特集 ハイブリッド対応が進む運用監視 Part 3 [注目のツール] Integrated Viewer for Zabbix ジョブ管理ツールとの連携を追加 Zabbix の可能性をさらに拡大 統合運用監視ツール「Integrated Viewer for Zabbix」は、IBM i 向け運用管理ツールで実績のあるヴィンクスが事業領域を拡大するため に投入した戦略的な製品。オープンソースの監視ツール Zabbix をベースに「より使いやすく、より見やすく」拡張し、さらに、Zabbix には ない機能の追加も続けている。 「当社はそれまで IBM i にフォーカスして製品展開してきま デスクトップ版または Web 版を 運用に合わせて選択可能 したが、事業領域をオープン系に広げるにあたり、コアにな るツールとして着目したのが Zabbix でした。Zabbix は、IVZ 「Integrated Viewer for Zabbix」 (以下、IVZ)は、オープ の開発に着手した 2014 年当時、既にデファクトと言える普及 ンソースの監視ツール「Zabbix」に、ヴィンクスが独自の統 率を誇り、機能面でも最も優れたものを備えていました。そ 合ビューアと監視機能を追加して開発した統合運用監視ツー うした Zabbix に、当社が Hybrid シリーズで培ったノウハウ ルである。 を追加すれば市場をリードする製品になし得ると考え、開発 ヴィンクスと言えば、 IBM i用の統合運用管理ツール 「Hybrid したのが IVZ です」 シリーズ」で IBM i 市場においてはよく知られたソフトウェ IVZ の特徴は、 (1)統合ビューアとしての視認性の高さと ア・ベンダーである。その同社がIVZを手がけた経緯について、 使いやすさ、 (2)使用中の商用運用管理ツール環境との共存・ 運用プロダクト部の冨田育弘部長は次のように説明する。 連携、 (3)独自のエージェントレス監視機能などの機能性の 図表 1 Integrated Viewer for Zabbix 概要 ●機能拡張・ハイライト ●Integrated Viewer for Zabbix 構成 ●連携(オプション) 2014 年 12 月 v1.1 統合監視ビューア 独自監視機能 ・初リリース ・統合監視機能 ・障害検知・通知機能 ・IBM i 監視機能 ジョブ管理「LoadStar Scheduler」 (ソフトバンク) インシデント管理「Redmine」 (オープンソース) 2015 年 8 月 v1.2 Zabbix サーバー ・マップビュー機能 ・グラフ表示機能 ・IBM i への応答機能 ・WMI 監視機能 ・JP1 連携機能 ・SystemWalker 連携機能 セキュリティ監視「ALog ConVerter」 (網屋) IVZ アプライアンス(Power Linux に搭載)日本 IBM と協業 2016 年 3 月 v1.3 ・Web 監視機能 ・ユーザー別表示メニュ制御機能 ・SSH 監視機能 ・WMI 監視機能の拡張 ・Redmine 連携機能 ・・・・・・・・ ・LoadStar Scheduler 連携機能 ・IVZ アプライアンス 60 2016 No.11 統合運用管理ツール連携(JP1、SystemWalker) エージェント あり エージェント なし 監視対象 SNMP Part 3[注目のサービス]Integrated Viewer for Zabbix 画面 1 Zabbixの「マップ」画面 画面 2 高さ、 (4) マルチ OS 環境を監視対象にできるハイブリッド性、 (5)オープンソース・ベースならではの導入・運用コストの IVZのマップビュー画面 けなのに対して(画面 1) 、マップビューではアイコンを動的 に点滅させる仕様である。また、 「マップ」が地図とその上 低さ、とまとめることができる。 また、導入メリットとして、統合性が高く、運 用に合わせてデスクトップ版・Web 版のいずれか 画面 3 マップビュー画面の展開(画面 2 の詳細) 画面 4 イベント監視画面 を選択できるビューアであるため一元的な運用監 視が可能、運用監視の自動化が図れる、自由に設 定・変更できるのでニーズに合ったきめ細かな監 視が行える、監視対象が増えても運用コストは変 わらない、などを、ヴィンクスは挙げている。 Zabbixを「より使いやすく、 より見やすくする」独自の拡張 ここからは、最近追加された機能を中心に、上 記の特徴を見ていこう。 IVZ は 2014 年 12 月にリリースされ(v1.1) 、 現在、 v1.3 にバージョンアップされている(図表 1) 。こ の 1 年半の間に機能拡張されてきたのは、Zabbix にアドオンした統合ビューアと独自の監視機能の 部分である。 IVZ が 提 供 する監 視 機 能(図表 2)の大 半は Zabbix のそれだが、IVZ が Zabbix と異なるのは 「Zabbix がより使いやすく、より見やすくなるよ うビューアと独自機能の拡張を重ね、日本の運用 に合う仕様にしている点」と、運用プロダクト部 第 3 課の赤松正浩課長は強調する。 たとえば、 v1.2 で追加し v1.3 でも拡張した「マッ プビュー」は、Zabbix の「マップ」に近い機能 だが、監視対象で異常が発生した場合、 「マップ」 ではアイコンを円で囲んでハイライト表示するだ http://www.ismagazine.jp/ 61 特集 ハイブリッド対応が進む運用監視 の監視対象のイベント表示を別々の画面に分けているのに対 ユーザー別表示メニュー制御機能は、ユーザーグループご し、マップビューでは同一画面上に上下に分けて表示するこ とに閲覧可能なメニューを制御する機能で、Zabbix のユー とも可能である(画面 2) 。さらに、マップビューは階層構造 ザー認証を拡張したものである(画面 6) 。IVZ にログインす を定義可能で、 監視対象の詳細画面への遷移もできる(画面 3。 ると、ユーザーには許可されたメニューしか表示されず、不 マップビューのないイベント監視画面は画面 4) 。この遷移は 要な情報にアクセスすることができない。 「お客様から強い要 何段階でも自由に定義でき、また遷移先のマップビュー上で 望のあった機能で、管理者とオペレータを分けたり、データ アイコンをダブルクリックすることで、下段のイベント欄の センター側と利用者を分けるなどのオペレーションが可能に 情報の絞り込みも行える。 なります。ユーザーグループの種類は自由に定義・設定でき このように IVZ は、Zabbix を「より使いやすく、より見や ます」 (運用プロダクト部第 3 課の山下直人氏) すくする」機能を追加している。そうした“便利機能”を数 え上げていくとキリがないので、以下、3 つの機能を紹介する。 グラフ表示機能は、収集した監視データをグラフィカルに 表示する機能で、Zabbix にも搭載されているが、IVZ では、 データの表示範囲(期間)を指定する機能や、対象機器やグ Zabbixを超えるWMI 監視機能や Redmine 連携機能を追加 ラフの種類を選択できるインターフェースが備わっている。 ここまで、IVZ の使いやすさ、見やすさについて紹介して このほか、印刷や PDF 出力の機能もある(画面 5) 。これら きた。しかしIVZの歩みを見ると、 Zabbixを 「より使いやすく、 は Zabbix にはないものだ。 より見やすくする」機能だけではなく、Zabbix を超える機能 Web 監視表示機能は、指定 URL への応答時間やダウンロー の追加もある。v1.1 のハイライトと言える「IBM i 監視機能」 ド時間などを測定する Web 監視の状態を表示する画面だが、 はまさにそれで、Zabbix にはない、IBM i を監視対象にでき IVZ ではステータスで絞り込むなど、より使いやすくする機 る「世界初」の機能である(ヴィンクスの IBM i 版 Zabbix エー 能を拡張している。 ジェントによる) 。また、IBM i に関しては v1.2 で「応答機 能」も追加された。IBM i のイベント情報の表示 だけでなく、異常メッセージに対して応答値を返 画面 5 グラフ画面(デスクトップ版) し IBM i をコントロールできる機能でもある。こ れなど「監視」を超える、 「IVZ をオペレーション コンソールに変える」 (運用プロダクト部第 3 課の 山口 龍太氏)機能である。 このほか、Windows の CPU・メモリ・ディスク などのリソースをエージェントレスで監視できる 「WMI 監視機能」 、Linux でもエージェントレスで 同様の機能を提供する「SSH 監視機能」の追加・ 拡張がある。 「監視対象サーバーへのエージェン トのインストールが不要なので、監視の柔軟性や 自由度を大きく広げる機能です」と山口氏は話す。 v1.3 以降の拡張として注目されるのは、外部の ツール/サービスとの連携と外部リソースや環境 画面 6 表示メニュー設定画面 への対応である。 オ ー プ ン ソ ー ス の プ ロ ジ ェ クト 管 理 ツ ー ル 「Redmine」との連携では、障害のインシデント をチケットとして発行し、その対応・承認などの フローを Redmine 上で管理できるようにした。 ま た、 ア ク セ ス ロ グ 管 理 ツ ー ル「ALog ConVerter」への対応では、同ツールが収集する ファイルアクセスログやログオンログなどのセ 62 2016 No.11 Part 3[注目のサービス]Integrated Viewer for Zabbix キュリティ情報の監視により、イ ベント情報との一元的な監視が可 能になった。障害監視とセキュリ ティ監視は別々に行われることが 多いので、利便性の高い対応と言 える。 さらに、パブリッククラウドへ 冨田 育弘氏 赤松 正浩氏 山下 直人氏 山口 龍太氏 の対応も新しい動きである。既に 株式会社ヴィンクス アウトソーシング事業部 運用プロダクト部 部長 株式会社ヴィンクス アウトソーシング事業部 運用プロダクト部 第 3 課 課長 株式会社ヴィンクス アウトソーシング事業部 運用プロダクト部 第3課 株式会社ヴィンクス アウトソーシング事業部 運用プロダクト部 第3課 AWS、Azure、SoftLayer 上 で の 稼働検証を終え、いつでも利用で きる環境にある。ユーザーは IVZ を購入してクラウド上に配置し、クラウドからオンプレミス ンクでは挙げている。監視とジョブ管理の連携により、運用 を監視したり、クラウド上のシステムを監視することが可能 管理の自動化と高度化がさらに前進することになる。 である。 ヴィンクスでは、この IVZ と LoadStar Scheduler の連携ソ また、 「Amazon CloudWatch」の API を用いて、AWS 上 リューションを、パートナーのインフォコムと共同で、6 月 のシステム全体のリソース情報やアプリケーションパフォー に開催される「Interop Tokyo 2016」 (6 月 8 日~ 10 日)で展 マンスなどの情報を収集・蓄積し、 「システム管理者レポート」 示する予定。併せて IVZ を Power Linux に搭載した「IVZ ア を生成する機能を今後、開発・リリースする予定という。 プライアンス」も参考出品するという。IVZ の「より使いや すく、より見やすくする」が広がっている。 直近のハイライトは LoadStar Schedulerとの連携 外部ツールへの対応では、ソフトバンクのジョブ管理ツー 本記事は IS magazine No.11 掲載の記事を再編集した特別版です。 ル「LoadStar Scheduler」との連 携が直近での大きなハイライトで ある。 図表 2 LoadStar Scheduler は、旧ソフ エージェントレス監視 トバンクテレコム(現ソフトバン PING 監視 死活、応答時間、ロス率の監視 サービスポート(TCP)監視 TCP ポートからの応答・応答時間の監視 Web 監視 指定 URL への応答時間・ダウンロード時間など SNMP ポーリング監視 応答時間監視、送受信トラフィックの監視など SNMP トラップ監視 トラップ監視 IPMI 監視 IPMI 監視 WMI 監視 Windows の CPU・メモリ・ディスク使用率 ク)が、 従来使用してきた商用ジョ ブ管理ツールの運用コストが高 額であったため、そのリプレース 用として自社開発したジョブ管理 ツールで、ソフトバンクのグルー プ会社において 3 年間の利用実績 IVZの主な監視項目 エージェントレス監視 プロセス監視 サーバーのプロセス/サービスの稼働状態 サービスポート(TCP)監視 TCP ポートの応答有無、応答時間 CPU 使用率/ロードアベレージ監視 サーバー CPU /コアごとの使用率、CPU ロードアベレージ メモリ使用率監視 メモリ使用率・使用量・アラーム通知 スワップメモリ監視 スワップメモリの使用有無、使用率 性、ジョブの状態を直感的に把握 ファイルシステム監視 ファイル数の増減、使用済みディスク容量、ディスク未使用率など できる管理機能、商用ジョブ管理 システムログ監視 Windows、Linux、UNIX のログファイル イベントログ監視 Windows のイベントログ収集 ネットワーク I/O 監視 サーバーの送受信の情報量(NIC 経由) ディスク I/O 監視 ディスクへの read / write 回数、バイト数による監視 DNS 監視 サーバーの DNS による名前解決 パフォーマンスカウンタ監視 Windows のパフォーマンスカウンタ監視 がある。 特徴としては、ユーザー目線で 使いやすさを追求した GUI と操作 ツールからの移行を前提とした設 計、サーバーの OS や CPU コア数 に依存しない一律価格のコストパ フォーマンスのよさ、をソフトバ http://www.ismagazine.jp/ 63
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