21pSA 要素抽出型シミュレーションによる √sNN=5.5TeV鉛鉛衝突におけるf,w,r中間子 起源電子対の測定可能性 広島大学大学院理学研究科物理科学専攻 中宮義英、本間謙輔 Event display @RHIC-STAR Event display @ LHC-ALICE e+ e+ e- e- 2013/9/21 日本物理学会 中宮 義英 1 開発動機 • 高エネルギー重イオン衝突におけるf,w,r中間 子電子対測定に対して、検出器デザインの最適 化を図るための定量的な指針を、検出器構造体 の詳細 に立ち入らずに、短時間で得たい。 →組合せ背景事象を含めた全ての電子対 背景事象に対する信号対雑音比を広い実験 パラメータ範囲で系統的に手早く評価できる シミュレーションが必要。 2013/9/21 日本物理学会 中宮 義英 2 代表的なシミュレーション方法の特徴 • HIJING, JAM etc.+GEANT, PHITS etc – 粒子生成源を衝突の素過程から模擬。 – 具体的な検出器構成下で、S/B比の評価が可能。 難点:重イオン中心衝突 multiplicity>1000を、高統計で シミュレーションするのは非現実的。 • Cocktail simulation – 短い計算時間。 難点:電子対組み合わせ背景事象の評価ができない。 (別種の見積もりと組み合わせる必要有) 2013/9/21 日本物理学会 中宮 義英 3 要素抽出型シミュレーションとは? • 基本概念 – 電子対測定で鍵となる要素のみを抽出 – 衝突および検出器応答の全過程を「電子生成源」という観点で一体化した シミュレーション • 利点 – 組み合わせ背景事象(cBG)の評価が可能。 – 広い実験パラメータ空間を短時間で模擬可能。 – 実データ解析手法の検証・開発に有用。 現実 cBG e- e+ 要素抽出 𝜀𝑒 e+ 𝜀𝑎𝑐𝑐 𝑝𝑇𝑡ℎ 𝜎𝑝𝑇 Event display @ LHC-ALICE g p0 p𝑅𝜋 ± g e- f p0 g 𝑃𝑐𝑛𝑣 e2013/9/21 日本物理学会 中宮 義英 e+ e- 4 例えば…… Pb+Pb 5.5 TeV (𝑑𝑁𝜋0+𝜋± /𝑑𝑦 = 2700) 計算量 陽子陽子衝突 109 イベント : 1時間(400 CPU) 2013/9/21 日本物理学会 中宮 : 義英6時間(400 CPU) 鉛鉛中心衝突 106 イベント 5 入力パラメータ • 1事象あたりの生成粒子数 – 𝑑𝑁𝜋0 +𝜋± /𝑑𝑦 = 2700 (Pb+Pb 5.5 TeV Central) • 粒子生成比 – p0,h,f,c/b起源電子は p+p 7 TeVのデータ – それ以外はp+p 200 GeV のデータ • 横運動量分布 – p0,h,f,c/b起源電子は直接Tsallis関数でfit – それ以外はp0をmTスケーリング • ラピディティ分布 – どの粒子もフラット。 2013/9/21 日本物理学会 中宮 義英 6 ベースライン実験パラメーター • 検出器が理想的に動く状況をベースラインとする。 – – – – – 物質量 : 𝑃𝑐𝑛𝑣 = 1 % p± Rejection : 𝑅𝜋± = 500 幾何学的アクセプタンス : 100% 電子識別効率 : 100 % pTの閾値 : > 100 MeV/c 𝑟𝑒𝑓 𝜎𝑝𝑇 – 分解能 : = 0.01 ∙ 𝑝𝑇 (Phys. Lett. B 696 30 (2001)) 2 + 0.0056 2 GeV/c • ベースラインパラメータから性能を低下(or 向上)さ せていくとS/Bはどう推移するのか? 2013/9/21 日本物理学会 中宮 義英 7 結果) 電子対の不変質量分布 p+p 7 TeV (𝑑𝑁𝜋0+𝜋± /𝑑𝑦 = 6) w/r 2013/9/21 日本物理学会 f 中宮 義英 8 結果) 電子対の不変質量分布 Pb+Pb 5.5 TeV (𝑑𝑁𝜋0+𝜋± /𝑑𝑦 = 2700) w/r 2013/9/21 日本物理学会 f 中宮 義英 9 結果) 電子対の不変質量分布(拡大) Pb+Pb 5.5 TeV (𝑑𝑁𝜋0+𝜋± /𝑑𝑦 = 2700) w/r f 2013/9/21 日本物理学会 中宮 義英 10 結果) 𝑆/𝐵 (𝑃𝑐𝑛𝑣 依存性) • 1 < 𝑃𝑐𝑛𝑣 < 10 % – S/B = 10−3 ~2 × 10−2 (f) – S/B = 3 × 10−4 ~10−2 (w) – S/B <10−3 (r) – S/Bは1 2013/9/21 日本物理学会 < 𝑃𝑐𝑛𝑣 < 10 % で一桁変動。 中宮 義英 11 結果) 𝑆/ 𝑆 + 𝐵 (𝑃𝑐𝑛𝑣 依存性) 10M central eventsで 𝑆/ 𝑆 + 𝐵 > 5s (f) at 𝑃𝑐𝑛𝑣 < 10 % 2013/9/21 日本物理学会 中宮 義英 12 要素抽出型シミュレータの応用 • データ解析手法の検証と開発 (a) (b) 2013/9/21 日本物理学会 (c) (a) 不変質量分布 (b) True cBGとEstimated cBGの比 (c) cBG差し引き後 中宮 義英 13 結果) 期待収量@ALICEパラメータ 実験パラメータ for ALICE 𝑃𝑐𝑛𝑣 = 2 % 𝑅𝜋± = 104 𝜀𝑎𝑐𝑐 = 100% 𝜀𝑒 = 30 % pT > 100 MeV/c 𝑟𝑒𝑓 𝜎𝑝𝑇 = 0.01 ∙ 𝑝𝑇 2 + 0.0056 cf.)ベースラインパラメータの場合 2013/9/21 日本物理学会 2 GeV/c 統計量 5Mイベント (~Pb+Pb 2.76 TeV 中心衝突トリガーデータ (2011)の1/5) 中宮 義英 𝑺/𝑩 𝑺/ 𝑺 + 𝑩 f 1.0 × 10−2 3.1s w 5.8 × 10−3 3.8s r 1.2 × 10−4 0.6s 14 Summary • 要素抽出型シミュレータによって、高エネル ギー重イオン衝突実験におけるf, w, r中間 子起源電子対の測定可能性を広い実験パラ メータ空間で調査することに成功した。 – 一連のstudyはPTEPに掲載予定 • 鉛+鉛 5.5TeV中心衝突でf/w中間子の信号 対雑音比は、現実的な実験パラメータの範囲 で10−3 ~ 10−2 。 r中間子は~10−4 。 • 統計的有意性は中心衝突5Mイベントで – べースラインパラメータでf/w中間子ともに>5σ – ALICEパラメータでf/w中間子は3~4σ。 2013/9/21 日本物理学会 中宮 義英 15 謝辞 • We thank Prof. T. Sugitate for his suggestions on this paper and supports especially for establishing the computing environment. We thank Prof. K. Shigaki and all the colleagues at Hiroshima university for many discussions. • The numerical simulation study has been performed on the parallel processing system at the Data Analysis Laboratory for HighEnergy Physics at Hiroshima University 2013/9/21 日本物理学会 中宮 義英 16 Back up ! 2013/9/21 日本物理学会 中宮 義英 17 要素抽出型シミューレーションの流れ (2) 始状態 f w r p0 h K+/Kcc p+/p- (2) (1) (2) (2) (2) f/w/r (3) (3) p0/h K+/K- cc p+/p- (9) gg (5) (9) (4) (9) (6) (9) (7) (9) (8) (9) e+e- 終状態 ge+e- or e+e-e+ege+e- e-p0ne/e+p0ne e+ee+/e- (1) multiplicityや実験パラメーターなどの条件を入力。 (2) 生成断面積に基づき、入力multiplicity相当の粒子を生成。 (3)2体崩壊過程。 (4)ダリツ崩壊過程。 (5)photon-conversion。 (6)3対崩壊過程。 (7)単電子生成 (with BR(c->e) = 9.5 %)。 (8)荷電パイオン除去能フィルター。 2013/9/21 日本物理学会 中宮 義英 (9)幾何学アクセプタンス、電子識別能、運動量cutoffなどによるフィルター。 18 Inclusive yields 2013/9/21 日本物理学会 中宮 義英 19 Branching Raios 2013/9/21 日本物理学会 中宮 義英 20 Tsalis function (a) m0->0 (b) m0->0 and n->-∞ 2013/9/21 日本物理学会 中宮 義英 21 要素抽出型シミュレーターの拡張 • 実験パラメーター(eg. 𝑅𝜋± や𝜀𝑎𝑐𝑐 )の横運動量依存 性 – 検出原理(dE/dx,ToF etc.)に依存。 • 飛跡再構成アルゴリズムによる影響 – 運動量再構成のバイアス (off-vertex 生成電子) – 偽の飛跡再構成 (high multiplicityによる性能低下) • 同時入射による影響 – 検出手法・幾何学的配置に依存 • 電子識別純度と効率の相関 – 複数の検出器を組み合わせることによる複雑な相関 • 磁場と検出器設置位置による実効的なアクセプタ ンス – 検出器の縁での効率低下。 – 低運動量飛跡の損失。 2013/9/21 日本物理学会 中宮 義英 22 Realistic pT in central Pb+Pb collisions. Phy. Lett. B 720, 51 (2013). 2013/9/21 日本物理学会 中宮 義英 23 2013/9/21 日本物理学会 中宮 義英 24 ベースラインパラメーター with suppresion S/B = 1.7 x 10-2 for phi S/B = 7.6 x 10-3 for omega S/B = 1.9 x 10-4 for rho S/B = 5.8 x 10-3 for phi S/B = 3.2 x 10-3 for omega S/B = 1.0 x 10-4 for rho p0,p±,ηのスペクトラをPb+Pb 0-5%に変更。 2013/9/21 日本物理学会 中宮 義英 25 ベースラインパラメーター + pTth = 50 MeV/c S/B = 1.7 x 10-2 for phi S/B = 7.6 x 10-3 for omega S/B = 1.9 x 10-4 for rho 2013/9/21 日本物理学会 S/B = 1.7 x 10-2 for phi S/B = 7.6 x 10-3 for omega S/B = 1.5 x 10-4 for rho 中宮 義英 26 RHICの成果・現状、そしてLHC PRC 81, 034911 (2010) nucl-ex/1106.6146 • RHICにて電子対連続分布の収量増大を観測。 – (PHENIXとSTARの間に収量増大の程度に食い違いがあるものの……)。 • f,w中間子の収量についても定量的理解が進んでいる。 • Pb+Pb 5.5 TeV @ LHCではどうか? 2013/9/21 日本物理学会 中宮 義英 27 結果) 終状態電子の運動量分布 2013/9/21 日本物理学会 中宮 義英 28 結果) 𝑆/𝐵 and 𝑆/ 𝑆 + 𝐵 (𝑅𝜋± 依存性) • 100 < 𝑅𝜋± < 1000 でS/Bf = 5 × 10−3 ~ 2 × 10−2 で S/Bは3倍変動。 • 10M central eventsで 𝑆/ 𝑆 + 𝐵 > 10s (f) @ 100 < 𝑅𝜋± < 1000 2013/9/21 日本物理学会 中宮 義英 29 結果) 信号対雑音比 𝑆/𝐵 Type I Type II • 例えば𝜀𝑎𝑐𝑐 = 40 %で、検出器実装形態の違いにより、同一の 総被覆率であっても、S/Bが3倍変動。 2013/9/21 日本物理学会 中宮 義英 30 結果) 統計的有意性 𝑆/ 𝑆 + 𝐵 (f中間子) 2013/9/21 日本物理学会 中宮 義英 31 結果 : 統計的優位性 𝑆/ 𝑆 + 𝐵 (w中間子) 2013/9/21 日本物理学会 中宮 義英 32 リアルデータ解析手法を用いた𝑆/𝐵の評価 • 異符号無相関電子対は同符号電子対から見積もった(i.e. 𝑢𝑛𝑐𝑜𝑟 𝑁+− = 2 𝑁++ 𝑁−− ) • Event mixingによる見積収量と真の組み合わせ背景事象収量 とは数%で一致。 2013/9/21 日本物理学会 中宮 義英 33 要素抽出型シミュレーションの応用 • データ解析手法の検証と開発 – 例)背景事象規格化因子の評価(イベントミキシ ングに関して)) (a) offset : 1.0004 (c) offset : 0.9950 2013/9/21 日本物理学会 (b) offset : 1.0006 𝑢𝑛𝑐𝑜𝑟 (a) Pair production : 𝑁+− = 2 𝑁++ 𝑁−− 𝑁 (b) Independet production : 𝑁𝑐𝐵𝐺 = 1 𝑒𝑣𝑡 𝑛+ 𝑛− (c) # of Event 中宮 義英 34 リアルデータ解析手法を用いた𝑆/𝐵の評価 f中間子 w / r中/間子 Ff,w,r : Breit-Wigner分布 Ggauss : ガウス分布 Hbg : 1次式 • データ解析と同じ手法でベクトル中間子の収量を見積もった 2013/9/21 日本物理学会 中宮 義英 場合、fは3%, wは12%, rは14%真の収量と異なる。 35 チャーム生成の相関による影響 2013/9/21 日本物理学会 • チャーム・反チャーム起源電子対 BGは相関の有無で1.5~2.5倍異 なる。 (di-electron continuum解析 で特に重要) • チャーム生成の相関の有無が組 み合わせ背景事象に与える影響 36 中宮 は数%。 義英 Parent pT ( 5 M events) 測定にかかった電子の親粒子のpT分布 ベースラインパラメーターの場合 ALOCEパラメーターの場合 (Nelectron+Npositoron) ~ 7 (32) (Nelectron+Npositoron) ~ 20(72) 2013/9/21 日本物理学会 中宮 義英 37
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