長時間の単一分子観測に耐えうる 高発光蛍光プローブ 水溶性ロタキサン型 蛍光色素 特願 2008-225739 富山大学大学院医学薬学研究部 薬化学研究室 藤本和久 研究背景:1分子からの蛍光イメージング 単一分子蛍光観測の意義 多分子からの蛍光 1分子からの蛍光 30 μm 30 μm 蛍光標識された 分子の分布として観測 個々の輝点として観測 →動きを観測 単一分子観測用蛍光標識剤 -代表例- 蛍光タンパク質 蛍光色素 シアニン系色素 励起波長: 489489-743 nm、発光波長: nm、発光波長: 506506-767 nm 量子ドット ZnS (Shell) CdSe (Core) Green Fluorescent Protein 励起波長: 488 nm、発光波長: nm、発光波長: 512 nm 直径:数~十 nm 発光波長は粒径に依存 非常に鋭いスペクトル いずれにも問題あり 単一分子観測用蛍光標識剤に要求される性質 蛍光色素 蛍光タンパク 量子ドット 発光の明るさ △ × ○ 光褪色・ブリンキング × × △ 分子サイズ ○ × △ 細胞毒性 △ ○ × 標識率 △ ○ × 溶解度 △ ○ △ 本技術の着想 最も改変しやすいのは 蛍光色素 ← 有機合成 しかしながら、 特に光褪色 (酸素) ・ブリンキングの問題 光に透明な “防弾ガラス” で 蛍光色素を包む ロタキサン型に ロタキサン型蛍光色素 -過去の研究例- H. L. Anderson (オックスフォード大) Chem. Commun. 2007, 2387-2389 B. D. Smith (ノートルダム大) Chem. Eur. J. 2006, 12, 4684-4590 アントラセンがβ-CDで包接されている 四角酸が環状アミドで包接されている 中性水溶液に難溶である 一つのみのラベル化部位の導入が難しい 光安定性がそれほど高くない 電荷を有している 一つのみのラベル化部位の導入が難しい 蛍光量子収率が低い 本技術の基礎となる研究 高蛍光量子収率かつ酸素による消光を受けにくい疎水性色素: アルキニルピレン PCT/JP2005/19514 Chem. Eur. J. 2006, 12, 824-831 蛍光発色団としてのピレン の 問題点とは? ① プロトン性溶媒中では蛍光量子収率が低い (蛍光シグナルが弱い) ② 酸素による蛍光の消光を受けやすい ③ ピレンの励起波長は比較的短波長であり、 励起光の透過性低下や 他の生体分子の光吸収による影響が大きい アルキニルピレン骨格 高蛍光量子収率型アルキニルピレン誘導体 紫外可視吸収スペクトル 蛍光スペクトル(モノマー) 400 1 0.4 2 Relative Intensity (a.u.) Absorbance 0.6 4 3 0.2 0 250 300 350 400 Wavelength (nm) 450 2 300 200 3 1 4 100 0 400 500 600 Wavelength (nm) OD = 0.01 in degassed EtOH 1.0 ×10-5 M in aerated EtOH Excitation wavelength 337, 361, 366, 393 nm for 1-4, respectively S 1 ピレン 2 3 4 ピレンならびにアルキニルピレン誘導体の光物性 蛍光量子収率 compound Φf 酸素下での 蛍光量子収率 Φf (O2) 蛍光寿命 τs (ns) kf (s-1) kisc + knr (s-1) ピレン 1 0.32 0.019 377 8.49 ×105 1.80 ×106 2 0.78 0.56 酸 7.72 1.01 ×108 2.89 ×107 素 下 0.49 で も 高 い 1.96 2.81 ×108 2.29 ×108 1.65 5.45 ×108 6.11 ×107 Φf S 3 0.55 4 0.90 in EtOH の 増 大 0.83 Φ f Φ f = kf . τ s τs = 1 / (kf + kisc + knr + kq[O2]) 水溶性ロタキサン型蛍光色素開発に向けて (1) 水溶性アルキニルピレンとシクロデキストリンとの会合挙動 1H NMR スペクトル (ピレン領域) [アルキニルピレン] = 3 mM in D2O permethyl-α-CD 水溶性 アルキニルピレン permethyl-α-CD γ-CD γ-CD 0 eq 0 eq 2 eq 0.5 eq 4 eq 1 eq 9 8 7 ppm 9 8 7 ppm 水溶性ロタキサン型蛍光色素開発に向けて (2) 水溶性アルキニルピレンとシクロデキストリンとの会合挙動 水溶性アルキニルピレンの紫外可視吸収 (3 mM) ならびに蛍光スペクトル (22 μM) 150 0 eq 2 4 50 水溶性 アルキニルピレン 400 400 500 600 Wavelength (nm) 紫外可視 1 0 eq 20 100 0.5 0 200 蛍光 (励起波長: (励起波長: 450 nm) nm) 150 0 eq 0.5 2 100 50 0 0.8 Absorbance Absorbance permethyl-α-CD γ-CD 蛍光 (励起波長: (励起波長: 406 nm) nm) 100 0 γ-CD a.u.) .) Relative Intensity ((a.u Relative Intensity ((a.u a.u.) .) permethyl-α-CD 500 600 Wavelength (nm) 700 紫外可視 0 eq 10 50 0.6 0.4 0.2 0 300 350 Wavelength (nm) 400 300 350 Wavelength (nm) 400 予想される包接形態 発光色が、 青紫色に変化 モノマー発光 一分子包接 二分子包接 permethyl-α-CD γ-CD 凝集し、 エキシマー発光 濃度消光 発光強度が増大 濃度消光が解消 エキシマー発光 ストッパーを導入 → 水溶性ロタキサン型蛍光色素へ 水溶性ロタキサン型蛍光色素 ストッパー ストッパー 完全にバルクから 遮蔽 フェノール性 水酸基 褪色され難い アルキニル ピレン 6 permethyl-α-CD ストッパー ストッパー 細胞毒性 低 水溶性 高 ラベル化部位の 導入が容易 高いモル吸光係数と 蛍光量子収率 明るい発光 ブリンキングの抑制 光褪色実験 365 nm の光を 7 時間照射 ロタキサン 0.5 Absorbance Absorbance 1 1 0.5 0 300 350 400 Wavelength (nm) 45 0 [ロタキサン] = 18 μM in H2O including 10% DMSO ロタキサン ほぼ完全に褪色 ほとんど変化無し 1.5 0 ダンベル (CD無し) 300 350 400 Wavelength (nm) 45 0 [ダンベル] = 18 μM in H2O including 10% DMSO ダンベル 長時間の単一分子観測に耐えうる 蛍光標識剤ライブラリーへの展開 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ラベル化 部位 ストッパー ・ ・ ・ ・ ・ ・ CD α-CD β-CD γ-CD メチル化CD アルキニル 色素 ストッパー ピレン ダイマー アントラセン ペリレン クマリン 本技術の想定される用途 単一分子蛍光観測用プローブとしての利用 例えば、 蛍光相関分光法を利用してタンパク一分子の動きや 大きさを観測する 蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET) における ドナープローブとしての利用 より長波長側に発光波長を有する蛍光色素や蛍光タンパクと 組み合わせて FRET 観測をおこなう 明るく、光安定性に優れておりドナープローブとして最適 本技術が利用されると想定される業界 試薬会社からプローブ分子として販売を想定 予想される購入層 : 大学の研究室 産学官の研究所 予想される波及効果 : 新しい生命像の確立 難治疾患の原因解明 新規薬剤の開発 等 本技術に関する知的財産権 •発明の名称:水溶性ロタキサン型蛍光色素 •出願番号 :特願 2008-225739 •出願人 :国立大学法人富山大学 •発明者 :井上将彦・藤本和久・米永友樹 お問い合わせ先 富山大学 杉谷(医薬系)キャンパス 富山大学 TLO・リエゾンオフィス 佐貫大三郎 TEL: 076-434-7196 FAX: 076-434-5138 E-mail: [email protected]
© Copyright 2024 ExpyDoc