16-I-0022 2016 年 7 月 14 日 株式会社日本格付研究所(JCR)は、以下のとおり信用格付の結果を公表します。 日本国 (証券コード:−) 【見通し変更】 外貨建長期発行体格付 格付の見通し 自国通貨建長期発行体格付 格付の見通し AAA 安定的 AAA 安定的 → ネガティブ → ネガティブ ■格付事由 (1) 格付は主に、高度に発展した経済構造と世界第一位の対外純資産、多額の家計貯蓄を背景にした国債の国 内保有構造と金融市場の安定、経済低迷とデフレからの脱却の動き、財政健全化と経済成長実現に向けた 経済政策の実施状況などを評価している。他方、恒常的な財政赤字を背景とした巨額の政府債務が格付の 下押し要因となっている。安倍首相は 16 年 6 月、日本の景気回復の腰折れを回避し、日本経済を再びデ フレに戻さないという観点から、消費税率の 10%への引上げを 19 年 10 月まで 2 年半延期する方針を表 明した。16 年 7 月の参議院選挙に勝利して政治基盤をさらに強化した安倍政権は、20 年の基礎的財政収 支黒字化の目標は堅持する旨表明する一方で、中国経済の減速や英国の EU 離脱の国民投票後の円高の進 行などにより日本経済の先行き不透明感が強まる中、第 2 次補正予算を含む経済対策の検討を指示した。 成長ポテンシャルの押し上げが見通しづらい状況下で、中長期的な財政の持続可能性確保に対する不透明 感が増していることを踏まえ、格付の見通しをネガティブに変更した。 (2) 金融政策は 3 本の矢のひとつとしてアベノミクスの屋台骨をささえている。16 年 1 月、金融政策を強 化・拡充するため「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」が導入された。銀行の貸出金利は若干低下し、 マネーストックの増加率も上向き、GDP デフレータも上昇するなど、デフレ脱却に向けて進展があった と評価できる。ただし、2%の消費者物価上昇率のターゲットは達成しておらず、足元の消費者物価上昇 率は下落する傾向すら見せている。また、マイナス金利は金融機関の収益を圧迫し金融緩和の意図と逆行 する懸念があり、中央銀行の大量保有に伴い国債の流動性が低下するという弊害も見え始めており、今後 の追加緩和には一定の限界が生じる懸念がある。JCR は、マイナス金利の影響、消費者物価の動向、不動 産市況の動向などの要因をモニターし、金融政策の運営について引き続き注視していく。 (3) 15 年度の財政実績は、10 年度実績対比で基礎的財政収支赤字を GDP 比で半減するという目標を達成見込 みである。16 年度予算の公債依存度は 35.6%まで低下しており(ピークは 09 年度の 51.5%) 、財政再建 に向けての努力は進展を見せている。他方、日本国の国債発行残高は、15 年度末で、国債が 805 兆円、 財投債を含めると 902 兆円、GDP 比で 179%と世界で最も高い水準にある。16 年度予算は新規国債 34 兆 円、借換債 109 兆円を含め、総額 162 兆円の国債発行を計画している。現時点で日本国債の借り換えなら びに新規発行は円滑に実施されているものの、長期的に円滑な国債発行を維持し国債の持続可能性を確保 するためには、財政再建方針を堅持し国債発行額を着実に圧縮して投資家の信認を維持することが必要で ある。財政改革については、社会保障改革や医療費改革を断行して実効ある支出抑制を行うことの重要性 が高まっている。JCR では、政府が策定する補正予算の内容とその財源、「経済財政運営と改革の基本方 針」に沿った各種改革の実施状況、17 年度の予算編成方針などを総合的に勘案の上、格付に反映してい く。 (4) 3 年間のアベノミクスは、日本経済のパフォーマンスを改善し一定の成果をあげてきた。3 年間で国民総 所得は 40 兆円近く増加し、国の税収は 15 兆円増加した。企業収益は史上最高水準に達し、失業率は 3.2%と 18 年ぶりの低水準となっている。他方、「成長戦略」が重要課題として残されている。個人消費 1/3 http://www.jcr.co.jp や設備投資は力強さを欠き、現時点では「成長と分配の好循環」が実現しているとは言い難い。日本経済 の成長のボトルネックには、少子高齢化という構造問題が存在する。アベノミクスの第 2 ステージでは、 この少子高齢化の問題に正面から立ち向かうために、従来の 3 本の矢の政策を強化するとともに、「希望 を生み出す強い経済」、 「夢をつむぐ子育て支援」、 「安心につながる社会保障」という新しい 3 本の矢が追 加された。 「ニッポン一億総活躍プラン」、 「日本再興戦略 2016」、 「経済財政運営と改革の基本方針 2016」 に含まれる各種構造改革は、長期ビジョンを持った野心的な内容の改革プランとなっている。そうした改 革プランが日本経済の長期的な成長パスを高める効果を発揮するためには、強固な政治的コミットメント に基づく持続的な実行が必要である。JCR は各種改革の実施状況を注視するとともに、改革措置が日本経 済の長期成長ポテンシャルを押し上げてゆくかに注目していく。 (担当)増田 ■格付対象 発行体:日本国(Japan) 【見通し変更】 対象 外貨建長期発行体格付 自国通貨建長期発行体格付 格付 見通し AAA AAA ネガティブ ネガティブ 2/3 http://www.jcr.co.jp 篤・内藤 寿彦 格付提供方針に基づくその他開示事項 1. 信用格付を付与した年月日:2016 年 7 月 11 日 2. 信用格付の付与について代表して責任を有する者:増田 主任格付アナリスト:増田 篤 篤 3. 評価の前提・等級基準: 評価の前提および等級基準は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に「信用格付の種類 と記号の定義」 (2014 年 1 月 6 日)として掲載している。 4. 信用格付の付与にかかる方法の概要: 本件信用格付の付与にかかる方法の概要は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に、 「ソブリン・準ソブリンの信用格付方法」 (2014 年 11 月 7 日)として掲載している。 5. 格付関係者: (発行体・債務者等) 日本国(Japan) 6. 本件信用格付の前提・意義・限界: 本件信用格付は、格付対象となる債務について約定通り履行される確実性の程度を等級をもって示すものである。 本件信用格付は、債務履行の確実性の程度に関しての JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該確実性 の程度を完全に表示しているものではない。また、本件信用格付は、デフォルト率や損失の程度を予想するもので はない。本件信用格付の評価の対象には、価格変動リスクや市場流動性リスクなど、債務履行の確実性の程度以外 の事項は含まれない。 本件信用格付は、格付対象の発行体の業績、規制などを含む業界環境などの変化に伴い見直され、変動する。ま た、本件信用格付の付与にあたり利用した情報は、JCR が格付対象の発行体および正確で信頼すべき情報源から入 手したものであるが、当該情報には、人為的、機械的またはその他の理由により誤りが存在する可能性がある。 7. 本件信用格付に利用した主要な情報の概要および提供者: ・ 格付関係者が提供した経済・財政運営方針などに関する資料および説明 ・ 経済・財政動向などに関し中立的な機関が公表した統計 8. 利用した主要な情報の品質を確保するために講じられた措置の概要: JCR は、信用格付の審査の基礎をなす情報の品質確保についての方針を定めている。本件信用格付においては、 発行体または中立的な機関による対外公表、または担当格付アナリストによる検証など、当該方針が求める要件を 満たした情報を、審査の基礎をなす情報として利用した。 9. 非依頼格付について: 本件信用格付は格付関係者からの依頼に基づかない信用格付である。国に対する信用格付である場合を除き、依 頼に基づく格付と区別するため格付記号の後に「p」を表示している。格付関係者からは、信用評価に重要な影響を及 ぼす非公表情報を入手している。 10. JCR に対して直近 1 年以内に講じられた監督上の措置:なし ■留意事項 本文書に記載された情報は、JCR が、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、また はその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、 的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、また は当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCR は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、 金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因 のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。また、JCR の格付は意見の表明であ って、事実の表明ではなく、信用リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするも のでもありません。JCR の格付は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。格付は原則として 発行体より手数料をいただいて行っております。JCR の格付データを含め、本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。JCR の格付データ を含め、本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。 ■NRSRO 登録状況 JCR は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating Organization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の 4 クラ スに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。米国証券取引委員会規則 17g7(a)項に基づく開示の対象となる場合、当該開示は JCR のホームページの“Rating Information”(http://www.jcr.co.jp/english/top_cont/rat_info01.php) に掲載されるニュースリリースに添付しています。 ■本件に関するお問い合わせ先 情報サービス部 TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026 3/3 http://www.jcr.co.jp
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