仕様書 - 量子科学技術研究開発機構

BA原型炉における
非接触ダイバータプラズマ特性の解析
仕様書
平成28年6月
国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構
核融合エネルギー研究開発部門 六ヶ所核融合研究所
核融合炉システム研究グループ
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1.一般仕様
1.1 件名
BA 原型炉における非接触ダイバータプラズマ特性の解析
1.2 目的及び概要
本仕様書は、BA 原型炉設計活動におけるダイバータ設計研究の一環として実施す
る非接触ダイバータプラズマ特性のシミュレーション解析について定めたもので
ある。ダイバータは、炉心から排出される燃料粒子やヘリウム灰の排気や、ダイバ
ータプラズマを冷却するために入射される不純物ガスの制御等の重要な機能が要
求される。一方で、炉心から排出された熱が集中し高い熱負荷となるため、非接触
ダイバータプラズマと呼ばれる運転により熱負荷を低減させる必要がある。
本作業では、今後の原型炉ダイバータ設計研究の指針を得るために、原型炉ダ
イバータにおける非接触ダイバータプラズマ特性について解析することを目的と
する。作業としては、ダイバータプラズマシミュレーションコードを用いて、炉
心プラズマ密度、ダイバータ形状、プラズマの輸送係数等の変化に対する非接触
ダイバータプラズマ特性及びダイバータ熱負荷を評価する。
1.3 契約範囲
1) 原型炉ダイバータを対象としてダイバータプラズマシミュレーションコード
(SONIC)を用いたシミュレーション解析を実施する。
ただし、
・ 炉心プラズマ密度、ダイバータ形状、プラズマの輸送係数等の条件を変化
させた計算を15ケース程度行う。計算条件の詳細については、量子科学技
術研究開発機構(以下、量研機構)が指示する。
・ シミュレーションコードの収束性の改善作業(量研機構が指示する各種パ
ラメータの調整による収束状況への影響評価)を含む
・ 必要に応じて量研機構に指示された物理量を出力するための簡易なポス
ト処理インターフェースの作成を行う。
・ 量研機構の指示するダイバータ形状に対する入力ファイルの調整、計算メ
ッシュの作成作業を含む。
2) シミュレーションコードの移植作業
・ 解析に用いるシミュレーションコードは、現在、国際核融合エネルギー研
究センターの大型並列計算機で動作するよう調整されているが、本シミュ
レーションコードを、他の大型並列計算機で動作するよう、移植作業を行
う。(移植先1カ所)
3) 報告書作成(コード修正箇所のリスト、入力パラメータと解析結果データのまと
めを含む)
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1.4 納入品
1) 作業報告書
3部
2) 作業履歴書
1部
3) 利用手順書
1部
4) 電子データ(計算結果、計算メッシュ、及び上記 1〜3)
1部
1.5 納期
平成29年2月28日(火)
1.6 納入場所
量子科学技術研究開発機構 核融合エネルギー研究開発部門
六ヶ所核融合研究所 核融合炉システム研究グループ
1.7 検収条件
報告書と本仕様書との照合により合否の判定を行う。前述の納入場所における検査
の合格をもって納入、引渡しとする。
1.8 大型計算機の利用
本件における SONIC の計算に限り、受注者は以下の大型計算機を無償で使用でき
る。
1) 国際核融合エネルギー研究センター 大型並列計算機(以下、Helios)
ただし、4,800,000 コア時間を上限とする。
2) 日本原子力研究開発機構 東海地区 大規模並列計算機(以下、ICEX)
ただし、100,000 CPU 時間を上限とする。
計算機の利用に当たっては、それぞれの利用規則を遵守するものとする。
1.9 貸与品
受注者は、本作業にあたり必要な場合は、量研機構が所有するこれまでの成果報告
書を閲覧することができる。
また、作業にあたり必要に応じて以下を量研機構から貸与する。
(1)SONICの実行に必要なソースコード、実行スクリプト、データ一式
(2)X端末あるいはX端末エミュレータ付きPC(量研機構内の使用に限る)
(3)大型並列計算機(Helios、ICEX、他)のアカウント及び必要に応じて接続
用ハードウェアトークン
貸与品は、作業完了時に全て返却すること。
1.10 瑕疵担保責任
検収後1年以内に、受注者が修正した部分のプログラムあるいは入出力データに瑕
疵が発見された場合、無償にて速やかに改修を行うものとする。
1.11 産業財産権等
1)産業財産権の取扱い
本契約に関して発生する産業財産権の取扱については,
「BA 協定の調達に係る情
報及び知的財産に関する特約条項」に定められたとおりとする。
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2)技術情報の開示制限
受注者は、本契約を実施することによって得た技術情報を第三者に開示しよう
とするときは、予め書面による量研機構の承認を得なければならないものとす
る。量研機構が本契約に関し、その目的を達成するため受注者の保有する技術情
報を了知する必要が生じた場合は、量研機構と受注者協議の上、決定するもとす
る。
3)成果の公開
受注者は、本契約に基づく業務の内容及び成果について、発表若しくは公開し、
または特定の第三者に提供しようとするときは、予め書面による量研機構の承
認を得なければならないものとする。
1.12 機密保持
本契約において作成され、または量研機構から貸与された資料は契約目的以外に使
用してはならない。ただし、事前に量研機構の承諾を得た場合にはこの限りではな
い。
1.13 情報セキュリティーの確保
情報セキュリティーの確保については、別に定める『量研機構との取引において遵
守すべき「情報セキュリティーの確保」に関する事項』のとおりとする。
1.14 グリーン購入法の推進
1) 本契約において、グリーン購入法(国等による環境物品等の調達の推進等に関する
法律)に適用する環境物品(事務用品、OA機器等)が発生する場合は、これを採
用するものとする。
2) 本仕様に定める提出図書(納入印刷物)については、グリーン購入法の基本方針に
定める「紙類」の基準を満たしたものであること。
1.15 協議
本仕様書に記載されている事項及び本仕様書に記載のない事項について疑義が生じ
た場合は、量研機構と協議のうえ、その決定に従うものとする。
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2. 技術仕様
2.1 作業の概要
本作業で使用するシミュレーションコード(SONIC)は、ダイバータプラズマ流体コー
ド(SOLDOR)と中性粒子および不純物輸送モンテカルロコード(NEUT2D, IMPMC)からなり、
量研機構により開発・管理されている。主プラズマから放出されたプラズマがダイバー
タ板へ輸送される2次元の物理プロセスはSOLDORコードにより計算される。また、ダイ
バータから発生あるいはガスパフにより入射された中性粒子および不純物ガスの2次元
輸送プロセスはNEUT2DコードとIMPMCコードにより、それぞれ計算される。これらの解
析コード間の情報はMPI(Message Passing Interface)により受け渡しされており、主
要出力が収束するまで大型並列計算機上でイタレーション計算を行う。作業者は入力用
パラメータリストに条件を選定し、実行用スクリプトによりジョブ投入を行い、計算を
実施する。
・ 原型炉におけるプラズマ平衡データ、リファレンスとなるダイバータ形状及び計算
用メッシュ等のデータは、量研機構が検討し作業者に提供する。
・ 主プラズマ条件、燃料ガス供給量、不純物種及びその入射量、装置仕様等について
は、量研機構が指定する。
・ シミュレーション手順として、作業者は、必要に応じてダイバータ形状の調整及び
計算メッシュを作成する。その後、入力パラメータを設定し、 SONICシミュレーショ
ンを行い、収束を確認した後、ポスト処理(数値データファイル出力および図形出
力)を行う。その際、必要に応じて、収束の確認や評価のための簡単なポスト処理イ
ンターフェース等の作成を行う。
・ 本作業の進め方として、最初に量研機構が提供する入力データをもとに、炉心プラ
ズマ密度を変化させた計算を行う。
(5ケース程度)この際、量研機構の指示に従い、
各種パラメータの調整を行いながら、計算の収束状況への影響を確認する。
・ その後、量研機構の指示のもと、プラズマの輸送係数やダイバータ形状等を変化さ
せた計算を行う。
(10ケース程度)
・ 上記計算には、量研機構の指示のもと、ダイバータの角度や、排気スロット位置、ダ
イバータカセット形状等の調整を行い、3ケース程度の計算メッシュを作成する作業
を含む。
・ 以上の作業において、基本ケースの結果との比較検討は随時量研機構が行う。
SONICコードの概要:
・周辺プラズマおよび真空容器内の空間位置は 2 次元メッシュにより定義される。
・SOLDOR コードは、主プラズマより周辺部に流出したプラズマの輸送を、磁力線に沿っ
た流体方程式をもとに、径方向拡散効果を考慮し、主プラズマとの境界からダイバ
ータ板まで計算を行う。プラズマの発生や損失、不純物イオンとの衝突およびエネ
ルギーや運動量のやりとりは、NEUT2D, IMPMC コードで計算された中性粒子と不純物
イオンの分布をもとに計算される。
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・計算メッシュは、磁場構造やダイバータ幾何形状を取り入れるために境界適合メッシ
ュを採用している。磁場平衡データ(量研機構が提供)及び構造物の座標データを元
に Gmesh コードにより計算メッシュを生成する。
・ NEUT2D コードは、ダイバータ板で発生あるいはガスパフにより入射された中性粒子
について、イオン(プラズマ)化もしくは排気までの 3 次元運動を、2 次元平面上でモ
ンテカルロ法により計算する。計算に用いられるプラズマ分布は SOLDOR コードによ
り計算された分布をもとにする。
・ IMPMC コードは、ガスパフにより入射された不純物ガスがプラズマとの衝突やイオン
化・再結合過程を経て、最終的に排気されるまでの 2 次元運動をモンテカルロ法に
より計算する。プラズマおよび中性粒子の分布は SOLDOR および NEUT2D コードの結
果をもとに計算される。
・ これらの解析コードは Fortran90 で作成されており、コード間の出力データは MPI
により受け渡しされる。作業者は計算開始時に入力用パラメータリスト上で条件を
設定し、大型並列計算機でイタレーション計算を実施する。計算の途中で主要物理
量(ダイバータの密度・温度等)の時間変化を確認しながら、収束解が得られるまで
計算を繰り返す。
・ プラズマ・中性粒子・ダイバータ板の熱負荷、ダイバータや周辺プラズでの放射損失
分布などの出力データは、シミュレーション計算の収束後、ポスト処理のインター
フェースにより、テキスト形式の出力の他、グラフィック端末及びファイルへ図形
として出力される。多くの計算結果の出力インターフェース、データ整理用スクリ
プトが用意されているが、必要に応じて追加・修正する。
2.2 作業手順の概要
2.2.1 原型炉ダイバータプラズマのシミュレーション解析
(1)ダイバータ形状の調整および計算メッシュの作成:
・量研機構の指示に従いダイバータ形状の座標データを修正する。座標データは
テキストファイルで定義されており、別途プロットツール等で確認しながら座
標を修正する。その後、SONIC専用の計算メッシュ作成ツールGmeshを用いて計
算メッシュを作成する。この際、SONICでは境界適合メッシュを採用している
ため、壁近傍のメッシュ幅等の入力パラメータを調整しながら計算メッシュを
作成すること。
(2)SONIC シミュレーションの実施:
・量研機構が用意若しくは(1)で作成した計算メッシュ、プラズマや境界条件
用の入力パラメータを設定する。
・国際核融合エネルギー研究センターの大型並列計算機(Helios)若しくはその
他 の 大 型 並 列 計 算 機 を 使 用 し て 、 バ ッ チ 処 理 に よ り SONIC ( SOLDOR 、
NEUT2D,IMPMC のイタレーション)シミュレーションを実行する。
・ジョブ終了後、主要物理量の収束状況を確認し、収束するまでリスタートを繰
り返す。この際、収束状況に合わせてタイムステップ幅、テスト粒子等を適宜
調整すること。収束しない場合には、量研機構と協議を行い、初期データの修
正、パラメータ調整等を行うこと。
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(3)ポスト処理の実施:
・ポスト処理インターフェイスを用いてポスト処理を行い、通常の出力データ(ダ
イバータおよび周辺部プラズマ分布、中性密度・圧力分布、排気粒子束、放射
損失および対向材への熱・粒子負荷分布、中性粒子束等)を、データファイル
およびグラフィックとして出力し、量研機構の指定するフォーマットに沿って
まとめること。
・計算結果の比較や収束の判断を行うために必要な場合は、量研機構に指示され
た物理量を出力するための簡易なポスト処理インターフェースの作成を行う
こと。
(4)「作業履歴書」と「利用手順書」の作成:
・ 入力したデータおよび計算した結果の概要や収束の状況等についてジョブご
とにまとめた「作業履歴書」を作成すること。
・ 本件の作業に関する一連のパラメータランの入力データ手順、代表的な結果フ
ァイル、グラフ等の出力方法を、分かり易く記した「利用手順書」を作成する
こと。また、本件でポスト処理インターフェイス等を追加・修正した場合には、
その使用方法、代表的な結果等も合わせて記すこと。
2.2.2 シミュレーションコードの移植作業
・プログラムソースコードはFORTRAN90で作成され、計算プロセスおよびバッチ
処理にperlおよびCシェルを使用し、Helios上で実行する。インターフェース
及びポスト処理による図形出力はX端末よりアクセスし実行する。これらの周
辺ツール及びスクリプト群を含むSONICコードを、ICEXもしくは他の大型並列
計算機へ移植する。動作確認として、Helios上で計算した結果を移植先の計算
機で再現すると共に、ストロングスケーリングにより並列化効率の評価を行う。
2.3 作業環境に関する補足説明
作業場所
・ 作業は、基本的に量研機構・六ヶ所核融合研究所内で行うこととする。た
だし、計算メッシュの作成、コードの実行、収束判定、ポスト処理、パラ
メータ調整等について十分に習熟し、作業者のみでも作業に支障がないと
量研機構が判断した場合には、リモート接続による作業を許可する。
・ リモート接続により作業を行う場合は、作業の進捗を毎週電子メールにて
報告すると共に、量研機構・六ヶ所核融合研究所へ月に1週間程度滞在し、
打合せに基づく詳細なパラメータ調整、計算メッシュ作成等を行うこと。
・ 毎週の報告及び六ヶ所核融合研究所への滞在は、那珂核融合研究所におい
て週に一度、報告・打合せ・作業を行うことに代えてもよい。
以上
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