混迷初期段階プロットの短編 劇鼠らてこ ︻注意事項︼ このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にP DF化したものです。 小説の作者、 ﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作 品を引用の範囲を超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁 じます。 ︻あらすじ︼ 同作者﹃混迷を呼ぶ者﹄の、アイデアだけは出たけど物にしなかっ た短編です。 やらなかった理由としては、 1.話が膨らまない。 2.辻褄が合わない。 3.強すぎて作品の雰囲気を壊しかねない。 4.おもしろくない。 の4つの内どれかに当てはまったものとなります。 1つ2000字前後の本当に短編です。 プロット1﹃覆う蝗害の王﹄ │││││││││││││││ 1 目 次 プロット2﹃最後の特異点﹄ │││││││││││││││ 6 プロット1﹃覆う蝗害の王﹄ ルシフィル アバドン神属感応種。 鮮血のような体色と、目で追えぬほどの速力はまさに絶望。 感応能力により超広範囲の同属へと干渉し、支配下に置く。 更に 活性化時は単一のオラクル細胞から同属を産み落とす荒業をやって のける。 一気に戦場を覆い尽くすその群れは、蝗害の王に相応しい。 サマエル同様、レーダー等に移らない特性を持ち、速力までもが大 幅に上がっている。 ただの体当たりですら死を覚悟する脅威とな る。 攻撃属性 不明 弱点属性 不明 この世界は、至る所にオラクル細胞が眠っている。 建造物の中。 地 面 の 中。 大 気 中 に も そ れ は 漂 っ て い る。 そ れ は ア ラ ガ ミ が 倒される事で周囲に拡散するからであり、新たなコアが生成されるま では存在し続ける。 そのオラクル細胞を知覚し、まるで幼子が粘土を握りかためる様 に、球状に凝固させる。 ﹁ピキィ⋮⋮﹂ 球は、もっとも効率のいい形だ。 しかし、自力で動く事が出来な 1 い。 己の身で完結しているからだ。 なので、舵のためのヒレと推 進力のための尾びれをつけてやる。 ﹁ピキィ⋮⋮﹂ 拡 散 し た ア ラ ガ ミ の 種 類 な ど に 拘 ら な い。 神 機 使 い の 奴 ら が 屠って行った、ありとあらゆるアラガミのオラクル細胞を凝縮し、圧 縮する。 感応波を広げる。 1km、2km、10km、100km。 広げていく感応波でオラクル細胞に干渉し、さらに球を創り上げ る。 ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ 地 面 か ら 湧 き 出 る よ う に。 建 造 物 か ら 生 れ 落 ち る よ う に。 大 気から滲み出すように。 ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂﹁ピキィ⋮⋮﹂﹁ピキィ⋮⋮﹂ この世界のあらゆるオラクル細胞を固めていく。 ﹁ピキィ⋮⋮﹂ 最初からこの世界に生きていた物は、その身に干渉して支配下に置 く。 今まさに晶出しようとしていた物は、そのコアを乗っ取って支配下 に置く。 コアを中心に形成されようとしているアラガミから、そのオラクル 細胞を掠め取る。 ﹁ピキィ⋮⋮﹂﹁ピキィ⋮⋮﹂﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂﹁ピキィ⋮⋮﹂﹁ピキィ⋮⋮﹂ オラクル細胞を掠め取られた、ナニカになるはずだったコアはその 身を保てなくなり、結合が甘くなる。 それすらをもこちらの支配下 に置く。 傷つき、捕食による回復を求めているアラガミもそうだ。 結合崩 壊を起こしている箇所からオラクル細胞を掠め取る。 抵抗は無意 2 味。 アラガミが真白の粒子となって一点に集中する。 そこから、 新たな球が生まれる。 ﹁ピキィ⋮⋮﹂﹁ピキィ⋮⋮﹂﹁ピキィ⋮⋮﹂﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂﹁ピキィ⋮⋮﹂﹁ピキィ⋮⋮﹂﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂﹁ピキィ⋮⋮﹂﹁ピキィ⋮⋮﹂﹁ピキィ⋮⋮﹂ ニンゲンの造りだしたオラクル細胞による構造物も逃れられない。 ニンゲンの造りだした物に綻びが無い物は存在しない。 その綻 びから、オラクル細胞を奪っていく。 ﹁ピキィ⋮⋮﹂ 戦場に出ていた神機使いの神機からオラクル細胞を奪い取る。 神機使い自身からも、オラクルポイントとその身に流れるオラクル細 胞を奪い取る。 急激に低下した神機使いのオラクル細胞は、その偏 食傾向を失い神機からの侵食を受ける。 その結合と結合の合間へとさらに干渉し、肉を食い破った後のオラ クル細胞から抽出していく。 後には何も残らない。 ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ 空は既に赤黒い球で埋まっている。 まるで天候のようなそれは、 大きく波打っては戻るを繰りかえす。 地上で生まれた球がその群 れに飛び込むたび、追いやられた球が行き場を求めて移動するのだ。 それが伝播し、まるで波紋のような光景を創る。 感応波を更に深くする。 地中の深部に眠るオラクル細胞を引っ 張り出し、凝固する。 既 に 周 囲 1 0 0 k m に オ ラ ク ル 細 胞 は 存 在 し な い。 だ が、ま だ だ。 足りない。 更に広げる。 1000km、10000km、100000km。 3 この星が球状であるために、思うような効率を得られない。 なら ば、感応波の形を変えればいい。 球を包み込むように、ドームのような形へと変形させる。 ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ あ ぁ、そ う だ。 頭 上 に は 確 か 巨 大 な オ ラ ク ル 細 胞 の 塊 が あ っ た じゃないか。 ドームの頂点を上へ上へと伸ばしていく。 流石に遠い。 だが、 過去にソレが通ったであろう宇宙空間にもオラクル細胞が存在した ので、それを回収する。 赤い雲を見つけた。 自浄作用たるコイツだが、雨を降らせていないあたり地球から差し 出しにきたと見るべきだろう。 オラクル細胞の塊とも言えるこの雲から、更にそれを貰い受ける。 赤い雲を凝固した球が赤くなったが、些細な違いだろう。 むしろ より強固になったように感じる。 ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ ﹁ピキィ⋮⋮﹂ 頭上に届いた。 何やら一瞬抵抗の意思を感じたが、関係ない。 綻びの無いアレだ けは掠め取る事が出来ないが、覆うように存在する緑膜を奪い取る。 4 さぁ、そろそろ地球を全て覆い終える。 大気中の球は幾層にも重なり、最早陽光すら視認できはしない。 ゆらりと己を地に落とす。 追従する、数多の球││アバドン。 さぁ。 ﹁キィ⋮⋮﹂ 5 プロット2﹃最後の特異点﹄ ﹃偏食場の乱れを確認﹄ ﹃あの時と同じ⋮⋮終末捕食特有の偏食場パルスです ﹄ に干渉しているのだ。 終末捕食、きま││﹄ ﹄ ! ﹃偏食場の発生源が2つ ﹄ ! 音が消える。 いや、余りにも膨大なエネルギーが、音エネルギー ﹃ブラッド下がって ﹃偏食場、更に変動⋮⋮﹄ い。 命を預かっている分こちらのほうが緊張の度合いは高いかもしれな それはオペレーターのフランたちも同じだ。 むしろ、ブラッドの 状況の把握に努める。 一瞬の油断も許されない状況。 ブラッド達は、五感を全開にして ! 偏食場の発生源が、上空にもう1つ だめ 確認が間 終末捕食来ます ! ﹃なっ に合いません ! ﹂ ﹂ ﹂ 上から押しつぶすような終末捕食が発生する。 ﹁く、う⋮⋮ ﹁な、何が起こってるのー ﹁チッ⋮⋮おい、隊長、上だ !? い。 ﹄ ! !? ルシフィルです でも、なんで⋮⋮ ﹄ ! ﹃あれは⋮⋮アラガミ ﹃アバドン神属感応種 ! 3つの終末捕食の鬩ぎ合い。 しかし、上空のそれの力が異常に強 ! !? 6 ! ジュリウスの起こす終末捕食と、ユノの起こす終末捕食。 それを ! !? ﹃ッ 気象観測班より入電 ⋮⋮なに、これ﹄ ﹃フライアが⋮⋮黒い竜巻で覆われている⋮⋮ ・・・・・・ ﹄ 偏食場パルス弱まっています ﹃ブラッド側 そこで動く者がいた。 ﹁ゼッタイに、終わらせないよー ﹂ ! でも、このままじゃ ナナさんの感応波の上昇を確認 入り、﹃誘引﹄を発動させる。 ﹃ ﹄ ちらへ引き寄せられています ﹃ナナさん ﹄ ! ! 集中する。 ﹁たはは⋮⋮私、みんなの役に立てたかな ﹂ うぉらぁぁあああ ! ? る。 今まさにナナが飲み込まれようという処で、ギルバートが助けに入 ﹁馬鹿いってんじゃねえ ﹂ 世界を拓く者や背後の繭から溢れ出た、終末捕食の触腕も、ナナに だが、﹃誘引﹄されるのはルシフィルだけではない。 し合った。 必然とジュリウスの終末捕食とルシフィルの終末捕食が大きく干渉 ジュリウスの終末捕食内にいる彼女に引っ張られているのだから、 ルが動けば、偏食場パルスと終末捕食も連動して動く。 彼女の﹃誘引﹄が、ルシフィルを引っ張っているのだ。 ルシフィ 上空の偏食場パルスが、そ 香月ナナだ。 彼女は、あろうことかジュリウス側の終末捕食内に ﹁おい、ナナ ﹂ ﹃人の時代が⋮⋮終わってしまうのか﹄ ! !? ﹄ 次第にその範囲が狭まっていく。 緩やかに。 だが、如実に。 捕食。 3つの終末捕食の内、もっとも弱いのはブラッド側。 ユノの終末 ヒバリが呆けている間にも、事態は動いている。 ! ? ! 7 ! ! ! ! ! ﹃鼓吹﹄によって高められた攻撃力と、何が何でも守るという意思が 触腕を切裂いていく。 ﹂ シエルも助太刀に行きたい。 だが、こちら側の危機だって去った 歌を、お願いします ﹄ ! わけではない。 ﹁ユノさん ﹄ これを聞いてくれ 繋げるわよ ﹃ユノ君 ﹃ユノ ! ﹃ユノ いける ﹄ ﹁⋮⋮うん。 ありがとう⋮⋮ ユノは歌い始める。 光のアリアを。 ! !? 捕食は、ついに。 ピシ、という音を立てはじめた。 戻ってきてください ! 何を言って⋮⋮うがっ ﹂ !? ! 香月ナナ、諸共。 ﹁ナナァァァァァァアアアアアアアア ﹂ てきたルシフィルの終末捕食に飲み込まれた。 ジュリウスの終末捕食はその勢いを急激に失い、引かれる様に落ち パリン、という音がして。 直後。 ラッド側に吹っ飛ばす。 そして、血の力を最大限に高めた。 叱りつけようとしたギルバートを、ハンマーをフルスイングしてブ ﹁ナナ ちゃんの方に来ちゃうよー。 ⋮⋮楽しかったよ﹂ ﹁いやー、シエルちゃん。 ここで私が戻ったら、ルシフィルがユノ ﹁ナナさん ﹂ ルシフィルとユノ。 双方の終末捕食を受けたジュリウスの終末 徐々に勢いを戻していく、ブラッド側の終末捕食。 ﹂ 全世界にいる人間が、今はただユノのために歌っているのだ。 ぶぅんと言う音と共に、歌声が聞こえてくる。 ! ! ! ! 8 ! ! ! ジュリウスの終末捕食との鬩ぎ合いにより、少しばかり減衰したも ののルシフィルの終末捕食の勢いは、未だ衰えない。 だが、そんなことに構うギルバートではなかった。 ロミオを失って悔やんで、焚き付けられて。 ケイト・ロウリーと の過去に怯え、踏ん切りをつけて。 もう失くさないと、守りきると誓ったのに。 何も見えない。 ただ、視界が真っ赤に染まっていくのをギルバー トは感じていた。 力を溜める。 だめです ﹂ 狙いは、上空の一点のみ。 ﹁ギル ﹂ ルシフィル。 何事も無かったかのように、平然と落ちていくギルバートを見下す ﹁く、そ⋮⋮﹂ だが。 レは、寸分違わずルシフィルへと突き刺さった。 たが 初速は遅く。 しかし、次第に凄まじいまでの速力と威力を得たソ ああ ﹁うぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおあああああああああ 凄まじいまでの怒りと力が、ブラッドアーツを昇華させたのだ。 エヴォリューション。 場で新しいブラッドアーツを発現。 それに切り替わる。 生体維持のオラクル細胞をも使って極限に高められたそれは、土壇 シエルの抑止は耳に入らない。 ! その身に、一切の傷は無い。 9 ! !! ユノの歌が、サビへと入る。 それと同時、神威ヒロがその手を取る。 黒い終末捕食がその場に起こる。 同時、神機兵保管庫の壁を突き破ってアバドンやサマエルの群れが ルシフィルへと殺到する。 その体は膨れ上がり、赤い終末捕食を生み出した。 二つの終末捕食は、鬩ぎ合い喰らい合い、螺旋を描いて機上空に 昇って行く。 足りない、まだ足りないとばかりに周囲のオラクル細胞││黒蛛病 の偏食因子を奪い取り、双方が成長し合う。 史実よりも広範囲で行われたそれは、地表の凡そ3割を覆い尽くし た。 螺旋の樹。 そう呼ばれるその樹から帰還した者はいない。 ブラッドも、ユノも、飲み込まれた者も。 誰も帰ってくることは無かった。 10
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