実施概要(PDF:273KB)

平成28年度JICA草の根事業実施概要
典型的な熱帯泥炭地ブンカリス地区における水道水質の改善
~宇部方式の支援による環境基本計画に基づいて~
1.JICA 草の根事業の目的
草の根事業の目的
県庁所在地であるブンカリス地域は典型的泥炭地の低平な島である。泥炭地による水源不足と水質特
性に重大な問題がある。乾季には給水制限を余儀なくされている。
対象地域の水道原水は泥炭由来の腐植質により褐色である。本地区はインドネシアにおける典型的な
泥炭地の一つである。浄水後の水道水でさえ、濁度、色度、大腸菌などの水道水の水質基準を満足して
いない。安全な飲料水の確保は緊急を要すことである。
ブンカリス地区浄水場の運営体制が改善され、水道水質の改善を図り、水質の向上による受益者の満
足度が向上することを目的に本プロジェクトを推進する。
2.本研修の概要
研修の概要
(1)研修名:JICA 草の根事業
(2)研修期間:平成28年7月24日(日)~8月5日(金)
【13日間】
(3)研修員:インドネシア リアウ州 ブンカリス県関係者 6名
(4)研修実施機関:宇部環境国際協力協会、宇部市
3.インドネシア・宇部市
インドネシア・宇部市の
・宇部市の現状
(1)インドネシア
インドネシアの環境問題の現状
(1)
インドネシア
の環境問題の現状
過去の日本や現在の中国、インドのように経済開発を急ぐあまり環境への悪影響が出ているのがアジ
アの環境問題の特徴と言える。これは急速な経済発展をしてそれに伴い環境に悪影響がでたものである。
環境を後回しにして、急速に経済発展しても良いかという課題に対して、持続可能な開発が要請されて
いる。
インドネシアの人々が抱える深刻な環境問題として主として(1)都市部の自動車排ガス等による大
気汚染、(2)生活排水と下水道整備率が低いことによる汚水および産業排水による河川・地下水の水
質汚濁、また、
(3)深刻化する産業廃棄物処理問題などがあります。
この他にも、安全・安心な飲料水の確保、土壌の浸食、生物多様性の消失、持続可能な環境資源を活
用したエネルギーの欠如(一般廃棄物3Rの分別やリサイクル等)がある。
2012 年から 2014 年の JICA の草の根技術協力事業(地域提案型)により策定されたブンカリス県の環
境基本計画の中でも、安全な水の確保が焦点を当てるべき重要な問題であるとして採択された。国の計
画にも沿った、
「2019 年までに安全な飲み水へのアクセス 100%」の長期目標も掲げられている。しか
し、E. coli の基準を満たすためには塩素消毒を完全に実施しなければならない。一方、我々は高濃度
のトリハロメタンも同時に生成することを考慮すべきである。
このため、ブンカリス県環境局(BLH)の水質検査室の水質のモニタリングシステム及び県水道公社
(PDAM)の水道施設は改善すべきであり、水道施設の適切で効果的に維持するために水質検査のスタッ
フのレベルアップ及び PDAM 職員のレベルアップがなされるべきである。水道水に関連する公衆衛生に
ついての市民の啓発も考慮すべきである。
(2)宇部市・宇部環境国際協力協会の国際環境協力
宇部市は、降下ばいじんによる激甚な公害問題を克服した「宇部方式」という独自の公害対策が評価
され、1997 年国連環境計画(UNEP)からグローバル 500 賞を受賞した。この受賞を機に地球環境保全の
ため、国際環境協力を推進している。
また、この受賞を契機に、1998 年地球環境保全に貢献して行くため、宇部環境国際協力協会(宇部
IECA)が設立され、宇部市と連携しながら、海外から環境研修員の受入や環境国際セミナーの開催等、
積極的な取り組みを行っている。
-1-
(3)宇部市の環境技術
宇部市は、石炭産業を基盤として発展してきた歴史を持ち、化学工業を中心に、窯業、鉄工業等の集
積がある中で、市内企業は、多様な公害防止技術・設備、また先進的な環境技術を有している。
一方、行政も「宇部方式」の精神により、主要企業と締結している環境保全協定など、地球環境の保
全も視野に入れた種々の環境保全対策を進めている。
4.本研修の
研修の目的
ブンカリス県の水道事業に関わる主要な箇所の代表者を宇部市に招き、上下水道事業の重要性、管理
技術や施設管理などについての研修を行い、帰国後の本プロジェクト推進の実務者、援助者としての役
割を理解することを目的とする。
5.本研修のプログラム
研修は、講義、見学等により構成される。なお、研修は日本語をインドネシア語に通訳して実施する。
各研修項目とねらいは下記のとおりである。このため下表のねらいに基づきプログラムを編成する。
研修項目
編成方針・ねらい
カントリーレポート発表
研修開始にあたり、本研修の目的、到達目標を確認する
オリエンテーション
とともに、研修全体の内容、進め方について把握する。
総論講義
日本における水道水の総論を理解する。
宇部市の環境行政
「宇部方式」による公害対策の歴史や「宇部方式」を基
調とした環境保全行政全般を理解する。
宇部市の上水道
宇部市の上水道の施設、管理技術などを理解する。
宇部市の下水道
宇部市の下水道の施設、管理技術などを理解する。
廃棄物処理システム
宇部市の廃棄物処理施設、システムなどを理解する。
市内企業の環境保全対策技術
市内企業の環境保全への取組みや、廃棄物リサイクル対
策、資源化について理解する。
保健衛生
宇部方式についでの保健衛生と飲料水の保健衛生につ
いて理解する。
視察研修
浄水システムとして膜処理方式を採用している長門市
の浄水場施設、管理技術などを理解する。
プログラムレポート作成、発表
研修で学んだことを踏まえ、ブンカリス県での具体的な
閉講式
活動計画を作成する。研修を通じて発見された課題の把
握を行い、情報の共有をする。
6.本研修の達成目標
① 宇部市の環境行政や上下水道施設の管理技術、市内企業の環境保全技術などについて、講義や施設
見学等を通じて理解し、上下水道だけでなく、環境行政や環境保全に関する知識の習得を目指す。
② 水道水の水質改善を進めるために、企業、学識者、行政、住民が協力しながら取り組むことのでき
るシステム「宇部方式」について理解を深める。
7.本研修実施体制及び運営
独立行政法人国際協力機構中国国際センターが宇部環境国際協力協会に委託し、宇部市市民環境部環
境政策課、宇部市上下水道局とともに実施運営する。
8.本研修受け入れ先
研修受け入れ先
山口大学特命教授、山口大学医学部元教授、長門市建設部水道課、宇部市市民環境部、宇部市上下水
道局浄水課、宇部市上下水道局下水道施設課、宇部市廃棄物対策課、宇部市環境保全センター施設課、
宇部市農業土木対策課、㈱アースクリエイティブ、㈱広島企業 宇部テクノリサイクルセンター
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平成28年度JICA草の根事業実施概要
典型的な熱帯泥炭地ブンカリス地区における水道水質の改善
~宇部方式の支援による環境基本計画に基づいて~
1.JICA 草の根事業の目的
草の根事業の目的
県庁所在地であるブンカリス地域は典型的泥炭地の低平な島である。泥炭地による水源不足と水質特
性に重大な問題がある。乾季には給水制限を余儀なくされている。
対象地域の水道原水は泥炭由来の腐植質により褐色である。本地区はインドネシアにおける典型的な
泥炭地の一つである。浄水後の水道水でさえ、濁度、色度、大腸菌などの水道水の水質基準を満足して
いない。安全な飲料水の確保は緊急を要すことである。
ブンカリス地区浄水場の運営体制が改善され、水道水質の改善を図り、水質の向上による受益者の満
足度が向上することを目的に本プロジェクトを推進する。
2.本研修の概要
研修の概要
(1)研修名:JICA 草の根事業
(2)研修期間:平成28年7月24日(日)~8月5日(金)
【13日間】
(3)研修員:インドネシア リアウ州 ブンカリス県関係者 6名
(4)研修実施機関:宇部環境国際協力協会、宇部市
3.インドネシア・宇部市
インドネシア・宇部市の
・宇部市の現状
(1)インドネシア
インドネシアの環境問題の現状
(1)
インドネシア
の環境問題の現状
過去の日本や現在の中国、インドのように経済開発を急ぐあまり環境への悪影響が出ているのがアジ
アの環境問題の特徴と言える。これは急速な経済発展をしてそれに伴い環境に悪影響がでたものである。
環境を後回しにして、急速に経済発展しても良いかという課題に対して、持続可能な開発が要請されて
いる。
インドネシアの人々が抱える深刻な環境問題として主として(1)都市部の自動車排ガス等による大
気汚染、(2)生活排水と下水道整備率が低いことによる汚水および産業排水による河川・地下水の水
質汚濁、また、
(3)深刻化する産業廃棄物処理問題などがあります。
この他にも、安全・安心な飲料水の確保、土壌の浸食、生物多様性の消失、持続可能な環境資源を活
用したエネルギーの欠如(一般廃棄物3Rの分別やリサイクル等)がある。
2012 年から 2014 年の JICA の草の根技術協力事業(地域提案型)により策定されたブンカリス県の環
境基本計画の中でも、安全な水の確保が焦点を当てるべき重要な問題であるとして採択された。国の計
画にも沿った、
「2019 年までに安全な飲み水へのアクセス 100%」の長期目標も掲げられている。しか
し、E. coli の基準を満たすためには塩素消毒を完全に実施しなければならない。一方、我々は高濃度
のトリハロメタンも同時に生成することを考慮すべきである。
このため、ブンカリス県環境局(BLH)の水質検査室の水質のモニタリングシステム及び県水道公社
(PDAM)の水道施設は改善すべきであり、水道施設の適切で効果的に維持するために水質検査のスタッ
フのレベルアップ及び PDAM 職員のレベルアップがなされるべきである。水道水に関連する公衆衛生に
ついての市民の啓発も考慮すべきである。
(2)宇部市・宇部環境国際協力協会の国際環境協力
宇部市は、降下ばいじんによる激甚な公害問題を克服した「宇部方式」という独自の公害対策が評価
され、1997 年国連環境計画(UNEP)からグローバル 500 賞を受賞した。この受賞を機に地球環境保全の
ため、国際環境協力を推進している。
また、この受賞を契機に、1998 年地球環境保全に貢献して行くため、宇部環境国際協力協会(宇部
IECA)が設立され、宇部市と連携しながら、海外から環境研修員の受入や環境国際セミナーの開催等、
積極的な取り組みを行っている。
-1-
(3)宇部市の環境技術
宇部市は、石炭産業を基盤として発展してきた歴史を持ち、化学工業を中心に、窯業、鉄工業等の集
積がある中で、市内企業は、多様な公害防止技術・設備、また先進的な環境技術を有している。
一方、行政も「宇部方式」の精神により、主要企業と締結している環境保全協定など、地球環境の保
全も視野に入れた種々の環境保全対策を進めている。
4.本研修の
研修の目的
ブンカリス県の水道事業に関わる主要な箇所の代表者を宇部市に招き、上下水道事業の重要性、管理
技術や施設管理などについての研修を行い、帰国後の本プロジェクト推進の実務者、援助者としての役
割を理解することを目的とする。
5.本研修のプログラム
研修は、講義、見学等により構成される。なお、研修は日本語をインドネシア語に通訳して実施する。
各研修項目とねらいは下記のとおりである。このため下表のねらいに基づきプログラムを編成する。
研修項目
編成方針・ねらい
カントリーレポート発表
研修開始にあたり、本研修の目的、到達目標を確認する
オリエンテーション
とともに、研修全体の内容、進め方について把握する。
総論講義
日本における水道水の総論を理解する。
宇部市の環境行政
「宇部方式」による公害対策の歴史や「宇部方式」を基
調とした環境保全行政全般を理解する。
宇部市の上水道
宇部市の上水道の施設、管理技術などを理解する。
宇部市の下水道
宇部市の下水道の施設、管理技術などを理解する。
廃棄物処理システム
宇部市の廃棄物処理施設、システムなどを理解する。
市内企業の環境保全対策技術
市内企業の環境保全への取組みや、廃棄物リサイクル対
策、資源化について理解する。
保健衛生
宇部方式についでの保健衛生と飲料水の保健衛生につ
いて理解する。
視察研修
浄水システムとして膜処理方式を採用している長門市
の浄水場施設、管理技術などを理解する。
プログラムレポート作成、発表
研修で学んだことを踏まえ、ブンカリス県での具体的な
閉講式
活動計画を作成する。研修を通じて発見された課題の把
握を行い、情報の共有をする。
6.本研修の達成目標
① 宇部市の環境行政や上下水道施設の管理技術、市内企業の環境保全技術などについて、講義や施設
見学等を通じて理解し、上下水道だけでなく、環境行政や環境保全に関する知識の習得を目指す。
② 水道水の水質改善を進めるために、企業、学識者、行政、住民が協力しながら取り組むことのでき
るシステム「宇部方式」について理解を深める。
7.本研修実施体制及び運営
独立行政法人国際協力機構中国国際センターが宇部環境国際協力協会に委託し、宇部市市民環境部環
境政策課、宇部市上下水道局とともに実施運営する。
8.本研修受け入れ先
研修受け入れ先
山口大学特命教授、山口大学医学部元教授、長門市建設部水道課、宇部市市民環境部、宇部市上下水
道局浄水課、宇部市上下水道局下水道施設課、宇部市廃棄物対策課、宇部市環境保全センター施設課、
宇部市農業土木対策課、㈱アースクリエイティブ、㈱広島企業 宇部テクノリサイクルセンター
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