抗議声明本文(pdf,150KB) - 日本自然保護協会~NACS-J

2016 年 7 月 19 日
防衛大臣
中谷 元
殿
沖縄防衛局長 中嶋 浩一郎 殿
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長
亀山 章
抗議声明
日本自然保護協会は、日本政府が現在,沖縄島北部の通称やんばるの森において、米軍ヘ
リパッド建設工事を強行していることに対し強く抗議する。
沖縄島北部の東村高江において、直径 75 メートルの米軍ヘリパッドの建設が付帯施設の
設置等を含めて進められており、そこで行われる米国海兵隊の軍事演習には垂直離着陸機
オスプレイを使用すると伝えられている。ヘリパッドの建設とオスプレイを使う軍事演習
は、沖縄島やんばるの森にのみ生息が確認されているノグチゲラ、ヤンバルクイナなど多く
の固有種、固有亜種や、さまざまな野生生物にとって大きな脅威となり、生物多様性に富む
やんばるの森の環境を大きく悪化させることになる。今年 6 月の中央環境審議会で指定の
答申がなされたやんばる国立公園に隣接するこの場所において工事や訓練が行われれば、
国立公園の中も影響を受けることが予想される。
大陸との分離・結合を繰り返した地史を経て隔離された琉球列島は、島ごとに異なる固有
の生物相を有している。とりわけ、奄美や沖縄島などの中琉球地域は、大陸から離れており、
生物多様性が高い。それゆえに人間活動の影響を特に受けやすい。
国際的な自然保護組織である IUCN(国際自然保護連合)から日本政府にあてて、2000
年と 2004 年の 2 度にわたりやんばるの自然の保護を求める勧告が出されている。
また 2010
年に生物多様性条約第 10 回締約国会議(COP10)で採択された愛知ターゲットの目標 11
は、
「生物多様性と生態系サービスに特別に重要な地域が、効果的、衡平に管理され、かつ
生態学的に代表的な良く連結された保護地域システムやその他の効果的な地域をベースと
する手段を通じて保全され、また、より広域の陸上景観又は海洋景観に統合される」と、脆
弱な生態系の保全を求めている。
日本政府は、沖縄島北部の自然が国内外で認められる生物多様性が豊かな場所として再
度認識するべきである。また COP10 の議長国および国際社会の一員として、やんばるの自
然環境の保護と持続可能な利用を重視し、世界自然遺産の登録にふさわしい良好な自然の
状態を保ち、世界自然遺産の登録の実現にむけた努力をすることが求められる。