科学技術外交シンポジウム 白石政策研究大学院大学学長挨拶 本日は、お忙しい中、非常に多くの方々にご来場頂き、ありがとうございます。また、 我が国の外交をけん引されておられる岸田外務大臣、科学技術の中枢を指揮されて いる島尻科学技術政策担当大臣のご臨席を賜り、このようなシンポジウムを開催でき ますことを、大変喜ばしく思います。 本学は、「民主的統治を担う指導者、政策プロフェッショナルの養成」を目的とした国 立大学であり、その目標達成のために「学際的な政策研究の促進」「高度の技倆と広 い視野を持った政策プロフェッショナルの養成」「世界的政策研究教育拠点の形成」の 3つを課題として掲げております。「科学技術イノベーション政策」は、我々の研究教育 活動における大きな柱の1つであり、文部科学省による「科学技術イノベーション政策 における『政策のための科学』」の事業の中核拠点ともなっております。その中で、「科 学技術外交」及び「政策形成おける科学的助言」は、今まさに取り組むべき課題として、 政策研究プロジェクトを実施し、諸外国のカウンターパートとも活発に議論を行って参 りました。 私自身も、4年間、総合科学技術会議、現在の総合科学技術・イノベーション会議の 有識者議員を務め、「科学技術外交」にも深く関与しました。「科学技術外交」には、よ く言われますように「外交のための科学技術」「科学技術のための外交」という、言わ ば車の両輪がある中で、実のところ「外交のための科学技術」の推進は、なかなか難 しいものがあったことを今でも思い出します。つまり、外交の観点から日本の科学技術 の力をどう活用していくのか、そのためにはどのような仕組みをつくればよいのかにつ いては外交当局がリードしていく必要、もっと端的に申し上げますと、外務大臣にその ような意志を持っていただくことが非常に重要であり、これがやっと今実現していると いうのが私の思いでございます。 振り返ってみますと、科学技術の知見が外交の課題を達成する上で、あるいはさまざ まな外交上の案件に対処する上で、ますます重要になってきていることは、ほぼ間違 いないことだと言えます。例えば、情報通信技術の発展によって世界がつながるよう になった一方、サイバーセキュリティのような問題も生じ、実際に国の安全保障そのも のがサイバーの問題とも連動するようになりました。また当然ながら、保健・医療、気 候変動といった地球規模課題についても、人類共通の課題として我々は対処しなけ 1 ればなりません。このように、外交が直面する課題の解決に向け、科学技術の知見、 イノベーションを活用していくことが非常重要になってきていると思います。 そして、このような事態にも対処すべく、米国、英国等では、科学顧問が政策決定者・ 外交当局の人達に対し科学的根拠に基づいてアドバイスする仕組みが既に構築され、 経験も蓄積されていることは、皆様もご存じのことと思います。 こういった背景から、我々としてもぜひ外交当局がリーダーシップをとってこのような仕 組みを導入していただきたいと考え、岸田外務大臣へ、議論の場の設置を進言させて いただいたところ、「科学技術外交有識者懇談会」が設置されました。私は座長を務め ましたが、活発な議論の結果、外交へ我が国の科学技術を活用していくための具体 的方策を提言することとなりました。この報告書では15の提言がなされていますが、 中でも、「外務大臣科学技術顧問を試行的に設置していただきたい」という9つ目の提 言が迅速に実現され、外交政策の立案・実施に科学的な知見を活用する下地が出来、 しかも、最も適任と考えておりました岸先生が顧問に就任され、非常に喜ばしく感じて おります。 科学技術外交が我が国の外交の新機軸となっていく――そのために、本日のシンポ ジウムが、全ての科学技術・イノベーション関係府省、民間企業・機関、大学そして外 交当局が一丸となり、これを実現する一助となることを祈念し、挨拶にかえさせていた だきます。 (了) 2
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