フコキサンチンによる血管新生抑制と シワ抑制効果 京都大学大学院農学研究科 応用生物科学専攻 教授 准教授 平田 孝 菅原達也 食品に含まれるカロテノイド O OH β-Carotene HO Astaxanthin O OH α-Carotene O HO Capsanthin HO β-Cryptoxanthin OH O O O HO Violaxanthin O OH Canthaxanthin O • OH HO OH Neoxanthin HO HO • Lutein OH HO OO Fucoxanthin HO Zeaxanthin OCOCH3 注目されている海洋生物カロテノイド フコキサンチン アスタキサンチン HO O O HO OCOCH3 カロテノイド精製方法 凍結乾燥したサンプルに約10倍容 のアセトンを加え、一晩抽出 カラムクロマトグラフィーにより 粗カロテノイド画分を分取 画分を濃縮後、HPLCにより精製 フコキサンチンの精製 HPLC 構造式 Structure 444 nm 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 min % Spectrum MS spectrum 100 90 622 [M-18-18] + 640 [M-18]+ 80 70 580 [M-18-60] + 60 50 658 [M] + 562 [M-18-18-60] + 40 30 20 10 300 400 500 nm 0 100 200 300 400 m/z 500 600 700 これまで知られているフコキサンチンの作用 ・抗酸化作用 Biosci. Biochem. Biotechnol. 63, 605, 1999 J. Agric. Food Chem. 55, 8516, 2007 ・ガン細胞致死作用 Food Sci. Technol. Res. 5, 243, 1999 J. Nutr. 131, 3306, 2001 Biochim. Biophys. Acta 1675, 113, 2004 Cancer Lett. 220, 75, 2005 ・抗肥満作用 Biochem. Biophys. Res. Commun. 332, 392, 2005 ・抗糖尿病作用 J. Agric. Food Chem. 55, 7701, 2007 マウスにおけるフコキサンチンの吸収 フコキサンチノール アマロウシアキサンチンA 経口投与1時間後 450 nm 未投与 0 5 10 15 (min) J. Nutr. 132, 946, 2002 経口摂取されたフコキサンチンの代謝 消化管管腔内 肝臓 CH3COOH NAD+ NADH Drug Metab. Dispos. 32, 205, 2004 血管新生 (Angiogenesis)について 悪性腫瘍 糖尿病性網膜症 リウマチ様関節炎 歯周病 乾癬 アテローム性動脈硬化症 肥満 シワ などに関わる 血管新生のプロセス 血管新生のプロセス 血管細胞周辺組織の分解 血管細胞周辺血管内皮細胞の増殖・遊走 血管内皮細胞 組織の分解 の増殖・遊走 ① ② 血管構造形成 血管構造形成 ③ HUVECの管腔形成に対するフコキサンチン の抑制効果 0 μM 5 μM 10 μM 25 μM Tube length (% of control) HUVECの管腔形成に対するフコキサンチン の抑制効果 120 100 80 * 60 40 * 20 0 0 2.5 5 10 Fucoxanthin (μM) 25 O.D. 450 nm (% of control) HUVECの増殖に対するフコキサンチンの 抑制効果 120 100 80 * 60 40 20 ** 0 0 2.5 5 10 Fucoxanthin (μM) 25 ラット動脈片を用いた血管新生に対するフコキサンチンと フコキサンチノールの抑制効果 Control Fucoxanthin 25 μM Fucoxanthinol 25 μM ラット動脈片を用いた血管新生に対するフコキサンチンと フコキサンチノールの抑制効果 Microvessel length (% of control) 140 Fucoxanthin Fucoxanthinol 120 100 * 80 ** ** ** ** 60 ** ** 40 ** ** 20 0 0 1 2.5 5 μM 10 25 血管新生と血管発生 血管新生と血管発生 血管内皮前駆細胞 血管内皮前駆細胞 血管新生 血管新生 血管発生 血管発生 フコキサンチンのES細胞からの血管形成への影響 血管形成(+) コントロール フコキサンチン 10μM フコキサンチン 20μM 血管形成(-) 93.8% (30/32) 73.9% (34/46) 43.8% (7/16) まとめ ・フコキサンチンは濃度依存的にHUVECの管腔形成と 増殖を抑制したが、遊走には影響を与えなかった。 ・フコキサンチンは濃度依存的にES細胞の血管形成を 抑制した。 ・フコキサンチンとその代謝物であるフコキサンチノール は濃度依存的にラット動脈片の血管新生を抑制した。こ のとき、フコキサンチノールの血管新生抑制効果はフコ キサンチンと同等以上であった。 J. Agric. Food Chem. 54, 9805, 2006 シワの形成 若々しい肌 衰えた肌 皮丘 表皮 皮溝 基底層 コラーゲン 真皮 エラスチン 繊維芽細胞 ムコ多糖 化粧品・外用薬研究者のための皮膚科学 宮地良樹 長沼雅子編著 文光堂 より シワ形成メカニズムと血管新生抑制作用 紫外線がシワ発生の主要因 光老化 TSP-1↓ 血管新生抑制 VEGF↑ 血管新生促進 紫外線照射による光老化で皮膚の血管新生が亢進 皮膚構造の変化によるシワの形成 従来技術とその問題点 ・合成された血管新生抑制剤では予期 しない副作用などが懸念される。 新技術の特徴・従来技術との比較 ・有効成分であるフコキサンチンおよびフコキサ ンチノールは古来より食品として摂取されてきた 海藻に含まれる天然成分の一種であることから、 より安全と考えられる。 ・フコキサンチノールはより低濃度で血管新生抑 制作用を示すため、より低濃度の配合で効果が 期待される。 想定される用途 ・血管新生が関与する疾患を予防する 機能性食品 ・血管新生が関与する疾患を治療する 医薬品、医薬部外品 ・シワ予防を目的とした化粧料 想定される業界 ・想定されるユーザー 食品製造メーカー 化粧品製造メーカー 医薬品製造メーカー <参考> スキンケアにおけるアンチエイジング商品の市場 2007年 2807億円 実用化に向けた課題 ・効率的な商品開発のためには、フコキサンチ ンをより高濃度に含有する製品が必要 ・今後、シワ予防に関するin vivo試験を行い、 より詳細なデータを得る予定 企業への期待 ・フコキサンチンをより高濃度に含有する製品 の開発により、とくに化粧品原料としての応用 が期待できると考えられる ・シワ形成評価の技術を持つ企業によるヒトで の効果の評価を望む 本技術に関する知的財産権 ・発明の名称 :血管新生抑制剤 ・出願番号 :特開2008-1623 ・出願人 :国立大学法人 京都大学 ・発明者 :平田 孝、菅原達也 お問合せ先 関西TLO株式会社 土井優子 TEL 075-753-9150 FAX 075-753-9169 [email protected]
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