論文内容要旨 論文題名 Expression of nephronectin is enhanced by 1α,25-dihydroxyvitamin D3 (活性型ビタミン D3 により Nephronectin の発現が促進される) 掲載雑誌名 FEBS Open Bio (投稿中) 歯科麻酔科学 平沼克洋 内容要旨 【目的】Nephronectin は Integrinα8β1 に結合する細胞外マトリック スタンパク質として発見された。Nephronectin は骨および腎臓の器官形 成における細胞-細胞外マトリックス相互作用に重要な役割を果たしてい る。これまで、TGF-β、Oncostatin M に Nephronectin の発現を強く抑制 する報告があった。しかし、Nephronectin の発現を促進させる因子の報 告はされていない。私達は、活性型ビタミン D3 に Nephronectin の発現を 強く促進させる作用を見出した。本研究では活性型ビタミン D3 を用いた 際の骨芽細胞における Nephronectin の発現上昇について解析した。 【材料と方法】マウス頭蓋冠由来骨芽細胞株 MC3T3-E1 細胞を用い、活 性型ビタミン D3 と、その構造類縁体である EB1089 および Calcipotriol を処理し 24 時間培養した。 【結果】活性型ビタミン D3 およびその構造類縁体を処理した細胞で Nephronectin の発現の上昇が認められた。この作用は筋芽細胞株 C2C12 細 胞 に お い て も 同 様 に 認 め ら れ た 。 次 に 活 性 型 ビ タ ミ ン D3 に よ る Nephronectin の発現上昇に関して、活性型ビタミン D3 の濃度を 0.1~ 1000ng/ml で処理し、24 時間培養したところ 10ng/ml 以上において有意に Nephronectin の発現上昇が認められた。また、活性型ビタミン D3 を 100ng/ml で処理し、3~24 時間培養したところ 12 時間以上において有意 に Nephronectin の発現上昇が認められた。これらの結果から、活性型ビ タミン D3 による Nephronectin の発現上昇は濃度および時間依存的である 事が示唆された。活性型ビタミン D3 はビタミン D 受容体を介し、細胞内 に情報が伝達される。そこで、活性型ビタミン D3 による Nephronectin の 発現制御がビタミン D 受容体を介して行われているか検討した。ビタミン D 受容体に対する siRNA を用いビタミン D 受容体の発現量を低下させた。 この時、活性型ビタミン D3 により誘導される Nephronectin の発現量を検 討したところ、siRNA 処理によりビタミン D 受容体の発現が低下した細胞 において活性型ビタミン D3 による Nephronectin の発現誘導は抑制された。 【結論】以上の結果より、骨芽細胞株 MC3T3-E1 細胞において活性型ビ タミン D3 はビタミン D 受容体を介し Nephronectin の発現を濃度及び時間 依存的に制御していることが示唆された。今回の研究から Nephronectin の発現を促進させる初めての因子として活性型ビタミン D3 が見出された。 この事から、活性型ビタミン D3 による Nephronectin の発現制御が、骨代 謝メカニズムの新たなる解明につながると考えられる。
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