平成27年度関東東北産業保安監督部管内 自家用電気工作物の電気事故について 1.はじめに 平成27年度の関東東北産業保安監督部管内(関東1都6県及び山梨県並びに静岡県 の富士川以東)において発生した電気事故について、電気関係報告規則第3条の規定に 基づき、自家用電気工作物の設置者から提出された電気事故報告をもとに、その概要を 以下のとおり取りまとめました。 2.電気事故報告件数の推移 図1.管 内 自 家 用 電 気 事 故 件 数 の 推 移 250 件数 200 150 100 50 0 18fy 19fy 20fy 21fy 22fy 23fy 24fy 25fy 26fy 27fy 感電・アーク等による死傷 31 22 30 19 27 18 12 16 20 19 電気火災 3 3 2 2 2 1 5 1 2 1 主要電気工作物の破損 10 18 15 17 36 26 22 30 21 19 波及事故 140 129 166 110 148 111 133 163 103 115 (注)1.発電所における事故を含む。 2.1事故でも複数の事故分類にカウントする場合がある。 3.感電・アーク等による死傷事故には電気工作物の破損等による死傷事故も含む。 図1は、過去10年における自家用電気工作物の事故件数の推移です。 平成27年度の電気事故総件数は154件で、前年度に比べ若干増加しました。 図2.波及事故の原因分類 その他 (風雨、火災等) 11% 保守不完全 14% 自然劣化 43% 4% 鳥獣接触 10% 作業者の過失 雷 18% 3.波及事故 波及事故は、115件報告されました。 図2のとおり、自然劣化による事故が最も多く約43%、次いで雷が約18%、保守 不完全が約11%、作業者の過失が約10%の割合となりました。 これら事故報告件数の多い原因分類について、簡単に紹介いたします。 (1)自然劣化 自然劣化は、電気工作物の材質、機構等に劣化が生じたことにより事故に至ること を指します。 この原因で最も多い電気工作物は高圧引込ケーブルで、地中埋設部やハンドホール 内で絶縁破壊に至り、区分開閉器(PAS 等)が未設置だったため波及事故となったも のです。 (2)雷 雷が原因で事故の起因となる電気工作物は、PAS が最も多く、雷サージにより PAS が短絡したものです。PAS が設置されていない事業場でも、雷サージが高圧ケーブル に侵入し、絶縁の弱くなっていた箇所で地絡したと推定されるものもありました。 (3)保守不完全 保守不完全は、巡視、点検、手入れ等の保守の不完全によるものです 具体的事例として、月次点検、年次点検等の未実施により設備の腐食・劣化を発見で きず、当該設備が原因で絶縁破壊が発生した等。また、錆の侵食によって屋外用機器 のカバーパッキンが押し上げられ、雨水や湿気が浸入し絶縁劣化が促進され、内部短 絡に至ったケースもあります。 (4)作業者の過失 作業者の過失には、 “電気関係者による過失”と“建設工事関係者による過失”の2 つに大別することができました。 電気関係者による過失には、復電時に短絡接地器具を外し忘れた場合や、PAS の誤 操作によること等が原因だったのものです。 建設工事関係者による過失には、建物解体中に誤って高圧ケーブルを損傷させた場 合や、高圧ケーブルの埋設箇所を誤って重機で損傷させた場合などが原因だったもの です。 (5)鳥獣接触 鳥獣接触は主にキュービクル内に侵入した小動物が、高圧機器等充電部に接触し短 絡等させてしまう事例がほとんどでした。 4.感電・アーク等による死傷事故 図3.月別感電等事故件数(過去3年分) 7件 6件 件数 5件 平成25年度 4件 平成26年度 3件 平成27年度 2件 1件 0件 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 感電・アーク等による死傷事故件数は19件の報告があり、被災者も19名でした。 被災者は、防具・工具の不適切な使用、充電中にもかかわらず、不用意に近づき感 電してしまった等のケースが多く見られました。また工事事業者等が電気主任技術者 等の承認を得ずに勝手に作業してしまい事故につながったケースもありました。 図 3 は過去 3 年度分の月別事故件数をグラフ化したものです。 事故の傾向としては、3 年度平均で 6~9 月の夏期にかけて最も多く発生している傾 向であることが分かります。 (1)事例 1 設置者から電灯回路の増設工事依頼を受けた、設備管理会社は、事業場に常勤して いる者が電気工事士の有資格者であることから、直営で施工することとした。 作業は一人で行い、天井点検口から電灯幹線を引き出し、素手で工具を持ち、被覆を 剥いていたところ、指先が感電し、意識を失った。近くに居た者が、異変に気づき、 救出したあと意識を取り戻し、病院に搬送された。 原因として、工事に取り掛かる際に、作業対象の照明が切ってあったことから、被 災者を含む作業関係者は元のブレーカーも開放されていたものと理解していたが、実 際は、照明の手元スイッチが切られただけで、元のブレーカーは開放されていなかっ たもの。 (2)事例 2 設置者から建屋内給排水ポンプ設備工事及び検査を請け負った元請工事業者 A 社は、 下請工事業者 B 社に実務を請け負わせる作業体制としていた。作業にあたった B 社作 業員 2 名は、2 つのポンプ用の自動制御機器の配線導通確認を行う作業計画であった。 一つ目のポンプ用自動制御機器の導通確認を終え、二つ目のポンプ用自動制御機器に 取り掛かるため、1 名は制御盤において当該機器電源側のブレーカーを切り、盤内端子 間をジャンパ線で短絡させて準備した。 もう 1 名は、ポンプ本体にある電磁弁の導通確認を行うべく、電磁弁の金属ケース 蓋を開け、ケース内部より配線ケーブルの被覆スリーブが施された接続部を引き出し、 被覆スリーブ内にテスターのリード棒を差し込んだ際に、リード棒を把持していた指 が、リード棒先端部に触れていた状態で、手の一部が電磁弁金属ケースに接触したと ころ、感電した。 原因を確認した結果、テスターを当てた当該電磁弁回路は、制御盤のブレーカーを 開放しても別回路から電気が供給される回路構成となっていたことから、当該回路は 活線状態であり、被災者は全て停電状態であるものと思い込み、活線作業を行ってし まったことによるもの。 5.主要電気工作物の破損事故 本事故における報告のほとんどは、発電設備における事故で、需要設備に関しては該 当ありませんでした。 なお、需要設備における主要電気工作物とは、使用電圧 1 万ボルト以上の受電用遮断 器や、5 万ボルト以上のケーブルなどが該当します。 6.電気火災事故 電気火災事故は、電気工作物の破損等が原因となり出火した火災で他の工作物(例: 建造物など)が半焼以上した場合において報告するものです。27年度は1件発生があ りました。 7.おわりに(事故の防止対策として) 27年度も波及事故に至った原因は様々でしたが、場合によっては近隣事業者等より 停電の影響により多大な損害賠償が請求されるケースも生じているようであり、近年に おいてはより社会的にも注目される事故形態となっております。GR 付き PAS 及び UGS 未設置の事業場においては、当該設備を設置することで波及事故のリスクも格段に下が り、事故防止策として非常に有効です。また設備の経年劣化により事故が発生している ケースも多く見られますので、電気主任技術者と相談の上、計画的な更新を行っていた だくことが必要と思われます。 感電等による事故については、原則として活線作業を禁止すること、やむを得ず活線 状態での近接作業や活線作業を行なう場合には、充電部の養生、作業箇所の検電、保護 具の適切な着装等を十分に行い、電気主任技術者の監督指導下、徹底した安全確保に努 めて下さい。 最後に、関東東北産業保安監督部のホームページにおいて毎月の自家用電気工作物の 事故速報値や、諸手続きに関する様式、関係法令の改正等の情報を発信しています。保 安教育や設置者への情報提供など、ご活用いただければ幸いです。
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