海から地球を守る 「K-ECOS」の貢献

Special
Feature
【特集】
海から地球を守る
「K-ECOS」
の貢献
海から地球を守る取り組みが本格化している。
IMO(国際海事機関)による船からの各種の排出ガス規制、
特にNOx3次規制が2016年からスタートしたからだ。
技術的なハードルが高い課題に、いち早く回答を示したのが
川崎重工の複合低環境負荷システム「K‐ECOS」である。
アメリカ一国分を上回る
排出量
2 0 1 6 年 2 月 。最 新 鋭 の 自 動 車 運 搬
船 が 横 浜 港 大 さ ん 橋 に 姿 を 見 せ た 。川 崎
汽 船 の﹁ DR I VE GR EEN H IGHWAY
﹂。
川 崎 汽 船 の 環 境 ビ ジ ョ ン を 基 に 、細 部
に ま で エコ 技 術 を 施 し た 世 界 最 先 端 の 環
境対応フラッグシップだ。総トン数7万6
0 0 0 ト ン 。積 載 で き る 自 動 車 は 約 7 5
2
00台と従来船より1500台も多い。
% 以 上 、S O x︵ 硫 黄 酸 化 物 ︶は
%
%、
NOx
︵窒素酸化物︶
に も か か わ らず 船から排 出されるCO
は
︵二酸化炭素︶は
NOxは
%で世界最大の排出国であるア
排出量の約3%でドイツ一国分に相当し、
る船から排 出されるC O 2は、世 界 全 体の
ものになっている。世界中で運航されてい
近 年 、海 で の 自 然 破 壊 が 見 過 ご せ な い
ルも並んでいる。
軒分に相当する電力を生む太陽光発電パネ
以上削減している。
甲板には一般家庭300
90
25
メリカの1・3倍に相当する 。
13
高い規制がNOxの削減だ。 年からは3
種の規制を導入。なかでも技術ハードルの
この 事 態 に 国 際 海 事 機 関︵ IMO ︶は 各
*
次 規 制 が 始 ま り 、﹁ 排 出 規 制 海 域︵ ECA ︶
16
を通航する船舶は、 年の1次規制の基 準
値よりも
% 削 減 ﹂し な け れ ば な ら ない。
00
年1月以後に建造に着手
16
だ。
%削減とはそれほど重い数値であ
な け れ ば 3 次 規 制 値 を ク リ ア で き ないの
全 体 を 見 直 し 、新 た な 稼 働 手 法 を 確 立 し
ドルは格段に高い。船のエンジンシステム
た 。し か し 、3 次 規 制 値 を ク リ ア す るハー
ミング 調 整 な どで 規 制 値 を ク リア して き
き た 。た だ し こ れ ま で は 、燃 料 噴 射 の タ イ
1 次 、2 次 と N O x 規 制 は 強 化 さ れ て
燃 費 を 維 持 しな が ら 厳 しい
規 制をクリア
規制への適応を急がなければならない。
する船舶から適用﹂とはいえ多くの船主が
る。
規制値は、﹁
送 で 運 ば れ る 荷 の 3 割 が 北 米 発・着 で あ
200海里域であるからだ。世界の海上輸
指 定 さ れ ているの が 北 米 大 陸 の 東 西 沿 岸
この 規 制 の 影 響 は 大 きい 。現 在 、E C A に
80
DRIVE GREEN
関 係 に あ り 、こ れ を 解 消 し な け れ ば 船 主
の 維 持 と N O xの 削 減 は ト レ ー ド オ フ の
い て 発 生 量 が 増 え る 。﹁ つ ま り 、燃 費 効 率
が よい 状 態 の 時 ほ ど 酸 素 と 窒 素 が 結 び 付
必 然 的 に 減 る 。し か し N Oxは 、燃 費 効 率
せる。C O 2は 燃 費 がよく なれば 発 生量は
よ く 燃 え 、効 率 よ く エ ネ ル ギ ー を 取 り 出
酸 素 が 十 分 に あ り 高 温・高 圧 で あ る ほ ど
これ に は 説 明 が 必 要 だ 。燃 料︵ 重 油 ︶は 、
にあります﹂と強調する。
憲 課 長 は 、﹁ K E
‐C O Sの 最 大 の 特 徴 は 、
燃 費 維 持 と N Ox 削 減 を 両 立 さ せ た こ と
発 プ ロ ジェク ト の リ ー ダ ー で あ る 東 田 正
各 種 の 装 置 と 制 御 シ ス テ ム か ら な る 。開
K E
‐C O S は 、従 来 か ら あ る 舶 用 2 サ
イ ク ルエン ジ ン に 新 た に 取 り 付 け ら れ る
﹂に 採 用され、抜 群の環 境 性 能
HIGHWAY
を実証したのもK E
‐COSである。
ステム
﹁K E
だ。﹁
‐COS﹂
発 し たのが 川 崎 重 工の 複 合 低 環 境 負 荷 シ
く 3 次 規 制 値 を ク リア す るシステムを 開
の 世 界 初の 技 術 も 盛 り 込 み な が ら 、
いち 早
複 数の 環 境 技 術 を 組 み 合 わ せ 、
いくつも
が ここに あ る 。
り 、船 主 が 危 機 感 を 募 ら せ る 最 大 の 理 由
80
04
Kawasaki News 183
Kawasaki News 183
05
N
O
x
50
*シップ・アンド・オーシャン財団
「船舶排ガスの地球環境への影響と防止技術の調査研究報告書」
(1999年)
やOECD統計などから本誌試算
【図Ⅰ】K-ECOSのセクション図
1 水エマルジョン燃料
5 K-ECOS制御システム
舶用で世界初の実用化
「 司令部」
K-ECOS の「頭脳」
燃料
(重油)
と清水を混ぜて乳化させたのが水エマルジョン燃料。燃焼の際に燃料に含
まれる水分子が蒸発してシリンダ内の熱を奪い、NOx の発生を低減する。EGRと併せ、
NOx3 次規制をクリアする中核的な技術だ。水エマルジョン燃料は、ボイラなどでは実
用化されているが、舶用のディーゼルエンジンに本格的に長期利用するのは世界初。
K-ECOS の各セクションの状況を常に把握し、その連携に
より燃費とNOx 削減の最適制御を実現する統合制御シス
テム。各種の制御のなかでも機関停止中にしか行えなかっ
た過給機の稼働・休止を運転中に自動で行えるようにした
のが大きな特徴だ。つまりノンストップ運航による効率性
(故障モードと影響
の向上が図られる。システムは、FMEA
(潜在危険性の洗い出しと評価、対策)
など
分析)
、HAZOP
の手法に則り、極限まで安全性を追求。さまざまな運航パ
ターンを想定したシステム設計を実現した。
2 過給機カットシステム
世界初 の運航中の
自動稼働・停止を実現
*
シリンダ内に送る空気を圧縮することで、より大きな出
力を得られる。その空気圧縮装置が過給機だ。K-ECOS
では、主と副の 2 種類の過給機を備える。従来は主機の
運転中に副過給機を稼働・停止することはできなかった。
川崎重工は、副過給機の稼働・停止を自動的に行うシー
ケンシャル過給機制御システムの開発に成功。これによ
り船の EGR 運転の有無に応じた最適な圧縮空気量を実
現し、燃費を向上させられる。
4 廃水処理システム
動力不要で省電力、省スペース化を追求
EGR のスクラバからの廃水を処理するシステムで、動力不要の「傾斜管沈殿
槽」
方式を採用している。廃水は、沈殿槽および遠心分離機の2つの分離装置
によりスラッジ
(汚泥)
と水に分かれ、水はEGR の洗浄水として再利用される。
省エネ、省スペース、高性能な経済的に優れたシステムとなっている。
*船舶に搭載される2サイクルディーゼル主機において
3 EGR(排気ガス再循環装置)
独自開発のスクラバが威力を発揮
の期待に応えることはできませんし、
ま ず 重 油 と水 を 混 ぜて乳 化 させた水
↑
↑
地 球 に 貢 献 で き る 技 術 と も 言 え ないの
エマルジョン燃料をつくる
︵図Ⅰ ①- ︶
。燃
料がシリンダ内で燃えると水分が蒸発し
で す ﹂︵ 東 田 課 長 ︶。
水添加
制御部
生 を 抑 え る の だ 。こ れ だ け で N O x は
EGR
制御部
て熱を奪う。
つまり、
高温でのNOxの発
過給機
制御部
25
%削減され、
燃料消費率に変化はない。
制御装置
複 合 環 境 技 術を統 合 制 御する
〝 執 念の仕 事 〟
廃水
処理装置
排ガスエネルギーを利 用し、高 圧の吸
掃気
入空気︵掃 気︶をつくるのが過給 機だ︵図
ブロワ
過給機
② 過 給 機 カ ッ ト シ ス テ ム 、③ E G R︵ 排
冷却装置
燃料供給部
E
G
R
Ⅰ ②︶
。
K ECOSでは主過給機と副過
‐
給機
︵メインターボとサブターボ︶
の2機
スクラバ
K E
‐C O S は 、5 つ の セ ク シ ョ ン か
ら な っ て い る 。① 水 エ マ ル ジ ョ ン 燃 料 、
燃料 生成部
排気
廃水処理
制御部
燃料
排気弁
排気
大気
水
気 ガ ス 再 循 環 装 置 ︶、④ 廃 水 処 理 シ ス テ
制御装置には、過 給機制御部、EGR 制御部、廃水処理制御部、水添 加制
御 部 など が 納 められており、それぞ れの 装 置 に付 けられてい るセン
サーなどからの情報を得て統合的な制御方法を決 定する。
があり、
最適な空気量を調整するだけ
左よりガスタービン・機械カンパニー 機械ビジネスセンター 舶用機械営業部 国内営業課 池田稔基幹職、
ディーゼル部 見積・計画課 東田正憲課長、製造部 組立課 山本繁樹基幹職
【図Ⅱ】K-ECOSのシステム概念図
ム、⑤ K E
‐COS 制 御 システム、だ 。
でなく 、従 来は運航 中にはできなかっ
た過給 機の稼働・停止を自動で行えるよ
う にした。水エマルジョン燃 料 との併 用
8グラム減らせる。
では燃料を従来より ・時間当たり最大
燃焼ガス
︵排 気︶
の一部を浄化して再び
掃気として使えるようにするのがEGR
︵図Ⅰ ③- ︶
。
活躍するのがスクラバ
︵排ガス
清浄装置︶
で、
脱塵・脱硫された燃焼ガスを
シリンダに戻すことで酸素濃度の低い状
態での燃焼が起こり、
この仕組みによって
も燃焼温度が低下してNOxの生成が抑
EGRのスクラバの洗浄水を処理する
制される。
のが廃水処理システム
︵図Ⅰ ④- ︶
。
K E
‐C
OSの場合、
動力が小さく、
その処理水を
再びEGRの洗浄水として再利用できる。
そして、
一連のセクションの 動 き を と
ら え て 最 適 な 燃 焼 状 態 をつ く る の が K ‐
個 別 技 術の開 発 も チャレンジング な も
ら最適解を探しました 。各 セク ションの
の で し た が 、統 合 制 御 シ ス テ ム の 開 発
ECOS制御システムだ
︵図Ⅰ ⑤- ︶
。
エン
ジンは、積 荷の量、時 化などの海の状況、
港湾への出入りなど、さまざまな条 件下
は〝 執 念 の 仕 事 〟 と 言 え る ほ ど 困 難 な
ものでし た ﹂︵ 東 田 課 長 ︶。
多 く の 経 済 メ リット を
もたらす
で 負 荷 が 変 わ る 。そ の た め 統 合 制 御 は 、
膨大なパターンの組み合わせとなる。水
エマルジョン燃料を生成す
る際の重油と水の混合率、
副 過 給 機 の 稼 働 停 止 、燃 焼
08
ガスの濃度に応じたEGR
率の制御などが連動する。
K E
‐COSの開発は、 年にスタート
した。本社部門の技術開発本部に小型モ
デルでの実証実験を依頼。 年には神戸
工場にフルスケールのテストエンジンを
設 けて 実 際 に 船 に 搭 載 す るための 検 証
と開発作業が進められた。
K E
‐COSの
過給機やEGRは、
エンジンに貼り付く
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﹁ 燃 費 効 率 と N Ox発 生 量
るための最適な組み合わ
のトレードオフを解消す
せ と は どの よ う な も の な の
か 。膨 大 な 数 の 状 況 を 想 定
し、
一つひとつ検証しなが
07
10
kW
EGRは、排気ガスを清浄して燃焼用空気として再利用する装置。排ガス
の再利用により酸素濃度を下げ、熱容量を大きくして燃焼温度を下げ
ることでNOx の排出量を低減する。ただEGR 単体で使うと燃費の悪化
・・
やすすの増加などの問題があるが、水エマルジョン燃料や過給機カット
システムとの連携によりこれらの問題を解決している。また排気ガス中
・・
のすすや硫黄成分を除去する
「スクラバ
(排ガス清浄装置)
」
を独自に開
発。関連コストを低減できるメリットも大きい。
Kawasaki News 183
06
時
代を
切 り拓
く
初期段階から製造を担う部門も開発に
ように取り 付けられる。そのため設 計の
らかにし、溶 接できるかできないかなど
て は 本 末 転 倒 だ 。﹁ 各 種 の 制 限 事 項 を 明
維 持 で き る こ と は 、船 主 に 燃 料 代 の 削
た 。本 来 、悪 化 す る は ず の 燃 費 効 率 を
ると自負しています。
N
O
x
削 減 技 術 と は 異 な り 、高 価 な
り 、多 くの 船 が 3 次 規 制 に 対 応 す る 必 要 が ありま す 。そ の な か で
「 K-ECOS 」は、船主の皆様から最も熱い視線が注がれている製品であ
減 と い う メ リ ッ ト を も た ら す 。ま た 、他
格 化してくると予 測しています。北 米 大陸 沿岸が 規制区域になってお
水冷 4ストローク4気筒エンジン(1498cc)
に 、低 回 転 域 から 高 い 過 給 圧 を 発 生 する
ルーツ式スーパーチャージャーを搭載。最高
出力は245馬力。3人乗りのウルトラスポー
ツモデル。
の
IMO の NOx3次規制に対応した新船の建造は、2018 年ごろから本
合わせを重ねました﹂︵山本基幹職︶。
たれるお客様のご要望にもお応えできる体制を整えつつあります。
JET SKI ULTRA 250X
の製造課題も考えながら設計者と擦り
に、
「K-ECOS」の新バージョンの開発を始めており、初期費用に関心を持
加わっていた。
初期費用に関心を持たれるお客様が増えるのも事実です。私たちはすで
13
触媒の定期交換や還元剤が不要であ
とができるのです。一方で、燃料価格が下がるとランニングコストよりも
製造を担った山本繁 樹基幹職は、﹁K ‐
り、船の航行距離が長くなればなるほど、お客様にメリットをもたらすこ
ECOSの全 体 像 を捉 えながら、エンジ
剤を使用していないため、メンテナンスコストの低減が可能です。つま
り 、ラ ン ニ ン グ コ ス ト に お い て 非 常 に
減が可能で、燃費コストの削減をもたらします。また、高価な触媒や還元
この間、 年9月には
﹁ DRIVE GREEN
2007
NOx3 次規制対応技術に比べ、燃費性能を悪化することなくNOxの削
期間は数 年ですので、以後の収 益性も高
98 年モデルから適用された米国環境規制に
対応すべく開発された2ストローク、ダイレク
ト・インジェクション(燃料直噴 方式)エン
ジンの搭載モデル。規制値を大きくクリアし、
既存機種の販売継続にも貢献した。
航コスト全般を削 減でき、その費用回収
JET SKI 1100 STX D.I.
「K-ECOS」の最大のセールスポイントも、やはりそこにあります。他の
優 れ た 経 済 性 を 発 揮 す る 。﹁つま り 、運
2000
それが燃費効率の維持とNOxの削減の両立であったのです。
﹂
への採用が決定した。
営業担
HIGHWAY
当の池田稔基幹職は、﹁川崎汽船様では、
の視点が擦り合わされ、めざすべき開発の目標点を明確にできました。
同 型のフラッグ シップ を 4 隻 造 る 計 画
体になって開発されたことです。私たちが持つ専門的な視点と、お客様
注 ぎ ま し た 。ま た 、従 来 に は な い 構 造 物
もう一つ、川崎重工らしさがあります。最終ユーザーである船主様と一
ンの 組 立 工 程 に ど の よ う に K E
‐COS
の 構 成 機 器 を 組 み 込 んでいく か に 力 を
合の思想が今、
結実しているのです。
であり 、製 造上の安 全性と製 品としての
JET SKIの2ストロークエンジン史上最強の
145馬力を発生する強力パワーユニットを
搭載した2シータースポーツ。強力な加速と
水面を切り裂くような旋回性能はまさに異
次元のものだった。
境規制への対応のキーワードになると考えていました。そうした協力、複
いのです﹂︵池田基 幹 職 ︶
。
Ultra150
どの基礎研究を進めてきました。当時から「複合」が年々厳しさを増す環
で、
その一番船にK E
‐COSが採用され
ました。環境を重視するお客 様の戦略に
その運動性能の高さからJET SKI
の世界的なブームの火付け役に。
1 人 乗りの立ち乗りタイプ で、世
界 20 万台以上を販 売した不朽の
ベスト&ロングセラーモデル。
当社は1990 年代初頭から水エマルジョン燃料とEGRの組み合わせな
安 全性を確 保する方 策も詰めなくては
JS550
1999
このような協力はできなかったでしょう。
海から地球を守る取り組みに大きな
1982
十分にお応えでき、経 済 的なメリットも
の実現をめざしてきたのです。総合技術力のある川崎重工でなければ、
なりませんでした。﹂と語る。
ざまな蓄積をベースに、各カンパニー、ビジネスセンターが協力して技術
前 提 を 示 し た 川 崎 重 工 。そ の 優 れ た 実
「K-ECOS」の開発は、川崎重工らしい仕事でした。技術開発本部のさま
JET SKIとしては初めて3気筒エンジンを
搭載したラグジュアリーモデル。最高出力
100馬力。船底も全面塗装され、レッドと
ライムグリーンの2カラーが用意された。
証 成 果 は 、そ の ま ま 地 球 環 境 の 明 日 の
900ZXi
技術シナジーを結集した
川崎重工ならではの
複合低環境負荷システム「K-ECOS」
高いとの評 価をいただきました﹂と振り
初代
モデル
返る。
1995
Hideaki Sakurai
K E
‐COSが 取 り 付 け られてエンジ
ン全 体が大きくなり 、そのために他のス
川崎重工が世界で初めて開発し、
まったく新しいレジャースタイルを提案した
「JET SKI
(ジェットスキー)
」
それは、新しいライフスタイルを創造する乗り物だった。
桜井 秀明
希 望 へ と つ な が る も の だっ た 。
JET SKI®
ペースが 削 られるな ど、トレードオフの
川崎重工業株式会社
ガスタービン・機械カンパニー
機械ビジネスセンター 理事 副センター長
K E
3次規制海域における
‐COSは、
燃費効率の維持とNOx削 減 を 両 立 し
【vol.009】
解消が別の経済効率の低下につながっ
Leader’s
Voice
Epoch
Maker
完成後に行われる試験運転(左)
神戸工場のエンジン組立ライン。
自走式のラインで 8 日毎に完成する(下)。
翌 73 年には世界初となる商用機「400」を発売。アメ
リカを中心にPWC(パーソナル・ウォーター・クラフト)と
呼ばれる新市場が誕生する。水の上を自由に動き回れる
PWCは、またたく間にレジャーとして定着し、早くも78 年
には競技団体が設立された。川崎重工は「JET SKI」を登
録商標。
今やJET SKIが PWCの一般名詞にもなっている。
当初は、立ち乗りタイプが主流だったが、90 年代になると
座ったまま運転するタイプ(ランナバウト)へとシフト。初号機は
排気量 398cc 、26 馬力のスノーモービルのエンジンを流用したも
のだったが、90 年代以降は厳しい環境規制をクリアしながら大排
1 な記事が載った。「その小型艇にまたがり、バイクのようなハン
ジンが主力だ。
ドルの後ろに陣取り、新型のウォータースクーターのように水面を
ジェットスキーの歴史や生活への影響を分析した著作のタイトルの
進む」。これが米発明家ジェイコブソンのアイデアから川崎重工が
副題に、
『Life, Liberty, and the Small-Bore Engine』
とあるように
試作したジェットスキーだった。
川崎重工のジェットスキーは、
新しいライフスタイルを創造したのである。
972 年10月、米地方紙『サン・ディエゴ・ユニオンズ』に次のよう
気量・高馬力化が進展。今や4ストローク1498cc 、310 馬力のエン
※「 JET SKI 」、
「 JET SKI ULTRA 」
は、川崎重工業株式会社の登録商標です。
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※「 K-ECOS 」
は、川崎重工業株式会社の登録商標です。
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