部分最適と全体最適 EA/BPM/BPR/ERP 株式会社アプライド・マーケティング 大越 章司 [email protected] 部分最適なシステム構築 現場の業務をそのままシステム化 ・元々の「書類の流れ」に合わせたシステム ・部分最適なシステム構築 ・様々な部門が様々なシステムを導入 ・重複する業務(顧客マスターの登録など) ・別々のDB(顧客データなど) ・システム間でデータの互換性が無い サイロ化 システム開発手法の変遷 全社最適化手法 従来は部分最適な業務システム 個別にシステム設計開発 現場の仕事をそのままシステム化 「その時点」での技術を使って開発 他システムとの連携は必要に応じて設 計・実装 全社的最適化という視点はない EA Enterprise Architecture BPR Business Process Re-engineering ERP Enterprise Resource Planning Enterprise Architecture 複雑化し非効率化した巨大な組織の業務手順や情報システム、組織を全社規模で最適化し、効率よい組織 の運営を図るという考え方または方法論。 EAにより、巨大な組織内で複数の業務システムが別個に運用されていたものを標準化し、導入・運用コス トの削減、重複した業務内容の統合を通じて組織の運営コストの削減を目指す。 Business Process Re-engineering 高度に専門化され、プロセスが分断された分業型組織を改革するため、組織やビジネスルールや手順を根 本的に見直し、ビジネスプロセスに視点を置き、組織、職務、業務フロー、管理機構、情報システムを再 設計し、最終的顧客に対する価値を生み出す一連の改革。 Enterprise Architecture 巨大な組織の業務手順や 情報システムの標準化、 組織の最適化を進め、効 率よい組織の運営を図る ための方法論 1987年にJohn A. Zachman(ジョン・A・ ザックマン)氏が提唱 大企業・政府機関 米連邦政府 日本の電子政府 http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/lecture/20070403/267249/?ST=selfup 厳格過ぎ、大規模過ぎでうまくいかない例も – 最近見直しの機運 Business Process Re-engineering ビジネスプロセスの改善に注目 企業改革を目的としてビジネスプロセスを見直し ビジネスプロセスの視点で職務、業務フロー、管理機構、情報システムを再設計す るという経営コンセプト ビジネスプロセスの考え方は1980年代に製造業の品質管理手法として考案された シックスシグマが最初 1990年に元マサチューセッツ工科大学教授のマイケル・ハマー(Michael Hammer)がHarvard Business Review誌に論文を発表 BPRの原点は古典的なビジネス構造の否定 「重大で現代的なパフォーマンス基準を劇的に改善するために、ビジネス・プロセ スを根本的に考え直し、抜本的にそれをデザインし直す」 1990年代終わりになると、非連続的な大改革が逆に大混乱を招く 1997年、MITシステムダイナミックス・グループが 「リエンジニアリングの70%は 失敗」などと報告 ビジネスプロセス ひとまとまりの目的が定義できる 入力と出力がある 何度でも繰り返せる 販売管理のビジネスプロセス 受注 請求 効果が測定できる 入金 出荷 階層化されている 業務の流れ、繋がりを可視化 変化への柔軟な対応 ITとの連動 (SOA) 通常の業務改革とBPR http://jpn.nec.com/soa/soa_column4-1.html ビジネスプロセスの継続的な見直し 「 望 ま し い 」 業 務 プ ロ セ ス ① 受注 書 類 受注処理 ② ③ 書 類 書 類 構成チェック 生産 「望ましい」 業務プロセス では効率が悪 い 環境の変化により「望ましい」 業務プロセスに戻す必要がある 「 修 正 し た 」 業 務 プ ロ セ ス オーバーヘッド の低減 受注 例外処理 受注処理 ① 問題 発生 書 類 構成チェック 生産 ネットワーク の普及・高速 化などの環境 変化 BPRからBPMへ 改善・再 ち構築 BPR 業務内容や業務構造・手順を 根本的に見直して売り上げの 拡大やコスト削減を目指す 一連の活動 BPR継続 のための 仕組み モニタリ ング 分析 BPM 設計 実効 ERP EA→BPM→ERP Enterprise Architecture 理念 全体最適 改善・再 構築 分析 BPM プロセス モニタリ ング 設計 実効 手法/ システム ERP Enterprise Resource Planning 巨大な組織(enterprise)の業務手順や情報 システムの標準化、組織の最適化を進め、 効率よい組織の運営を図るための方法論あ るいは、そのような組織構造を実現するた めの設計思想・基本理念(architecture) ある仕事のスタートから完了 までの流れを業務単位(プロ セス)に分解して検証し、新 しいプロセスが必要になった 場合にもできるだけ他のプロ セスに影響を与えないように 挿入するなど、改善や再構築 をしながら常に分析し、ビジ ネス効率を高めること。 Enterprise Archtecture によ る全社的最適化との連携も重 要。 BPRに基づき全社最適化を行い、各業務シ ステム間の連携まで含めてシステムを開発 する考え方とそのための統合型パッケージ ERPシステムとは ERPシステム 個別業務システム 購買 生産 販売 会計 購買 生産 販売 会計 個別 システム 個別 システム 個別 システム 個別 システム 購買 生産 販売 会計 業務システム データベース 個別DB 個別DB 個別DB 個別DB プロセス 特 ERPシステム 経営 全社統合DB 業務個別に プロセス・データの整合性を確保 会社全体として業務間の プロセス・データの整合性を保証 徴 処理にタイムラグが発生 二重入力によりマスターの分散 個別設計・構築 データやプロセスの不整合 個別維持管理による運用負担 プロセス全体の可視性なし リアルタイム処理 マスターの統合 全体最適化された設計・構築 データやプロセスの整合性を保証 プロセス全体の可視性を確保 「ERP」と「ERPシステム」と「ERPパッケージ」 ERP Enterprise Recourse Planning 業務プロセスを標準化し、全体最適を志向した経営手法 ERP システム 企業毎のERPを実現するための 情報システム 業務分析や業務プ ロセスの標準化 (BPR/BPM)に手間 やコストがかかり、 実現が困難 あるべき姿のひな 形を使って、経営 や業務の全体最適 化を加速 ERP パッケージ あるべき姿の業務プロセスをひな形としたパッケージ化された情報システム ERPパッケージ – 海外と日本の違い • 欧米のERPパッケージの狙い – 個別企業のBPM/BPRを行ってシステム化するのでは無く、パッ ケージにあらかじめ標準的な業務フローをテンプレート化して 実装 – 企業はこのテンプレートに合わせるだけで効率的なビジネスプ ロセスを取込むことができる – パッケージ化による低コスト化 • 日本のERPパッケージ – 会計パッケージをベースに機能拡張していることが多い • データの一元化などができていない場合もある – 現場最適/カスタマイズ前提 • 導入に当たって大量のカスタマイズが行われる場合が多い • 現場力の強さ、取引先へのきめ細かな対応 – カスタマイズが多いと、導入コストが高額になる傾向がある Enterprise Application Interconnect 既存システムを繋ぐEAI 従来は部分最適な業務システム 個別にシステム設計開発 現場の仕事をそのままシステム化 「その時点」での技術を使って開発 他システムとの連携は必要に応じて設 計・実装 全社的最適化という視点はない 全社最適化手法 EA Enterprise Architecture BPR Business Process Re-engineering ERP Enterprise Resource Planning 既存システムを相互接続して統合 EAI EAI (1990年代末) ばらばらに開発された業務システム をプロトコル変換などで統合 EAI 補足資料: 用語集 BPM • “ビジネスプロセス”に「分析」「設計」「実行」「モニタリング」 「改善・再構築」というマネジメントサイクルを適応し、継続的な プロセス改善を遂行しようという経営・業務改善コンセプト – 前述のコンセプトを実行するために複数の業務プロセスや業務システ ムを統合・制御・自 動化し、業務フロー全体を最適化するための技術 やツール – ビジネスプロセスの実行・管理という面ではBPMエンジン、BPM基盤 システムと呼ばれるシステムが利用される。この分野のシステムは、 大まかに 人間が実施する業務や承認、意思決定を含めたビジネスプロ セスを管理・自動化する「ヒューマンセントリック」と、システム同 士を接続・連動させる「システ ムセントリック」に分類される。前者 は、ワークフローシステム、後者はEAIツールから発展してきたものが 多い。 • EAIとBPMの違いは微妙だが、従来的なEAIにおける接続はA→Bと いう形なのに対し、BPMはA→B→Cというような多階層的な接続を 考慮に入れ、そのプロセスを制御するという発想がある。すなわち、 EAIやEDIがメッセージングやデータ連携を中心に考え、接続するシ ステムの前後関係が明確なプロセスの自動化を焦点としていたのに 対し、BPMでは連係を前提とせずに独立して構築されたシステム同 士を連係させたり、その連係を組み換えるといった点に力点が置か れる。 BPR • 企業改革のために既存の組織やビジネスルールを抜本的に見 直し、プロセスの視点で職務、業務フロー、管理機構、情報 システムを再設計(リエンジニアリング)するという経営コ ンセプト – 1990年に元マサチューセッツ工科大学教授のマイケル・ハマー (Michael Hammer)がHarvard Business Review誌に発表し た論文が嚆矢 • BPRの原点は伝統的な企業組織――すなわち高度に専門化され、 プロセスが分断された分業型組織に対する反省にある – BPRの考え方が登場した当初は、旧来のビジネススタイルの破 壊に力点が置かれたが、1990年代終わりになると、非連続的な 大改革が逆に大混乱 を招き、理想のプロセスはもたらす利益を 超える費用がかかるなどとして批判されるようになる。1997年 にはMITシステムダイナミックス・グループが 「リエンジニア リング活動の70%は失敗した」などと報告している • 2002年ごろからは、“継続的なBPR”を支援するツールとして、 BPMが登場している ERP • 生産や販売、在庫、購買、物流、会計、人事/給与などの企 業内のあらゆる経営資源(人員、物的資産、資金、情報)を 有効活用しようとの観点から、こ れらを企業全体で統合的に 管理し、最適に配置・配分することで効率的な経営活動を 行っていこうという経営手法・コンセプトのこと。一般に、 「企業資源計 画」あるいは「経営資源計画」と訳される。 • また、この経営手法を実現するための情報システム、あるい はこの情報システムを構築するためのパッケージソフトを 「ERP」と呼ぶこともあるが、経営手法としてのERPと、情報 システムとしてのERPシステムは、分けて理解したほうがよ い。 • ERPという言葉は、米国の調査会社ガートナーグループのL・ ウィリー(L. Wylie)が1990年に発表した「ERP: A vision of the next-generation MRP II」という論文に示されたもので、 製造業向けのソリューションであるMRP IIの次世代コンセプ トに付けた名前だった。これが当時、登場してきた統合デー タベースを中核とした基幹系システム用パッケージソフトの 呼び名として広まった。 MDM (Master Data Management) • マスターデータとして扱われる主な情報は、顧客 情報、商品情報などであり、これらは事業経営に おいて非常に重要な意味を持つにも関わらず、企 業内では、そ れらが多種多様なシステムに重複し て散在し、整合性や品質が保たれていないケース が発生している。また、マスターデータの量は 年々増加し、変化もより頻繁 になる中、複数のシ ステムでそれぞれマスターデータを管理していて はデータの不一致・不整合は拡大し、マスター データの品質の低下は、余分なコスト発生・ 機会 損失・顧客満足度の低下の原因ともなる。MDM は、このようなマスターデータ複雑化の根本的原 因に取り組み、複数の業務システムをまたがる広 い視野で管理対象に関する統一的な視点を提供す ることが目的である。 EAI (Enterprise Application Integration) • 企業内で業務に使用される複数のコンピュータシステムを有機的に連携させ、デー タやプロセスの効率的な統合をはかること。また、それを支援する一連の技術やソ フトウェアの総称。 – – – • EAIを実現するソフトウェア(EAIツール)はミドルウェアの一種で、各システムへのイ ンターフェースを提供する「アダプタ」、システムごとのデータ形式やプロトコル の違いを吸収する「フォーマット変換」、あるシステムから受け取ったデータを内 容に応じて他のシステムに振り分ける「ルーティング」、これらの機能を組み合わ せ、実際の業務に合わせたビジネスプロセスを構築する「ワークフロー(プロセス制 御)」などの機能から構成される。 – • 通常、企業の情報システムは、用途に応じて「勘定系」「業務系」「販売系」など複数のシ ステムがばらばらに構築され、また、それぞれのシステムの要求に合わせて、メインフレー ムやUNIXワークステーション、Windowsパソコンなど、複数の環境が混在している。 利用されるアプリケーションソフトも、ワープロソフトや表計算ソフトなど日常業務に使う オフィスアプリケーションソフトから、データベースやメールシステム、Webアプリケー ションなど様々である。 これら異なるシステムを互いに連結し、過去の情報資産の有効活用や異機種間の有機的な データ連携により、素早い意思決定や効率的な企業経営を実現するのがEAIである。 EAIは企業内システムの統合にとどまらず、企業間の電子商取引を実現するためのシステム 間接続や、企業買収・合併に伴う情報システムの統合を効率よく行うための手段としても利 用される。 EAIが提唱され始めたのは、1990年代終盤 ESBとEAI • 従来型のシステム連携(EAI)では,システム間の連携関係が固定的 (これを密結合と呼ぶ)であり,いざ連携関係を解消したり,新た なシステムを追加しよう としたりしたときに,時間と手間が非常に かかっていた。また,連携させようとするシステムの数が増加する につれて,その組み合わせは複雑なクモの巣状とな り,一部のシス テム変更がシステム全体に影響を及ぼす構成となっていた。 • これに対して,ESBを利用した場合は,サービスの仲介役となるバ スにサービスを接続することで連携を実現できる。この際,個々の サービスは非常 に緩やかに結合される(これを疎結合と呼ぶ)ので, サービスの追加や変更に柔軟に対応することができる。さらに,ほ かのバスに接続すれば,そのバスにある サービスも連携させること が可能である。 • ESBは,サービスの仲介役として必要なルーティング,変換,セ キュリティ,フェールオーバーなどの機能を持つ。また,SOAを ベースに新規に開 発されたアプリケーションだけでなく,既存アプ リケーションも統合できなければならないため,SOAP/HTTP, SOAP/MOM(Message Oriented Middleware)など各種プロト コルをサポートしている。 BPEL • Business Process Execution Language(BPEL) は、実行可能なビジネスプロセスモデリング言語 • BPML – BPMI.org (Business Process Management Initiative) が開発 – ワークフロー理論が先祖 • BPEL – IBM と Microsoft がBPMLに対抗して開発 – Pi calculusか ら着想 • BPEL の文法が勝利を収め、BPML の意味論が勝利 を収めた – BPEL は徐々にBPML へと近づく方向に進化している
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