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SCDサマリー
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症状と薬の種類
運動失調症状に対する薬物療法
錐体外路症状(パーキンソニズム)に対する薬物療法
錐体路症状(痙縮)に対する薬物療法
自律神経症状に対する薬物療法
薬の飲み方
SCDサマリーシリーズ
監修:金澤一郎先生
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脊髄小脳変性症知っておきたい病気のこと
脊髄小脳変性症患者さんの医療・福祉制度
脊髄小脳変性症の症状と対策
脊髄小脳変性症の治療1 ─薬物療法─ 国際医療福祉大学 名誉大学院長
編集:中島健二先生
独立行政法人国立病院機構
松江医療センター 院長
発行:田辺三菱製薬株式会社
企画・制作:株式会社ライフメディコム
脊髄小脳変性症の治療2 ─リハビリテーション─
脊髄小脳変性症患者さんの日常生活
<SCDサマリー4>
CD−−312C−
2016年6月作成
(審)
16V102
薬のことをよく知り
正しく服用しましょう
監修:国際医療福祉大学
名誉大学院長
編集:独立行政法人国立病院機構
松江医療センター
金澤一郎先生
院長 中島健二先生
症状と薬の種類
運動失調症状
患者さんごとに最も効果的な薬剤を
組み合わせて使用します!
筋力は正常であるにもかか
わらず、運 動 の 際 に 筋 肉 が
協調して動かないために運
動が円滑にできなくなる。
歩行障害
四肢失調
・甲状腺刺激ホルモン放出
ホルモン 構音障害 など
・タルチレリン水和物
(Thyrotropin releasing hormone:TRH)
(TRH誘導体)
錐体外路症状
脊髄小脳変性症は、運動失調を主な症状とする神経変性疾患の総
称です。なかでも小脳性運動失調が多く、後索性運動失調*A や、痙
性対麻痺*B がみられることもあります。脊髄小脳変性症の治療薬
は運動失調に対するものがいくつか開発されています。また、錐体
錐体外路とは主として大脳
基底核などによる運動調節
を 示し、こ れ が 障 害 さ れ る
と不随意運動が出現したり
運 動がスムーズにできなく
なったりする。
外路症状(パーキンソニズム)、錐体路症状(痙縮)、自律神経症状
錐体路症状
(起立性低血圧、排尿障害など)に対しても、それぞれ対症的に治療
錐体路とは大脳からの運動
の 命 令 を 伝 達 する経 路 で、
ここが障害されると運動麻
痺などの随意運動に関する
異常が生じる。
薬が用いられています。シリーズ 4 では、各症状と使用される代表
的な薬の解説をします。実際の治療にあたっては疾患ごとに適宜
パーキンソニズム
・筋強剛
・動作緩慢
・抗パーキンソン病薬
・姿勢反射の障害
痙縮
・筋弛緩薬
薬剤を組み合わせるとともに、患者さんの
コンプライアンス*C を考慮して、
服用方法も工夫するのが基本です。
自律神経症状
汗 の 量 や 血 圧 など、身 体 の
各部分でいろいろな調節を
行なっている自律神経の働
きが乱れることによりさまざ
まな異常が生じる。
起立性低血圧
排尿障害
・自律神経調整薬
発汗障害 など
*A … 後 索 性 運 動 失 調;脊 髄 後 方 の 深 部 感 覚( 位 置 覚 、間 接 覚 、圧 覚 など)の 障 害により失 調 をき
たし、運 動 が 円 滑に遂 行 されなくなること。
*B … 痙 性 対 麻 痺;両 下 肢 の 痙 縮により脚 が 突っ張って 歩 きにくくなること。
*C …コンプライアンス;決 められたとおり正しく服 薬 すること。
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運動失調症状に対する薬物療法
運動失調症状に対する薬物としては、現在、甲
タルチレリン水和物(TRH誘導体)
状 腺 刺 激 ホル モン放 出ホルモン (Thyrotropin
releasing hormone:TRH) である酒石酸プロ
TRH の誘導体で、経口服用が可能な脊髄
チレリンと、その TRH 誘導体であるタルチレリン
小脳変性症の運動失調症状を改善する薬剤
水和物が用いられています。
です。現 在、経 口 服 用 で 運 動 失 調 改 善 作 用
のある薬剤は、タルチレリン水和物の他には
ないため、外来で通院されている患者さん
甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)
にも大変使いやすくなっています。
TRH は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)などのホルモンの分泌を刺激さ
せるとともに、中枢神経系や消化管などで多くの働きを担っています。中
枢神経系では神経伝達物質として作用するほか神経調整因子として機能
していると考えられ、興奮させたりやる気を起こさせたりする作用があり
ます。
タルチレリン水和物
酒石酸プロチレリン(TRH)
TRH の 作 用により、小 脳 内
で体の活動を高める作用のあ
るノルアドレナリン代謝を促進
させ、運動失調を改善します。
筋 肉、あるい は静 脈 注 射 で 服
用します が、静 脈 注 射 の 場 合
は急 速に行うと一 過 性 尿 意や
悪心、嘔吐を引き起こすことが
ありますので、ゆるやかに行い
ます。
中枢神経系に分布するTRH の受容
体に結合し、骨格筋や自律神経に役割
を果たすアセチルコリンや、運動に関
する神経伝達物質であるドパミンなど
のモノアミン神経系*A を活性化し、こ
れらの 遊 離 および代 謝 回 転を促 進さ
せます。
さらに神経を伸張・保護させる神経
栄養因子作用も示されており、神経細
胞を活性化させて運動失調を改善す
ると考えられています。
*A … モノアミン 神 経 系:ド パミン・アドレ ナリン など 、アミノ基 を も つ 神 経 伝 達 物 質 で 、生 体 の
情 報 伝 達に重 要な役 割を果たす。
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錐体外路症状(パーキンソニズム)に対する薬物療法
錐体外路症状(パーキンソニズム)
脳内には、神経伝達物質として、精神活動や運動を制御する働きを持つ
ドパミンがあります。パーキンソン症状は、神経細胞間で情報伝達を行って
いるドパミンが少なくなっておこります。
脊髄小脳変性症の患者さんでパーキンソン症状が出ている方には、この
ドパミンを補充、またはこれに作用して働きを高める抗パーキンソン病治
療薬が用いられます。
錐体路症状(痙縮)に対する薬物療法
抗痙縮薬(筋弛緩薬)が用いられます。しかし、筋弛緩のため、逆に運動機能
が低下することもありますので、注意が必要です。
抗痙縮薬には、中枢神経に作用する中枢性抗痙縮薬と、筋自体に作用する末
梢性抗痙縮薬があります。
L - dopa 製剤
ドパミンの不足を補うためにそれ自体
を服用しても、脳の働きを保護する血液
−脳関門*A により脳内に入ることができ
ません。そ のため 、血 液−脳 関 門を通 過
し、さらにドパミンに変換されるL-dopa
主な薬剤
を服用します。L-dopaは脳内のドパミン
を補充する薬剤です。
●エペリゾン塩酸塩
しかし、L-dopaはほとんどが脳以外の
末梢の臓器で末梢性ドパ脱炭酸酵素によ
●チザニジン塩酸塩
って分解され、効力を失ってしまうので、
●アフロクアロン
これを防ぐためにドパ脱炭酸酵素阻害薬
との配合剤が用いられています。
動きが遅くなる(無動)
ドパミン受容体作動薬
●ダントロレンナトリウム水和物
●バクロフェン
通常、中枢性抗痙縮薬であるエペリゾン塩酸塩、チザニジン塩
脳内でドパミンを受け取る場所(受容
酸塩からはじめ、これらで効果が得られず痙縮による障害が強い
体)に直接作用して、その働きを高める
場合には、末梢性筋弛緩薬であるダントロレンナトリウム水和物
薬剤です。
などを試みます。
その他にドパミンの放出を促進する
エペリゾン塩酸塩、アフロクアロンなどは一定量の服用を行い、
ドパミン放出促進薬も用いられること
チザニジン塩酸塩、ダントロレンナトリウム水和物、バクロフェン
があります。
などは少量から徐々に増量していきます。量が多すぎると力が抜
筋肉のこわばり(筋固縮)
けてしまうので注意が必要です。
*A … 血 液−脳 関 門;脳 全 体 に あり血 管と脳 細 胞 からなる。脳 を 守 るた め 、脳 に 入 る物 質 を 制 限
し必 要 な 物 だ けを 取り込 ん で い る。
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自律神経症状に対する薬物療法
●排尿困難・尿閉
1 起立性低血圧
交感神経*A を活性化させる交感神経作動薬
が用いられ、比較的軽症の場合はジヒドロエル
ゴタミンメシ ル 酸 塩、エチレフリン塩 酸 塩、中
膀胱の収縮力を高める作用があるコリン作動薬のジスチグミン臭化物
や、神経因性膀胱に伴う排尿困難を改善するウラピジルやベタネコール塩
化物などが用いられます。
等症以上の場合は、ドロキシドパ、ミドドリン塩
酸塩、アメジニウムメチル硫酸塩などを使用し
ます。
●ジスチグミン臭化物
主な薬剤
●ウラピジル
●ベタネコール塩化物
●ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩
主な薬剤
●エチレフリン塩酸塩
●ドロキシドパ
●尿意切迫・頻尿
●ミドドリン塩酸塩
抗コリン作用とCa拮抗作用により、
●アメジニウムメチル硫酸塩
膀胱の異常収縮を抑制して蓄尿機能
を 増 大 さ せ る、オ キシブチ ニン 塩 酸
塩、プロピベリン塩酸塩などが用いら
2 排尿障害
排 尿 障 害 で は、排 尿 困 難・尿 閉 や、逆に尿 意
切迫・頻尿などの症状がみられます。また患者
さんが服用されている種々の薬剤により排尿障
害が誘発・増強されていることもありますので、
服用している薬剤をチェックしてみることも重
れ ま す。し か し、尿 の 排 泄 に 必 要 な
「蓄尿」と「排尿」は、相反する生理機
能を示すため、副作用として尿閉・排
尿障害が挙げられます。従って服用は
過量にならないよう慎重に行い、特に
高齢者には注意が必要です。
要になります。
主な薬剤
●オキシブチニン塩酸塩
●プロピベリン塩酸塩
*A … 交 感 神 経:自 律 神 経 は 交 感 神 経と副 交 感 神 経 が あり、交 感 神 経 は 体 や 脳 の 働 きを 亢 進 さ
せ る作 用 をも つ 。
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薬の飲み方
専門医からのアドバイス
飲み薬はコップ一杯程度の水または
ぬるま湯で服用します。
※水以外のお茶、ジュース、コーヒー、
牛乳などで服用すると、吸収が妨げられたり、
逆に強く効きすぎたりすることがあります。
脊髄小脳変性症に対する根治的な治療薬は、残念ながらま
だ開発されていません。しかし、現在ある薬剤を効果的に使
用することで、症状を改善させるとともに、病気の進行を抑
えていくようにすることは可能です。そのためにも薬剤は常
に最 適 なものを選 択し、症 状に合 わ せ てきめ 細 か な調 節を
していく必要があります。副作用についてもたえずチェック
用法や用量、服用時間は主治医の先生の
指示を正しく守り、勝手に飲み方を変えたり、
服用を止めたりしないで下さい。
※ 服用時間のめやす
食前:食事の前30分くらい
食後:食事をしてから30分くらいまで
食間:食事と食事の間で、食事のあと
2時間くらい
していかなければなりません。症状の変化など、気付いたこ
とがあったら主治医の先生に相談しましょう 。
ま た 、リハ ビリテ ー ション な ど に より、で き る だけ ADL
(日常生活動作)や QOL( 生活の質 ) の維持を図っていくこと
が大切です。
飲み忘れたときは
自分で判断しないで、
主治医の先生に確認しましょう。
自分の服用する薬についてよく知りましょう。
※どんなによい薬でも副作用はあります。
副作用の症状は患者さんの体質や
薬の種類によって異なります。
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