プロセスの設計と管理 青写真によるプロセスの把握 1 プロセスとは • サービスの構成そのもの • サービス・オペレーションの手段と手順 • 顧客との接触が多いサービスではサービス 経験に差が出る。 • プロセスが正しく設計されていないとサービス の品質を低下させる 2 サービスの青写真 • サービスのフローチャートを高度化したもの • 理想的なプロセスを示すもの • 作業の流れ、順序、関連性、連携性などで描 かれる • 顧客と従業員がどのように関わりあい、スタッ フ、オペレーション、顧客などがどのように関 わりあっているかを示す 3 青写真の作成 • 時系列に従いシーンを列挙 • サービスの準備と提供に関わる行動の抽出 • シーンの前後のつながりを明確化 • サービスの全体像を表す様々なシーンを大ま かに記載 • シーンを細分化し個々の活動を精査し、詳細 を決定 4 シーンの列挙 (レストランの例) ① 予約 ② 駐車サービス ③ 手荷物預かりサービス ④ カウンタ・バー・サービス ⑤ テーブルへのエスコート 5 シーンの細分化 (航空サービスの例) • 搭乗 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ 搭乗開始のアナウンスを待つ 係員に搭乗券を見せる 搭乗通路を歩く 機内に入る 客室乗務員に搭乗券を見せる 座席を確認する 荷物を収納する 座席に着く 6 フロント・ステージとバックス・テージ • フロント・ステージ – 顧客にサービスが提供される場面 – 顧客の目に触れる「目に見える部分」 • バック・ステージ – 従業員のみが担当し、サービス提供を補佐する 場面 – 顧客の目には触れない「目に見えない部分」 • 可視境界線 – フロント・ステージとバック・ステージの境界 7 フェイル・ポイントの特定 • サービスの青写真によりプロセス上の「フェイ ル・ポイント」が特定可能 • フェイル・ポイントとは要素がうまく機能せず 品質の低下につながる重大なリスクをもつポ イント • 事前にフェイル・ポイントが把握できればあら かじめ予防策を講じることが可能 • さらに、待ち時間が発生するポイントも把握 可能 8 台本の作成 • サービスの青写真により、サービス行為の時 間、最大待ち時間、サービスの台本を決める ことができる • サービスの台本により「接遇ステージ」の詳細 が明確化 • プロセスの抱える問題点と潜在的課題が浮 上 9 青写真の作成方法 ① フロント・ステージにおける項目 ② フロント・ステージにおける物的証拠 ③ 顧客の行動 ④ 顧客とスタッフの関わり合いの境界線 ⑤ 接客スタッフのサービス行為 ⑥ 可視境界線 ⑦ 他の従業員によるサービス行為 ⑧ ITなどによるサービス支援 10 レストランを例にした青写真1 フ ロ ン ト ・ ス テ ー ジ 項目 予約 駐車サービス クローク サービスの基準 対応時間 対応時間 対応時間 物的証拠 声の大きさ 明瞭な話し方 周囲の環境 従業員の外観 設備 従業員 予約の受付 日時・人数確認 キーの受け取り コート受け取り 確認票受け渡し 予約状況の確認 データ入力 車の移動 確認番号の付与 コートを掛ける システムの管理 駐車場の管理 施設・備品管理 顧客とスタッフの境界 目に見える 接客スタッフの行為 可視境界線 バ ッ ク ・ ス テ ー ジ 目に見えない 接客スタッフの行為 組織的境界線 サービス支援プロセス IT境界線 サービス支援プロセス データベース 11 フェイル・ポイントの確認 • サービスの青写真により失敗するリスクが高 いサービス行為が明確化 • 予約ステージを例にしたフェイル・ポイント – 電話がつながらない – 希望の日程の予約が取れない – 予約内容を間違う • 待ち時間の発生 – サービス行為に遅延が生じると待ち時間が発生 – 待ち時間が長すぎると不満につながる 15 サービス基準の設定 • 顧客の期待には、限界サービス・レベルから 理想サービス・レベルまでの幅がある • 設定する基準は、各段階で顧客が十分満足 するレベルで無くてはならない。 • 満足を提供できない場合は、顧客の期待レベ ルを下げる必要がある • 基準は、標準時間、技術レベル、様式や態度 に関して規定され、客観的に評価できること が求められる 16 第一印象と許容範囲 • サービス開始時点における第一印象はその 後のプロセスの評価に大きく影響 • 顧客の評価は時系列で堆積する。 • 最初の印象が悪いと、その後のサービスに 対して不満な点を探し始める • 最初のサービスに満足するとその後のサー ビスレベルに対する許容範囲は広がる • 最初が大事であるが、プロセスの進行に伴い レベルダウンしていいわけではない 17 プロセスの再設計 • 失敗の検証 – 失敗を検証することにより、失敗のリスクを軽減し、 失敗の起こる可能性を低くすることが可能となる – 失敗したとしても、被害を最小限にとどめる仕組 みを作ることも可能となる • 組織疲労 – どんな優れたプロセスでも、いつかは十分に対応 できなくなってしまう • プロセスの再設定が重要 18 組織疲労の2つの原因 • 外部環境の変化 – 外部環境の変化によって既存の慣習が陳腐化 – 組織が機能を維持し、責務を果たすために新た なプロセスが必要 • 内部環境問題 – 組織内プロセスの変化、官僚的体質の増幅、不 適切で、非効率な規準の確立 – 大量データ処理、付加価値サービスのための煩 雑な手順、膨大な管理業務、例外的対応の増大 19 プロセス再設計の4つの指標 ① 失敗回数の減少 ② サービス開始から完了までの時間短縮 ③ 生産性の向上 ④ 顧客満足度の向上 20 サービス再設計の5類型 ① サービスの合理化 ② セルフ・サービスへの移行 ③ サービス施設以外での提供 ④ サービスのパッケージ化 ⑤ 有形物の再設計 21 ① サービスの合理化 • 付加価値を生んでいないサービスを合理化 • 顧客にとって価値のないプロセスを削減 – 申込書への記入 – 支払い – 内容の確認作業 • サービスの生産性と顧客満足が大幅に改善 22 ② セルフ・サービスへの移行 • サービスの生産性の大幅な向上 – コール・センターからウェブへの移行 • コストの低減 • セルフ・サービスの課題 – 顧客への事前の研修が不可欠 – 関わりを持つ機会が減少 – 顧客の反応が分かりにくい 23 ③ サービス施設以外での提供 • • • • 場所の制約から解放 顧客層の拡大 顧客の利便性の向上 課題 – 組織側の業務負担増 – 費用負担が増加する可能性 – 顧客からの信用・信頼が必要 24 ④ サービスのパッケージ化 • 顧客セグメントごとに提供するサービスをパッ ケージ化 • スピード・アップにつながる • マーケティング費用削減につながる • 課題 – ターゲット顧客に対する広範な知識が必要 – 付加価値のないサービスの混入 25 ⑤ 有形物の再設計 • 有形要素の見直し • 設備や機器の変更によりサービス内容を充 実 • 課題 – 模倣されやすい – 継続した投資が必要 26 顧客の参加レベル • 顧客の参加とは、顧客がサービス行為を行っ たり、サービス資源を提供したりし、心身とも にサービス提供に関わること • 時として感情移入する場合もある • 「体」に作用するサービス、「心」に作用する サービス、ハイ・コンタクト・サービスでは参加 することが必要となる • 参加のレベルにより、低、中、高に分けられる 27 低レベル • • • • 従業員や機械がほぼすべての行為を実施 サービスが標準化されているもの 顧客はほとんどサービス提供には参加しない (例)一部の「物」に作用するサービス – 日常的なクリーニング – 修理 • 顧客はお金を払うだけ 28 中レベル • サービス提供のために必要な情報提供を行 う程度のもの • サービス提供に協力 • (例)美容院 – 好みのスタイルを伝達 – 各シーンでスタッフに協力 • (例)会計士への申告書作成依頼 – 会計資料の提供 – 質問への回答 29 高レベル • 顧客が積極的に協力し、共同でサービスを作 り上げるもの • 顧客が自らの役割を十分に自覚していない 場合、サービスの成果は限定されたものとな る • (例)ダイエットのアドバイスなど – 専門家の指示に従わなくてはならない – サービス提供側と顧客がチームとして取り組まな くてはならない 30 セルフ・サービス技術 • 顧客のサービス提供プロセスへの参加レベ ルが最も高いものはセルフ・サービスによる もの • サービス提供側の時間と労力を顧客側が負 担 • 情報サービスではセルフ・サービス化が進展 • 銀行、エンターテイメント、教育における中核 要素の提供も可能 31 セルフ・サービス利用への課題 • 積極的に利用するセルフ・サービス – – – – 便利な場所に設置 24時間・年中無休 インターネットによるサービス スタッフよりも詳細・迅速な情報提供 • 利用したがらないサービス – うまく機能しないサービス(入力困難・アクセス混雑・ エラー続出) – 設計が不適切でプロセスが分かりにくい • 最大の問題はサービス・リカバリー・システムと 連動しない 32 セルフ・サービスに対する確認事項 ① 確実に機能するか – 説明通りに機能し、使いやすいか ② 対人サービスに比べて効率的か – サービス提供時間が短縮されているか、コスト削 減につながっているか ③ 万一の場合への対応を導入しているか – 万一の場合に迅速に対応できる体制を整備して いるか 33 顧客は部分的スタッフ • 顧客は部分的スタッフとして、生産性や成果を左 右する • 顧客が部分的スタッフであると期待すると、接遇 ステージにおける役割が大きく変化 • 顧客は主体的にサービス提供に参加することに より満足を得る • サービス提供側と顧客の関係が良好でなくては ならない • 共同生産に特別な技術が必要な場合選抜を必 要 34 顧客の問題行動 • • • • • • 泥棒顧客 規則違反顧客 攻撃的顧客 問題家族 暴力顧客 料金滞納顧客 35
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