中性子星における暗黒物質捕獲 とブラックホール形成 -高密度天体からダークマターへのアプローチ橘 基 (佐賀大) 研究会「素粒子物理学の進展2013」@京大基研 2013.8.6 物質と宇宙のおもしろい関係 暗黒物質と中性子星 暗黒物質 (DM) のナニとナゼ 存在はかなり確か. ただ正体はよく分からない. Zwickyにより”missing mass”として提唱 (1934) 他の粒子との相互作用はとても弱いだろう. 中性子星(NS)のナニとナゼ BaadeとZwickyにより、超新星 Landauの「巨大な一つの原子核」 爆発の残滓として提唱(1934) 極限環境を提供するマーケット R ~ 10km M ~ 1.4M SUN T < 10MeV B ~ 10 12-15 G P ~ 2 - 3ms Landau と中性子星 Rosenfeldの回顧録によると, 1932年2月に コペンハーゲンに届いた中性子発見の知らせの の直後, LandauはN. BohrとRosenfeldとの 議論の中で中性子星の概念にたどりつき, その 1週間後に論文を刊行したことになっている. しかしそれは間違いで, 実際には3人の議論は 1931年3月に行われ, 1932年の2月まで刊行 されなかったというのが真実. “巨大な一つの原子核” “高密度星の最大質量” Ref.) D. Yakovlev et al., arXiv:1210.0682 21歳のときのLandau 中性子星の主要な問題 1.どうやって誕生/成長するのか? 中性子星の物理と素粒子とは 2.なぜこんなにコンパクトなのか? どのように関係するのか? 3.どのように冷えていくのか? 4.巨大磁場はどこから来るのか? 5.なぜ高速で回転するのか? 質量-半径関係式 Tolman-Oppenheimer-Volkov (TOV) 方程式 (一般相対論) -1 3 æ ö æ ö dP Ge (r)m(r) P(r) 4p r P(r) æ 2Gm(r) ö =÷ ÷ç1ç1+ ÷ç1+ 2 ø dr r m(r) øè r è e (r) øè dm = 4p r 2e (r) with P(r = 0) = Pfind P(r = R) = 0. 0, dr R: Then もう1つ式が必要! m(r = R) = Mand NS P = f (e ) NS radius 状態方程式 (EOS) “A bridge btw particle physics and NS !” 中性子星の質量-半径の理論曲線 なぜ暗黒物質と中性子星か? 暗黒物質がWIMPなら強い制限を与える可能性 arXiv:1304.4279 1 s= NSnl s » 5´10 cm l : mean -46 free path2 M n » CDMSよりもシビア! 3 (4 / 3)p R mN 中性子星で暗黒物質に制限を与える 典型的な中性子星の場合、 M » 1.4M SUN , R » 10km 暗黒物質と中性子星のトピック • 暗黒物質の状態方程式を加味した質量-半径関係 • 暗黒物質の対消滅による中性子星の温度上昇 : • 中性子星における暗黒物質捕獲と ブラックホールの形成、親中性子星の崩壊 cf) それほど新しいアイデアでもない. 80年代辺りから 太陽や地球での暗黒物質捕獲について考察されていた. コズミオンW. Press and D. Spergel (1984) I. Goldman and S. Nussinov (1989) 中性子星における暗黒物質捕獲 *based on paper by McDermott-Yu-Zurek (2012) * (1) 捕獲 dN c dt = CB ( N c ) CB : DM capture rate (1) 熱化 (エネルギーロス) dE = -x nBs N c vd E s N c : DM - nucleon cross section dt (2) ブラックホール形成と親中性子星崩壊 N c mc 4p r / 4 3 th ³ r B rth : thermal radius 「自己重力」の条件 中性子星内部の暗黒物質の数変化 dN c dt = Cc N + Ccc N c - Cc a N c 暗黒物質-中性子散乱による捕獲率 暗黒物質の自己相互作用による捕獲率 暗黒物質の対消滅率 2 (A) Ccc = 0(自己相互作用なし) Nc = 時刻 t ~ 1/ Cc N Cc a Cc N Cc a tanh で定常値 ( C c N Cc a t ¥ ) N c = Cc N / Cに落ち着く. ca (B) Cc a = 0(対消滅なし) Nc = 時間 t ~C Cc N Ccc éëexp(Ccc t) -1ùû -1 まではリニアに増大し、その後 cc 幾何学的極限 (geometric limit) にたっするまで 指数関数的に増大する. (C) Ccc = Cc a = (自己相互作用/対消滅なし) 0 N c = Cc N t 単にリニアに時間発展する. Cc N はgrowth rate. こういった状況は、暗黒物質がバリオン数のような、 ある保存電荷を持つとすると実現するかもしれない. 以下では(C)の場合を考えていく (1) 暗黒物質捕獲率 A. Gould, 1987 C c N = 4p ò r Rn 0 2 dCc N (r) dV dr 核子-暗黒物質 弾性散乱断面積 -B 2 ù é dCc N (r) 6 v(r) 1- e = nc (r)nB (r)x 2 (v s N c )ê1ú 2 dV p v B úû êë 2 nc (r) : DM density nB (r) : baryon density v = 220 km s : DM velocity v(r) : escape velocity 2 mc m c mB 3 v(r) 4m 2 B = , m= , mr = 2 2 2 v (m -1) mB m c + mB 捕獲効率因子 ξ 中性子星では, 中性子は強く縮退している (i) δp<p (δp:momentum transfer) F p F-δp以上の運動量を持つ 中性子のみが「試合」に参加 pF dp (ii) δp>p F すべての中性子が寄与 éd p x = Min ê , ë pF ù 1ú û (2) 暗黒物質の熱化 捕獲後、暗黒物質は中性子との散乱で エネルギーを失い、やがて熱平衡状態になる 熱化のタイムスケール: tth @ mc2 mB pF 4 2nBs N c m Eth 3 r , Eth » 3T / 2 mr = mc mB / (mc + mB ) 暗黒物質の質量が1GeV以下の場合: æ 0.1GeV öæ 2.1´10-45 cm 2 öæ 10 5 K ö -5 ÷÷çç ÷÷ç tth @ 7.7´10 years çç ÷ s Nc è m c øè øè T ø (3) 自己重力とブラックホール形成 熱化した暗黒物質は中性子星のコアに集まる. そのときの 暗黒物質の密度が中性子密度より大きくなると、暗黒物質 は自己重力状態となる. これにより重力崩壊を引き起こし、 ブラックホールが作られる. (cf. Chandrasekhar極限) N c mc ³ rB 4p r / 4 EDM 3 th 3/2 æ ö æ T ö 2 41 100GeV 4p Gçç rB N c ÷÷2 ç 5 ÷ N self @c4.8´10 1 GN cm » è mc rø è 10 K ø 5/2 DM運動項 r r DM-DM重力項 観測と矛盾しない条件: 3 N c < Nself DM-核子重力項 理論からの制限 N c < Nself 幾何学的断面積 からの極限 を要求すると DM質量 ≧ 1GeVの場合, æ 103 GeV / cm3 1010 yrs öæ 100GeV T ö ÷÷çç < 4.4 ´10-48 cm 2 çç × × 5 ÷÷ rc t øè mc 10 K ø è 3/2 s cN DM質量 ≦ 1GeVの場合, s cN æ 10 GeV / cm 10 yrs öæ 0.1GeV ö æ T ö3/2 ÷÷çç ÷÷ ç 5 ÷ < 9.3´10-46 cm 2 çç × rc t øè mc ø è 10 K ø è 6 3 10 5/2 観測からの制限の例 N c = CBt < N self パルサーB1620-26 (M4球状星団)の場合: t = 2.82 ´10 years, T =10 K, r c =10 GeV / cm 8 6 3 3 ひとつのアイデア これまでのところ、主に素粒子サイドからの アプローチが行われている(ようにみえる). けれど極限環境である中性子星の中で、ハドロ ンは「エキゾチックな状態」かもしれない. (e.g.) 中性子の超流動状態 中間子のボース凝縮状態 クォークの超伝導状態 など エキゾチック状態を考えると何が期待? 考えてみました On-going project w/ M. Ruggieri ① 捕獲効率因子ξの修正 (例) color-flavor-locked(CFL) クォーク物質 x = Minéëd p / ( pF - DCFL ), 1ùû サイザブルな影響? ② 低エネルギー有効理論の修正 (例) 中性子超流動(フォノンが主役) Cirigliano, Reddy, Sharma (2011) これから計算していく予定です 今日の話のまとめ 中性子星は素粒子物理にとってグッドな市場 暗黒物質捕獲の話題 --捕獲、熱平衡化、ブラックホール形成— これまでの見立て→ハドロンのエキゾチック状態は無視 中性子星内のハドロンの「媒質効果」の影響 --真空構造の修正や新たなコレクティブモードの出現-- Thank you
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