5-アミノレブリン酸(5-ALA)とランタニドナノ粒子(LNP)併用によ る深部微小癌局在診断・治療技術の構築 京都府立医科大学 大学院医学研究科 教授 大辻 英吾 村山康利(京都府医大) 湯浅英哉(東工大) 小倉俊一郎(東工大) 光線力学診断(PDD)・治療( PDT )とは? 癌細胞 3O 2 励起光 光増感剤 1O 2 ☠ PDT PDD 方法1: 内在性の光増感剤を使う 方法2: 合成光増感剤を投与する ALA 投与による PPIX (内在性増感剤)の癌細胞への蓄積 5-aminolevulinic acid ALA PPIX ALA投与(方法1)による PDD と PDT 400 nm 5-アミノレブリン酸 (ALA) 3O 2 PPIX 1O 2 PDT PDD ALA を用いた PDD の例 Blue Light 漿膜浸潤を伴う 胃癌 漿膜浸潤を 伴わない胃癌 5 胃癌腹膜播種 White light Fluorescence image 大腸癌腹膜播種 White light Fluorescence image 漿膜浸潤の病巣や一部の腹膜播種のような 表層の病変であれば、5-ALAを用いた蛍光診 断でも有用であるが、深部の診断は困難 従来技術とその問題点 既に実用化されているものには、アミノレブリン 酸(ALA)服用による光線力学診断・治療法 (PDD・PDT)等があるが、 増感剤励起光の低深達性の問題があり、深部 癌に利用されるまでには至っていない。 新技術の特徴・従来技術との比較 • 従来技術の問題点であった、励起光の深達性 を改善することに成功した。 • 従来は臓器表層部の疾患の使用に限られて いたが、近赤外線の利用により深達性が向上 できたため、組織深部の患部に励起光を到達 させることが可能となった。 • 本技術の適用により、手軽な光線力学診断・ 治療の実現が期待される。 近赤外線を可視光に変換できるランタニドナノ粒子(LNP) 400 nm LNP: NaYF4(Yb/Er) 600 nm 800 nm 1000 nm NIR Laser 通常の蛍光物質: 高エネルギー光を低エネルギー光に変換 LNP:通常と逆 近赤外光 ⇒ 可視光 が可能 LNP と ALA を組み合わせた PDD・PDT 5-アミノレブリン酸(ALA) 癌細胞 近赤外線 3O 2 可視光 LNP PPIX 皮下組織 1O 2 ☠ PDT PDD LNPと5-ALAを投与し、PDDを行ってもLNP由来 の赤の発光とPpIX由来の赤の蛍光が重なる → バンドパスフィルターを用いてPpIX由来の蛍 光を抽出 White light 10s Ex:976nm Ex:405nm SP <700nm LP >455nm 60s Bp610±5nm Bp632.8±0.5nm マウス皮膚筋層を超えての深部観察について検討 MKN45皮下移植モデルに対し、5-ALA 5mg/body を腹腔内投 与し5時間後に腫瘍を摘出 マウスでは5-ALA投与後皮膚にPpIXが集積する事から、5ALA非投与マウスの皮膚筋層にて腫瘍片を被覆し、皮下腫瘍 モデルの代替とした 腫瘍片およびその周辺にLNPを撒布し、近赤外照射の上観察 腫瘍片 Ex:405nm LP >455nm Ex:405nm LP >455nm Ex:976 BP:610nm ±5nm 皮膚筋層被覆 Ex:976 BP:632.8nm ±0.5nm マウス体表より胃癌細胞株を用いた腹膜播種観察 MKN45腹膜播種モデル LNP腹腔内投与 体表からの観察でも、NIRの透過 性と、LNPの蛍光強度の特色から、 体表からもLNPの蛍光を観察でき ている。 カラーCCD 405nm NIR ImagEM NIR,610-10bp, 1秒10回積算 NIR,620-10bp, 1秒10回積算 NIR,632.8-1bp, 1秒10回積算 LNPと5-ALAを投与し、バンドパスフィルターを用い ると、腹膜播種診断が可能 皮膚筋層を被覆しても蛍光が観察できる →深部観察が可能 体表からの観察でも積算画像で腹膜播種診断が できる 子宮頸癌細胞 HeLa に対する PDT Cell Viability (%) 100 80 OA-LNP 60 Glc-LNP without ALA NeuNAc-LNP without ALA OA-LNP Man-LNP Gal-LNP Fuc-LNP Sia-LNP Glc-LNP 40 20 0 0 5 10 15 20 Net Irradiation Time (min) Glc-LNP 20 胃癌細胞 MKN45 に対する PDT 1.0 シリカコート: LNP(Er)Si No LNP LNP(Er)Si LNP(Er)AP Cell Viability 0.8 0.6 アミノシリカコート: LNP(Er)AP 0.4 0.2 0.0 0 5 10 Time (min) 15 20 21 上皮成長因子受容体(EGFR)発現胃がん細胞に対する PDT LNP-EGF conjugate LNP EGF Cell Viability [%] 120 Control 100 ALA 80 LNP 60 * 40 ALA+Conjugate 20 0 EGFR ALA+LNP ー NIR照射 + 想定される用途 • 外科手術におけるモダリティ装置。 • 小規模医療機関または家庭用の小型医療装置。 • 動物病院での設置。 • 癌以外の治療にも適用可能。 実用化に向けた課題 • 現在、PDT について細胞での検証まで開発済み。 しかし、PDD の低感度が未解決である。 • 今後、PDT については動物実験データを取得し、 実用化に向けての条件設定を行っていく。 • PDDについては、弱い発光を積算して可視化す る技術を確立する必要あり。 • LNPの毒性評価がまだ不十分。 企業への期待 • 未解決のPDDの可視化については、高感度 CCDカメラと画像処理の技術により克服できる と考えている。 • 高感度画像取得の技術を持つ、企業との共同 研究を希望。 • また、半導体レーザーの医療応用分野展開を 考えている企業には、本技術の導入が有効と 思われる。 本技術に関する知的財産権① • 発明の名称 :赤外域光による光線力学的 治療又は診断剤 • 登録番号 :5854407 • 出願人 :東京工業大学、SBIファーマ • 発明者 :湯浅英哉、小倉俊一郎、 高橋究、井上克司、田中徹 本技術に関する知的財産権② • 発明の名称 :分子内電荷移動機構を 利用した光増感剤の合成 • 出願番号 :特願2016-102568 • 出願人 :東京工業大学 • 発明者 :湯浅英哉、津賀雄輝 LNP-合成光増感剤の複合体 「LNP発光波長」 = 「増感剤吸収波長」 増感剤が細胞の中だけで作用 癌で発現亢進する糖輸送体を標的 スリムな増感剤 疎水性環境でのみ増感作用 LNP L N P 増感剤 グルコース グルコース輸送体 お問い合わせ先 京都府立医科大学 研究支援課 研究支援コーディネーター 川村里香 TEL 075-251-5208 FAX 075-251-5275 e-mail [email protected]
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