燃焼ガスの熱力学的諸性質の実用簡易計算:法について 一31一 燃焼ガスの熱力学発墨性質の実用簡易計算法について 西川兼康*・藤田恭伸**・大田治彦*** (昭和54年11、月30日 受理) ASimple Practical M:ethod for Calculating tlle Calorimetric Properties of Combustion Gas K:aneyasu NISHIKAWA, Yasunobu FUJITA and Haruhiko OHTA The silnpli丘ed formulae are proposed for the enthalpy and the entropy of combus− tion gas constituents, by treating each gas constituent as semi−ideal gas. Based on these formulae, there is shown the practical method for calculating directly the calori− metric properties of combustion gas and the adiabatic combustion temperature. This method allows one to analyse the heat processes of combustion gaミwithin the error approvable for practical use and also with practical simplicity. Some calculated results and considerations are also given. 各成分ガスの熱量的状態量を温度の関数として与える 1.はしがき 式を求めなければならない. 熱工学の諸計算を行う場合に,燃焼ガスの熱量的状 本報告では,まず燃焼ガス中にあらわれる各成分ガ 態量を必要とすることがしばしばあらわれる.これに スを半理想気体として取扱った実用上簡便なエンタル こたえるものとして比熱と温度の関係式より出発して ピおよびエントロピの式を作成し,それらに基づいて エンタルピやエントロピの式を作製し,それを基にし 燃焼ガスの熱量的状態量の式を求め,この式を用いて て燃焼ガスに対する熱線図が作成されている1)胆7).し 燃焼ガスの熱的過程について検:討を加える. かし,より精度の高い計算が要求される場合にはガス 表8)を用いるのが最近の傾向であり9),比熱式を用い 2.半理想気体の熱量的状態量 ての計算はあまり行われていない.しかし理論燃焼温 半理想気体の比熱は温度のみの関数であるが,比熱 度の計算などでは比熱が温度の関数であるため逐次近 の温度変化はかなり大きいので,工業上の実際問題で 似的に計算を繰り返す必要があり,相当に面倒であ はこれを考慮に入れなければ,計算上十分な精度がえ る. られない.したがって比熱を温度の1次あるいはそれ 著者らはボイラの有効エネルギ勘定を行うにあた 以上の多項式で表わす方法が提案されている.一例と り,燃焼の不可逆損失を求める場合に断熱燃焼温度を して谷下7)が最新の比熱値に基づいて作成した比熱式 知る必要があり,そのために繰り返し計算を行うこと は次の通りである.すなわち,1kmo1の気体に対す が実用計算上好ましくないと考え,直線的に理論燃焼 る比熱式をいずれの気体に対しても 温度を求める方法を検討した10).このためには燃焼ガ スのエンタルピを温度の簡単な関数式として表わすこ とが必要であり,また燃焼ガスが混合気体であるため 2 ・続婦働(T100)+q(義) 繊( 1r/100)[㎞1/km・rc](ah) *.工学部機械工学教室(エネルギー変換工学専攻兼 担) **工学部機械工学教室 聯*工学研究科機械工学専攻博士課程 ・晦一ん+艦)+喘)2 総合理工学研究科報告 一32_ 昭和55年2月 第1巻 第2号 Table l Constants in eq.(2.10)for enthalpy H[kca1/Nm3]whose reference state is O。C and constants in eq. (2.11) for absolute entropy 3[kca1/Nm3K】at l atm 一〔、一∼_ gas temperature range \ 01 ∂1×105 0∼14000C (i) ノ望1 β1×105 C1 α2 (ii)14・・一…びC箆 N2 02 CO 0.307 2.92 0.291 5.84 0.391 0.304 2.85 0.288 5.70 0.384 0.317 3.44 0.298 0.306 3.07 0.289 6.14 0.441 6..88 0.467 03 ∂3 (iii) 2000∼3000℃ ノ43 β3 CO2 H20 0.350 0.427 9.45 ・6.10 0.375 0.317 12.2 0,084 0.169 0.452 8.00 0.408 16.0 18.9 H2 SO2 0.272 0.304 1.45 0.296 2.90 −0。303 0.385 0.382 0.403 0.386 0.547 0.643 0.622 0.364 −54 _55 _57 −54 −158 −126 −90 −56 0.397 0.389 0.416 0.393 0.582 0.656 O.633 0.386 −78 −69 −83 _68 −228 −152 −112 −100 0.403 0.386 0.385 0.382 −0.210 −0.219 −O.199 −0.177 B2 +恥( Air 0.397 −0.303 0.393 0.416 0.389 −0.273 −O.299 −0.231 0.364 0.547 0.643 0.622 −1.335 −1.592 −1.050 −0.760 0.‘656 0.386 0.633 0.582 −1.605 −1.692 −1.135 −0.930 コ 一ん僻響β・(T100)+孕q(義) iT/100)[k・a1/km・PCI②・b) とおき,各種の気体に対して係数為,,!毎,βf,C,, +i・・D・1・斎+・・乃・・ (2・6・) 1)‘の値を温度丁=300∼900Kおよび900∼3000 K の二つの温度範囲にわけて決定した数値を与えてい る.ここに,μ‘は分子量,6ρ‘およびらfは定圧比 μf8∫=Fρ∫(T)一理1nP‘十μ‘5。∫ (2.6b) ろ・の一∫μ押丁 熱および定容比熱であるから,貌を一般ガス定数とす れば, 殉hT+易(τ100)+去q(義)2 μ‘(6ρrc“∫)=鰍 (2・2) 一一( したがって .4ρ∫=1望“汁オ貌 (2・3) の関係が成立する.ここに,オは仕事の熱当量であ 17γ100) また混合気体のエンタルピ尻kcal/kg]およびエント ロピ5[kca1/kgK]は次のごとく表わされる. μ乃=Σ】rfμf乃ま る. (a7) (2.8) ♂ また,混合気体に対する比熱式もこれから容易に導 かれる.いま各成分気体の容積比を7‘とすると,比 熱式は次のごとくなる. (7詞♪‘)十Σ(rβ」 μ5=Σ7まFρ‘(T)一寸貌(ΣrflnP∫)十Σrfμ‘50ぎ ‘ ∫ ゴ (2.9) ここに,妬はT=0における砺の値であり,50fは 」)(義) μ・一 エントロピ定数で,Nernstの熱定理を用いて30fの 値を各種気体に対して定めることができる・ +恥q)(T100)悔㈲(T/1。。) 以上の谷下式はガス表の数値ときわめてよく一致す る精度のよい式であるが,比熱式が2次以上の多項式 [kcal/kmo1。q (2.4) μ=Σ】7まμぎ (2・5) 」 これらの比熱式を用いてエンタルピ乃‘[kca1/kg]お よびエントロピ8歪[kcal/kgK]は次のごとくなる. ア 晒一 Y(・画MT+蜘 であるため計算が厄介である.そこで著者らは実用上 の有用性を考えてもっと簡便で精度もそれ程劣らない ’次のごときエンタルピおよびエントロピの式を三つの 温度領域に分けて作成した. (i) 0。C≦’≦1400。C E8∫二α、f∫十わ、‘’2 (2.10a) 一33一 燃焼ガスの熱力学的諸性質の実用簡易計算法について 88」=・41歪lnT十βユ,T十Cエま (2.1ia) て,また(ii)および(iii)の領域では比熱を一定と して取扱ったことになっている. (ii) コ.400。C≦;’≦;2000。C Hgぎ=α2ぎ∫十δ2∫ (2.10b) 39ぎ=ん1nT十β2f (2.1ユb) (iii) 2000。C≦’≦3000。C 3.燃焼ガスのエンタルピおよびエントロピの近似 計算式 燃焼ガスは混合気体であり,燃焼ガスのエンタルピ ∬g」=03f’十∂3∫ (2.10c) 5gf=オ3ぎ1n7十β3‘ (2.11c) ここに,∬gfおよび5’9‘は0℃基準のエンタルピ およびエンタルピは一般に次式であらわされる. 〃79乃9=791/9=Σ79‘Hg歪 ‘ 躍959=79∫9=Σ79ぎ(39ぎ→一45誓歪) (3・2) 」 および1atmにおける絶対エントロピで,単位はそ れぞれkcal/Nm3およびkcal/Nm3Kであり,ガス 温度∫およびTの単位はそれぞれ℃およびKであ る.また係数α、‘,α2f,α3ゴ,∂1言,δ2‘,う3‘,・4、歪,・42‘, ・43,および.8H,.B2∫,β3ε, CEはガスの種類と温度 によっセきまるもので,Table 1のような値をとる, 式(2.10)および(2・11)の作成にあっては,(i) エンタルピの式が2次以上の多項式にならないこと, (ii)式より求めたエンタルピおよび手ントロピの値 がそれぞれガス表の値と1%および0.1%以.内の誤差 で一致すること,の2点に留意した.またエンタルピ およびエントロピの値としてはBaehr11)およびKe− enan&K:aye8)の表を規準として用いた.したがっ て熱解離の影響は考慮していない.なお,作成式の係 数の値は空気と水素についてはKeenan&Kayeの 表に,その他の気体についてはBaehrの表に基づい て決定した. (3.1) ここに,妬あるいはHg:単位重量あるいは単位 容積あたりの燃焼ガスのエンタルピ,[kca1/kg]ある いは[kcaI/Nm3]丑g5:単位容積あたりの成分燃焼 ガスのエンタルピ,[kcal/Nm3],59あるいは5「9: 単位重量あるいは単位容積あたりの燃焼ガスのエント ロピ,[kca1/kgK]あるいは[kcal/Nm3K],5’8」:単 位容積あたりの成分燃焼ガスのエントロピ,[kca1/ Nm3K],43翌f:単位容積あたりの成分燃焼ガスの混合 エントロピ,[kcal INm3K],79‘:燃料単位量あたり の成分燃焼ガスの容積[Nm3/kg]あるいは[Nm3/ Nm3],〃g:燃料単位量あたりの燃焼ガスの重量, [kg/kg]あるいは[kg/Nm3]である.なお,エント ロピは一般に二つの状態間の差の形であらわれるの で,∠5協は互に打消し合い,数値計算上は 研989鐸Σ7gf∫9‘ (3.2a) ‘ としてよい. また,エンタルピ,エントロピとモル比熱の間には 式(3.1)および式(3.2)のHgfおよび5gfに式 μごρ=4(粟}H)/4’=1¶4(粟}3)/47■ (2.10)および(2.11)を代入することにより,燃焼 (2.コ.2) ガスの0℃基準のエンタルピ∬9および1atmにお の関係があるので, ける絶対エントロピ3gは三つの温度範囲に対してそ 2δ、f二E、‘,α2‘=ん,α3‘=オ3‘ の関係が成立しなければならない.ここに磐は標準 状態(0℃,760mmHg)における1kmolのガスの体 積である. ョ(2.12)の関係を用いて,上述の三つの 温度領域に対してそれぞれ ゴ オ …≡α、9’十δ、9’2 (3.1a) =(筆8.41‘)十(鶏β、ぎ)T μ,6♪‘==(鶏α2歪)=:(憂}ノ望2」) (iii) μ‘‘ρ」=(魅α3∫)=(磐ノ望3」) だ ゴ 十Σrg‘C1汁Σrgμ32∫ ゴ ロ 鐸/望、glnT+β、gT+C、9 (3。2a) (ii) Hg=(Σrgμ2‘)∫十Σrgf62f ほ (i) μ‘o餌==(簗}α1∫)一ト(2裂3δ1f)’ (ii) (i) E8=(Σア9μ1∂’十(Σrgま∂1ま)’2 39=(Σrg‘ん)lnT十(Σrg‘・Blf)T なお,式(2.10)および(2.11)より真の比熱式を 求めると,’ れぞれ次のように表わすことができる. ゴ ヨα29∫+∂29 (2.13a) (2.13b) (2.13c) となり,(i)の領域では比熱が温度の1次関数とし (3.1b) 3。=(Σrgf!i2∫)lnT+Σr。‘β2‘+Σr。、43銑 ぎ ゴ ⊆≧≦ノ望291nT十B2g ざ (3.2b) (iii) Hg=(Σrg彦α3‘)∫十Σr8‘63‘ ま ほ ≡α39什∂39 (3.ユ。) 一34_ 総合理工学研究科報告 第1巻 第2号 昭和55年2月 Table 2 NumLerical values ofた1,ぬ2,ん3,.4{,.4多,.4≦,α1,α2,α3,β1 and ζfor combustion gas constituent ∼『『−『一一一・・一_.、 gas temperature range \一 々1 .4{ (i) 0∼1400。C α1 β1×ユ04 ζ×1Q4 ん2 (ii) 1400∼2000。C 巡 一α2 た3 ・46 (iii) 2000∼3000。C 一α3 Air 1.43773 0.22519 1.34364 2.00687 2.88535 N2 1.44432 0.23043 1.33333 1.97917 2.85855 ゴ ご C・・is・・ H20 1.42310 1.44210 1.38790 0.20873 0.23125 0.39439 1.56711 1.52595 0.53312 2.30872 2.12457 3.84858 3.28555 3.06384 5.34146 1.30935 0.19098 0.22400 5.04000 6.59912 H2 1.27739 0.14275 0.66667 3.92157 5.OQ936 1.42718 3.29105 −1.02365 0.97973 1.39825 1.29891 1.30197 1.28180 1.29791 1.19328 1,15981 1.16610 0.29793 0.30564 Q.28228 Q。3Q887 0.68055 Q.32747 0.21762 0.54545 0.57330 0.49380 0.45855 2.44059 2。47589 1.68810 1.32170 4,Q4710 2.08791 1.2872811.29493 0.30722 0.31124 0.76322 0,70180 39=(Σr8f・43f)lnT十Σrgβ3‘十Σrgぎ∠∫劉 ぎ 室≦ノ43glnT十B39 CO 02 (3・2c) 1.27061 1.29106 1.17957 1.15615 1.16274 0.29139 0.31447 0.72409 0.33409 0.22147 0.71875 0.58779 2.75773 2。57927 1.79305 はこの場合にも式(2.3)の関係μ(ら一〇の=.4貌が 成立するので, ただし,rgfは燃焼ガス中の各成分ガスの容積比78‘/ μ6拶=c(1十ζT) 7gをあらわす. μcρ=6(々1十ζT) これらの近似式は成分ガスに対しては低温α<100 とおく.ここに, ℃)においてエンタルピに対して数%の誤差になりう 6…≡三鶏ノ望1一ノ望貌 ることもあるが,C。 H2。の燃焼ガスに対し0.5%以 1.29791 4.29171 2.40933 (4.2) (4.3) (4.4・) ζ≡≡(怨、81)/(塁ノ41一ノ童Σ匡) (4ら5) 下,エントロピに対し0.1%以下の誤差におさまるこ である.これらの表示を用いると,エンタルピおよび とが確認された. エントロピはそれぞれ次のごとくあらわされる. 4.等エントロピ変化 ・ゐ一・ m四丁+副+幽 (4.6) 半理想気体の等温変化,等圧変化および等容変化は 理想気体のそれらと大体同一であり,ただ比熱が温度 の関数である点を考慮すればよい.しかし断熱変化に 対しては大いに趣を異にする。理想気体の断熱変化は Pが=定数@=ら/ら)なる簡単な式で表わしえた μ5=c[ん11nT十ζ:『】_14貌1nP十μ50 (4.7) 断熱変化においてはエントロピー定であるから,式 (4.7)を用いて,次式がえられる. P”々1θぼ=一定 (4ユa) が,しかし半理想気体の断熱変化においては断熱指数 々の値が変化の間に温度とともに変わることになる. 上述の三つの温度領域において(ii)と(iii)の領域 ここに, ん1≡≡(磐141)/(磐ノ望1一ノ19モ) (4.8) では比熱を一定と見倣しているので,圧力をP,比容 である.このん1の定義は(ii)および(iii)の温度 積をσで表わすと,それぞれ 領域の々2およびた3とは異るが,ζ=0の場合には (ii) Pが2=一定,ん2三(職42)/(聡!42一オ貌) (4.1b) (iii) Pが3=一定,ん3≡(i8オ3)/(磐/{3−4貌) (4.ユ。) なる関係が成立するが, (i)の領域ではPがニ一 定,という簡単な関係は成立しない. (i)の領域の状態量間の関係を求めるために,式 同じ物理的意味を有するので,一種の断熱指数と考え てよい.Table 2にはこの島の値および(ii)およ び(iii)の温度領域の々2およびゐ3の値を各種ガス に対して示してある・ なお,エントロピ[kcal/kgK]の値を与えてそれ に対応する温度を知りたい場合がしばしば起る.式 (4.7)からわかるごとく,半理想気体ではエントロ (2.13a)の比熱式を次のごとく書き直す.以下添字 ピの式において圧力と温度の項が分離されているの ∫を省略する.定圧比熱0ρと定容比熱C。との間に で,結局1atmにおけるエントロピの値を用いて温 燃焼ガスの熱力学的諸性質の実用簡易計算法について 一35一 度を求める問題に帰せられる.この場合に(ii)と タであり,火炉の熱損失のうち重要なものの一つにあ (iii)の領域ではそれぞれ式(2.11b)および(2.11c) げられる排気損失や燃焼の不可逆損失の計算に不可欠 のものである.燃焼後の温度は燃焼の際発生した熱量 より 、_墨オ、1・T+墨B、≡オ多1・T+B6 (4.9) μ げるために用いられることから決定できる.もし燃焼 μ 、=墨オ,1。T+墨B,≡オ61・T+β6 (4.10) μ が燃焼の間に外部に対する仕事と燃焼ガスの温度を上 の間に熱損失がなければ,燃焼温度は最高になり,こ れを理論燃焼温度あるいは断熱燃焼温度という.実際 μ の燃焼においては熱損失が起り,または不完全燃焼の が成立するから, T一・xp(5一β多門多)≡晒勘r勘 ために発熱量が全部発生しない.このために実際の燃 焼温度は理論燃焼温度より低いのが普通で,一般の場 合50∼80%となっている.また約1500℃以上の場合 α・r驚(4…) には熱解離を生じ,そのために燃焼温度が下がるので あるが,ここでは熱解離については考慮しないことに T一・xp(5r乏6)≡暗為r勘 する. 理論燃焼温度は反応系が周囲と全く断熱された状態 α・r驚(4・・2) において完全燃焼した場合に到達しうる燃焼ガスの温 度であり,次式で求められる. より直ちに,温度を求めることができる. Σ研9彦[娠σ。∂一娠(’o)] (i)の領域においては式(2.11a)より ゴ =瓦十[侮(’∫)一馬(80)]十研。[砺α。)一当。(∫o)】 、_壁面、1・T+塁B、T+墨C、≡オf1・T μ μ (5.1) μ 十」9fT十Cf ここに,〃知,研、:燃料1kg当りの成分燃焼ガス (4.13) が成立するから,エントロピを与えて温度を求めるに は次の逐次近似法を用いなければならない. 量および空気量[kca1/kg], H‘:燃料の低位発熱量 (25℃基準)[kcal/kg],娠,房,乃、:成分燃焼ガス, 燃料,空気の単位重量あたりのエンタルピ豚cal/ まず,第一近似として次式のTを用いる. kg],’。山’∫,’の’o:理論燃焼温度,燃料温度,燃 卿一蹴絢≡ メ・碕一瞬(4・・4・) つぎにこのTノを用いて次の第二近似値丁”を求め る. 焼用空気温度,大気温度[℃]である. 式(5.1)を用いて理論燃焼温度転を計算する場 合,燃焼ガスのエンタルピが温度の関数であるため, ガス表を用いて繰り返し計算を行う必要があり,面倒 卿一町β1孔β・r警 (4.ユ4b) である.しかるに前述のエンタルピの近似式(2.10) を用いれば,ガス表や繰り返し計算の必要がなく,直 つぎにこのT”を用いて次の第三近似値丁”ノを求め ちに励を求めることができる.式(5.1)を書き る. 直して τ1”=θκ1一α1一β1T” (4.ユ4c) Σ79ま田g‘(’46)一Hgぽσo)]二H,十ρ∫s(5.2) ‘ 以後次々にこのようにして求めた温度の値が代入した (∼∫5≡[乃∫(∫∫)一1診∫(’o)]十研α[乃。α。)一乃8(’o)] (5.3) 温度の値と一致するまで計算を繰り返す. Table 2には各種ガスに対するん1,ん2,ん3,/望f,・46, とおき,Hg,に式(2.10a),(2.10b)あるいは(2.10 ,4≦,α1,α2,α3,β1およびζの値が表示してある. c)を代入すれば,次式がえられる.ここにρ∫、は燃 5. 理論燃焼温度 燃料の燃焼によって発生する燃焼ガスの温度,すな わち燃焼温度は燃料の燃焼特性を示す一つのパラメー 料1kg当りの燃料および空気の顕熱である.なお理 論燃焼温度は1400℃以上であるのが普通であるか ら,温度範囲として次の二つの領域を考えれば十分で ある. 一36_ 総合理工学研究科報告 第1巻 第2号 昭和55年2月 (i) 1400。C≦’σd≦2000。C H,十G∫、十’0(Σ79μ1汁∫0Σ79‘61∂一Σ78づδ22 ‘ ’副一 (ii) 」 Σ79∫02」 ‘ (5.4a) 彦 20000C≦ !Lσ冨≦30000C 11‘十G∫、十’。(Σ7gfα、‘一ト∫。Σ】7。‘δ、∂一Σ79∫δ3f ら躍一 ∫ ’ f Σ79μ34 ‘ (5.4b) なお,黒川12)および設楽13)により直線的に理論燃 ここに、∂∫および篤は単位量の燃料の有効エネル 焼温度を求める式が提案されているが,旧い比熱の測 ギおよび高位発熱量をあらわし,単位はいずれも固体 定値を用いた関係もあり精度がよくない. および液体燃料に対しては[kca1/kg],気体燃料に対 しては[kca1/Nm3]である,また, c,乃,5,η, oお 6. 燃料の有効エネルギと燃焼の不可逆損失 燃料の有効エネルギは燃料の燃焼の際えられうる可 逆反応仕事のことで,次式で定義される. ∂ノ=乃一乃rTo(8−30) (6.1) ここに,わ∫:燃料の有効エネルギ[kca1/kg],乃お よびωは固体および液体燃料中の炭素,水素,硫黄, 窒素,酸素および水分の重量含有率,尻,co, o属, 02属は気体燃料中の水素,一酸化炭素,メタンおよび エチレンの容積含有率をあらわし,呼は燃料の単位 重量あたりのエントロピで,次式の値を用いて計算す る11》. よび乃。:流入状態および周囲状態における物質のエ ンタルピ[kcal/kg],5および5。:流入状態および 周囲状態における物質のエントロピ[kca1/kgK]で 固体燃料:謬望0.24,kca1/kgK 液体燃料:52望0.78,kca1/kgK なお,5%程度の誤差を許す場合には ある. 燃料は周囲空気中の酸素と反応してその化学結合エ ネルギが自由になり,適当な過程によってそれが仕事 固体および液体燃料:δ∫窪Hみ 気体燃料 :δ∫…≧Hz (6,4a) (6.4b) に転換されうるのであるから,燃料の有効エネルギの とおいて十分である.ここに,H‘は燃料の低位発熱 定義として,理論酸素量での完全燃焼および1atm および25℃の周囲状態を前提にすれば,次式によっ 量を表わす. てあらわされる. 料のもっている化学エネルギを直接仕事に変える手段 ∂ノ=L。,。十L盟十Lo−Ls (6.2) ここに,L。、,:周囲との可逆反応仕事, しが燃焼ガ ズの混合仕事,るが燃焼ガスの大気への拡散仕事, Ls:大気から酸素を分離する仕事,である. 普通の燃焼の概念では,燃料を単に燃やすだけで燃 は何ら講ぜられない.したがって燃料の有する化学エ ネルギは燃焼ガスの熱エネルギに変換されるにすぎな い.これは自然に起り,全く不可逆の現象である.断 熱燃焼の場合を考えると,燃焼生成ガスは燃焼前の燃 式(6.2)を用いて燃料の有効エネルギを算定する 料および燃焼用空気と同じエネルギをもっているにか ためには,燃料および燃焼ガスのエンタルピおよびエ かわらず,燃焼ガスの有効エネルギは燃料の有効エネ ントロピの値をガス表から求める必要がある.しかし ルギよりはるかに小さい. 燃料の元素分析値が既知の場合には,次の近似式を用 断熱燃焼の場合には,燃焼ガスの温度は理論燃焼温 いることにより精度よく燃料の有効エネルギを求める 度’。4になる.したがって断熱燃焼ガスの有効エネ ルギをわg.醐とすれば, ことができる. 躍8∂9.。d・=Σ78‘田8fσ。d)一∬8‘(∫o)] 固体および液体燃料: ゐ∫=11ん一トTo(1.25c−4.67乃十〇.225一{一1.65η 十1.620十〇.93z〃一5♀) (6.3a) ゑ 一To[Σ78‘∫8‘σ鋸,Pg∂ ゑ 一Σ79ぎ39ゴ(’o,Pg‘)1 (6・5) ご 気体燃料: となる.ここに,躍9は燃料1kg当りの燃焼ガズの 6ノ==丑鬼一To(1.74乃2十〇.92co十2.59c1診4 十2.8562ん4) (6.3b) 重量で,P85は成分燃焼ガスの分圧でΣPg‘・=Poで ゴ あり,P。および∫oは大気の圧力および温度である. 燃焼ガスの熱力学的諸性質の実用簡易計算法について 一37一 また燃焼前の爆料および燃焼用空気のもつ有効エネ 7. む ルギを毎。とすれば, ∂ノσ=δ∫十δノ3十1〃7σ∂σs び 燃焼ガスは工業上応用の広いものであり,その熱力 (6.6) ここに,わ∫、およびゐ。,は燃料および燃焼用空気の顕 熱による有効エネルギ,研、:燃料1kgあたりの空 気量である. したがって断熱燃焼による不可逆損失’。.鋸は ε7.α4=∂∫‘z一躍9∂9.σd す (6.7) 学的性質を知ることはきわめて重要である.しかし燃 焼ガスの温度範囲が広いために比熱が温度の関数とな る半理想気体として取扱う必要があり,ガス表を用い るか,Tづ線図あるいは乃イ線図を用いるなど各種 熱過程の計算が面倒である.本報告は燃焼ガスの熱量 的性質をきわめて簡単な近似式で,しかもきわめて精 となる. 度よくあらわしうることを示したもので,これによっ Table 3 Availability, adiabatic combustion て燃焼ガスの実用熱計算を簡便に行うことができる. temperature and irreversibility 参考文献 due to adial)atic combustion for various fuels 1) A.Stodola, Dampf−und Gasturbinen,6 δノ kcal/kg ’鋸 ’7.α4 1_‘〆・αび ℃ kcal/kg 4153 7668 8107 1987 2281 2252 1494 2306 2307 O.6403 0.6992 0.7154 C2H:50H heavy oi1 A heavy oi1 B heavy oil C 6883 10267 10291 10137 2016 2111 2158 2136 2321 3136 3087 3054 O.6628 0.6946 0.7000 0.6987 CH4 12209 11356 9817 2050 2289 2138 3658 3084 2765 0.7004 0.7284 0.7183 693 1515 197 0.7152 wood(dried) bituminous coal anthracite C2H4 town gas blast furnace gas ∂∫ Table 3は各種燃料について上述の方法によって有 効エネルギ,空気過剰率1π=1の場合の理論燃焼温 度および断熱燃焼の不可逆損失を計算した結果を示し たものである. Auf1., Springer(1924) 2)W.Sch廿1e, Neue Tabellen und Diagram− me f銭r technische Feuergase, Springer (1929) 3) P.Rosin−U. R. Fehling, Z. VDI,71(1937), 383 4) 小林,旅順工大報告,5(1932),227 5)W.P且aum, S. Diagramme f茸r Verbren一 nungsgase 1932, VDI Verlag・ 6) 田中,栗野,航研報告,128(昭10)および144 (昭11) 7) 谷下,工業熱力学,応用編,裳華房(昭39), 124 8) J.H. Keenan−J. Kaye, Gas Tables, John Wiley&Sons(1966) 9) 柘植,内燃機関,18−1(昭54),9 10) 西川,藤田,大田,熱管理と公害,29−12(昭 52),43 11) H.D. Baehr, Thermodynamik,3Au乱, Springer (1973) 12) 黒川,燃焼工学,技報堂(昭44) 13) 設楽,燃焼の理論と計算法,オーム社(昭49)
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