触覚的生物感提示の質的向上 中田五月 橋本悠希 梶本裕之 電気通信大学 はじめに 近年、生物を模したペットロボットに対する需要が高まっている 「パロ」 (産総研) 夢いぬDX(セガトイズ) ネコロ(オムロン) 生物の動きを模すことで視覚的に生物感を提示 触覚による生物感提示 触覚的に生物感を提示 押圧力 手掌部-スピーカコーン 間の空気圧が上昇 吸圧力 生物感提示装置 (橋本ら,interaction2008) 手掌部-スピーカコーン 間の空気圧が減少 呼吸と鼓動 呼吸、鼓動を模した触覚による生物感提示 鼓動波形 呼吸と鼓動の合成波形 呼吸波形 鼓動・呼吸運動を模した触覚刺激による 生物感の提示(中田ら,EC2008) リアリスティックな生物感提示を実現 周波数と生物の大きさ (時間) ∝ (体長)3/4 提示周波数を変えることで大きさの異なる生物 を触覚のみで提示 提示可能な生物感の量的な向上 実験値が理論値と 異なる領域が存在 鼓動・呼吸運動を模した触覚刺激による 生物感の提示(中田ら,EC2008) 両手で抱える 現在の生物感提示 方法の問題? テクスチャと生物感 多くの生物は体毛や鱗で覆われている テクスチャの有無は,視覚的にも触覚的にも 生物の印象に大きく影響 触覚提示部に生物らしいテクスチャを与えることで, よりリアルな生物感提示が可能と考えられる 研究の目的 触覚提示部にテクスチャ情報を与えることで, 生物感の質的・量的向上を図る 提示触覚に適した触覚提示方法について検 討する 触覚提示部のテクスチャ 生物感を向上させるテクスチャを実験より求める • 12種類のテクスチャについて実験 • 生物を連想させる30の形容詞について生物感を7 段階で回答 • 全てのテクスチャにおいて,同一の呼吸と鼓動の合 成触覚を提示 • 目を閉じた状態 • ホワイトノイズ • 被験者9名 (男性8名,女性1名) テクスチャと形容詞群 ○実験に用いたテクスチャ 毛(長) 毛(中) 毛(短) 毛(硬) 牛革 蛇皮 ベルベット ウレタン 芝生 エアパッキン ラバー ○実験に用いた形容詞群 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 こわい けがらわしい したしみぶかい いかつい つめたい うすきみわるい どくどくしい おぞましい やさしい あたたかい かたい やわらかい おちついた ひとなつこい うれしい 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 いとしい きもちくわるい あいらしい なまあたたかい かよわい あぶない よわよわしい おもしろい おそろしい とげとげしい なまなましい たのしい あいくるしい さみしい かわいい 主成分分析結果(主成分得点) 主成分得点グラフ ※第2主成分までの累積寄与率81.1% 第2主成分 10 5 ベルベット 芝生 牛革 エアパッキン なし -10 -5 0 毛( 短) 毛(硬) 0 -5 ラバー 蛇皮 ウレタン 毛(長) 毛( 中) 5 10 -10 第1主成分 最も生物感が高いと判断されたのは長い毛のテクスチャ 主成分分析結果2(変数) 0.50 29 第2主成分 0.25 -0.50 0.08 17 8 25 0.00 -0.30 7 245-0.10 6 21 241 -0.25 20 22 13 9 10 28 30 16 3 0.30 0.10 12 1418 15 27 23 19 26 0.50 -0.50 第1主成分 “かわいい”、“あいらしい”といった印象 が生物感に大きな影響を及ぼす 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 こわい けがらわしい したしみぶかい いかつい つめたい うすきみわるい どくどくしい おぞましい やさしい あたたかい かたい やわらかい おちついた ひとなつこい うれしい いとしい きもちくわるい あいらしい なまあたたかい かよわい あぶない よわよわしい おもしろい おそろしい とげとげしい なまなましい たのしい あいくるしい さみしい かわいい -0.17 -0.19 0.21 -0.17 -0.16 -0.20 -0.21 -0.18 0.22 0.21 -0.16 0.20 0.19 0.22 0.20 0.21 -0.21 0.21 0.12 0.19 -0.19 0.18 0.06 -0.19 -0.15 0.02 0.17 0.22 -0.04 0.22 -0.24 -0.12 -0.09 -0.08 -0.10 -0.13 -0.10 -0.08 0.00 0.07 0.08 -0.12 0.08 -0.10 -0.16 -0.08 -0.06 -0.10 -0.35 0.12 -0.15 0.09 -0.35 -0.17 0.01 -0.44 -0.27 -0.02 0.44 -0.05 テクスチャからの連想 • 長い毛をもつ身近な生き物・・・猫,犬など “かわいい”、“愛らしい”といった印象を想起しやすい “長い毛のテクスチャ”が 最も高い生物感をもたらす 生物感の量的向上 第2主成分 10 5 ベルベット 芝生 牛革 エアパッキン なし -10 -5 0 毛(短) 毛(硬) -5 0 ラバー 蛇皮 ウレタン 毛(長) 毛(中) 5 10 多くのテクスチャで 生物感が向上 -10 第1主成分 生物感を損なわず、テクスチャ情報を追加可能 触覚提示部へのテクスチャ情報の追加は 生物感の量的向上を可能とする 触覚提示手法の検討 丸まった生き物,小さい生き物を連想させる? 新しい刺激提示方法を 検討し、刺激提示方法と 認識する生物の大きさと の関係を考察する 実験1(提示方法1) 従来の提示方式で想起される生物の大きさについて実験 • 5つの異なる周波数の触覚をランダムで5回提示 • 各刺激について,想起される生物の 大きさに合わせて触覚提示部を移動 • 提示触覚は呼吸と鼓動の合成触覚 • 被験者は23~24歳の男性3名 実験2(提示方法2) 異なる提示方式で想起される生物の大きさについて実験 • 5つの異なる周波数の触覚をランダムで5回提示 • 各刺激について,想起される生物の 大きさに合わせて触覚提示部を移動 • 提示触覚は呼吸と鼓動の合成触覚 • 被験者は23~24歳の男性3名 実験3(提示方法3) 触覚提示部ごとに提示触覚を変更した際の影響を実験 • 一方のスピーカから呼吸波形を、もう一方のスピーカから鼓 動波形を提示する • 5つの異なる周波数の触覚をランダムで5回提示 • 各刺激について,想起される生物の 大きさに合わせて呼吸触覚提示部を移動 • 被験者は23~24歳の男性3名 回答距離[cm] 結果 25 提示方法1 20 提示方法2 提示方法3 15 10 5 0 Human Dog Cat Rabbit Rat 提示生物 触覚提示方法の違いが、認識する生物の大きさへ 影響を与えるという結果が得られた。 まとめと今後の展望 • 生物感の質的向上を行うため触覚提示部のテクス チャに注目した • 主成分分析より、生物感を最も高めるテクスチャが “長い毛のテクスチャ”だという結論を得た • 主成分分析により、“かわいさ”、“あいらしさ”を感じ る要素が生物感に大きな影響を及ぼすという結果を 得た • 実験により、生物感提示方法が認識される生物の 大きさに影響を及ぼすという結論を得た • 今後は、生物感提示方法とテクスチャとを共に考慮 することで、触覚のみで具体的な生物の提示を図る ご清聴ありがとうございました 主成分得点表 第2主成分得点 テクスチャ 第1主成分得点 8.449162091 0.182164838 毛(長) 6.31117878 -0.138013585 毛(中) 6.229125969 0.333341836 毛(短) 0.651357765 -2.133948643 ウレタン -1.176896316 -0.551504092 毛(硬) -1.440881392 4.796646539 ベルベット -1.92039419 -2.025507688 ラバー -2.224420069 1.244666232 牛革 -2.312364513 -0.188523684 なし -3.422966139 -3.264290918 蛇皮 -4.319601341 1.179433396 芝生 -4.823300645 0.565535769 エアパッキン 累積寄与率81.1% 右手 左手 a. 右手 左手 固定刺激 (合成刺激) 移動刺激 (合成刺激) or 固定刺激 (鼓動刺激) 移動刺激 (呼吸刺激) 右手 左手 b. 固定刺激 (呼吸刺激) 移動刺激 (鼓動刺激) 右手 左手 c. or 右手 左手 固定刺激 (合成刺激) 移動刺激 (合成刺激) 右手 左手 移動刺激 (合成刺激) 固定刺激 (合成刺激) or 移動刺激 (呼吸刺激) 固定刺激 (鼓動刺激) b. a. 25 15 10 10 5 0 0 dog cat rabbit 25 呼吸・鼓動別 20 human rat c. 合成波形 15 10 合成波形 15 5 human 呼吸・鼓動別 20 合成波形 距離[cm] 距離[cm] 20 距離[cm] 25 呼吸・鼓動別 a. human dog cat rabbit rat c. 5 0 human dog cat rabbit rat human dog cat rabbit rat dog 呼吸・鼓動別 合成波形 18.5 18 19.3 19.3 16.3 13 13.8 9.6 8.8 8.8 呼吸・鼓動別 合成波形 19.5 17.6 20 18.5 18.6 14 13 11.2 10.2 9 cat b. human dog cat rabbit rat rabbit rat 呼吸・鼓動別 合成波形 18.9 18.2 19.1 18.6 21.2 14.7 14.7 13 12.5 12.4
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