第十一回 沸点の上昇 i=1 を溶媒 水溶液なら水のこと i=2 を溶質 食塩水なら食塩、砂糖水なら砂糖のこと 今、水と水蒸気はあるが、溶質、この場合砂糖は気相にならないとする。 気相と液相で化学ポテンシャルが等しい 𝐺𝑣𝑎𝑝 (𝑇, 𝑝) = 𝐺𝑙𝑖𝑞 (𝑇, 𝑝, 1,0) + 𝑅𝑇 log 𝑥1′′ 左の G は 1mol 当たり。 ‘’は液相を表す。移項して、 𝑅 log(1 − 𝑥2′′ ) = 1 1 𝐺 (𝑇) − 𝐺𝑙𝑖𝑞 (𝑇) 𝑇 𝑣𝑎𝑝 𝑇 一方、純粋物質の沸点 Tpure に対しては、 0= 1 𝑇𝑝𝑢𝑟𝑒 𝐺𝑣𝑎𝑝 (𝑇𝑝𝑢𝑟𝑒 ) − 1 𝑇𝑝𝑢𝑟𝑒 𝐺𝑙𝑖𝑞 (𝑇𝑝𝑢𝑟𝑒 ) 辺辺引けば、 −𝑅𝑥2′′ = 𝐺𝑣𝑎𝑝 𝐺𝑙𝑖𝑞 ) 𝜕( ) 𝑇 𝑇 (𝑇 − 𝑇𝑝𝑢𝑟𝑒 ) − (𝑇 − 𝑇𝑝𝑢𝑟𝑒 ) 𝜕𝑇 𝜕𝑇 𝜕( ここで、 𝐺 𝜕( ) 𝑇 =−𝐻 𝜕𝑇 𝑇2 である。よって、 𝑅𝑥2′′ = 𝐻𝑣𝑎𝑝 − 𝐻𝑙𝑖𝑞 𝐿 (𝑇 − 𝑇𝑝𝑢𝑟𝑒 ) = 2 (𝑇 − 𝑇𝑝𝑢𝑟𝑒 ) 2 𝑇𝑝𝑢𝑟𝑒 𝑇𝑝𝑢𝑟𝑒 L:蒸発熱、が得られる。 Henry の法則 𝐺vap = 𝜇liq = 𝜇2∗ (𝑇, 𝑝) + 𝑅𝑇 log 𝑥2 を p で微分。 𝑥2 は CO2 のモル濃度。小さいと仮定している。 μ2 は、T と p に依存するはずだが、導出の段階で、V の変化を無視したので、この項の p 依存もなくなって しまっている。 両辺 p で微分 𝜕𝐺𝑣𝑎𝑝 𝑅𝑇 𝜕𝑥2 ( )= ( ) 𝜕𝑝 𝑥2 𝜕𝑝 左辺は V なので、理想気体であれば、 V 1 1 𝑑𝑥2 = = RT 𝑃 𝑥2 𝑑𝑝 ここから、 𝑥2 = 𝐶𝑝 が得られる。すなわち、温度が一定であれば CO2 のモル濃度は圧力に比例する。これをヘンリーの法則とい う。 一方、温度依存はどうなっているのか? 𝐺vap = 𝑈 − 𝑇𝑆 + 𝑃𝑉 を 1mol にしたもの。 z = z2 = 𝑢2 + 𝑝𝑣2 − 𝑇𝑠2 u2 は部分モル内部エネルギー、v2 は部分モル体積、s2 は部分モルエントロピー。 これらは水分子と CO2 分子の相互作用、 (水分子間の相互作用も含め)に依存するので、簡単な理論式はない。 𝐻 = 𝑈 + 𝑃𝑉 として、エンタルピーで書けば、 𝐻𝑣𝑎𝑝 − 𝐻溶液中 − 𝑇 (𝑆𝑣𝑎𝑝 − 𝑆溶液中 ) = 𝑅𝑇 log 𝑥2 右辺は必ず負。 エンタルピーH は、溶液中の方が小さい。 S は、体積が大きい方が大きい。溶液中 S の部分モルエントロピーは、ある意味、液体になって水と分離して いるときの CO2 のエントロピーに相当する。この状態から、混合のエントロピーでもって全系のエントロピー が出るので。 水溶液中の CO2 のエンタルピーのデータ 基礎物理化学 Walter J. Moore 細矢治夫、湯田坂雅子訳 東京化学同人 上巻の巻末 ΔH=-412.9 kJ/mol ガスの CO2 のエンタルピー ΔH=-393.51 kJ/mol なので、差は 19.4 kJ/mol これは 298.15K だけれど、このエンタルピー差の温度依存は無視して、 19.4 Δ𝑆 𝑥2 = exp ( − ) 𝑅𝑇 𝑅 として、ΔS の温度依存も無視すれば、温度が増えると溶解度が減ることがわかる。 T=273K と T=313K を入れると、およそ 1/3 に減少する。実測値は 1/3.5 程度である。 逆に固体では、固体->液体になるところで融解熱が必要なので、RT の符号が逆で、温度が上がれば溶解度が上 がることが予想される。 (よくみかける NaCl とかはイオンになるので授業の範囲外。 )
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