携帯電話事業について

携帯電話事業について
中京大学 増田ゼミ
流れ
① 今の携帯電話料金について
② 携帯電話事業の仕組みについて
③ 利用者にとって最適なプランの検討
今の携帯電話料金は高いのか
• 9月11日、安倍首相が「携帯電話料金引き下げ」について指示
• 現在ではMVNO事業者が現れ、低価格で携帯電話を利用できるよう
になってきている
• 現在の3大キャリアの料金プランは高すぎるというのは本当か?
MVNOに乗り換えることで費用は削減できるのか?
MVNOとは
• Mobile Virtual Network Operator(仮想移動体通信事業者)の略で、無線
インフラを他社から借り受けてサービスを提供する事業者
(ここではいわゆる格安SIM)のこと。
• 日本通信から始まり、OCNやBIGLOBEといったプロバイダ業者、またビッグ
カメラやイオンなどの大型小売店も参入してきている。
• 当初はデータ通信専用が多かったが、最近では月額二千円前後で利用
できる通話付きプランも多く登場。
• OCN、IIJ、BIGLOBEがそれぞれ1位、2位、3位のシェアをもつ。
MVNOの概念図
キャリア(MNO)
エンドユーザー
MVNO
回線提供
SIM貸出
回線代支払い
流れ
① 今の携帯電話料金について
② 携帯電話事業の仕組みについて
③ 利用者にとって最適なプランの検討
現在の携帯電話業界
携帯電話事業者別契約数シェア(2014年度)
三社による寡占状態
ソフトバンク
37,766,200
26%
KDDI
43,478,000
29%
総務省HPより
ドコモ
66,595,500
45%
携帯電話事業者の収益構造
• 日経による上場企業の営業利益ランキング
• 3位:ソフトバンク
• 4位:KDDI
• 7位:NTTドコモ
9827億円
7413億円
6391億円
• 3大携帯キャリア全てがTOP10以内に
• 3社はどのようにして上記の利益を上げているのか
3大携帯キャリアの売上高と営業利益(2014年度)
単位:億円
60000
50000
43834
45731
48702
内訳はどうなっているのか?
40000
30000
20000
10000
7413
6391
0
売上高
ドコモ
各社IRより
営業利益
KDDI
ソフトバンク(スプリント事業を除く)
9038
収益の内訳
2014年度ARPU(一人あたり月間平均収入)
5000
4500
4000
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
4370
590
2600
単位:円
4550
320
4230
3450
3045
主な収入源は
パケット通信料
その他
パケット
音声
1180
ドコモ
各社IRより
※赤字は合計金額
780
KDDI
1185
ソフトバンク
※2014年度のソフトバンクは推計値
• 3キャリアは月賦払いの端末代金を24ヶ月割引するプランを提示し
ており、殆どの人がこのプランを利用している
(端末代を一括で支払っても割引は適用される)
↓
• パケット通信料や基本使用料を高めに設定することで、端末代金の
割引を補い、利益を得ていると考えられる
• MVNOと比較してどれくらい利益を得ているのか?
3キャリアの独占利益はいくらか
• MVNOは現在多くの企業が参戦しており、価格競争が激しい状況
→一人あたり利益は少なめ(ゼロ)になっていると仮定
• 一方、3キャリアは基本的に3社横並びの料金設定を維持
各キャリアの一人あたりの利益と比較することで、キャリアが
MVNOよりどれだけ多めに利益を得ているのかを調べる
各キャリアの一人当たり売上・利益
一人当たり売上(月間)
単位:円
一人当たり利益(月間)
10,000
9,244
9,000
8,000
6,734
7,000
6,000
5,485
5,000
4,000
3,000
2,000
1,107
800
1,000
1,534
0
ドコモ
KDDI
ソフトバンク(スプリント事業除く)
各キャリアの料金から上記の利益分は値下げできる余地があると考えられる
各社IRより
流れ
① 今の携帯電話料金について
② 携帯電話事業の仕組みについて
③ 利用者にとって最適なプランの検討
利用者の平均的な使用状況
• 利用者はどれくらい携帯電話を使っているのか
↓
• 一日の平均通話時間:2分46秒(平成26年版情報通信白書)
• 一ヶ月で平均83分通話している
• 一ヶ月の平均パケット通信利用量:1.9GB(総務省HP)
• 3キャリアは通話し放題プラン以外では、上記より大きい容量プランの契約が必須
• 携帯電話買い替え年数の平均:3.6年(内閣府 消費動向調査)
• 端末割引がなくなってもそのまま使い続ける人が多い
なぜ携帯料金が高いと言われるのか
• キャリアの提示するプランは以下のどちらか
• 無料通話ができるかわりに基本使用料が高いかけ放題プラン
• 基本使用料は安いが通話料がかかり、パケット容量が大きい旧プラン
↓
• 通話もパケット通信も少ないライトユーザーにとっては、複雑な料金
体系も相まって過剰な費用がかかっているように感じられる?
• MVNOを利用することで費用を本当に削減できるのか?
利用者の支払金額を試算
• 各キャリアの主なプランとシェアが高いMVNOのプランで、2年以上
利用した場合の料金を比較する
• 以下の利用状況を想定
•
•
•
•
•
•
3キャリアではiPhone6sを月賦購入、2年縛りで新規契約する
MVNOではiPhone6sをアップルストアで購入し、音声対応SIMを利用する
パケット通信は選択したプランで一番少ない容量を利用する
通話料は20円/30秒に一日の平均通話時間を掛けて計算する
端末割引以外の各種キャンペーン、値引きは含めない
契約時の事務手数料などの初期費用は含めない
※一日の平均時間:2分46秒
3キャリアの月額料金プラン(2015/10時点)
au
ドコモ
プラン
カケホーダイ カケホーダイライト
ソフトバンク
LTEフラット
カケホ
スーパーカケホ
LTEフラット
スマ放題
スマ放題ライト
\1008
\2916
\1836
\1008
\2916
\1836
基本使用料
\2916
\1836
パケット料金(最少価格)
\3780/2GB
\5400/5GB
\0
\0
\3360
\0
\0
\3360
\0
\0
ISP料金
\324
\324
\324
\324
\324
\324
\324
\324
端末代
\3888
\3888
\3510
\3510
\3510
\3900
\3900
\3900
端末代割引
\-2808
\-2808
\-2840
\-2840
\-2840
\-3252
\-3252
\-3252
合計
\8100
\8640
\11110
\7690
\7366
\10548
\7668
\8208
2年間で支払う合計金額
\194400
\207360
\276432
\184560
\176784
\262944
\184032
\196992
通話料
(一日の平均通話料×30日)
各社HPより
\6156/7GB \3780/2GB
\4536/3GB
\5616/7GB \3780/2GB \5400/5GB
MVNOの月額料金プラン(2015/10時点)
OCNモバイルone
IIJmio
BIGLOBE
プラン
3GB/月コース
ミニマムスタートプラン
エントリープラン
月額料金
\1994/3GB
\1728/3GB
\1728/3GB
\3360
\3360
\3360
\93744(\3906)
\93744(\3906)
\93744(\3906)
合計(端末代除く)
\4946
\4680
\4680
2年間で支払う合計金額
\222240
\215856
\215856
通話料
(一日の平均通話料×30日)
端末代
(初回のみ ()内は月額換算した数値)
各社HPより
同一キャリアと契約し続けた場合の累計支払額推移
400000
キャリアの
契約更新月
350000
300000
MVNOのほうが
支払額が多い
250000
支
払
金
額
200000
36ヶ月~41ヶ月あたりで
3キャリアと同じ水準に
150000
100000
50000
0
1
3
5
7
9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47
使用月数
ドコモ カケホーダイ
au スーパーカケホ
ソフトバンク スマ放題
OCNモバイルone
IIJmio・BIGLOBE
各企業の利用期間別の月額料金
24ヶ月(2年)
使用した場合の月額料金
36ヶ月(3年)
使用した場合の月額料金
48ヶ月(4年)
使用した場合の月額料金
ドコモ:
カケホーダイ
au:
スーパーカケホ
ソフトバンク:
スマ放題
OCNモバイル
one
IIJmio・BIGLOBE
8100円
7366円
7668円
9260円
8994円
7740円
7143円
7452円
7958円
7692円
7560円
7031円
7344円
7307円
7041円
24ヶ月の利用ではMVNOの方が高くつく
長期間利用すると金額差は縮まるが、通話料が枷になって劇的に安くはならない
• 通話時間が平均的な場合、利用から24ヶ月の時点ではauやソフトバ
ンクの新プランの方が安い
• しかし、今ではLINEやIP電話によって通話料を節約することが可能
→実際の通話時間は短い人の場合はどうか?
↓
• 自分からは通話をあまりしないライトユーザーを想定
(通話料を0として考える)
3キャリアの月額料金プラン(2015/10時点)
au
ドコモ
プラン
カケホーダイ カケホーダイライト
ソフトバンク
LTEフラット
カケホ
スーパーカケホ
LTEフラット
スマ放題
スマ放題ライト
\1008
\2916
\1836
\1008
\2916
\1836
基本使用料
\2916
\1836
パケット料金(最少価格)
\3780/2GB
\5400/5GB
通話料(通話時間ゼロ)
\0
\0
\0
\0
\0
\0
\0
\0
ISP料金
\324
\324
\324
\324
\324
\324
\324
\324
端末代
\3888
\3888
\3510
\3510
\3510
\3900
\3900
\3900
端末代割引
\-2808
\-2808
\-2840
\-2840
\-2840
\-3252
\-3252
\-3252
合計
\8100
\8640
\8158
\7690
\7366
\7596
\7668
\8208
2年間で支払う合計金額
\194400
\207360
\195792
\184560
\176784
\182304
\184032
\196992
各社HPより
\6156/7GB \3780/2GB
\4536/3GB
\5616/7GB \3780/2GB \5400/5GB
MVNOの月額料金プラン(2015/10時点)
OCNモバイルone
IIJmio
BIGLOBE
プラン
3GB/月コース
ミニマムスタートプラン
エントリープラン
月額料金
\1994/3GB
\1728/3GB
\1728/3GB
通話料(通話時間ゼロ)
\0
\0
\0
端末代(初回のみ ()内は月額換算した数値)
\93744(\3906)
\93744(\3906)
\93744(\3906)
合計(端末代除く)
\1994
\1728
\1728
2年間で支払う合計金額
\141600
\135216
\135216
各社HPより
同一キャリアと契約し続けた場合の累計支払額推移
400000
キャリアの
契約更新月
350000
300000
250000
支
払
金
額
14ヶ月時点でキャリアより
MVNOの支払額が安くなる
200000
150000
100000
4年で約186000円分
支払額に差が出る
50000
0
1
3
5
7
9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47
使用月数
ドコモ カケホーダイ
au スーパーカケホ
ソフトバンク スマ放題
OCNモバイルone
IIJmio・BIGLOBE
各企業の利用期間別の月額料金
24ヶ月(2年)
使用した場合の月額料金
36ヶ月(3年)
使用した場合の月額料金
48ヶ月(4年)
使用した場合の月額料金
ドコモ:
カケホーダイ
au:
スーパーカケホ
ソフトバンク:
LTEフラット
OCNモバイル
one
IIJmio・BIGLOBE
8100円
7366円
7596円
5900円
5634円
7740円
7143円
7380円
4598円
4332円
7560円
7031円
7272円
3947円
3681円
通話時間が減っても3キャリアの料金はほぼ変わらない
MVNOとの差は24ヶ月時点で2000円前後、48ヶ月の利用では3000円以上の開きがある
3キャリアの料金について
• 平均的なパケット通信量(約2GB)の利用者でも、最安で利用する
には割高な3GBや7GBのプランを利用しなければいけない場合が
ある
• 通話においても、あまり使用しない人が最低限の月額コストで運用
しようとするなら電話し放題プランから選ばなければいけない場合が
ある
全てのユーザーにとって最適な価格設定になっていない
MVNOとの差を考えると、利益から考えた場合より大きく値下げできる
つまり、実態に合わせたプランを作ることで価格は下げられる
まとめ
• 現在の携帯電話市場は、3キャリアの独占によってユーザーの負担
が大きくなっている。
• 3キャリアは試算した金額から考えて、月額1000円~2000円程度は
値下げしても利益を十分に得られる。
• 今月から3キャリアは料金見直しの方向で動いているが、月額料金
の刷新が行われなければ、状況はあまり改善されたとはいえない。
出典
• NTTドコモ
• au
• ソフトバンク
• OCN
• IIJmio
• BIGLOBE
• 総務省
• 内閣府
https://www.nttdocomo.co.jp/
http://www.au.kddi.com/
http:// www.softbank.jp/mobile/
http:// www.ocn.ne.jp/
https://www.iijmio.jp/
http:// www.biglobe.ne.jp/
http:// www.soumu.go.jp/
http://www.cao.go.jp/