6/27 Rev.1.01 平成28年熊本地震建築物被害調査報告書 平成 28 年 6 ⽉ (⼀社)埼⽟県建築⼠事務所協会 ⽬次 1.⽬的 P-1 2.調査概要 P-1 3.被害概要 P-2 4.地震動の概要 P-3 5.熊本県における建築物の耐震性 P-4 6.調査の考察 P-7 A班調査結果 P-10 B班調査結果 P-37 1.⽬的 平成28年熊本地震(前震4⽉14⽇ M6.5、本震16⽇ M7.0)により熊本県を中⼼として甚⼤ な被害が発⽣した。死者は69⼈、住宅被害は14万棟を超えている(6⽉14⽇現在、熊本県発 表)。今回の地震は前震と本震がともに規模が⼤きく震源も⽐較的近い。益城町では震度7を2回観 測している。また、同町では2000年以降に建てられた⽊造家屋にも10数棟が倒壊・全壊して いるとの情報もある。住宅以外にも庁舎やマンションなど RC 造、S 造の建物も倒壊したものがあ る。今回の地震の被害に合われた⽅々へ⼼よりお⾒舞い申し上げるとともに、⼀刻も早く復興され ることを祈念いたします。 事務所協会では熊本県建築⼠事務所協会との情報交換や⽀援体制の構築を⾏っており、当協会で も⽀援⾦などの協⼒を⾏っている。今回の地震による建築物の被害が甚⼤であり多くの⼈々に影響 が及んでいる。そこで被害が集中している益城町と熊本市に出向き建築物の調査を⾏った。3名× 2班丸1⽇の限られた⼈数、⽇数であったが精⼒的に調査を⾏った。益城町は⽊造家屋を中⼼に調 査し、⼀部住⼈等のヒアリングを⾏うことができた。熊本市内では⽐較的⼤きな、鉄筋コンクリー ト造や鉄⾻造などの建築物の被害情報を元に調査した。本冊⼦はその結果をまとめたものである。 地震の被害が建築物の利⽤者や所有者へどういった影響があるのかを理解した上で、⼀つ⼀つの建 築物の設計、監理などの業を⾏う上で配慮すべき事項や、施主へ伝え議論すべきことの参考になれ ば幸いである。なお、被害の分布やその原因などの学術的な分析は、公的機関や⼤学、学会などの 調査を参照していただきたい。協会としてどのような対策が必要か、⽇常の備えや被災時の活動、 組織づくりなど、今回の災害を研究し研究していくことが必要と思われる。 2.調査概要 調査団 団 幹事 佐藤 啓智 ⽵ノ⾕ 敦夫 調査員 萩坂 橋本 藤 ⼭崎 副会 常任理事企画部 ・耐震判定委員会作業部会員 詳 耐震判定委員会作業部会 健⼆ 構造委員会委員 哲 企画部副部 由美⼦ ボランティア活動有識者 調査⽇ 平成 28 年 5 ⽉ 23 ⽇ 調査内容 A 班 橋本 健 (班 )・ 藤 地域:益城町 哲・⼭崎 由美⼦ 対象建築物:⽊造ほか B 班 ⽵ノ⾕ 敦夫(班 ) ・佐藤 啓智・萩坂 詳 地域:熊本市、益城町 対象建築物:鉄筋コンクリート造、鉄⾻造ほか P-1 前震4月14日21:26 K-net熊本 本震4月16日1:25 KiK-net益城 ・B-3,4 ・B-1 ・B-2 ・B-10 B-11・ B-9・ B-5,8・ ・B-6 は布田川断層帯周辺の地表の亀裂(国土地理院調査) B-番号 はB班の調査範囲を示す 図 2.1 調査地域図(地理院地図に加筆) 3.被害概要 地震発⽣ 4 ⽉ 14 ⽇ 震源地:熊本地⽅ M6.5 最⼤震度 7(前震) 4 ⽉ 16 ⽇ 震源地:熊本地⽅ M7.3 最⼤震度 7(本震) ⼈的被害 死者 69 名 ⾏⽅不明 1 名 重軽傷者 1,736 名 住家被害 全壊、半壊、⼀部破損 141,970 棟 避難所数及び避難者数(確認されたもの) 20 市町村 避難所数 124 箇所 避難者数 6,211 名 罹災証明書の交付申請受付等の状況 受付件数 35 市町村 147,289 件 2 次調査依頼件数 27 市町村 交付件数 34 市町村 104,745 件 24,602 件 以上熊本県発表(6 ⽉ 14 ⽇現在) 応急危険度判定家屋の数 熊本県内で14,900 が危険と判定 P-2 ・B-7 A班の調査範囲 4.地震動の概要 平成 28 年 4 ⽉ 14 ⽇に熊本県熊本地⽅で M6.5 の前震が発⽣し熊本県益城町で震度 7 を観測、同 ⽉ 16 ⽇には M7.3 の本震が発⽣し熊本県 原村と益城町で震度 7 を観測している。最⼤震度 6 弱 以上は 7 回観測されている(5 ⽉ 14 ⽇時点) 。建築物の被害は熊本県に多く、⼤分県でも⽣じてい る。熊本県内では熊本市東部、益城町、 原村、南阿蘇村などの震源に近い地域で多くの建築物が 被害を受けている。 益城町および熊本市で前震と本震の加速度時刻歴応答波形(グラフ左)と擬似速度応答スペクト ル(グラフ右)を図 4.1a d に⽰す。益城町は KiK-net 益城、熊本市は K-net 熊本での観測である。 1500 Acc. (cm/s2) 300 0 Time (s) 50 -1500 0 0 50 NS 0 0 0 図 4.1b 1500 Acc. (cm/s2) 300 5 Period (s) KiK-net 益城 4 ⽉ 16 ⽇ 1:25 NS 0 Time (s) 400 50 50 (cm/s) 1500 Acc. (cm/s2) EW UD 50 0 0 0 Period (s) 5 Time (s) 50 -1500 1500 Acc. (cm/s2) h=0.05 UD Time (s) EW 0 NS pSv Time (s) (cm/s) -1500 EW 0 -1500 1500 Acc. (cm/s2) h=0.05 0 -1500 50 -1500 1500 Acc. (cm/s2) -1500 Time (s) UD Time (s) 50 5 Period (s) 図 4.1a KiK-net 益城 4 ⽉ 14 ⽇ 21:26 1500 Acc. (cm/s2) UD 0 0 -1500 EW NS UD Time (s) Time (s) 50 1500 Acc. (cm/s2) h=0.05 UD 400 -1500 NS 1500 Acc. (cm/s2) EW 0 EW Time (s) 50 -1500 1500 Acc. (cm/s2) (cm/s) EW pSv -1500 1500 Acc. (cm/s2) NS 0 50 (cm/s) Time (s) pSv NS 0 pSv 1500 Acc. (cm/s2) NS UD Time (s) 50 0 UD 0 -1500 図 4.1c K-net 熊本 4 ⽉ 14 ⽇ 21:26 Period (s) EW h=0.05 5 図 4.1d K-net 熊本 4 ⽉ 16 ⽇ 1:25 (出典 国⽴研究開発法⼈建築研究所 調査報告) 観測地点は図 2.1 に⽰した。KiK-net 益城は益城町の被害が多い地域の近傍に設置されている。グ ラフ中の点線は建築基準法の第2種地盤の極稀地震(Z=0.9)に対応する応答スペクトル(参考) である。⽊造の住宅は地震波のうち周期1 2秒の成分が⼤きいと⼤きな被害を受けると⾔われて いる。KiK-net 益城では EW 成分が前震、本震ともに周期 1~2 秒程度の成分が⼤きな値を⽰し、 前震では 250cm/s 程度、本震では 390cm/s 程度である。K-net 熊本では NS 成分が⼤きく、最⼤ で 180cm/s(本震)であった。特徴としては、本震が前震よりも応答速度が⼤きい、KiK-net 益城 では EW 成分が、K-net 熊本では NS 成分が⼤きな値を⽰している。周期 1~2 秒の擬似応答速度は KiK-net 益城で建築基準法から想定した応答スペクトルの 2 倍以上を⽰しており、益城町で⽊造住 宅の倒壊、⼤破が多いこととがうかがえる。同じ地域で3⽇間のうちに震度7が2回観測されてい ることから、1 回⽬で損傷した建築物が 2 回⽬に倒壊させられた可能性もあるが、KiK-net 益城の 本震は⽊造住宅を1度で倒壊させるような振動であった可能性が⾼いと思える。 P-3 これらのデータはある地点の測定結果である。よって、地域全体の傾向を知るにはさらに詳細な 分析結果を参照して考える必要があるが、地域により地震動の特性に差があることを理解すること ができる。 5.熊本県における建築物の耐震性 地震地域係数:Z ⾸都圏、関 圏 Z=1.0 東海地震が想定される静岡県 Z=1.2 熊本県 Z=0.8 0.9(ex. 宇⼟市 0.8、熊本市 0.9、益城町 0.9) 地震地域係数は構造設計を⾏う際に地震動により建築物に作⽤する⼒を地域に応じて低減する 数値である。1952 年に初めて定められ、その後何度か改定され、1979 年に改定されたものが現在 の規定である。この規定は過去の地震記録等から再現期間 100 年の地震動の最⼤化速度を想定し そのレベルに応じて⾏政単位などを勘案して定められている。熊本市や益城町では Z=0.9 であり、 ⾸都圏(Z=1.0)で同じ建築物を同様の地盤に建設した場合と⽐較すると地震により建物に作⽤す る⼒が 0.9 倍であることを⽰す。地域係数は新築時の構造設計のほか、耐震診断、耐震改修設計で も⽤いられている。なお、東海地震が想定される静岡県では⼤⾂の指定は Z=1.0 であるが、静岡 県独⾃に Zs=1.2 と割増している。しかし今回の地震で多くの建築物が被災したことから、東南海 地震などの発⽣が想定される地域などでは静岡県のように地震地域係数の割増などを定めること も考えられる。どちらにせよ、安全側の判断が必要と思われる。 旧耐震 新耐震 2000 年住宅 建築基準法の構造規定は過去に 2 度⼤きく改定されている。1981 年(昭和 56 年)の建築基準法改 正で、震度 6 強から 7 の揺れに⾒舞われても倒壊や崩壊を防げるだけの強度を求めてきた(いわゆる 新耐震)。その後平成 7 年に起きた阪神淡路⼤震災では、新耐震の⽊造住宅でも被害が続出。そのた め平成 12 年には、⽊造住宅について柱と梁の接合⾦物や、壁の配置の仕様を明確にした(これは新・ 新耐震、2000 年住宅とも呼ばれる)。震災では、旧耐震の建築物に被害が多い。また、⽊造住宅で は新耐震でも 2000 年以前のものは過去の地震でも被害が出ている。 熊本県内の建築物の耐震化率は『熊本県建築物耐震改修促進計画(平成 28 年 3 ⽉変更)』によ ると、住宅の耐震化率は平成 15 年の調査では 68%、20 年の調査では 72%(耐震性不⾜ 19 万 )、 耐震改修促進法が定める特定既存耐震不適格建築物の耐震化率は平成 24 年末で 87.2%(耐震性不 ⾜ 1 千棟)、公共建築物では耐震化率 76.8%(耐震性不⾜ 1933 棟、耐震診断未実施 1115 棟含む)) であった。 熊本県における震災の歴史と防災意識 熊本県における地震による建築物および⼈的被害の⼤きかったものを表 5.1 に⽰す。 発⽣時期 規模 最⼤震度 P-4 被害概要 天草郡、⼋代 郡、葦北郡 744 年 太平 16 M7.0 1625 年 寛永 2 熊本 M5 6 1723 年 亨保 8 ⽇向・豊後・肥 後 M7 1769 年 明和 6 ⽇向・豊後・肥 後 M7 1889 年 明治 22 熊本付近 M6.3 肥後・筑後 地⽅で強 震 2016 年 平成 28 熊本地⽅ 前震 M6.5 本震 M7.3 震度 7 ⽥地 290 町、 家流出 470 軒、死者 1,520 名 地震のため熊本城の⽕薬庫爆発、天守 付近の⽯壁の⼀部が崩れた。城中の⽯ 垣にも被害、死者約 50。 肥後で倒家 980、死者2。飽⽥・⼭本・ ⼭⿅・⽟名・菊池・合志各郡で強く、 柳川辺でも強く感じた。 延岡城・⼤分城で被害多く、寺社・町 屋の破損が多かった。熊本領内でも被 害が多く、宇和島で強く感じた。津波 があった。 飽⽥郡(現在の熊本市と宇⼟市の⼀部) を中⼼に熊本県下で被害⼤。死者 20・ 負傷 52、家屋全壊 228・半潰 138。柳 川地⽅でも潰家 60 余。 死者 69 名、住家の全壊、半壊、⼀部破 損 141,970 棟。 表 5.1 熊本県の代表的な地震被害の歴史(熊本県地域防災計画より抜粋) 過去には⼤きな地震があり、死者を出していたことがわかる。しかし 1889 年熊本地震以降の近 年の建築物の耐震性が法制化されてきた時代には、地震は発⽣しているものの、他の地域と⽐較す ると⼤きな災害がなかったようである。 そのような震災の歴史を持つ熊本県はどのような防災意識を持っていただろうか。そこで参考と して県が防災計画上で想定していた地震を表 5.2 に⽰す。 検討対象断層帯等 地震規模 30 年以内発⽣確率 [想定地震の震源域] ① 布⽥川・⽇奈久断層帯 中部・南 <参考> ② 部 連動 M7.9 上記震源域単独時:(中部) :(南 部) 別府・万年⼭断層帯 不 明 (M7.6) (M7.2) (ほぼ 0 6%) (不 明) M7.3 ほぼ 0 3% (最⼤ 2.6%) ③ ⼈吉盆地南縁断層 M7.1 ④ 出⽔断層帯 M7.0 ほぼ 0 ⑤ 雲仙断層群 南東部 M7.1 不 津波検討追加: 南 部北部・南 部南部 連動 ⑥ 南海トラフ(最⼤値) 1%以下 1% 明 M7.5 不 明 M9.0 極めて低い 表 5.2 熊本県の防災計画上の対策地震(熊本県地域防災計画より) 想定する地震はいずれも 30 年以内の発⽣確率が低い。耐震化率が⾸都圏に対して若⼲低い傾向 にあることも、 治体や市 の地震に対する防災意識は東海地 や 都圏と 較すると低く、対策 P-5 が遅れていたのではないか。今後の詳細な分析がされ、国内全体に対して対策が講じられることが 必要と思われる。 今回の地震では直下型で震源が浅く、表層の軟弱な地盤による地震動の増幅も考えられる。揺れ の規模が⼤きく、14 万棟以上の建築物に被害を⽣じている。益城町ではキラーパルスと呼ばれる 周期 1 2 秒程度成分が⼤きく卓越し、多くの⽊造家屋に被害をもたらしている。 また、歴史的に地震被害が少ない地域では耐震技術の成熟の遅れが考えられる。九州地⽅では地 震よりも、台⾵などによる⾵⾬の被害が多く、⽊造家屋などの軽い構造物では重い屋根⽡をつかう など、⾵⾬に対する性能が重要視され、その影で地震への対策、⼯法、技術などが疎かになった可 能性が考えられる。報道でも、益城町で平成 19 年に建築された⽊造 2 階建て住宅が⼤きく傾き、 1 階の筋交い 8 本の内 7 本が同じ⽅向に配置されているように⾒えるなど、配慮不⾜、技術不⾜の 可能性が報じられている。 P-6 6.調査の考察 調査は⽊造とRC・S造の2チームに分けて⾏い、⽊造チームは益城町中⼼に調査しました。 被災者の⽅のお話(惣領) Aさんご夫婦(82歳・80歳)⽊造2階建て、昭和56年頃建築。 4⽉14⽇夜、⼆間続きの奥の部屋で寝ていた。突然、突き上げるよ うな⼤揺れで外へ逃げようとしたが、⼿前の部屋はタンスや⼤物家具 が倒れていて、⽞関は天井が落ちていた。必死で安永⼩学校へ避難し た。翌15⽇、⾃宅は倒壊の応急危険度判定の⾚紙(危険)が貼られ ていた。現在は近隣のアパートを借りている。将来この家をどうした ものか結論は出ていない。⾞庫で傾いた家の中から家財を持ち出し黙々と整理しておられました。 Bさん(男性70代) ⽊造平屋建て、平成10年頃建築(安永) 4⽉14⽇の地震で家の中にいた。家が傾き家具が倒れて間に挟まれ ⾃⼒で外へ出られなかったが、しばらくして近所の⼈たちに助けられ た。16⽇の本震後、⽞関は横に倒れ主屋は後ろ側へ傾き、屋根は棟 が割れていました。 Cさん(60歳後半) RC造2階建て、平成初期建築(惣領) 転勤中に建て替えた⾃慢の家。道路から敷地内に続く⼤きな割れが ⾒られました。建物は⼤した被害はなさそうだったが、反対側へ回 ると、1.5mほどの擁壁が崩れていて地割れがありました。家は傾い ていたが、修繕はしないとのことでした。 Dさん( 性60 70代)(惣領) ⽊造アパート 2階建て×4室 アパートは正⾯からは倒壊してないように⾒えました。 「⾞できた ⼥性が私に「倒壊ですか?半壊ですか?」と声をかけてきました。 市の職員だと思って聞いたようです。その⼥性は「⾚紙ですか。」 と確認して帰りました。そのアパートの前で4⼈の⼥性が花に⽔ やりをしていました。現在も住んでいる⽅たちだと思ったら、皆 さん避難している⽅たちでした。話を聞いてみると「裏側を⾒て! 住めないよ!」と⾔われました。⼀⾒表から⾒るとダメージのな さそうなアパートは、裏側の 3mほどの擁壁が崩れて建物が半倒 壊していました。 今まで他の被災地を⾒てきましたが、余震と本震が震度7と⼤きかったため倒壊した建物は、壊滅状 態にありました。昭和56年以前の建物は軒並み倒壊、新耐震の建物も 2000 年後の建物も倒壊半壊が みられ、2×4 ⼯法の建物も倒壊していました。が、施⼯精度は・・・と思われる建物が多く⾒られま した。地盤に⾼低差がある益城町だが、擁壁に対して構造や施⼯が安易に造られているように思いま した。“百聞は⼀⾒に如かず”と⾔いますが、良い勉強になりました。 P-7 熊本県益城町を訪れて 構造委員 橋本 健⼆ 新耐震建築物が倒壊したというセンセーショナルな報道がされていますが、多くは旧耐震建築物で⽊ 造モルタル⽡葺きの重量の多い住宅が倒壊している印象でした。 新しい住宅は震度7を2回受けてもしっかりと建っています(外観上は無被害) 。 その横で倒壊している住宅を⾒ると何が良くて何が悪いのかがぼんやりと⾒えた気がします。 新耐震建築物と⾔っても基準直後の住宅は、もはや築35年を迎えています。 法律が変わらなければ我々が変わるしかないでしょう。 ⽊造2階建てだからといって安易なプランニングはせず、しっかりと計算をして耐震等級2、もしく は耐震等級3を取得するべきでしょう。 耐震等級3を取得すると地震保険料は半額になります。地震被害を受けにくいと国が証明しているよ うなものです。被災地を訪れて保険料割引以上の効果はあると実感しました。 今回の調査では新耐震で倒れた住宅も数棟⾒ました。 今後の住宅設計に今回の経験を⽣かしていきたいと思います。 調査団 ・副会 佐藤 啓智 ○復興について「阪神⼤震災の失敗」 復興で、前より⼤きなものを作ってしまった。巨⼤なショッピングセンターや公共施設が次々建った が、多くが借 を抱えている(復興は拡 ではない)。神 では震災直後いち早く災害公営住宅を数多 く建てたが、20年経つと⼊居者が⾼齢化し空き家が⽬⽴つようになったとの事(住宅の⾯積が⼩さ いと聞く) 。新たな⼊居者がおらず、固定資産税が⼊るわけでもなく、⾃治体は維持管理に悩んでいる のが現状であると聞く。 ○これからのボランティア活動、コメント 3.11の地震災害で協会会員とともにボランティアに⾏ったが、災害物資の仕分けの仕事でした。 建築⼠としてのボランティア活動がどのように進めていくか、⼜、遠距離の為、現地に⾏くだけでも ⼤変である。私の家内が影響され、今でも⽉⼀回、バスで福島へボランティアに⾏ってますが・・・・。 現地に⾏き、⾒たことの重要さをこれからの防災に活⽤しなければいけないといつも現地に⾏くたび に思う。関東にも必ず起こりうることであるから、⾃らの命を守れる建物づくりの啓発も必要だと考 える。 P-8 調査団幹事 企画部 ⽵ノ⾕ 敦夫 熊本市内では、主に⼤きな建築物の被害を⾒て回りました。新築は RC 造雑壁のひび割れが⽣じてい るものも有りましたが補修で済みそうなものが多い。⾒た範囲では新耐震の建築物で⽅の要求する性 能、建築物の寿命中に数度起こるくらいの地震動に対しては被害がほとんど⽣じない、建築物の寿命 中に 1 度は起こるかもしれない地震動に対しては崩壊を防ぎ損傷しても⼈命に関わることがない、は 守られている様に感じました。ただし、渡り廊下の⼿摺壁が Exp.J の間隔不⾜で落下したものがあり、 あってはならない事故であると思います。旧耐震と思われるもので、ピロティの層崩壊を⾒ましたが バランスが⼤事だと感じました。 新築の話になりますが、構造的なバランスが悪いものは Fes で減点して設計、つまりバランスが悪け ればその分強くしていますが、バランスが悪いと被害が⼤きいように思われます。バランスは建築物 の形状と密接に関係しているので構造設計者はそのことについて意匠設計者とよく協議するべきでし ょう。 益城町にも⾜を運びましたが、全体としては旧耐震の建築物に被害が集中しており、特に益城町の被 害が⼤きい地域では旧耐震の殆どが被災したと思われます。年季の⼊った建物が多く、⽴派で重い屋 根、多分補強されいないものが多いと思われます。また、施⼯上の配慮がかけていたりするものもあ ったようです。益城町は甚⼤な被害が集中しており、もはや建築物の被害を超え、まちそのものが被 災しています。現在は市町村ごとに耐震化率が公表されていますが、今後は地域ごとの耐震化率など の数値がまちづくりに⽋かせないと思います。新興住宅地域と古くから市街化され耐震改修が進んで いない区域とは対応する施策がことなると思います。 構造設計についても法律さえ守れば地震に対して安全な建築物を作れるわけではありません。さらに その⼟地や地盤の特性、建物形状などの特性を⾒極めて、どんな配慮が必要とされているかを⾒極め て進めていく必要があると思います。 P-9 外観上の判断により、 旧耐震を□ 新耐震を△ 2000年基準を○ 被害状況により色を 1階層崩壊 被害大 被害中・小 外観上無被害 1 2 P-10 4 3 6 5 7 8 12 11 9 13 15 16 10 14 1km 17 18 22 20 19 24 21 23 25 A班調査範囲図 A班調査結果 物件NO A-1 物件名 M邸 住所 益城町惣領地区 構造概要 RC造2階建て 建設年 昭和60年築(ヒアリング) 用途 個人住宅 被害概要 前震ではなんともなかったが、本震後に地盤沈下した為建物は少し傾いている。 地盤は盛土ではなく、切り土。 建物に比べ周囲のブロックや地盤の被害が著しい。 居住者から話が聞けた。盛土ではなく切土。 外観上は被害はない。 擁壁のブロックが一部崩れている。 地盤が下がって、ポーチが浮いている。 ブロック塀破損。鉄筋は少ない。 ブロック塀が倒れないように補強している。 P-11 物件NO A-2 物件名 個人住宅 住所 益城町惣領地区 構造概要 木造2階建て(屋根:瓦葺き、外壁:モルタル) ビルドインガレージでスキップフロアの建物。 建設年 昭和50年頃 用途 個人住宅 被害概要 1階下屋が崩壊している。出隅の柱が押し出されたことによるものと思われる。 ビルドインガレージのスキップフロア。 ガレージ部のモルタルのひび割れ。 玄関庇が外れて落下している。 下屋部だけが崩壊している。 裏側のブロック塀傾斜。 P-12 物件NO A-3 物件名 松本マンションB棟 住所 益城町惣領地区 構造概要 木造2階建て(屋根:瓦葺き、外壁:モルタル) 建設年 昭和40年頃 用途 共同住宅 被害概要 1階部分が層崩壊している。 南側には掃き出し窓両側に筋かいがあるものの、北側は浴室、玄関、トイレの 開口部が連続して耐力壁が一つもない。 屋外階段が筋かいの役割をしているのか? 南側は開口部の両側に筋かいあり。 北側は開口部の連続で耐力壁なし。 1階室内。 筋かいが土台から外れている。 出隅の柱。押し出されている。 P-13 物件NO A-4 物件名 松本マンションA棟 住所 益城町惣領地区 構造概要 木造2階建て(屋根:瓦葺き、外壁:モルタル) 建設年 昭和40年頃 用途 共同住宅 被害概要 1階部分が層崩壊している。 物件NO3と同じ建物で同時期の建築物と思われる。異なる点は南側が崖地に なっていること。倒壊した理由はそこの擁壁が崩れた為と考えられる。 1階部分崩壊。 1階部分崩壊。 南側の擁壁が外に押し出されている。 鉄骨と合わさった梁。 北側は開口部の連続で耐力壁なし。 階段柱が折れる。 P-14 物件NO A-5 物件名 立道マンション 住所 益城町惣領地区 構造概要 木造2階建て(屋根:スレート、外壁:モルタル) 建設年 昭和50年頃 用途 共同住宅 被害概要 物件NO3、4と同じ建築物と思われる。 異なる点は屋根が瓦ではなくスレートなので物件NO3、4より被害は小さい。 見た目は被害なさそうに見える。 北側は開口部の連続で耐力壁なし。 南側モルタル落下。 蟻害あり。 出隅の柱。腐食している。 出隅の柱。腐食している。 P-15 物件NO A-3,4,5 物件名 松本マンションB棟A棟、立道マンション 住所 益城町惣領地区 構造概要 木造2階建て 建設年 用途 共同住宅 被害概要 同じ構造の建物が3つあったので比較してみた。 物件NO 3 物件名 松本マンションB棟 屋根 瓦 外壁 モルタル 地盤 平坦 被害概要 1階が層崩壊している 物件NO 4 物件名 松本マンションA棟 屋根 瓦 外壁 モルタル 地盤 崖地 被害概要 1階が層崩壊している 物件NO 5 物件名 立道マンション 屋根 スレート 外壁 モルタル 地盤 平坦 被害概要 1階のモルタル落下 P-16 物件NO A-6 物件名 個人住宅 住所 益城町惣領地区 構造概要 木造2階建て(屋根:瓦葺き、外壁:モルタル) 建設年 昭和50年頃 用途 個人住宅 被害概要 1階が層崩壊しており、2階が落ちて来た様な倒れ方をしている。柱・筋かいの 接合部には金物が見られず、接合部で外れていた。崩壊した1階は2階と比べ 床面積が大きく、開口部が大きかったと思われ、編心が大きいと思われる。 ブロック塀は倒壊しており、鉄筋が見られなかった。 2階が前のめりになって倒れている。 ブロック塀被害。鉄筋は見えない。 1階は層崩壊。 1階の梁部分。柱はすべて抜けている。 筋かいは外れてしまっている。 筋かいは節部で折れていた。 P-17 物件NO A-7 物件名 M邸 住所 益城町惣領地区 構造概要 木造2階建て(屋根:瓦葺き、外壁:モルタル) 建設年 昭和54年築(ヒアリング) 用途 個人住宅 被害概要 前震ではなんともなかった。本震で被害を受けたとのこと。 筋かいは中通りにも配置されている。 南側は間口9Pの内、8Pが開口部であったが、倒壊は免れた。 南側には鉄骨造モルタル床バルコニーがある。 9Pの内、8Pが開口部。 たった1Pの耐力壁、モルタル落下。 筋かいは折れてはいない。 地震力はバルコニーから鉄骨柱に伝わった。 鉄骨柱が曲がっている。 中通りまで筋かいあり。 浴室出隅柱。腐食している。 P-18 物件NO A-8 物件名 共同住宅 住所 益城町惣領地区 構造概要 木造2階建て(屋根:瓦葺き、外壁:モルタル) 建設年 昭和40年頃 用途 共同住宅 被害概要 1階が層崩壊している。 1、2階共に在来浴室があり、2階浴室は他の部分の床と連続している。 浴室まわりの腐朽が大きく、地震力が1階にすら伝わっていない。 近隣住民の話より、本震で倒壊したとのこと。 1階層崩壊。 2階浴室で梁腐朽。ちぎれて残った1階浴室。 1階浴室柱脚。腐食。 1階浴室柱頭。腐食。 隣地の地盤面が低い。崖は崩れていないが、 2階浴室。梁材腐食により内部が空洞になっ 建物が隣地の平屋に覆いかぶさっている。 ている。 P-19 物件NO A-9 物件名 安永神社 住所 益城町安永地区 構造概要 木造平屋建て(屋根:瓦葺き) 建設年 平成10年頃 用途 神社 被害概要 建物全体が傾斜しているが、倒壊には至っていない。 傾斜している。灯篭は倒れている。 石鳥居は倒壊。 開口部下に筋かいあり。 柱がずれている。 柱が腰壁から外れており効果はなし。 出隅の柱。土台が裂け押し出されている。 柱がずれている。 P-20 物件NO A-10 物件名 共同住宅 住所 益城町安永地区 構造概要 2階建て(構造は不明、屋根:スレート、外壁:窯業系サイディング) 建設年 平成28年頃 用途 共同住宅 被害概要 外観上、被害なし。 竣工したばかりの様で入居前と思われる。 外観上被害なし。 隣では瓦が落下している。 一部擁壁に被害あり。 P-21 物件NO A-11 物件名 共同住宅 住所 益城町安永地区 構造概要 2階建て(構造は不明、屋根:スレート、外壁:窯業系サイディング) 建設年 平成10年頃 用途 共同住宅 被害概要 石積みの擁壁が崩壊している。 建物は深基礎(地盤改良は不明)のためか少しの傾斜で済んでいる。 誰も住んでいないが、満室の看板があるので入居者は避難所か引っ越したかと 思われる。 深基礎が見える。(地盤改良は不明) 道路が半分ふさがれている。 満室だったようだ。 建物は多少傾いた程度。 ブロック擁壁崩壊。 ブロック擁壁崩壊。 P-22 物件NO A-12 物件名 新興住宅地 住所 益城町安永地区 構造概要 木造2階建て他 建設年 平成25年頃 用途 個人住宅 被害概要 新興住宅地。売り出し中の建物もあり。 外観上無被害。 大きなはねだし住宅。外観上被害なし。 木造2階建て。外観上被害なし。 木造2階建て売り出し中。外観上被害なし。 木造2階建て。外観上被害なし。 木造2階建て。外観上被害なし。クラックなし。 木造2階建て。外観上被害なし。 P-23 物件NO A-13 物件名 個人住宅 住所 益城町安永地区 構造概要 木造2階建て 建設年 平成25年頃、平成10年頃、昭和40年頃 用途 個人住宅 被害概要 外観上の判断により2000年以降、新耐震、旧耐震と思われる住宅が並んでいる。 2000年以降の住宅は外観上無被害。 新耐震基準は瓦落下。 旧耐震基準は瓦・モルタル落下。 新耐震 2000年基準 旧耐震 外観上の判断による新耐震建築物。 旧耐震建築物。 瓦の落下で済んでいる。 平屋の為倒壊を免れたかもしれない。 P-24 物件NO A-14 物件名 個人住宅 住所 益城町安永地区 構造概要 木造2階建て(屋根:瓦葺き、外壁:モルタル) 建設年 昭和50年頃 用途 個人住宅 被害概要 1階よりも2階の傾斜角が大きい。 同じような隣地の建物が倒壊していることから、この建物はリフォームで結果的に 1階の強度が上がっていたのかもしれない。(外構はバリアフリーリフォーム済) 蟻害があり、浴室の柱が途中で折れている。 2階の傾斜が大きい。 ブロック塀に大きな被害はない。 出隅の柱は押し出されている。 浴室。蟻害あり。 浴室柱。蟻害。 浴室柱。途中で折れている。 P-25 物件NO A-15 物件名 個人住宅 住所 益城町安永地区 構造概要 木造2階建て(屋根:瓦葺き、外壁:モルタル) 建設年 昭和50年頃 用途 個人住宅 被害概要 1階が層崩壊している。 土台がアンカーボルトごと引き抜けている。(基礎は無筋) 1階層崩壊。 アンカーボルトが基礎を破壊している。 破壊された無筋基礎。 無筋の基礎からアンカーボルトが抜けている。 残ったアンカーボルト、裂けた土台。 筋かいは外れてしまっている。 P-26 物件NO A-16 物件名 個人住宅 住所 益城町安永地区 構造概要 木造2階建て(屋根:瓦葺き、外壁:モルタル) 建設年 昭和50年頃 用途 個人住宅 被害概要 建物中央付近の地盤沈下により、建物が「く」の字に折れている。 建物の中心に向かってブロック塀が倒れている。 モルタル落下。 建物の中心に向かってブロック塀が倒れている。 建物が「く」の字に折れている。 出隅の柱。少しの蟻害あり。 筋かいは外れていない。 P-27 物件NO A-17 物件名 個人住宅 住所 益城町安永地区 構造概要 木造2階建て(屋根:スレート、外壁:モルタル) 建設年 昭和60年頃 用途 個人住宅 被害概要 リフォームを繰り返している住宅。 擁壁の上に建物が建っていたが、擁壁が倒れ、地盤が崩れ、基礎が倒れている。 モルタル下地合板は釘が抜けてはがれてしまっているが、きずり下地の部分は モルタルがはがれていない。 外装材ははがれている。 出隅の柱。筋かいによって押し出されている。 出隅の柱。基礎は破壊されている。 リフォーム部分。柱脚金物が見える。 モルタル下地合板はすべてはがれているが、 地盤が崩れたことにより基礎が倒れ1階が崩 きずり部分ははがれていない。 れている。 P-28 物件NO A-18 物件名 個人住宅 住所 益城町安永地区 構造概要 木造2階建て 建設年 昭和40年頃、平成20年頃、昭和60年頃 用途 個人住宅 被害概要 外観上の判断により旧耐震、2000年以降、新耐震と思われる住宅が並んでいる。 旧耐震基準は1階層崩壊。 2000年以降の住宅は外観上無被害。 新耐震基準は屋根一部損傷。 旧耐震 2000年基準 新耐震 旧耐震建築物。 外観上の判断による2000年以降建築物。 下屋の部分がちぎれて1階が層崩壊している。 隣の建物が倒れてきたことで少しの被害あり。 P-29 物件NO A-19 物件名 個人住宅 住所 益城町宮園地区 構造概要 木造2階建て(屋根:スレート、外壁:窯業系サイディング) 建設年 平成20年頃 用途 個人住宅 被害概要 接合部金物により、2000年基準以降と思われる建物。 1階が倒壊している。外壁に合板は見当たらない。 垂木金物を使うなど、施工はしっかりとしている印象がある。 1階が倒壊している。 通し柱が折れている。 2階柱脚はかすがい2本打ち。 筋かい金物。筋かいは外れている。 柱脚金物。土台から外れている。 垂木金物。施工は丁寧だ。 P-30 物件NO A-20 物件名 事務所兼住宅 住所 益城町宮園地区 構造概要 木造2階建て(屋根:スレート、外壁:窯業系サイディング) 建設年 昭和60年頃 用途 事務所兼個人住宅 被害概要 1階が層崩壊している。 2×4材を3本合わせた柱としての軸組み工法のように見える。初めて見る工法。 外壁に合板は見当たらない。 1階が倒壊している。 道路部分は壊されている。 ポーチ柱。2×4材2本。 柱。2×4材3本。 2×4材3本の柱は折れている。 合板は見当たらない。 P-31 物件NO A-21 物件名 K邸 住所 益城町宮園地区 構造概要 木造平屋建て(平成6年築、屋根:瓦葺き、外壁:モルタル) 建設年 平成6年築(ヒアリング) 用途 個人住宅 被害概要 地盤崩壊により建物が崩れている。 地盤さえ良ければ被害は少なかったように思える。 地盤沈下で建物が崩れた。 裏側の擁壁は崩壊している。 鉄筋コンクリート基礎破壊。 地盤は崩壊している。 P-32 物件NO A-22 物件名 個人住宅 住所 益城町宮園地区 構造概要 軽量鉄骨造2階建て(屋根:スレート、外壁:窯業系サイディング) 建設年 平成10年頃 用途 個人住宅 被害概要 1階が層崩壊している。 ハウスメーカーの建物と思われるが1階柱頭部分がすべて曲がり、ボルトが外れて いる。 1階が倒壊している。 1階出隅の柱。柱頭のボルトが外れている。 1階柱頭のボルトが外れている。 1階出隅の柱。柱頭のボルトが外れている。 P-33 物件NO A-23 物件名 個人住宅 住所 益城町宮園地区 構造概要 木造2階建て(屋根:スレート、外壁:窯業系サイディング) 建設年 昭和60年頃 用途 個人住宅 被害概要 1階の外装材が外れていて、傾斜もある。 透湿防水シートがある為、筋かいは見えないが、合板は無いのが分かる。 1階部分の外装材がはがれ、傾斜している。 合板は見当たらない。 P-34 物件NO A-24 物件名 個人住宅 住所 益城町宮園地区 構造概要 軽量鉄骨造2階建て(屋根:スレート、外壁:窯業系サイディング) 建設年 平成20年頃 用途 個人住宅 被害概要 外装材に一部被害が見られる。 出隅の基礎はほぼ被害があり、鉄筋がむき出しになっている。 地盤被害あり。軒裏一部はがれあり。 外装材一部被害あり。 出隅の基礎、破壊。 出隅の基礎、破壊。 出隅の基礎、破壊。 P-35 物件NO A-25 物件名 個人住宅 住所 益城町宮園地区 構造概要 木造2階建て(屋根:スレート、外壁:ALC) 建設年 平成20年頃 用途 個人住宅 被害概要 1階が層崩壊している。 ホールダウン金物が破断している。 1階が層崩壊している。 2階柱脚金物。筋かい金物あり。 筋かい金物。筋かいは外れていない。 ホールダウン金物は破断している。 ホールダウン金物は破損したが、基礎は無被害。 P-36 B 班調査結果 B-1 物件名 コーポにしはる 住所:熊本市保⽥窪3丁⽬ 規模:RC 造 5 階建て 建設年:1974 年(Web の情報による) ⽤途:店舗+共同住宅 被害概要:1階で層崩壊、崩壊柱は確認できず。 コメント 平 形状は 形で整形である。 側妻 に階段室がある。 ⽴⾯形状も全層5階建て整形である。 1階はピロティ構造と思われるが確認できない。 1 階が層崩壊したため 2 階が下り 1 階にはほとんどスペースが残っていないようである。ま た、2 階は⽔平⽅向には桁⾏⽅向、梁間⽅向のそれぞれに 1m 近くも移動しているようだ(南 の で測定) 。 外観廊下側 1階部分崩壊 外観バルコニー側 1階崩壊柱確認できない 階段室 1階外壁がくの字に折れ曲がっている 1階の室内空間はほとんど残っていない ⽔平⽅向に 1m 近くも移動しているようだ。 P-37 B-2 物件名 熊本⼤神宮、熊本城 住所:熊本市中央区 規模:⽊造平屋建て 建設年:不明 ⽤途:神社 被害概要:上部熊本城の⽯垣の崩落により社務所が倒壊 ・熊本⼤神宮 ⽯垣の崩落に潰された社務所 震災前の社務所(出典 Wikipedia) 右側に⾒える本殿は被害を免れた様である ・熊本城 ⽯垣の崩落 P-38 B-3 物件名 第2京町台ハイツ 住所 :熊本市 区 規模 :RC 造 9 階建て 建設年:1974 年 ⽤途 :店舗+共同住宅 被害概要:1階で層崩壊 コメント 平⾯形状は L 型である。⽴⾯形状は7階建てに⾒えるが上部でセットバックが有ると思われ る。1階部分はピロティ構造の駐⾞場⼀部店舗である。柱が圧壊して、ほぼ真下に落ちてき ているように⾒える。2 階床より上部の被害は層せん断⼒のほか、柱が破壊後に残った⾼さ が異なる事による強制変形の影響も考えられる。 道路側( 側)には壁が多少あるようだ 東側は 1 階に壁がないようだ 東側の柱の軸崩壊、フープ筋 90 度フック 東側が層崩壊して引っ張られた柱 上部バルコニー側雑壁のせん断破壊 2 階の⼤梁の損傷 P-39 B-4 物件名 第1京町台ハイツ 住所:熊本市 規模 :RC 造 7 階建て 建設年:1973 年 ⽤途 :店舗+共同住宅 被害概要:1階柱にせん断ひび割れ、全体では軽微な損傷である。 コメント 第2京町台ハイツと同じような平⾯形状であるが店舗側に多少の耐震壁が有る。 ⽴⾯形状は6、7階でセットバック有り。 建設年度がほぼ同じである。軽微な損傷と思われるが、もしピロティ柱がせん断破に⾄ると 柱が圧壊し 1 階が層崩壊した可能性はあると思われ楽観はできない。 道路より奥の部分 道路側部分の裏側 柱圧壊範囲 N ピロティ ピロティ 第 2 京町台ハイツ 1階柱のせん断ひび割れ 第 1 京町台ハイツ B-3、B-4 の配置図(Google Map のデータを参考に作成) P-40 B-5 物件名 不明 住所:熊本市 規模 :S 造 (外観より推定) 3 階建て 建設年:不明 (1981 年以降と思われる) ⽤途 :共同住宅 被害概要:1階柱脚 RC 部にひび割れ。 コメント 平⾯形状は L 型である。 1階部分を RC 造で⽴上げている、外端の鉄⾻柱のアンカーボルトの被り不⾜と思われる。 外観 外端柱の柱脚 RC 部分にひび割れ、外壁と同⾯に鉄⾻柱脚 RC 柱が有る為、アンカーボルトの被り不 ⾜と思われる。 P-41 B-6 物件名 東野中学校 住所:熊本市東区 規模 :RC 造 3 階建て 校舎、渡り廊下、体育館 計 6 棟 建設年:不明(耐震補強済みにより 1981 年以前) ⽤途 :中学校校舎 被害概要:校舎棟と渡り廊下棟のエキスパンションジョイントの袖壁損傷あり。 校舎内⽴ち⼊り禁⽌で学校として使⽤していない。 コメント 校舎棟は耐震補強済みで外観上は損傷が確認できない。 渡り廊下棟は耐震補強の形跡はない。 渡り廊下棟の袖壁にひび割れがあり軽微な損傷と思われるが使⽤禁⽌である。 エキスパンションジョイントの空きがなく渡り廊下と校舎等が衝突したものと思われる。 校舎棟内に床、天井等の損傷があるのかは確認できない。 耐震診断、補強設計ではエキスパンションジョイントのあきが少ないことを考慮して構造耐 震指標を評価するが、このような被害を⽣じて避難所としての運⽤ができないこともあるた め問題になると思われる。 外観耐震補強済み 外観耐震補強済み 渡り廊下 EXP.J 部ひび割れ 渡り廊下 EXP.J 部ひび割れ P-42 B-7 物件名 益城町⽴本⼭中学校 住所:益城町 規模 :RC 造 3 階建て 校舎、渡り廊下、体育館 計 5 棟 建設年:不明(校舎は耐震補強済みにより 1981 年以前) ⽤途 :中学校校舎 被害概要:2 箇所の渡り廊下棟が 1 階柱頭、柱脚の曲げ崩壊した。うち 1 箇所は解体中であった。 校舎棟は耐震補強済みで雑壁にせん断ひび割れが⾒られるがほぼ健全と思われる。 コメント 校舎内⽴ち⼊り禁⽌で学校として使⽤していない。渡り廊下棟は耐震補強の形跡はない。校 舎棟が健全でも、渡り廊下が崩壊すれば避難所、学校としては利⽤できない可能性は⾼い。 外観 耐震補強済み 校舎棟 雑壁せん断ひび割れ 渡り廊下棟 柱頭、柱脚曲げ崩壊。奥に解体中の渡り廊下が⾒える。 P-43 B-8 物件名 健軍商店街(アーケード) 住所:熊本市東区若葉 コメント この⼀体は熊本市内では被害が多く⾒られた。古い建築物が多く、それらに被害が集中して いる。ウィキペディアによると、「戦時中、三菱重⼯業の戦闘機⼯場が東町⼀帯に建設され、戦後はそ の跡地に公営住宅や⾃衛隊ができたことから急速に宅地化が進展、また、1945 年以降は市電の終点と なり、秋津や益城⽅⾯へのターミナルとなったことから商店街や飲み屋街が勃興した。」とあり、戦後 まもなくに発展したことが、旧耐震基準の建築物が多い理由と考えられる。熊本市中⼼部から東⽅へ移 動中の⾞窓から眺めた限りではこれよりも 側は⽐較的新しい建築物が多いと感じた。ここから、更に 東⽅、益城町⽅⾯へ近づくにつれ、被害を受けている建築物が増えていく。 解体中の RC 造2階建て店舗 アーケード内の⽊造 2 階建て店舗 アーケード⼊り⼝から県道 28 号を⾒る。シート養⽣中の建築物が⽬⽴つ。写真奥が益城町⽅⾯。 P-44 B-9 物件名 益城町 県道 28 号の九州⾃動⾞道交差付近 住所:益城町福富地区 コメント 健軍商店街から県道 28 号線を東⽅、益城町⽅⾯へ⾞で移動。道路の路盤のうねり、マンホ ールの浮きなどにより、スピードを控えざるを得ない状況である。熊本市から移動してくると被害の多 さが⽬⽴つ。写真は⾞窓から撮影しているためブレや映り込みがある。 RC 造 2 階建て個⼈医院 フープは@100、 ⽊造 2 階建て店舗 2 階が層崩壊 右側のピロティ柱が圧壊しているように⾒える ⽊造 2 階建て住宅 1 階層崩壊 重い屋根 ⽊造 2 階建て住宅 1 階層崩壊 重い屋根 路盤の被害(応急補修済みも多い) 、電柱の傾き、ブロック壁の被害なども⽬⽴つ。 P-45 B-10 物件名 益城町農耕地の地割れ 住所 益城町下陳地区 コメント 益城町の⽥畑に現れた地割れ。布⽥川断層付近に位置していると思われる。⼀⾒しただけな ので、地震時の断層の動きとここに⾒える地割れがどのような関係にあったかは断定できない。地割れ は横にずれているもの、縦⽅向の隆起を伴うものなどが⾒られた。 地割れの右側が隆起している 左写真と同じ場所を違うアングルで撮影 農道の舗装の地割 横ずれ幅は 20cm 程度あるようだ 河川堤防は⼿前側と奥側が⼀直線であったと思われる P-46 B-11 物件名 益城町宮園地区の被害 住所 益城町宮園地区 写真右 益城町宮園地区の益城町⽂化会館(被害は 未調査)の周辺は傾斜地が多く、殆どの⽊造家屋に 被害が⽣じたようである。 写真下 少し離れたところにましき町薬局があり、 その周辺では地割れがよく確認された。↑部分で地 盤が横ずれを起こしている。薬局の建物は新しく、 無被害か軽微と思われ営業していた。 写真左 薬局右側の路地を⼊ると清⽥医院(外観か らは RC 造 2 階と思われる)があり⽬⽴った被害は ⾒られない(応急危険度判定結果は緑) 。 写真下 益城町役場の通り向かいの駐⾞場では、地 割れの横ずれが観察できた。写真奥の家屋の右側⽅ 向に続いている。奥の家屋の地盤は少し⾼いのだが、 左側が崩れ、左隣りの⼩屋が倒れこんでいる。 P-47 熊本県建築⼠事務所協会から頂いた地図 P-48
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