被災状況と対策について 調査団の構成

熊本地震・三ヵ月報告会
被災状況と対策について
椋木俊文
地盤工学会 熊本地震調査団幹事長
熊本大学大学院 先端科学研究部
調査団の構成
北園芳人 (団長)
安福規之 (副団長)
椋木俊文 (幹事長)
笠間清伸 (幹事兼土砂災害調査班主査)
池見洋明(断層調査班主査)
石藏良平(堤防被害調査班主査)
廣岡明彦(大分方面被害調査班主査)
林 泰弘(南熊本方面調査班主査)
村上 哲(液状化被害班調査)
藤川拓朗(災害廃棄物調査班主査)
末次大輔(地盤構造物被害調査班主査)
杉本知史(歴史・遺産構造物被害調査班主査)
熊本大学(名誉教授)
九州大学
熊本大学
九州大学
九州大学
九州大学
九州工業大学
九州産業大学
福岡大学
福岡大学
佐賀大学
長崎大学
全国の調査協力メンバーを含む総勢45名で構成
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発表の流れ
1. 熊本の地質構造に何が起こったのか?(初期条
件の確認)
2. 熊本地震(繰り返す余震)
3. わかってきたこと
1. 山岳地域の被害
2. 熊本平野部の被害
3. 災害廃棄物について
4. まとめ
沖積層と火山灰に起因する地盤が広く分布(そしてそこが被害大) 熊本市周辺地盤図(2003)
西原
立野(阿蘇大橋付近)
俵山
有明海
益城
白川
緑川
沖積層
阿蘇火砕流堆積物
御船
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文
熊本市周辺地盤図(2003)
平成5年6月(低地会水位時期)
地下水位標高コンター図
西原
立野(阿蘇大橋付近)
地下水位標高40m
俵山
益城
白川
緑川
地下水位標高2m
阿蘇火砕流堆積物
御船
観測点:益城町役場から北東に約660m
地表面加速度記録(Kik-net益城)
地表面加速度(cm/s2)
最大値925cm/s2
800
400
0
-400
-800
-1200
地表面加速度(cm/s2)
前震
1200
本震
1200
最大値1156cm/s2
800
400
0
-400
-800
-1200
0
10
20
30
40
50
60
0
10
20
30
40
50
60
時間(秒)
時間(秒)
大きな揺れが10秒から20秒弱程度であったことがわかる
これまでの内陸型地震と比較して,目立った特徴は特に見られない
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前震の震度分布
秋津川
木山川
防災科研データに
河川位置を加筆
柿原氏(応用地質)
本震の震度分布
秋津川
木山川
防災科研データに
河川位置を加筆
柿原氏(応用地質)
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2000
1718
余震発生回数
200
1600
阪神淡路大震災
150
1200
熊本地震
累積余震発生回数
100
800
50
400
0
累積余震発生回数
250
前震発生からの余震回数
(発生後2週間で震度4以上が98回)
0
0
20
40
経過時間(日数)
60
80
気象庁 震度データベースより作成
調査団の調査方針
• 山間部・河川流域は、危険領域の確認
→避難の拡大指示の確認
• 復旧が早い平野部は、土木構造物、家屋など
破壊要因を復旧前に調査
→今後の防災減災のためのデータ収集
• 損傷が軽度に済んでいる地盤構造物も調査し、
その要因を分析する
→INPUT(地震動の大きさ)と初期・境界条件(地形と地質)を明確にし、
現行の工法がどこまで大地震に耐えられたかの検証
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文
断層班の状況報告
主査:池見(九州大学)
• 日本応用地質学会との共同調査。
• 国土地理院の判読結果をもとに、地表亀裂の現地踏査を行って、
1/25,000断層詳細図(背景)を作成。
• 亀裂は修復されつつあり、未踏査箇所は、他機関の報告等を利用・集
約する予定
地盤工学会平成28年熊本地震地盤災害調査団
土砂災害調査班
平成28年熊本地震
山岳地域の被害
平成28年熊本地震による阿蘇地域で生じた土砂災害について
笠間主査(九州大学),池見(九州大学),末次(佐賀大)
連携グループ:日本応用地質学会九州支部(黒木団長),
土木学会斜面工学小委員会(後藤,鈴木)
ご批判・ご指摘・ご意見あれば、笠間([email protected])までお願いします。
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航空写真による一次スクリーニングの結果
阿蘇大橋大規模土砂崩壊
黄色:崩壊領域 (山の尾根部が崩壊)
水色:潜在危険個所
赤:クラック
高野台地区
新所地区
ピンク:表面断層
濁川の両岸
13
熊本地震地盤災害調査団 土砂災害報告,2016
高野台の地すべり性崩壊
(第一地下水層までの深度100m以上、地震前には強雨なし、なぜ? )
G.L. 0 m
黒ぼく
黒ボク赤ボクの高含水比特性
+
振動による流動化が起きたか?
G.L. 2.0 m
G.L. 2.2 m
G.L. 2.7 m
黒ぼく
G.L. 3.6 m
G.L. 8.3 m
ローム
(試料採取)
硬質
火山灰
(試料採取)
G.L. 9.3 m
G.L. 9.4 m
草千里ヶ浜火山降下軽石層
(試料採取)
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阿蘇大橋周辺の深層崩壊
開口したクラック
黄色:崩壊
藤色:潜在亀裂群
オレンジ色:顕在化しつつある崩壊
4月24日撮影
無人重機を使った土砂撤去
地震時からの挙動変化と潜在崩壊の分布
潜在崩壊面が藤色のゾーン中に
開口した亀裂や段差という形で
尾根筋まで潜在すべりが多数形成
されている。
斜面に現れた段差
表層が難透水性の火山灰層で覆
われていた斜面で、降雨が多亀裂
性の岩盤に浸透しやすくなり、深
い崩壊の原因となる恐れ。
崩壊地に残留する大量の崩土(岩塊)
阿蘇市道狩尾幹線(阿蘇谷から北外輪山までの道路)
⑱
⑲
ミルクロードとの交差付近の切土のり面状況 地山補強土のり面は健全で
あるが,⑱で見られるようにモルタル吹付のり面は, 背面土質が粘性土の
ため,モルタルが剥離 崩落している。
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平成24年九州北部
豪雨災害対策箇所
平成28年熊本地震による
崩壊箇所
北園
撮影
平成24年九州北部
豪雨災害対策箇所
平成28年熊本地震による
崩壊箇所
平成28年6月21
日の豪雨により
拡大または新た
に崩壊
山間部の被災地は、前震・本震でかろうじて大崩
壊しなかった領域が豪雨により崩壊(複合災害)
北園
撮影
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俊
文
熊本地震による斜面災害の特徴
火山性の地形・地質・地盤で発生した地震動による斜面災害
→ 山の尾根部が地震動で崩壊(豪雨災害との相違)
→ 岩盤の崩壊や落石(四川大地震の土砂災害に類似)
→ 崩壊土砂の移動距離が大きい
→ 連続多発型の表層崩壊が発生(南阿蘇村烏帽子岳周辺)
→ 火山灰地盤の崩壊
19
熊本地震地盤災害調査団 土砂災害報告,2016
地盤工学会平成28年熊本地震地盤災害調査団
液状化班・河川堤防班報告
平成28年熊本地震
熊本平野部の被害
液状化関連:村上哲(福岡大学)、永瀬英生(九州工業大学)
堤防関連:石蔵良平(九州大学)
熊本城関連:杉本智史(長崎大学)
ご批判・ご指摘・ご意見あれば、村上([email protected])までお願いします。
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熊本城
熊本市周辺地盤図(2003)
九州自動車道(福岡方面)
益城
高速道路落橋箇所
秋津川
白川
木山川
井戸水の利用が多
い地域(自噴すると
ころも)
加勢川
緑川
九州自動車道(鹿児島方面)
熊本平野の卓越周波数分布
小 ←周波数(Hz)→ 大
深 ←支持層→ 浅
熊本市周辺地盤図(2003)
液状化試料の粒度分析
西原
立野(阿蘇大橋付近)
春日
日吉
俵山
益城
白川
川尻
緑川
阿蘇火砕流堆積物
御船
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文
液状化前の試料と
噴砂試料の粒度分析
液状化しやすい
きわめて液状化しやすい
120
Col
1 vs Col 2
春日(液状化なし)
Col
1 vs Col 3
春日(陥没個所)
前震後採取
Col
1 vs Col 4
春日(地割れ箇所)
Col
1 vs Col 5
春日(噴砂)
Col
1 vs Col 6
川尻(噴砂)
Col
1 vs Col 7 本震後採取
日吉(噴砂)
100
通過質量百分率(%)
Y Data
80
液状化発生地盤は、噴砂に
より細粒分土の損失
60
40
液状化しにくいはずの
土が前震で液状化した
20
0
0.001
0.01
0.1
1
10
X Data
粒径(mm)
水の都の熊本(益城あたりでもたくさんの湧水)
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文
■福富・惣領地区(被害の要因)
調査日:2016年7月2日
湧水は40m、70mの被圧帯水層(場所によっては水頭
GL+3mの被圧地下水との住民の話)へ管を挿入し、ポン
プを利用することなく自噴させて利用しているとのことであ
る。
この自噴管および地区の排水路が長年の利用で損傷を
受けていれば、表層地盤への漏水浸透が生じ、表層の不
圧地下水の水位を押し上げてた可能性がある。表層地盤
の地下水位が上昇することは、造成地盤の安定性の立場
からするとマイナス要因である。加えて、前震、本震ととも
に震度7という大きな地震外力が作用したことを考えると、
前震において生じた排水施設の損傷や自噴管の損傷に
加え、孔壁と管の間に隙間が生じていれば、表層地盤へ
の地下水浸透はさらに増し、本震時に表層地盤の地下水
位は高い状態にあったことも考えられる。
埋設管の損傷によってブロック擁壁
の隙間から排水される水
排水施設の損傷により地表面にで
きた水たまり
損傷した擁壁より噴出する水
秋津川河川堤防における復旧の課題
土のうによる嵩上げ
課題のイメージ
被圧地下水頭 堤防周辺
:GL 0~-1m程度
・表層は阿蘇火砕流(Aso-4)が堆積,N値は10~30程度
・土のうによる嵩上げ(地殻変動・地盤沈下:最大1.5m程度)
・ 河川堤防付近:湧水の地盤浸透による地下水面の上昇
損傷復旧:切返し工法?⇒地下水位が高すぎる
⇒地下水位を下げる⇒復旧手順:周辺宅地と連携が重要
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地盤工学会平成28年熊本地震地盤災害調査団
災害廃棄物調査班
平成28年熊本地震
災害廃棄物
調査メンバー(敬称略):藤川(福大)、大嶺(長崎大学)、山中(香川大)、
林(九州産業大)、椋木(熊大)
東日本大震災で発生した災害廃棄物の仮置場
では数箇所で火災が発生し、問題となった
ご批判・ご指摘・ご意見あれば、藤川([email protected])までお願いします。
災害廃棄物の処理推移
2014年3月で処理
が終了
火災のリスク
長期仮置き
基盤研究(C) 課題番号24560656
災害廃棄物の仮置き場における温度ガス管理による火災発生防止
室蘭工業大学 吉田英樹准教授提供
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災害廃棄物を将来的に資源として利用することを想定
■ 膨大な量の災害廃棄物の受入れ・処理に伴う仮置場の長期化
仮置場の維持管理
・火災予防モニタリング・・ 有毒ガスやダイオキシンによる土壌汚染を防止する
・周辺環境モニタリング(土壌サンプリング)・・土壌汚染の有無の把握と対策
温度測定の様子
土壌のサンプリング
仮置き期間1ヶ月においては、まだ内部の温度は低い
東日本大震災の場合、仮置き期間2~3ヶ月以降に火災が発生
⇒ 定期的なモニタリング、積み上げ高さ制限が重要
まとめ
南阿蘇
小さな谷を埋めた宅地
造成盛土の法面不安定
擁壁の不安定
耐震設計が事実上無い
家屋は頑丈でも、基礎や地盤が崩
れると、持ちこたえられない:
益城
• 地域の安全な再建には、地盤
の良否と補強に関する専門家
の支援が重要。
• 地盤工学会では、
地盤品質判定士制度を推進。
熊本地震における住宅の被害は、脆弱な地盤の影響が少なくない
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ご清聴ありがとうございました。
熊本地震・三ヵ月報告会
被災状況と対策について
椋木俊文
地盤工学会 熊本地震調査団幹事長
熊本大学大学院 先端科学研究部
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