知的財産権を巡るドラマ

突然ですが!
みなさんこのCM知っていますか?
高橋英樹さんの
「正解は 越後製菓!」のフレーズでおなじみ
■ 越後製菓 (本社 新潟県長岡市)
■ 1947年創業
■ 主な製品
切り餅 鏡もち ごはん せんべい・あられ
特に
鏡もちの生産高は
日本一!
おとうさん
さすが!!
高橋 真麻
ただ
しかし!!
越後製菓でも
切り餅部門となると業界2位
どうしても勝てない相手がいるのです。
それが➡
こちらのCMの切り餅!
「さとう~のきりもち~
もちもちもっちもち~」
も耳にしたことがあるのでは?
■ サトウ食品 (本社 新潟県新潟市)
■ 1950年設立 2001年上場
■ 主な製品
切り餅 鏡もち 無菌包装米飯 即席白玉
シーズン中に安定して売れるのは
切りもち
>
切り餅業界1位
サトウ食品
2位
因縁の
ライバル
よーし!
このまま
知名度も売り上げも
どんどん伸ばすぞー!
鏡もち
越後製菓
販売用の切り餅の
発想は早かったのに…
ん?なるほど
その手があったか!
これで一発逆転だ!
そして、2009年3月11日
切り餅裁判事件が
はじまったのです
こんな感じで今回は、
いくつかの裁判をたどって
そこに関わってくる権利に
ついて少し考えてみましょう
どっちが勝つのかな~って
頭の中で予想してみてね!
よろしく
お願いします
勝つか?負けるか?
知的財産権事件簿
ち
てき
ざい
さん
けん
金沢大学
じ
けん
ぼ
学校教育学類
社会科教育専修
152
大西
由紀
話は戻りまして
切り餅裁判事件~2009年春~
越後製菓
当社の切り餅の
切り込みに
ついての
特許権を
侵害している!
製造販売の
差し止めと
約15億の損害賠償を
請求する!
サトウ食品
話は戻りまして
切り餅裁判事件~2009年春~
越後製菓
サトウ食品
我が社の製品は
独自の開発に
基づくもの
いざ司法の場で
そもそも
全面対決だ!!
全面に切り込みが入った
切り餅で
2004年に特許を得てるんだ
ここで問題となるのが
特許権!
■ 特許権とは(知的財産用語辞典より)
「”特許権”とは、新規な発明を創作した者に与えられる独占権である」
特許が認められたアイデアや技術は、
それを発明し、特許権を持った人に無断で利用することはできません
それでは
実際にふたつのお餅の切り込みを
確認してみましょう
特徴
側面に一周切り込み
越
切後
り
製
込
菓
み
の
特徴
側面に二本の切り込みと
上下面に十字の切り込み
サ
切ト
りウ
込食
み品
の
切り餅裁判事件
~事件解決の争点~
■ 越後製菓の特許の構成要件B
さい ち
ていめん
へい たん じょうめん
下と上の面ではなく側面の切り込み
[載置底面又は平坦上面ではなく側面の切り込み]
越後製菓
の意味合い
サトウ食品
単に側面の切り込みが
必須だということを
説明したものなだけ!
側周表面に切り込みがあるもち
なら越後製菓の特許範囲
切り餅裁判事件
~事件解決の争点~
■ 越後製菓の特許の構成要件B
[載置底面又は平坦上面ではなく側面の切り込み]
越後製菓
の意味合い
「底面や上面に切り込みがないもち」
だと解釈できる!
うちは上下に十字の切り込みがある
越後製菓の特許の範囲とは違う!
サトウ食品
切り餅裁判事件
~2010年秋@東京地裁~
越
2010年11月30日
■ 判決理由
後
敗
訴製
菓
➡サトウ食品の切り餅は、
判決
「載置底面又は平坦上面ではなく」とい
うのは、「載置底面又は平坦上面には切
り込みがない」と考えるのが自然
越後製菓の特許権の権利範囲に含まれない
で、終わりかと思いきや
続・切り餅裁判事件
~2011年秋@知財高裁~
もちろんこのままで引き下がれない
越後製菓
➡すぐに
知的財産高等裁判所
に控訴
霞が関の東京高等裁判所と
同じ建物にあります
ち
てき ざい
さん
こう とう
さい
ばん
しょ
知的財産高等裁判所
って??
知的財産に関する事件を専門に取り扱う
東京高等裁判所の特別の支部 略して知財高裁
日本でたった一つ
(2005年設立)
続・切り餅裁判事件
~2011年秋@知財高裁~
■
争点はおなじ、
越後製菓の特許の構成要件Bの解釈
「側面に切り込み」がある餅が特許で、
上下に切り込みがあってもなくても特許範囲
ここで
驚きの判決が
「側面だけに切り込み」がある餅が特許で
「側面と上下に切り込み」がある餅は範囲外
2011年9月8日 木曜日
朝日新聞 朝刊
続・切り餅裁判事件
越
逆後
転製
勝菓
訴の
~2011年秋@知財高裁~
理由①
「載置底面又は平坦上面でなく」は
「側周表面」に切り込みがあることを明確にするもの
➡底面や上面に切り込みを設けるのを除外する意味ではない
理由②
現在は広く“切り込み効果”が一般に浸透
サトウ食品も積極的に宣伝や広告でアピール
➡サトウ食品の製品は側面の切り込みの形成によって
売り上げの増加に影響
サトウ食品も上告しますが・・・
2012年3月 賠償命令
2012年9月
最高裁が上告を棄却
特許の解釈で
まさかこんなことに
なるなんて…
がっかり
最終的に
サトウ食品は
側面の切り込みが
ない餅の販売を
決定をしました
続いては
今年の10月に
日本をにぎわしたニュース
2014年10月8日(水)
朝日新聞朝刊
スウェーデン王立科学アカデミーは、
2014年のノーベル物理学賞を、
中村修二・米カリフォルニア大
サンタバーバラ校教授、
天野浩・名古屋大教授、
赤崎勇・名城大教授の3氏に
授与すると発表した
2014年10月8日(水)
朝日新聞朝刊
受賞理由は
エネルギー効率に優れ、
環境に優しい
発光ダイオード(LED)の
開発の功績が認められた事
ところで そもそも
ところで
そもそも
LEDってどんなものか
LEDってどんなものか
分かりますか?
分かりますか?
発明者の中村修二教授
簡単に説明しましょう
え~。LEDとは電気を流すと
ひかる半導体の一種です。
赤と黄色のLEDは
1960年代にもう開発されてたけど
光の三原色のもう一色、青色は
なかなか開発できなかった
簡単に説明しましょう
というのは、
青色が自然界に存在しないから。
20世紀中の開発は無理だって
言われてたけど
90年代、日本で僕らが開発して
今じゃ色んな所で使われているよ
青色LEDを開発した当時・・・
■ 中村氏は日亜化学の一社員
青色LEDの開発を始めるにあたって
当時の社長は
3億円の研究費と1年間のアメリカ留学を認めていた
青色LEDを開発した当時・・・
しかし!その後社長が交代
■ 度重なる青色LEDの開発中止命令
怒
➡中村氏は命令を無視してこっそり研究を続ける
■
LEDの開発成功して特許獲得するも
➡発明者は中村氏だが、特許権者は日亜化学
報奨金はたったの2万円
2001年8月23
日
日亜化学から私に
特許権利の移転登録
手続きを求める!
かつ1億円支払え!
と、訴えを起こしました
404特許裁判事件
~事件解決の争点~
■1 青色LEDが『職務発明』かどうか
中村氏
日亜化学
私は会社の命令にも背いて
日夜研究し、
青色LEDを開発したんだ!
仕事の上でやっていたのではない!
『職務発明』じゃないぞ!
404特許裁判事件
~事件解決の争点~
■1 青色LEDが『職務発明』かどうか
中村氏
日亜化学
君は会社の業務時間内に
会社の設備で
研究していただろう?
仕事の中でやっていたのだから
『職務発明』に決まっている!
404特許裁判事件
~事件解決の争点~
■2 中村氏の貢献度と対価
中村氏
日亜化学のLED市場で
現在の競争力があるのは
100% 404特許のおかげ
特許発明者の私に
見合う対価を払うべき!
日亜化学
404特許裁判事件
~事件解決の争点~
■2 中村氏の貢献度と対価
中村氏
404特許の方法は
今も昔も主流ではない
404特許によって
日亜化学に競争力があるという
解釈は間違い
日亜化学
404特許裁判事件
~2002年秋 @東京地裁~
日
勝亜
利化
学
404特許権利の移転登録について
東京地裁の判断
日亜化学の設備を使い研究し
他の社員の手助けもあった。
➡よって『職務発明』
特許権利自体は
中村氏→日亜化学
に譲渡されたものと判断
続いて
404特許裁判事件
~2004年冬 @東京地裁~
中村氏の貢献と対価の支払いについて
東京地裁の判断
中村氏は中止命令を無視して
開発を行う珍しい例と評価
➡404特許のおかげで
他多数の特許の獲得できた
404特許に対する貢献度
中村氏:50% 日亜化学:50%
続いて
中
大村
勝教
利授
404特許裁判事件
~2004年冬 @東京地裁~
中村氏の貢献と対価の支払いについて
そんな中裁判の間に
中村氏は請求金額を
1億 ➡20億➡50億 ➡100億
➡200億まで上げた!
そして裁判所の計算した特許対価は
なんと!604億円
よって満額の200億支払命令を出した!
2004年1月31日
北国新聞朝刊 一面
元会社員に200億円支払いという
夢のようなニュースは
大きくとりあげられました!
今日紹介した以外に
色々面白い裁判
あります
こうして
自分の大切なアイディアや考え、
作品を守るための
裁判を起こすことができるのは
特許権をはじめとする
知的財産権の保障のおかげ
特に特許法でいえば
◆1474年 ヴェネチア共和国発明者条例
・・・その頃日本は
応仁の乱
➡この条例のおかげで、発明家の意欲⇪
その後も次々と
1624年
1790年
1791年
1867年
1877年
英国専売条例
アメリカ連邦特許法
フランス特許法
イタリア特許法
ドイツ統一特許法
特許を制定した国は、産業が発達し
時代をリードしていくのがわかりますね
肝心の日本はというと...
まだ出来立てほやほや
つまり戦後
日本人がやっと手に入れた権利
他国に大きくおくれ
1959年
特許法制定
でも最近
■ ネットの普及で
探したい情報をみつけるのも
全部
それを簡単にコピーするのも
あっという間に
マネっこして世の中に発信するのも
できちゃいます
今回
越後製菓
紹介した、
中村修二氏
どちらも自分たちの大切なものを守るため
裁判に挑んだ勇者
お
越後製菓
中村修二氏
私たちにとって知的財産権は
し
チャンスを与え、可能性を広げる
心強いアシスト役
ま
い
今回
紹介した、
私たちのまわりは
意外とそんな勇者にあふれている
・・・かもしれません
【参考・出典】
📖
💻
「負けてたまるか!青色発光ダイオード開発者の言い分」
中山修二 朝日新聞出版 (2014)
「知っておきたい特許法」 工業所有権法研究グループ
特許庁HP http://www.jpo.go.jp/indexj.htm
青色LED裁判は何だったの? 長谷川 能三
(大阪市立科学館友の会会報誌「月刊うちゅう」2006年7月号)
シティーユーワ法律事務所 最近の知的財産権事件
http://www.city-yuwa.com/index.html
Tech-on 中村裁判 スペシャルレポート
http://techon.nikkeibp.co.jp/NEWS/nakamura/mono200406_1.html
Blogos 「アンフェアなのはどっちだ」切り餅裁判
http://blogos.com/article/26069/
Yumenavi 発明が科学や産業を進歩させる 平塚三好