「新規カイコバキュロウイルス発現細胞と 膜タンパク質応用機能解析技術」 新潟大学・大学院医歯学総合研究科 分子細胞機能学 (医学部 生化学第二) 准教授 武内 恒成 なぜ、バキュロウイルス発現系なのか? なぜ、昆虫細胞発現系なのか? ・ 今後の製薬・薬剤の標的の多くは 細胞膜タンパク質である。 ・ 細胞膜タンパク質では 7回膜貫通分子 GPCRなどが 今後の大きな標的かつ研究課題である。 ⇒ しかし、膜タンパク質の発現は難しい。 ・ バキュロタンパク質発現系は発現量で 他を凌駕する。 ・ 温度管理(37℃)も CO2も必要ない昆虫細胞の扱いは簡単 ・ 細胞膜タンパク質発現では 細胞体 or 虫体にて発現されるため 細胞膜タンパク特有の翻訳後修飾もされる。 ⇒ 細胞膜タンパク質の解析に向いている。 バキュロウイルス発現系でなにができるか? −本日の話題ー 1)これまで困難であった膜タンパク質(構造・ 機能)解析に有効である (圧倒的な発現量を利用する) 2)我々が開発した新規昆虫細胞などを応用 し、生きた細胞膜上を基盤とした機能解析 -Cell on chip assay- を可能とした (昆虫細胞の扱いやすさ利点を利用する) 3)細胞内・細胞膜上でのイメージング技術と の統合 (バキュロウイルスの利点を利用する) タンパク質大量発現系: 2つのバキュロウイルス生産系 Two major baculovirus systems • AcNPV-昆虫細胞系 – ヨトウムシなどの昆虫由来細胞質生産 Sf9, Sf21,Hi5 cells etc. – 高発現の樹立細胞が多数存在 • BmNPV-カイコ系 BmN4, Ke1 cells – カイコの幼虫や蛹を使用してタンパク質生産 – 虫体を用いることで、極めて高いタンパク質 生産性を有する 昆虫培養細胞系の数10倍∼数100倍 & 発現系素材としてのカイコ ★年間を通していつでも飼育できる。 ★探餌行動と蛾の飛翔能力が無いため、 飼育設備が簡単である。 ★発育ステージが良くそろい、計画通りに飼育できる。 ★大量飼育も少量飼育もコントロール自在であり、 飼育コストが安い。 ★遺伝的性質が均一で、個体差が小さい。 ★多くの原種が存在し、自由に品種改良できる。 ★孵化幼虫から5齢幼虫まで、約1ヶ月で 体重が1万倍になる(驚異的な成長速度) ★蚕血中のアミノ酸量は、ヒトの約500倍存在し、 外来蛋白生産に適している。 蚕=高能率な全自動細胞培養タンク 片倉工業(株) カイコバキュロウイルスタンパク質発現系の概略 さまざまなタンパク質の発現にバキュロウイルス系は 非常に向いている これまでにバキュロ発現系で我々が手掛けた分子群 これまでにバキュロ発現系で我々が手掛けた分子群 神経特異的免疫グロブリンスーパーファミリー 接着分子群(IgSF)の発現・構造解析 Presenilinや密着結合帯形成分子 数回膜貫通タンパク質の発現構造解析 Alzhimer 病関連分子 APP / Presenilin ・膜タンパク質、 巨大分子の大 量発現に有利 ・ 昆虫細胞膜 上に発現させ、 細胞生物学的 解析が可能 カイコバキュロ大量発現系の実績(現況)と カイコバキュロ大量発現系の実績(現況)と 有用性 有用性 膜タンパク質発現に適合した新規カイコ 培養細胞と無血清培養系の導入 NIAS-Bm-Ke1細胞 ・従来のSf9やカイコ BmN4細胞より、高発現 細胞株 ・無血清高密度培養に 耐える 膜タンパク質発現の実績からの、 膜タンパク質発現の実績からの、 GPCRの大量産生 GPCRの大量産生 および および リガンドなど リガンドなど 機能解析系の開発 機能解析系の開発 虫体・蛹体を用いた産生系 ・構造解析を見据えた発現系 ・リガンドなども見据えたG蛋白質共役型受容体 の細胞生物学的研究 新規培養細胞株の確立 新規培養細胞株の確立 Ke1・Ke17細胞 Ke1・Ke17細胞 (1) (1) NIAS-Bm-Ke1 NIAS-Bm-Ke17 ・ 細胞膜タンパク質の発現に好都合の 新規培養細胞株 Ke17 細胞を確立した 100 80 60 ・ウイルス感染効率が良い ・低温発現 誘導活性がある(右図) ・他の細胞株とくらべて 細胞膜タンパク質の 細胞膜へのソーティング活性が高い ・無血清培養に耐える 今西(農水省生物研)武内(新潟大)ら、 40 20 0 18℃ 20℃ 22℃ 24℃ 26℃ 発現培養温度条件 (細胞膜画分/全画分) (特願2009-200187) 新規培養細胞株の確立 新規培養細胞株の確立 Ke1・Ke17細胞 Ke1・Ke17細胞 (2) (2) 新規樹立株細胞 Ke1 における 培地選択での C.elegans 膜タンパク質 (sax7/L1)発現効率 140 Ke1(Suspen 100 120 100 80 80 60 60 40 40 20 d) Ke1(attach) 0 Ke1(attach) 20 BmN4(attac BmN4(Susp h) BmN4(attach) 0 KBM700 AGDSA-α8 Ke1 無血清 培地 Grace(Bm) BmN4 血清あり 培地 発現培養条件 end) バキュロ発現タンパク質の抗体産生能への効果 バキュロ発現タンパク質の抗体産生能への効果 TAG-1 antigens に対する抗体タイターの変化 1000000 100000 n at i ve E. c o l i Vac u l o (l ar va) Vac u l o (pu pa) 10000 Antigen に対する糖鎖修飾 1000 1 4 day 3 0 day 4 5 day 6 0 day 7 5 day Fα1−3 (pupa) Native (larva) カイコバキュロ発現細胞を用いた カイコバキュロ発現細胞を用いた Cell Cellon onChip Chipassay assay 膜タンパク解析システムの構築 膜タンパク解析システムの構築 <movie> ・接着分子リガンドの検索 ・オーファンリガンド & 結合化合物(薬剤)の探索 ・チャネル分子の機能解析 ・・・・・ 細胞トラップを用いた on cell スクリーニング系 の構築 ・オーファンリガンド、結合化合物(薬剤)の探索 ・チャネル分子の機能解析 ・・・・・ カイコバキュロウイルスを用いた カイコバキュロウイルスを用いた マーカー遺伝子導入と マーカー遺伝子導入と イメージングシステム イメージングシステム 感染率: AcNPV << BmNPV From: Invitrogen™ 遺伝子導入効率の比較 : AcNPV and BmNPV (The ratio of transfected cell number) PC12 Primary cult. AcNPV PC12 Primary cult. BmNPV PC12 Primary cult. BmNPV <modified> + factor (s) Integration of “ the protein-expression “ & “ the imaging analysis ” The modification of BmNPV to rise the transforming efficiency (バキュロウイルスの哺乳類細胞・組織用 高感染ウイルスへの改変) CAG promoter (Luc) gp64 VSV-G MHV-S NPV promoter GFP :バキュロウイルスエンベロープ :水疱性口内炎ウイルスエンベロープ :マウス肝炎ウイルスエンベロープ Sorting-sites Organelle Lights™ Tag description and size Cytoplasm Nuclear export sequence (1.8 kD) directs cytoplasmic localization Endoplasmic Reticulum ER-specific staining is obtained through retention signals from calreticulin & KDEL (1.8 kD N-term & 0.5 kD C-terml) Endosome Fusion of Emerald GFP to Rab5a (23.8 kD), an early endosomal marker, allowing tracking of endosomal movement within the living cell Golgi Human Golgi-resident enzyme N-acetylgalactosaminyl-transferase-2 (12.6 kD) for Golgi-specific live cell labeling Mitochondria Leader sequence of E1 alpha-pyruvate dehydrogenase (3.1 kD) localizes constructs to the mitochondrial matrix Nuclear Envelope Nesprin 1 alpha C-terminal transmembrane domain (6.7 kD) targets E-GFP to the nuclear envelope Nucleus SV40 nuclear localization sequence (1.0 kD) restricts fluorescent protein expression to the nucleus Peroxisome Peroxisomal C-terminal targeting sequence (0.3 kD) enables staining and tracking of peroxisomes in live cells Plasma Membrane ・Myristoylation/palmitoylation sequence from Lck tyrosine kinase (0.9 kD) ・CAAX box (Farnesyl/geranylgeranyl signal) of K-Ras mediates staining of the plasma membrane Synaptophysin Synaptic vesicle protein involved in vesicle endo- and exocytosis (33.8 kD, N terminus of GFP) Integration of “ the protein-expression “ & “ the imaging analysis ” 産学連携の経歴 • • 2000年-2005年 ㈱片倉工業と共同研究実施 2000年-2005年 文部科学省タンパク3000プロジェクト (細胞内情報伝達)に参画(名大・生命科学) • • • 2004年-2006年 ㈱エーザイ KAN研究所グループリーダー 2005年-2007年 ㈱オリンパス と共同研究 2006年 ㈱バキュロテクノロジーズ社設立 取締役 就任(2008年京都府立医大着任とともに退任) • 2006年-2007年 ㈱ピリオドック および ㈱メディビック と共同研究 およびアドバイザリー • • 2007年-2011年 農水省生研センター事業に採択 2010年-2015年 農水省アグリヘルスサイエンス事業に採択 2000~2004 名古屋大学大学院 生命理学 2004~2006 ㈱エーザイ KAN研究所 2006~2008 京都府立医科大学 大学院・解剖学 2008~ 新潟大学大学院 医学・生化学 お問い合わせ先 新潟大学 地域共同研究センター TEL 025-262-7554 FAX 025-262-7550 E-mail [email protected] 新潟大学 医歯学総合研究科 分子細胞機能学分野 (医学部 生化学第二) 武内 恒成 [email protected]
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