酵素との電子移動反応を基盤とした酵素電子デバイスの開発

工学系研究科
TOMINAGA
循環物質化学専攻
MASATO
冨 永 昌人
教授
酵素との電子移動反応を基盤とした酵素電子デバイスの開発
[キーワード]
酵素,燃料電池,酵素電子デバイス,ナノカーボン,ウェアラブルセンサ,
IoT(Internet of Things)
,ディスポーザル
「酵素とエレクトロニクスの融合」が開く新しいデバイスの扉
研究紹介
◆研究概要
タンパク質の電気化学が本格的に幕を開けてからおよ
そ30年が経過しました.この生物電気化学分野は,近
年,すさまじい勢いで発展しています.本分野における
実用化の成功事例として,簡易型の血糖値センサが挙げ
られ,今では国内だけでも 1000 億円を優に超える市
場となりました.他にも,酵素を触媒とした燃料電池や
ウェアラブルセンサなどの実用化も現実味を帯び,新し
いビジネスへの期待が益々高まっています.
当研究室では,長年にわたる生物電気化学分野におけ
る世界のリーディンググループの一員としての役割を果
たすべく,酵素との電子授受反応を可能とする電極界面
に関する基礎研究に加えて,新しい酵素電子デバイスへ
の展開を図っています.
動が可能となり,人体に優しい皮膚密着型の薄膜センサ
を作成できます.紙ベースのカーボンプリント電極を用
いることで,ディスポーザル型ウェアラブルセンサの作
製もできるなど,様々な商品開発が期待されます.
◆今後の展開
堅実な基礎研究を経た応用研究であるため,各種技術と
の融合により,幅広い展開が可能です.例えば,窯業の転
写技術が酵素薄膜電極の作製にいかせるのでは?と考え
ています.さらに IoT への活用を目指した自立駆動型セン
サの高効率化を図る予定です.
◆実用・応用可能な企業業種
・ヘルスケアメーカー,食品メーカーなど
◆酵素触媒型燃料電池
一般的な燃料電池の主流は,水素を燃料にしており,
その触媒には白金含有触媒が用いられます.一方,酵素
触媒型燃料電池は酵素を触媒として用います.酵素触媒
型燃料電池の出力は,およそ十数 mW/cm2 の電力密度
が達成されています.一般的なエネファームにおいては
200 mW/cm2 程度であることから,既に実用化に耐え
うる出力が得られていることが解ります.
原理的には酸化酵素と還元酵素を用います.還元酵素
は空気中の酸素を還元し,酸化酵素は酵素の基質となる
種々の燃料を酸化します.例えば,グルコースや乳酸,
フルクトース,水素などが燃料として使用できます.
◆自立駆動型ウェアラブルセンサ
汗には乳酸が含まれます.例えば,この乳酸を燃料に
した酵素燃料電池を作製すると, 汗に含まれる乳酸の量
に応じた発電量を示すセンサとなります.さらに,その
発電した電力を使用して信号を発信するという自立駆
ヘルスケア・食品関連
の関係者へ
一言アピール
産学・地域連携機構より
佐賀大学研究室訪問記
2016
酵素と電極間の電子移動反応の模式図
酵素触媒型燃料電池による LED の発光
掲載情報 2016 年7月現在
興味がある・話を聞いてみたい方は,お気軽にご連絡ください.
勉強会・講演のご依頼も受付けています.
冨永教授は,約25年間,生物電気化学の第一線で活躍されています.本技術のキ
ーである酵素—電極間との電子授受反応は,長年の基礎研究実績に基づいています
ので,アイデア次第でいろいろな展開が考えられそうです.
佐賀大学
産学・地域連携機構
(佐賀県佐賀市本庄町1番地)
(お問い合せ先) 国立大学法人 学術研究協力部 社会連携課
TEL:0952-28-8416
E-mail:[email protected]