ギリシャ危機@2015年

ギリシャ危機@2015年
第14週②
危機後の欧州の財政政策
• 最終目標:共通の財政政策
– 金持ち国(ドイツ) vs 貧乏国(GIPS) の対立
• 東京 vs 地方 の対立に類似
• 成長安定協定の強化
– 財政赤字の対GDP比3%以内、債務財務残高の対
GDP比60%以内
– ヨーロピアン・セメスター:各国の予算案を欧州委員
会が審査・監視で協調化
– 法制化(財務省HP参照:
(http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/report/kaigaichyosa2607/05.pdf )
ギリシャ政府の支出・収入・収支
危機
140,000
120,000
単位:million euro
100,000
80,000
60,000
40,000
リストラ政策⇒支出↓⇒不景気⇒税収↓・・・
20,000
0
1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
-20,000
-40,000
出所:Eurostat
収支
支出
収入
前年同期比(%)
-2
2001Q1
2001Q3
2002Q1
2002Q3
2003Q1
2003Q3
2004Q1
2004Q3
2005Q1
2005Q3
2006Q1
2006Q3
2007Q1
2007Q3
2008Q1
2008Q3
2009Q1
2009Q3
2010Q1
2010Q3
2011Q1
2011Q3
2012Q1
2012Q3
2013Q1
2013Q3
2014Q1
2014Q3
2015Q1
2015Q3
ギリシャのGDP成長率
8
6
危機
4
2
0
-4
-6
-8
-10
-12
出所:Eurostat
2001Q1
2001Q3
2002Q1
2002Q3
2003Q1
2003Q3
2004Q1
2004Q3
2005Q1
2005Q3
2006Q1
2006Q3
2007Q1
2007Q3
2008Q1
2008Q3
2009Q1
2009Q3
2010Q1
2010Q3
2011Q1
2011Q3
2012Q1
2012Q3
2013Q1
2013Q3
2014Q1
2014Q3
2015Q1
%
ギリシャの失業率
70
危機
60
59.9
50
40
30
27.8
20
10
0
全体
出所:Eurostat
25歳以下
改善しない財政赤字(対GDP比)3%
1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
0
対GDP比(%)
-2
-4
-6
-8
-10
-12
-14
-16
-18
出所:Eurostat
収支額
=
× 100
GDP
支援を
受ける
緊縮
財政
国民に多大なる犠牲
金融システムn安定化
支援を受けたい⇔痛みは嫌だ
ギリシャ悲劇
1. 財政改革の結果、確かに支出額は削減
2. しかし、不景気で収支↓=収入↓↓ー支出↓
– 収入も同時に減少・・・
3. ギリシャ国民は痛みを伴っているが、財政が
全く改善せず、将来の展望が見えない
4. 政権与党に対する不満が蓄積
5. 急進的で過激なカリスマ指導者が人気に
– ポピュリズム、過激な言動
記事A:ギリシャ財政問題 再熱
(2014年11/8 日経)
• ギリシアは2014年時点で2,400億ユーロ(34兆
円)
– アイルランド、スペイン、ポルトガルは既に卒業
• 信用を回復して自力で民間金融市場から調達が可能に
• 支援には厳しい緊縮財政が条件
– 国民に痛みが伴う⇒政権が不安定に
– ドイツなどがギリシャを追い込んでも逆効果
• 間もなくギリシャで総選挙
– 不人気な緊縮政策のサマラス前政権、大ピンチ
第1+2次で総額2,400億ユーロ
(34兆円)の支援
第1次
2010年~
11年
失敗
2015年1月、チプラス政権誕生
第2次
11年~15
年2月末
延長するか否か
6月末に
延長
ギリシャの返済スケジュール(一部)
出所:市川レポート(No.82)「ギリシャ問題の現状と展望」三井アセットマネジメント
(http://www.smam-jp.com/useful/report/ichikawa/__icsFiles/afieldfile/2015/06/01/irepo150601.pdf )
当面の債務返済スケジュール
2015年
返済額
債権者
6/5
約3億ユーロ
IMF
6/12
約3億ユーロ
IMF
6/30に一本化し
て返済先延ばし
6/16
約6億ユーロ
IMF
⇒返済遅延
6/19
約3億ユーロ
IMF
7/13
約5億ユーロ
IMF
7/20
約35億ユーロ
ECB(国債保有)
8/20
約32億ユーロ
ECB(国債保有)
IMFから受けた融
資で返済が遅延し
た初の先進国
出所:市川レポート(No.82)「ギリシャ問題の現状と展望」三井アセットマネジメント
(http://www.smam-jp.com/useful/report/ichikawa/__icsFiles/afieldfile/2015/06/01/irepo150601.pdf )
ギリシャの銀行、大ピンチ
ECB
ELA
不良
債権
資産
負債
預
金
流
出
資本
規制
14
最後の命綱:ELA
ELA(Emergency Liquidity Assistance)
• 緊急流動性支援:預金流出等でピンチな銀行
を助けるECB版の「最後の貸手」機能の一種
– モラルハザード防止のため条件あり
– 経営が「健全」な銀行への一時的な資金供給機能
– ギリシャ政府が借金を踏み倒すと(デフォルト)、ギ
リシャ国債を保有しているギリシャの金融機関の信
用が低下
• 「健全」と定義できなくなり、ELAが停止
15
もし、交渉が決裂すると
デフォルト⇒ELA停止
銀行破綻で金融危機
ユーロ離脱、ドラクマ復活で救済?
政府の借用証書で救済?
借金を踏み倒すやつの借用書は信用できない
16
ELAが脅し
デフォルト
ELA停止
嫌なら支援受け入れろ
記事B:銀行危機封じ込め
(日経 2015 6/29)
• ギリシャの銀行大ピンチ
– 預金流出、不良債権↑
• ECBがELAで支えるが、支援を徐々に弱める
– 銀行の体力が低下すると、通常のECBの資金供
給が受けられなくなり、代わりにELAで資金供給
– ECBはギリシャの銀行の見捨てる準備に
• 危機の拡散をESMと資本規制で抑制
– ESM(欧州安定化メカニズム)
18
記事C:南欧への飛び火阻止
(日経 2015 7/1)
1. ギリシャ危機がいよいよクライマックス
2. 金融危機はシステミックリスク(ドミノ倒し)を
誘発するが、今回は??
3. その可能性は低い
– 公的債務の8割がIMF、EU、ECB、EFSF(ESMの前
身)等が保有⇔2度の支援の結果
– 危機防止装置が整備(QE、OMT、ELA、ESM)
4. もし、ギリシャが債務の返済を放棄すると…
取りあえず、最終的に…
1. 7/13にギリシャは土壇場でEUの条件を全面
的に受け入れる形で合意に達する
2. 第3次金融支援で3年間で860億ユーロ(11
兆円)
– 第1・2次と合わせて計3,160億ユーロ(43兆円)
3. 引き続き、厳しい緊縮財政政策の継続
4. 今後も長期的に債務を返済する義務がある
5. 近い将来、危機が再度発生するリスクあり