2014年度法情報学演習 第15回 レポート(ゼミ論文)作成・講評 2015年1月22日(木) 東北大学法学研究科 金谷吉成 <[email protected]> 2014年度法情報学演習 1 2015年1月22日 最終レポート(ゼミ論文) 最終レポート(ゼミ論文) – 各自が選択し報告したテーマをレポートにまとめる – 各自が報告したテーマとは別に、ゼミ論文用にテーマを選 択し直してもよい 大学院科目として受講している者は、レポートに代えて判例評釈 を行うことを予定していたが、今回は報告テーマに関して、レポー トで掘り下げることでも構わない。 形式 – – – – ワープロソフトでA4印刷できるよう作成 電子メールにより電子的に提出 電子メールの件名を「法情報学演習レポート」とする レポート枚数および様式は問わない 個別報告の内容をまとめるだけでも最低2~3ページにはなるの ではないか 提出期限:2015年1月31日(土) 2015年1月22日 2 2014年度法情報学演習 論文の構成 <例1> 章・節・款・項・目 <例2> はじめに 1. 問題意識 2. 本稿の構成 第1章 ○○○○ 第1節 ×××× 1. 2. 第2節 ×××× はじめに 第4節 小括 第2章 ○○○○ 4 ×××× Ⅱ ○○○○ 終章 **総括と今後の課題 Ⅴ 総括と課題 2015年1月22日 Ⅰ ○○○○ 1 ×××× (1) (2) 2 ×××× 3 2014年度法情報学演習 論文の構成例 はじめに:問題意識、なぜこのテーマを選んだのか 第1章:現状分析、自分の着眼点を示し、どのよう な問題が起きているかを説明する 第2章:先行研究、同じような問題意識をもって研究 している論文や問題に関係する法令・判例を調べ てまとめる 第3章:問題を解決するための仮説を立てる 第4章:実証分析、仮説によって本当に問題が解決 するのか、実地調査等を通じて検証する 第5章:考察、仮説に基づく具体的な提言を行う おわりに:総括、残された課題、(謝辞) 2015年1月22日 4 2014年度法情報学演習 論文の構成を考える アウトラインの作成 – フリーライティング 論文を書き始める前に、トピックについて思いつくままに 何でも書き出してみる 「私はこう思う」「私が言いたいことは○○だ」というもの を見つけ、そこから枝を伸ばして論点を書き出していく さらに、各々の論点の根拠や具体例を挙げていく – cf. マインドマップ – 目次を作ったり、図を作ったりするのも効果的 見出しを付ける – 文章を書き始める前に付ける – 文章を書き終わってから付ける 2015年1月22日 5 2014年度法情報学演習 表現する 一文一義 – 一文はできるだけ短く – 一つの文で一つのことをいう 主語と述語を対応させる – 悪い例:「法情報学演習では、情報に関する法律 問題について、個別報告を行う。」 主語と述語が対応していない – 長い文章では気付かないこともある 接続助詞「が」はなるべく使わない – 悪い例:「法情報学演習ではさまざまなテーマを取 り扱ったが、どの問題も興味深かった。」 逆接なのか単純接続なのかわかりにくい 2015年1月22日 6 2014年度法情報学演習 注の付け方 頁毎 章毎 巻末 第2章 ○○○○ 1. 総説 ~~~~~~~~ ~~~~1)、~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~2)。 ~~~~~~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~24)。 参考文献 1) ~~~~~~。 2) ~~~。 2015年1月22日 注 1) 2) 3) 4) 5) 6) 7) 8) ~~~~~~。 ~~~~~~。 ~~~~~~。 ~~~~~~。 ~~~~~~。 ~~~~~~。 ~~~~~~。 ~~~~~~。 7 <第1章> ○○『××』(△、2012) ○○『××』(△、2012) ○○『××』(△、2012) ○○『××』(△、2012) <第2章> <第3章> 2014年度法情報学演習 著作物の「引用」について 科学=先人たちの膨大な研究業績の積み重ね – 自然科学 ニュートンvs.アインシュタイン – ニュートン力学から相対性理論へ – 社会科学 歴史的所産の蓄積を基礎としてはじめて、新たな知見を築くこ とができる 「引用」は、先人に対する敬意であるとともに、後進 への橋渡しでもある – 出典を明示することで、読者が後でその情報にアクセ スでき、より深い知識が得られる – 引用の仕方や引用元の信頼性に誤りや問題がないか なと、事実関係が調査できる 2015年1月22日 8 2014年度法情報学演習 著作物の「引用」 「引用」とは – 著作権法32条1項「公表された著作物は、引用 して利用することができる。この場合において、 その引用は、公正な慣行に合致するものであ り、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目 的上正当な範囲内で行なわれるものでなけれ ばならない。 」 2015年1月22日 9 2014年度法情報学演習 適法な「引用」とは 公正な慣行に合致するものであり、かつ引 用の目的上正当な範囲内で行われるもの であること(著32条1項) カギ括弧を付けるなど、自分の著作物と引 用部分を区別すること(明瞭区別性)* 自分の著作物が主で、引用される他人の 著作物が従であること(主従の関係)* 出所(出典)を明示すること(著48条) *最判昭和55年3月28日民集34巻3号244頁。 2015年1月22日 10 2014年度法情報学演習 法律文献等の出典の表示方法 法律編集者懇話会 「法律文献等の出典の表示方法」 http://www.law.kobe-u.ac.jp/citation/mokuji.htm 2015年1月22日 11 2014年度法情報学演習 2014年度法情報学演習で扱ったテーマ 松田「不正アクセス禁止法」(2014/10/30) 高塚「いじめとSNS」(2014/11/6) 鉄井「迷惑メール問題について」(2014/11/13) 張「通信と放送の融合」(2014/11/20) 滝・野口「Twitterにおける危険性」(2014/11/27) 戸井田・間渕「カード犯罪について」(2014/12/4) 吉田「電子商取引の問題点」(2014/12/11) 大島「インターネットと国際訴訟」(2014/12/18) 西尾「オンラインゲームにおける消費者トラブル」 (2015/1/8) 渡邉「サイバー犯罪と刑法」(2015/1/15) 2015年1月22日 12 2014年度法情報学演習 情報に関する法律問題 情報のデジタル化、ネットワーク化 – 情報の価値の高まり 劣化しない 大量のデータを処理することが可能 新たな付加価値が生ずることもある 容易に伝達することができる – 地球規模のコミュニケーション 新たな法律問題 2015年1月22日 13 2014年度法情報学演習 法律や制度はどうあるべきか 情報化が適切に進展するための制度整備 – 標準化、技術開発 – 既存の法律がデジタル化やネットワーク化の障害 になっているような場合は、法律の本来の目的を 損なわないようなかたちで障害を取り除く 規制緩和、環境整備 新たに発生する問題に対するルール整備 – 現行法によるルールが有効かどうか – 新たな法律・制度をどのように整備すべきか 実体法:法的責任の明確化 手続法:法的追求を容易にする手続きの整備 2015年1月22日 14 2014年度法情報学演習 今後の課題 今後も新しい問題が生ずる – いまはまだ法律や制度が十分に対応しきれて おらず、判例等の蓄積も多くない – 個々の具体的な事例等について、その都度考 えていく必要がある 法律の知識だけでなく、さまざまな分野の知識が必 要となる 広い視野を持って問題と向き合ってもらいたい 2015年1月22日 15 2014年度法情報学演習 補足①:SNSでのトラブル FacebookやTwitterなどで、従業員や学生 等が不適切な書き込みを行う事例 – 未成年者の飲酒・喫煙、無免許運転や遺失物 横領、窃盗など犯罪行為の告白、犯罪予告 – 守秘義務違反、個人情報流出 病院に医療事務員として4月からの就職が内定し、 研修中の医療専門学校の学生が、twitterに「○○ (ある有名スポーツ選手)のカルテみてみた」との書 き込みを行った。(2013年1月16日) 学校は学生の処分を決定、学生は内定を辞退 一方で、企業等では、SNSの積極的な活用 が求められる面も 2015年1月22日 16 2014年度法情報学演習 補足②:個人情報の意図せぬ収集 M2Mサービスの進展 – M2Mとは、Machine-to-Machineの略語で、ネット ワークにつながれた機械同士が人間を介在せず に相互に情報交換を行い、さまざまな制御を自動 的に行う仕組み 自動販売機の在庫管理、業務車両の位置情報、監視カ メラ、気象データの観測など これが進むと……?私たちの生活に直接関係する電化 製品(冷蔵庫、洗濯機、調理器、湯沸器、電灯など)もい ずれネットワーク化されるかもしれない – IoT (Internet of Things) モノのインターネット – 便利になる反面、個人情報流出の危険が増大 GPS情報の利用 – スマホ、デジカメ写真(位置情報や撮影日時が自 動的に記録される) 2015年1月22日 17 2014年度法情報学演習 補足③:ライフログ ライフログ(Life Log) – 人間の生活・行動を、デジタルデータとして記録す ること 食べた物、会った人、行った場所、読んだ本、買った物 などを記録 体重や体調、起床・就寝の時刻、エクササイズの記録 (歩数、消費カロリー数)、ドライブレコーダー ブログやSNSに書き込んだり、Evernoteなどのクラウド サービスを利用したり – 何の役に立つのか? 過去を楽しむ、将来の行動を予測する ウェブサイトで自動的に「おすすめ」が表示される、場所 や嗜好に合ったクーポン券を発行 – プライバシーへの不安 2015年1月22日 18 2014年度法情報学演習 補足④:ソーシャルゲーム ソーシャルゲームの課金システム – 基本的には無料で遊べるが、アイテムやアバター などを有料で提供しているものが多い – 重課金で遊んでいる一部のユーザと、その他大多 数の無料ユーザ それでもペイする、むしろ現在の日本のゲーム市場は ソーシャルゲーム全盛時代になっている 何らかの「中毒」をもたらしているのではという懸念 出会い系サイトとして利用されることの懸念 射幸心をあおるコンプリートガチャ 消費者庁による規制 未成年者への超過課金問題(未成年者へは月間利用 上限を設定しているが、システムの設計ミスにより、上 限を超過してゲーム利用料金を課金してしまった) 2015年1月22日 19 2014年度法情報学演習 補足⑤:ステルスマーケティング ステマ – 2012年ネット流行語大賞 – 消費者に宣伝と気づかれないように宣伝行為をすること、 口コミサイトに行為的な投稿を多数投稿するなどの手法が 用いられる 消費者庁の対応 – 消費者庁「インターネット消費者取引に係る広告表示に関 する景品表示法上の問題点及び留意事項」(2011年10月) 「商品・サービスを提供する事業者が、顧客を誘引する手段とし て、口コミサイトに口コミ情報を自ら掲載し、又は第三者に依頼し て掲載させ、当該『口コミ』情報が、当該事業者の商品・サービス の内容又は取引条件について、実際のもの又は競争事業者に 係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認さ れるものである場合には、景品表示法上の不当表示として問題 となる。」 → 消費者庁による措置命令 → 命令に違反した場合は罰則 ただし、具体的な表示が景品表示法に違反するか否かは、個々 の事案ごとに判断される 2015年1月22日 20 2014年度法情報学演習 インターネット上の情報発信 ウェブ→ソーシャルメディア(SNS) – インターネットの特質 情報の広がり・拡散、反応の早さ 予想外の反応=炎上 コミュニティの種類と規模 1対1 → 知り合い、関係者 特定グループ → 仕事、趣味、サークル、ゼミ 不特定グループ → 共通の話題、趣味の情報交換 公開 → 誰でも見られる、誰が見るかわからない 規模が大きくなりすぎると、発言数が多くなり、情報を取 りこぼしたり、混乱したりする。混乱すると、魅力が失わ れて廃れることもある。 やっかいなのは、公開サービスで特定グループの場合 – Twitterで仲間同士の情報交換のつもりが世界に公開 2015年1月22日 21 2014年度法情報学演習 ソーシャルメディア利用時の注意点 1. 話題の選び方、表現によっては、意図しな いコミュニケーションが生じるおそれ 2. 想定外の閲覧者の目に触れるおそれ 3. 匿名性は不確実 4. 投稿の削除が困難 2015年1月22日 22 2014年度法情報学演習 意図しないコミュニケーション 悪気のない投稿内容が他人を不快にして しまう場合がある – さまざまな立場、地域、文化的背景、価値観 – 不正確、攻撃的、無配慮と思われる可能性 – 違法な行為、社会的モラルに反する行為につ いては、悪気がなくとも批判が巻き起こる可能 性(炎上) 話題の選び方、表現に注意する 公開メディアでは多様な閲覧者が存在することを意 識する 2015年1月22日 23 2014年度法情報学演習 想定外の閲覧者 友人・内輪のつもりの軽い投稿も、公開さ れてしまう可能性 – 公開範囲を制限する機能の有無・設定を確認 – 再掲載されて情報が拡散する可能性 – 想定外の他人に閲覧される可能性 – 想定外の他人には誤解・批判される可能性 公開範囲を制限したつもりでも、設定ミス・操作ミ ス・運営者のミス・システムの故障なども起こり得る 多様な閲覧者を想定して投稿する 2015年1月22日 24 2014年度法情報学演習 匿名性は不確実 実名:仮名:無名 匿名(仮名や無名)でも特定されることがある – 過去に行った複数の発言やプロフィールを分析し て特定 – 実名・所属・住所などの情報が暴露される可能性 プライバシー侵害、業務妨害 所属先への抗議、炎上 個人が特定される可能性を想定しておく – 身バレしても困らないように注意して行動 2015年1月22日 25 2014年度法情報学演習 投稿の削除が困難 不用意な投稿を後で削除しても、インター ネット上から完全に消し去ることは難しい – 検索サイトのキャッシュ – 第三者による複製・保存 – 引用、再掲載、アーカイブ 責任を持てるかどうかを考えて発言するしかない その一方で、SNSの公式利用への期待も大きい – 企業、大学、行政機関等の公式広報 – 公式アカウントによる情報発信 – 「中の人」の個人的な意見 2015年1月22日 26 2014年度法情報学演習 クラウドサービス利用時の注意点 クラウド – インターネット上で手軽に利用できる情報サービス – メール、SNS、掲示板・連絡板、検索、翻訳、ファイル 保存、ファイル交換、日程調整、日本語変換 – 業務の効率化や経費節減の効果も期待できる 安全か? – 利用時に、どのような情報がサービス提供者に送信さ れて蓄積されるのか – どういう範囲の人々に見られる可能性があるのか – 入力した情報をサービス提供者が再利用する可能性 内容そのもの、利用動向・履歴、利用者情報 無償サービス提供の対価は何か 利用規約をよく読む必要があるが、利用規約が変更になるこ ともある 2015年1月22日 27 2014年度法情報学演習 参考Web 法人におけるSNS利用に伴うリスクと対策 (JPCERTコーディネーションセンター) – http://www.jpcert.or.jp/research/sns2012.html SNSの安全な歩き方(日本ネットワークセ キュリティ協会) – http://www.jnsa.org/result/2012/sns.html 2015年1月22日 28 2014年度法情報学演習 補足⑥:サイバーセキュリティ基本法 サイバーセキュリティ基本法 – 2014年11月6日可決・成立 cf. 高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT 基本法) – 情報セキュリティに関する基本法 基本理念を定め、サイバーセキュリティ戦略の策定 その他サイバーセキュリティに関する施策の基本と なる事項を定める 情報セキュリティ政策会議をサイバーセキュリティ 戦略本部に改組 – いままでも情報セキュリティ政策会議において情報セキュ リティ政策は実施されていたが、組織を法的にも位置付 け 2015年1月22日 29 2014年度法情報学演習 高度情報通信社会と情報セキュリティ 情報システム、情報通信ネットワーク – インフラストラクチャ(社会基盤)として重要な 地位を占める cf. 水道、電気……ライフライン – 一方で、大規模障害などによって社会全般に 重大な悪影響を及ぼすことも 情報システムが利用できない 扱われる情報が不正確 機密であるはずの情報が不正に外部流出 – このため、情報セキュリティの高度化が必然的 に要請される 2015年1月22日 30 2014年度法情報学演習 情報システムを取り巻く脅威 情報システムの種類や用途の多様化 – 地球規模での相互接続 システム相互に影響を及ぼす可能性 – 誰でも自由かつ簡単に利用 携帯電話による利用 いろいろな「普通」「ふつう」「フツウ」の人 情報システムを取り巻く脅威の増加 – 量だけでなく、質的にも深刻化 不正アクセス、Webページの改ざん コンピュータ・ウイルス 迷惑メール 踏み台攻撃 – 簡単になる攻撃、難しくなる防御 2015年1月22日 31 2014年度法情報学演習 情報セキュリティとは 情報セキュリティ(Information Security) – 情報処理技術の領域で生成・発展してきた概念 – 伝統的な法体系の下で検討が加えられてきたも のではない 「セキュリティ」=「安全」 – さまざまな領域で使用される言葉であるが、「情報 セキュリティ」という言葉は、さらに具体的な固有 の概念として用いられることが通常 情報セキュリティとは…… – さまざまな攻撃などの脅威から情報を守ること 2015年1月22日 32 2014年度法情報学演習 おしまい この資料は、2014年度法情報学演習の ページからダウンロードすることができます。 http://www.law.tohoku.ac.jp/~kanaya/infosemi2014/ 授業アンケートのお願い – この場での記入をお願いします。 – 提出したら退席して構いません。 – レポート作成についての質問等があれば、引 き続き受け付けます。 2015年1月22日 33 2014年度法情報学演習
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