとしています。今後も、国際・国内双方のIMS関連標
について議論を行っています。
準化の推進に向けて貢献して参る所存です。
■写真.3GPP CT WG3会議にて
ITUジャーナル Vol. 46 No. 8(2016, 8)
59