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「調査」というリテラシー
1
卒業研究用資料
「社会」を調査すること

物理や化学,工学のような分野ではなく,「社会科学」と
呼ばれる分野での調査方法を理解することがこの時間
の目的となります。
1.
問題を発見し,調査すること:問い,方法,答え
2.
セオリー(theory, 理論)ではなく,ストーリー(narrative
story,論理)の発見を目指すこと
3.
「書を持って街に出よう」
2
問題を発見し,調査すること

皆さんは,これまで「調査」をしたことがあるでしょうか?

卒業研究のレベルで要求される「調査」とは,少なくとも次の
3点が明確である必要があります。
問い
• 研究の意
義
• 研究
課題
方法
• 問いとの
フィット
• 調査の実
施可能
性
答え
• 調査
結果
• 言えな
かったこ
と,限界
3
問い

• 研究の意
義
• 研究
課題
方法
• 問いとの
フィット
• 調査の実
施可能
性
答え
• 調査
結果
• 言えな
かったこ
と,限界
良い「問い」がなぜ必要なのでしょうか。
社会には,まだまだわからないことがたくさんあります。
 だから,「わからないから調べる」というだけでは一生かけて
も調査が終了しません。
 つまり,いまだ答えが見つからない「問い」に優先順位をつ
けて,調査を行う必要があるでしょう。


なので,せっかく青春の貴重な時間を調査に費やすのです
から,ぜひとも,良い「問い」を解決する方向へ向かいたいも
のです。
4
問い

方法
• 問いとの
フィット
• 調査の実
施可能
性
答え
• 調査
結果
• 言えな
かったこ
と,限界
では,よい「問い」をたてるにはどうしたら良いのでしょう
か。


• 研究の意
義
• 研究
課題
新井の答えは,1)批判的な思考を持つこと,2)新聞や雑誌,
教科書を良く読むこと,の2点だと思います。
新聞や雑誌,教科書,先生の話等を聞いて,追加的な
疑問や,もっと進んで「これはおかしいんじゃないのか」
と考えることがありませんか?

このような素朴な問題意識から出発することで十分構いませ
ん。そのような中で問題意識をシャープにし,良いものへと
転換させて行けば良いのです。
5
問い

• 研究の意
義
• 研究
課題
方法
• 問いとの
フィット
• 調査の実
施可能
性
答え
• 調査
結果
• 言えな
かったこ
と,限界
科学的な調査,あるいは大学レベルの調査レポートが,
例えば新聞記事や高校時代までの調査レポートともっと
も異なる点は,「方法 (method)」の存在にあります。
つまり,「問い」に対する「答え」が獲得されたプロセスが明ら
かになっていることが,調査では要求されます。
 社会科学では,次のような調査方法が用いられます。一度
の調査で複数の調査方法を併用するのが一般的です。

文献研究(既存の研究成果の整理)
 フィールド調査(観察,インタビュー)
 実験室実験
 アンケート調査
 統計・白書など(アーカイバルデータ)の統計分析

6
問い

• 研究の意
義
• 研究
課題
方法
• 問いとの
フィット
• 調査の実
施可能
性
答え
• 調査
結果
• 言えな
かったこ
と,限界
方法は,問いの種類に依存して決定します。
【記述的な問い】
 「どのように(how)〜」の問い
 「どれくらい(how many)〜」の問い
 「なぜ(why)〜」の問い
 「何が(what)〜」の問い
【仮説検証的な問い】
7
問い

• 研究の意
義
• 研究
課題
方法
• 問いとの
フィット
• 調査の実
施可能
性
答え
• 調査
結果
• 言えな
かったこ
と,限界
調査は,答えを取りまとめることによって完成します。
面白い現象ですが,大学生の皆さんは,問題を発見して,
それをちゃんとした方法で調査して時点で満足してしまうこと
が多いようです。
 もちろん,調査する目的は,何らかの答えを得るためなので
すから,ここをおざなりにしてはいけません。


調査の取りまとめの際には,みつけた答えがどの程度
「確からしいか」を議論する必要があります。
8
まとめ
【調査概要】

基礎リテラシーでは,フィールド調査を重視しているの
で,おおよそ,次のような調査の展開となります。
問題設定と文献調査
はいったりきたり
文献調査にもとづいてフィールド
調査計画を設計する
文献調査
調査結果の
とりまとめ
問題設定
実際の調査
問い
• 研究の意
義
• 研究
課題
方法
• 問いとの
フィット
• 調査の実
施可能
性
答え
• 調査
結果
• 言えな
かったこ
と,限界
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補足1:
セオリーではなく,ストーリーの発見を目指す

新井卒検は,質問紙調査などと同様にフィールド調査も
重視しているので,その調査から得た答えは,研究方
法論的に厳密に言えば,「理論」というよりは,その状況
に依存したストーリー,あるいは「論理」と呼ぶべきもの
です。


もっともっと厳密に言えば,「中範囲の理論」,あるいは「グラ
ウンテッドセオリー」などの議論に従ったものです。
このような調査結果については,調査からどのような「含
意(インプリケーション)」が得られたのかを議論すること
も重要です。

「含意」とは,例えば自動車業界の調査から,それでもいろ
いろな業界にも役に立つ情報が,どのようなものなのかを明
示的に示したものです。
10
補足2:
「書を持って街に出よう」とは

下の表からもわかる通り,実際の調査は,綿密な文献調
査を踏まえたものでなければならない。
なぜなら,文献調査の結果,問いが修正されることがある
 なぜなら,文献調査の結果,既に調査しなくても明らかと
なっている点がわかる


実際の調査では,調査される迷惑を考え,文献でわか
ることを徹底的に調べてから,調査を行うようにする。
問題設定と文献調査
はいったりきたり
文献調査にもとづいて実際の調
査計画を設計する
文献調査
調査結果の
とりまとめ
問題設定
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実際の調査