フロイト=ラカンと非定型精神病

フロイト=ラカンと非定型精神病
松本卓也(自治医科大学精神医学教室)
2
1.非定型精神病とフロイト?
アウトライン
2.ヒステリー性精神病
3.アメンチア
4.非定型病像と夢の病理
5.まとめ
第17回日本精神医学史学会学術講演会
シンポジウムⅢ
「非定型精神病」のさまざまな定義

schizoaffective psychosis (Kasanin)

Degenerationspsychose(Bonhoeffer)

zykloid Psychose (Leonhard)

bouffée délirante polymorphe (Magnan)

psychose délirante aiguë (Ey)

非定型精神病 (満田)
…
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非定型例の臨床像の特徴

発病はおおむね急性であり、挿間あるいは位相性ないしは周期性の経過をとる

病像は分裂病様の症状を示すが、一般に情動-精神運動性障害が支配的で、多く
は意識障害を伴う。したがって臨床像としては急性幻覚妄想状態、錯乱、せん妄、
あるいは夢幻様状態などの形態をとる

予後は一般によく、人格欠損を残すことはない
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シンポジウムⅢ
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フロイト=ラカンと非定型精神病?

精神分析に「非定型精神病」という概念は存在しない

いわゆる非定型例の臨床的特徴をもつ病態に関してフロイトが言及しているのは、
以下の2つのみ
(1)「ヒステリー性精神病」
(2)「アメンチア」
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シンポジウムⅢ
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1.非定型精神病とフロイト?
アウトライン
2.ヒステリー性精神病
3.アメンチア
4.非定型病像と夢の病理
5.まとめ
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ヒステリー性精神病について

Griesinger, W. (1845): hysterische Verrücktheit

Morel, B.-A. (1860): folie hystérique

Freud,S., Breuer, J.(1895): hysterische Psychose

Follin, S.(1961)以降、フランスでのfolie hystérique概念の再興
→ ラカン派のMaleval, J.-C.(1978)

米国では、Hollender, M.H., Hirsch, S.,J.(1964) がhysterical psychosisの独立性
を主張
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シンポジウムⅢ
7
ヒステリー性精神病と非定型精神病
藤谷興一ら(1990)「ヒステリー性精神病に関する疾病論的、病因論的考察」
精神経誌, 92:89-116

1984年~1988年の5年間に「予後良好ないわゆる心因性の急性錯乱状態を呈し入
院した患者」12名について検討 → ヒステリー性精神病

ヒステリー性精神病は「非定型精神病と共通の臨床的特徴をもっている」

しかし、「ヒステリー性精神病は反応的におこってくる病態であり、一方、非定
型精神病は原則として自生的に生ずる内因性精神病である点が本質的に異なる」
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フロイトに内因/心因の区別はない

フロイト(1896)は精神病を「防衛」という神経症と共通のメカニズムから理解していた
→

9
反応性(心因性)/内因性という区分を、精神分析に押し付けることはできない
「ずっと以前より私は、パラノイアは防衛精神症である、という推論を心に抱いてきた。す
なわち、パラノイアはヒステリーや強迫表象と同様に痛ましい思い出の抑圧から生じ、その
症状は抑圧されたものの内容に応じてそれぞれの仕方で決定される、という推論である。こ
の私の推論によれば、パラノイアには抑圧の特別な道程や機制があるにちがいない」
(「防衛-神経精神症再論」)

ここで言う「パラノイア」の語は、1924年に「より正しくは、妄想性痴呆」と注釈されて
いる
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念のため…
フロイトにおける「内因」

「興奮が内因性か外因性か」という意味において: 多数

「神経症が内因性か外因性か?」という意味において:
「神経症の発症類型」

いわゆる「内因性精神病」の意味でとれるのは『夢解釈』の「内因性の心的な疾
患」(S.534-4)の箇所のみ

フロイトにとっては、心因性/内因性より、神経症/精神病の区別の方が重要
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シンポジウムⅢ
『入門講義』22講、
10
『ヒステリー研究』とヒステリー性精神病

1895年『ヒステリー研究』では、5症例のうち4例に何らかの幻覚や妄想が認めら
れている( 「ヒステリー性精神病hysterische Psychose」と記載されている )

米国を中心に、アンナ・Oを統合失調症だとする研究もいくつか存在するGoshen,
C.E.(1952), Reichard, S.(1956), Bram, F.M.(1965)

『ヒステリー研究』は、幻覚や妄想といった精神病症状以外にも、人格の交代や
解離など、その後のフロイト理論で扱われなかったが、現代の臨床のなかで重要
な事柄についての議論を多く含む
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フロイトによる「ヒステリー性精神病」の定義

12
「急性ヒステリーとは、ヒステリー諸症状が最も派手に算出され、結果として自我が病気の
産物によって圧倒されてしまう時期のヒステリー症例(ヒステリー性精神病hysterische
Psychose)である」(S.262)
特に、エミー・フォン・N夫人(40歳)の症例

「ほとんど転換の生じていないヒステリー」(S.142)

症状は、四肢の疼痛や知覚脱失。どもり、舌打ち、ヒキガエル恐怖に加えて、ときおり襲う
譫妄状態、夢遊状態 → これを精神病症状とみている

「数分ごとに突然話を中断し、顔をひきつらせて恐怖と嫌悪をあらわにし、手のひらを広げ、
指を鉤型に曲げて、その手を私の方へと伸ばし、「動かないで下さい――何も喋らないで下さ
い――私に触らないで下さい!」と叫ぶ」(S.100)
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エミー・フォン・N夫人の精神病と夢の関係
13

「〔フォン・N夫人の〕譫妄状態(Zustand von Delirien)においては、夢の場合と似て、
意識の制限化と連想強迫が支配的となり、様々な幻覚や錯覚が極度に容易に発生し、く
だらない内容の、あるいは全く非合理的な推論が導かれたりするのである」

「この譫妄状態は、ある種の精神病に匹敵するものであって、おそらく精神異常の発作
の代理をつとめている。これは言わば発作の等価物としての急性精神病(akute
Psychose)であり、「幻覚性錯乱(halluzinatorische Verworrenheit)」に分類できる
であろう。譫妄状態には、典型的なヒステリー発作と似ている点がさらにある。それは、
たいていの場合、過去の外傷想起の一部分が譫妄の基盤にあると証明されるという点で
ある」(S.152)
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「夢は欲望成就(願望充足)である」と精神病
14

『夢解釈』(1899)

「グリージンガーの議論は、夢と精神病に共通の表象作用の性格が欲望成就にあることを、
実に判然と暴き出している。私自身も、探求の末、夢と精神病の心理学的議論の鍵がここに
見いだされるべきことを学んだ」(S.96)

「われわれは、夢の秘密を解き明かす努力を怠らないことによって、精神病の解明に向けて
も貢献することになるのではないかと言っておきたいと思う」(S.97)

W・グリージンガー『精神病の病理と治療』: 夢と精神病のアナロジーとしての
「die imaginäre Erfüllung von Gütern und Wünschen」(2版、S.111)
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『夢解釈』における幻覚の理解
幻覚

「幻覚は、退行とみなすことができる。
つまり、思考や観念がイメージに変化し
たものである」

心的装置は、通常は一方向性のもの

幻覚ではこの経路の逆行が生じる:
「退行(Regression:後戻り)」

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1899年のフロイトは、ヒステリーやパラ
ノイアの幻覚をすべて「退行」で理解し
ようとしている
フロイトにおける「夢と精神病」学説史

1907年5月以前:精神病(幻覚や妄想)は、その種類を問わずすべて夢と同じ
『ヒステリー研究』、『夢解釈』

1907年5月以降:ヒステリーやアメンチアの幻覚は夢と同じ。精神病は夢とは区別される
ユング宛書簡、「無意識」、「夢学説へのメタサイコロジー的補遺」
→ ラカン(派)の立場

1938年(遺稿):再び、「精神病は夢である」とされる
「精神分析概説」
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精神病と夢の「切断」
(1907年5月23日付、ユング宛書簡)


「ヒステリーとアメンチアでは、純粋な幻覚性
の実現があり、そこでは欲望される対象のイ
マーゴが退行し、直接的に知覚となる」
「一方、パラノイア(早発性痴呆)では、退行
メカニズム
によって直接的に実現されるわけではない。パ
ラノイアは〔知覚への〕退行がほとんどないこ
とが特徴である。〔パラノイアの〕欲望観念は、
症状
言葉として知覚されるのであって、視覚イメー
ジとして知覚されるのではない」
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ヒステリー性精神病
アメンチア
(非定型病像)
パラノイア
(統合失調症)
退行(夢)
退行(夢)
ではない
欲望の対象の実現
言葉として
知覚される
18
1.非定型精神病とフロイト?
アウトライン
2.ヒステリー性精神病
3.アメンチア
4.非定型病像と夢の病理
5.まとめ
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フロイトと「アメンチア」

フロイトは、1883年5月~9月、マイネルトの精神病院でインターンとして勤務

初期の頃から、マイネルトの「アメンチア」について言及

アメンチア:
幻覚性錯乱を中核とし、様々な症状が無秩序にめまぐるしく変化する
(非定型精神病、産褥精神病から症状精神病までの多彩な急性精神病に対応する)
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フロイトにおける「アメンチアと精神病」学説史

1895~96年、「草稿H」「草稿K」: アメンチアとパラノイアをともに「防衛」の一形態
として捉える (鑑別の視点は少ない)

1907年5月23日、ユング宛書簡:

1911年、「シュレーバー論」:

1915~24年、アメンチアとパラノイアの区別を、メタサイコロジーの観点から定式化
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アメンチアとパラノイアを区別
アメンチアとパラノイアを区別
22
アメンチアは夢の病理である
アメンチアと夢の類似性

ヒステリー性精神病
アメンチア
(非定型病像)
パラノイア
(統合失調症)
メカニズム
退行(夢)
退行(夢)
ではない
症状
欲望の対象の実現
言葉として
知覚される
「思考〔語表象〕が、主として視覚的な
心像〔物表象〕へ転換される」
= 局所論的退行

以前あった快の対象を取り戻そうとする
欲望成就
= 現実吟味の不能
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アメンチアのメタサイコロジー的理解(1915-1924)
局所論的退行
物表象
現実吟味の不能
幻覚(夢の視覚像)
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語表象
24
例1:18歳男性、抗NMDA受容体脳炎

ある夜、急に興奮し、「サッカー
がやりたいんだよ!」と述べたか
と思うと、あたかもその場にサッ
カーボールがあるかのように、何
もない空間を蹴り、ドリブルをし
ながら病棟を走りまわった
局所論的退行
「サッカー」
現実吟味の不能 (ドリブル)
幻覚(夢の視覚像)
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:幻覚的満足の試み
例2:70才女性、ステロイド精神病


「検温の時間です」という病棟の
放送を聞いて、あたかもすでに脇
の下に挟んでいたかのように、空
想上の体温計を取り出すしぐさを
した
外的刺激に対する夢の睡眠維持機
能に類似
局所論的退行
「検温」
現実吟味の不能 (脇の下から取り出す)
幻覚(夢の視覚像)
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例3:31歳女性、統合失調症(破瓜型)

「声をかけられて困る」(幻聴)
局所論的退行の不能
↓

「声をかけられたので、取ってください」

語表象が、物表象としての性質までを担う

「語」が「物」としての力を孕む
物表象
語表象
語表象への過剰備給
言語性の病理
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シンポジウムⅢ
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小括

フロイトは、非定型精神病については論じていない

しかし、非定型病像については、「ヒステリー性精神病」と「アメンチア」として言及している

これらの病態では、夢と同じメカニズム(局所論的退行、現実吟味の不能)が働いている

「覚醒時にみる夢(rêve éveillé)」としての非定型精神病

反対に、精神病(統合失調症)は、夢ではない(局所論的退行の不能)

非定型精神病のフロイト=ラカン的理解のためには、「夢の病理」の把握が必要
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1.非定型精神病とフロイト?
アウトライン
2.ヒステリー性精神病
3.アメンチア
4.非定型病像と夢の病理
5.まとめ
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「睡眠中に受ける外部からの刺激」と夢

フロイトは、睡眠中の者に外部から刺激を与える実験を引用している。「唇と鼻
先を羽毛でくすぐってもらう――夢の中で恐ろしい拷問を受ける。瀝青の仮面が
顔に貼られ、その後それが引き剥がされると、顔の皮膚まで剥がれる」

「夢を生じさせる複数の興奮が同時に存在していれば、夢の仕事はそれらすべて
をある一つの統一体に加工せよという強制を受ける」

「睡眠中の興奮もまた現下の活動性を有することによって、夢にとっての重要性
を得る。それらは心的に現下の活動をする他の要素と合体し、夢形成のための素
材となる。睡眠中の刺激も欲望成就へと加工されるのである」
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シンポジウムⅢ
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非定型精神病における外的刺激と症状形成
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
CT検査を入った数時間後に「骨壷に入っている」と述べる(当院での例)

「テレビの料理番組を見て、「私、料理されちゃうの?」と真剣な表情で聞く。回復した
後には、どうしてそう考えたのか不思議で恥ずかしいと言う」(山下格の例)

「診察中にうろうろしはじめ、床をじっと見つめて、“血がある(床の赤い模様)”と言い、
あるいは“水がこぼれている”と何もないのに机の上で手をふいたりした」(山下格の例)
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シンポジウムⅢ
呈示可能性への顧慮

「多方面に亘る夢思考を、夢の中の能う限り簡潔で統一的な表現へと還元しよう
とすることが、夢形成の間に行われる中間的工程の大半を占めているが、そのこ
とはこのような仕方で、つまり個々の思考に適した言語的変形をもたらすという
仕方で、進んでいくものと考えてみてよいだろう」

「本質的な夢思考に付随した副次的な様々な思考のうちで、視覚的な呈示を許す
ものが優先される」
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シンポジウムⅢ
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32
非定型精神病における「呈示可能性への顧慮」

「調子よく幸せです。今朝も歌を五つつくりました。ドクター夫妻が家に居られた
ので三角関係になり、夫を入れて四角関係になり、それにEという人物がはいってこ
られて五角形になり、さらにFという人を抜かしてGがはいってきてベンゼン核にな
りました。Gは神です。それで幽玄の世界へはいったわけです」
(橋本禎穂の例、不安恍惚精神病)
God
G
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シンポジウムⅢ
精神病(統合失調症)は夢ではない(ラカン)
33

「『夢解釈』のなかで、フロイトはジャクソンの次のような言葉を引用しています。「夢
の性質をみれば、狂気(folie)について知りうることすべてを見いだせる。」 いえ,こ
れは間違いです」

「狂気の決定的メカニズムは、毎夜夢で起こっていることとはいかなる点でも何の関係も
ないのです」(セミネール『自我』)

精神病は「言語(シニフィアン)の過剰な氾濫」であって、夢ではない

夢の病理が前景に出ている病態は、ラカン派の立場からは神経症と診断せざるをえない

夢であるならば、隠された意味があるはずである
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シンポジウムⅢ
マルヴァルのヒステリー精神病論
Jean-Claude Maleval :Logique du délire. 1996, 2000, 2011.

フロイトのメタサイコロジーを受け継ぎ、ヒステリー精神病とアメンチアを「夢」の
病理として捉える

夢幻様妄想(délire onirique):悪夢(cauchemar)のように構造化されており、
隠喩機能が保たれている

統合失調症の妄想 →

ヒステリー性・器質性の妄想
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シンポジウムⅢ
→
夢幻様妄想は隠喩的な意味をもっている
「妄想(délire)」
→
「妄想もどき/せん妄(delirium)」
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症例マリア(Maleval, J-C., 1978)


35
黒人の父と混血の母のあいだに生まれる
兄弟のなかで一番色が黒かったため、両親からあまり愛されずに育てられた
精神分析の最初の一ヶ月、退行、幻視の存在
 「分析家が彼女を殺してしまうのではないか」「分析家を殺したい」「分析家が彼女を孕ませる」
 数か月後、男性との熱烈な交際を契機として、妄想を呈する
 自分は「世界に愛を運ぶ未確認飛行物体」であり、また「海の汚染を浄化するために選ばれた人
間」


統合失調症?
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非定型精神病?
シンポジウムⅢ
症例マリアは統合失調症ではない

神経症的な隠喩による意味作用がしっかりと保たれている
=

妄想それ自体が何かを言おうとしている
「海の汚染を浄化するために選ばれた人間」「愛を運ぶ」
=

自らの肌の色を浄化して、両親からの愛を得るというテーマ
「未確認飛行物体」
=
マリアにとっての全能のファルスが投影されたもの
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シンポジウムⅢ
36
非定型精神病は夢である(小出浩之)
小出浩之:非定型精神病の理念型と位置付け.精神経誌.94:1201-1205,1992.

非定型精神病の病像それ自体が夢と非常に似ている

非定型精神病の発症は、2、3日間続く不眠に引き続いて起こる

睡眠というのは、夢を作ることによって無意識を整理する作業

不眠が続いた場合、正常な夢作業がなされない

そのため、覚醒下であるにも関わらず、夢のような万華鏡的世界が繰り広げられる
= 非定型精神病の本体
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シンポジウムⅢ
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1.非定型精神病とフロイト?
アウトライン
2.ヒステリー性精神病
3.アメンチア
4.非定型病像と夢の病理
5.まとめ
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暫定的結論
中心的病態
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非定型病像
統合失調症
夢の病理
・局所論的退行
・現実吟味の不能
言語の病理
・一次過程の優位
・語表象への過剰備
給
幻覚
幻視
言語性幻覚
妄想
夢(悪夢)
隠喩的な意味をもつ
前意識的な内容
要素現象
隠喩をもたない
謎めいた内容
錯乱
一次性
二次性
シンポジウムⅢ
40
おわりに:夢と精神病をめぐる2つの精神医学史
夢

≠ 精神病
Lasègue, Ch.「アルコール精神病は妄想で
はなく夢である」(1881)
夢

→ 被害妄想病と夢を区別

Freud, S.「精神病に局所論的退行はない」
(1915~1924)

Lacan, J.「精神病は夢ではない」(1954)

Maleval, J.-C.(1978)症例マリア
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シンポジウムⅢ
=
Moreau de Tours「夢の状態と狂気が同
一であることについて」(1855)
→

精神病
精神病はすべて「睡眠なしの夢」
Ey, H.「原基的事実としての夢」(1948)