質問項目 1、現在、妊娠は順調ですか。 2、今までにお産の経験はありますか。 3、流産・早産等を経験したことがありますか。 4、今回の妊娠は不妊治療をしましたか。 5、今回の妊娠が分かった時はどんなお気持ちでしたか。 6、里帰りの予定はありますか。 7、困った時に助けてくれる人はいますか。 8、現在、「困っていること」「悩んでいること」「不安なこと」などはあ りますか。 9、現在、あなたはタバコを吸いますか。 10、現在、夫(パートナー)や同居家族は、同室でタバコを吸います か。 11、現在、アルコールを飲みますか。 12、今までにかかった病気や現在治療中の病気はありますか。 13、この1年間に、2週間以上続く「眠れない」「イライラする」 「涙ぐみやすい」「何もやる気がしない」などの症状がありますか。 子ども虐待による死亡事例等を防ぐために これまでの報告にみられたリスクとして留意すべきポイント <養育者の側面> ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 妊娠の届出が遅い 妊娠の届出がなされておらず、母子健康手帳が未発行である 中絶を希望している 医師、助産師の立会いなく自宅等で出産した 妊婦健康診査が未受診である又は受診回数が極端に少ない 関係機関からの連絡を拒否している(途中から関係が変化した場合も含む) 乳幼児健康診査が未受診である(途中から受診しなくなった場合も含む) 精神疾患や強い抑うつ状態がある 子どもの発達等に関する強い不安や悩みを抱えている 子どもを保護してほしい等、養育者が自ら相談してくる 虐待が疑われるにもかかわらず養育者が虐待を否定 訪問等をしても子どもに会わせない 過去に自殺企図がある 多胎児を含む複数人の子どもがいる ※子どもが低年齢である場合や離婚等による一人親の場合であって、 上記ポイントに該当するときには、 特に注意して対応する必要がある。 情報提供の対象となりうる例 ※ 項目に該当する妊産婦又は子どもがいる家庭のうち、早期に養育支援を行うことが特に必要であると判断し た場合 <保護者の状況> ・分娩時が初診 ・初回健診時期が妊娠中期 以降 ・望まない妊娠(産みたくない、産みたいけれど育てる自信がない等) ・妊娠・中絶を繰り返している ・精神疾患がある(産後うつ を含む) ・知的障害がある ・アルコールまたは薬物依存が現在または過 去にある ・若年(10代)妊娠 ・多子かつ経済的困窮 ・妊娠・出産・育児に関する経済的不安(夫婦ともに不安定な就労、無職等) ・一人親・未婚・連れ子がある再婚 ・多胎 ・長期入院による子どもとの分離 ・産後、出産が原因の身体的不調が 続いている ・子どもを抱かない等子どもの世話を拒否する ・子どもをかわいいと思えないなどの言動がある ・夫や祖父母等家族や身近の支援がない ・医療を必要とする状況ではないが子どもを頻繁に受診させる 「妊娠・出産・育児期に養育支援を特に必要とする家庭に係る保健・医療・福祉の連携体制の整備について」 ・育児知識・育児態度あるいは姿勢に極端な偏りがある (平成23年7月27日雇児総発0727第4号、雇児母発0727第3号、厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課長、母子保健課長通 知)より ・衣服等が不衛生 ・虐待歴・被虐待歴がある 日本産婦人科医会本部への要望-2 ア、対応患者の個別表を作成して欲しいとの要望について <奈良県の例> 愛知県と同様の質問に加え、 「今、心配なことに○をつけてください」という質問を設定し、 ①妊娠の経過、 ②出産のときのこと、 ③子育ての仕方、 ④上の子の育児、 ⑤病気のときの対応、 ⑥自分自身の健康面、 ⑦夫・パートナーとの関係、 ⑧あなたや夫・パートナーの親のこと、 ⑨経済面、 ⑩近所・親戚付き合い、 ⑪育児への周囲の協力、 ⑫仕事、 ⑬その他 という選択肢を入れたアンケートによる聞き取り調査を行っている。 また「里帰りされる予定ですか」、「電話で状況をお伺いすることが ありますが、同意していただけますか」、「訪問員や助産師が 訪問することに同意していただけますか」などの質問を設け、 早期発見等に向けた努力がなされている。 日本産婦人科医会本部への要望-3 イ、行政からの働きかけが欲しい、 又は、行政を動かす方策を教えて欲しい等の要望について ⇒具体的な提案を行政に対して行うことがある程度有用と思われる。 奈良県では、市町村と医療機関が常に連携し、虐待予防への対 処を 行おうとしている。母子手帳発行時に保健師・看護師による聞き取り、 リスク要因を発見した場合に市町村は受診医療機関へ情報提供を する とされている。 また医療機関においても、外来診察時、入院時、入院中、そして退 院時も、患者・家族と市町村及び医療機関の3者間で情報の交換・ 共有がなされ、 三者合同面談の機会も設けるとされる。 そして、市町村と医療機関での調査様式は早期発見のためにも統 一様式で実施するとのことである。 奈良県例 奈良県例 子ども虐待による死亡事例等を防ぐために これまでの報告にみられたリスクとして留意すべきポイント <子どもの側面> ○ 子どもの身体、特に、顔や首、頭等に外傷が認められる ○ 子どもが保育所等に来なくなった ○ 施設等への入退所を繰り返している ○ きょうだいに虐待があった <生活環境等の側面> ○ 児童委員、近隣住民等から様子が気にかかる旨の情報提供がある ○ 生活上に何らかの困難を抱えている ○ 転居を繰り返している ○ 孤立している <援助過程の側面> ○ 単独の機関や担当者のみで対応している ○ 関係機関の役割、進行管理する機関が明確でない又は適切でない ○ 要保護児童対策地域協議会(子どもを守る地域ネットワーク)が適切 に 開催されていない又は進行管理ができていない ※子どもが低年齢である場合や離婚等による一人親の場合であって、 妊娠診断薬 産科医療機関へ行く前に、 薬局で妊娠診断薬を購入し、 自分で検査することが多い。 陽性の場合 ヒヤー!嬉しい! ・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・ しかし、中には 陽性が悩みの始まり の場合もある。 薬局と連携し、妊娠診断薬販売と同時にパンフレットを渡す。 「妊娠等悩み相談窓口」に相談して下さい。 妊娠検査薬販売棚の隣に置き 自由に取れるように配慮 薬局に協力依頼 手札サイズで、直ぐポケット等に 入れられるように配慮 妊娠・出産・育児期に養育支援を特に必要とする家庭に 係る 保健・医療・福祉の連携体制の整備について 医療機関 地域で継続し た支援体制 出産 妊娠に関する相談 妊婦健診 妊娠 早期に養育支援が必要な妊産 婦や子どもがいる家庭について、 市町村へ情報提供 市町村と連携して医療の提供 家庭に対し、地域の母子保健 サービスや窓口の情報提供 産後健診 出産 妊娠の届出 行 政 機 関 妊婦訪問 養育支援訪問 妊娠届け時に面接し、妊婦の身体的、 精神的、経済的状態などを把握し、支援 の要否を確認 支援が必要な場合は、特定妊婦として 妊娠期から関係機関と連携し早期から 支援 子育てスタート 乳児家庭全戸訪問 (こんにちは赤ちゃん) 新生児訪問 未熟児訪問 養育支援訪問 日本産婦人科医会本部への要望-4 ウ.外来や街頭に掲示できる看板等の作成をして欲しい。 もう少し頑丈な標識にして欲しいとの要望について ⇒看板標識については「安心こども基金」から費用捻出が可能で あり、 各医会において当該都道府県の「安心こども基金」担当部署と 交渉していただきたい。 施設内掲示例 (この施設は屋外にも掲示されている) 安心母と子の委員会(産科等医療機関内) 全スタッフが同じ姿勢で対応できるように、 例えば 「安心母と子の委員会」を設置し、定期的に研修する。 安心母と子の委員会 対社会活動:講演等やパンフレット配布等で情報提供にも 努める。 様々な支援があること等を。 <電話でのチェックリスト> □定められた診療・受付時間外に電話をしてきたり、 診療を求めたりする □予約を取る際に、自分の都合を優先したがる □こちらから連絡すると何時も繋がらない、留守番電話に メッセージを残すが、連絡が来ない <受付でのチェックリスト> □母子健康手帳、妊婦健診受診票、保険証を持参しない □母子健康手帳にほとんど記載がない □妊婦健診の受診が極端に少ない □妊婦一人での受診が多く、パートナーの同席がない □診療費に対しての問い合わせが多い □外国人 <診察時のチェックリスト> □妊娠週数が進んでからの初診 □若年妊娠 □母子健康手帳を忘れることが多く、妊婦健診の受診回数が 少ない □妊婦健診で胎児の状況に関心が少ない □母親学級に出席していない □DV被害を思わせる外傷などで受診している (腹部の打撲や外傷、頭部外傷、繰り返す腟炎等) □精神性疾患を有する(既往がある) □知的障害を有する □アルコール依存、薬物依存がある(既往がある) □流産歴(人工妊娠中絶を含め)が多い □育児・医療に関して偏った考えに固執している □診察中に携帯電話が鳴るとその電話に出て話し出す □薬などを執拗に欲しがる <診療後のチェックリスト> □処方した薬の説明を聞かない □診療への不満を訴える □支払いをしない □次回の診察に対してその確認をしない □話の要領を得る受け答えができない (参考文献) 医療従事者のための子ども虐待防止サポートブック 医療現場からの発信: 奥山 真紀子ほか クインテッセンス出版(株) ハイリスク症例発見のためのチェックリスト <妊娠初期チェックリスト(1)> □妊娠出産歴(回数多い) □妊娠届出週数(妊娠23週以降) □死産や突然死歴 □精神疾患がある(精神科の薬を内服中・ マタニティーブルーズや産後うつ病等含む) □知的障害がある □アルコールまたは薬物依存が現在または過去にある □経済困難 □住所が不確定(居住地がない)、転居を繰り返す家庭である □親族や地域社会から孤立した家庭(例:宗教等から周囲との 関係を拒否等)である □一人親・未婚・連れ子がいる再婚である □内縁者や同居人がいる家庭である □多子かつ経済的困窮世帯である、衣服等が不衛生である <妊娠初期チェックリスト(2)> □経済的不安(夫婦ともに不安定な就労、無職等)がある □夫や祖父母等身近の支援者がない □夫婦不和,配偶者からの暴力(DV)等不安定な状況の家庭 □望まない妊娠 □婚姻状況(再婚・未婚・離婚等) □若年妊娠 □虐待歴・被虐待歴がある □望まない妊娠、妊娠・中絶を繰り返している □こだわりや、子どもへの関心が異常に強い □話の要領を得る受け答えができない □子どもを抱かない等子どもの世話を拒否、子どもを かわいいと思えないなどの言動がある □元来、性格が攻撃的・衝動的である □育児に対する不安やストレスが高い(保護者が未熟等) <出産前後のチェックリスト(1)> □母子健康手帳未発行・妊婦健康診査未受診・妊娠後期に 妊娠の届出 □妊婦健診を定期的に受けていない □妊娠中・産後の心身の不調がある □とびこみ出産、墜落分娩等 □子どもとの関わり方が不自然 □話の要領を得る受け答えができない □育児の協力者がいない □親に不眠や食欲不振、アルコール、薬物、タバコ等の嗜癖、 極端な潔癖症がある □家庭内不和、DVがある □転居を繰り返す □地域や社会から孤立している □情報提供の同意が得られない □エジンバラ産後うつ病質問票利用 <出産前後のチェックリスト(2)> □出生届出が遅い、出さない □未熟児、NICU入院歴がある □育てにくい(ミルクを飲まない、よく泣く等) □体重増加が悪い □多胎妊娠・出産である □先天性疾患がある □胎児に疾病,障害がある □身体発育の遅れがある この相談援助事業は 特定妊婦*を抽出するのが目的ではない。 また、安易に 児童虐待予備軍、児童虐待ハイリスク妊婦 などのレッテルを貼らないことが大切。 妊婦の悩みを解消することが目的。 「そのためには、悩む妊婦に共感しながら話を聞く。 そして行政などの力を借りて最適な解決法を 見いだすことが目的。」 改正児童福祉法において養育支援訪問事業の対象として *特定妊婦:出産後の養育について出産前の支援が特に必要 な妊婦 おわりに 産婦人科医療関係者全てが 各地域のネットワークの「核」になり、 虐待死ゼロのための最前線に立っていただき たい。 本事業はプライオリティーが高い案件であり、 産婦人科医療関係者全てが一丸となって 地域社会へ貢献する絶好の好機です。 各地域医会においては、行政への働きかけと連携 を より一層図るなど、更に対応されることをお願い したい。
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