第2小委員会 (小委員会テーマ:調査) 小項目テーマ:地下水調査 作成者 幹事委員 委員 委員 委員 委員 委員 小松 満 (岡山大学) 高坂 信章(清水建設(株)) 清水 孝昭((株)竹中工務店) 進士 喜英(日本原燃(株)) 竹内 真司(日本大学文理学部) 長谷川琢磨((一財)電力中央研究所) 【 アカデミックロードマップ <地下水調査>】 9基準 10基準 地盤調査・透水試験 水位・間隙水圧測定(ボーリング孔,観測井) 砂質地盤・礫質地盤 透水特性調査<飽和地盤>(単孔,揚水試験) アースダム・ロックフィルダム・河川堤防 調 10基準 岩盤(ダムサイト基盤) 1930 Lugeon 1958 E-19法(米国) 透水特性調査<不飽和地盤>(締固め地盤) 湧水圧試験(JFT:米国) 透水特性調査 (単孔:水位回復・注水,ルジオン) 帯水層における深さ方向の流動状況(水みち) 査 地下水流動層検層(塩水・温水) より詳細な地下水調査 法 地下水流向流速測定方法(単孔) 深部の不飽和地盤 局所的地下水流動,広域地下水流動 地下水調査法 1941 酒井 地下水調査法 1953 山本 地下水調査の基礎 地下水流動状況調査(トレーサー,水質分析,同位体・溶存ガス分析等) 土質調査法 1972 基礎理論の発展 運動方程式(Darcy則) 1856 Darcy 地下水電気的モデル 1940 Hubbert 揚水理論の拡張 1960 Hantush 井戸への地下水流 1863 Dupuit 地下水の最初の成書 1937 Muskat 水文地下水・基礎理論・涵養 1959 Todd 定常揚水試験 1870 Thiem 非定常揚水理論 1935 Theis 地下水基礎理論 1962 Harr 地下水の定常流動 1886 Forchheimer ・1899 Slichter 非定常揚水試験の解析 1940 Jacob 塩水浸入・地下水基礎 1972 Bear 圧密・土との相互作用 1948 Terzaghi and Peck 不飽和浸透 1968 Irmay,1978 Bouwer 堤防の安定など 1948 Teylor 水文学・地下水学 1972 Domenico 地下水科学 1919 君島 移流分散基礎 1974 Scheidegger 析 法 地下水分布による流動 1881 King 地下水探査法 1928 Meinzer 地盤調査法 1995 調査方法の基準化 基礎理論の構築 解 基礎理論の応用 地盤調査の方法と解説 2004,2013 調査対象の多様化・複雑化 ・現場透水試験(単孔式) ・現場透水試験(不飽和地盤) ・スラグ試験 ・線源井戸による揚水式 ・有限径井戸による揚水式 ・解析手法の高度化 ・数値的逆Laplace変換の適用 ・スキン効果評価,限界流量の 評価,重ね合わせ理論,曲線 一致法の原理と高度化等 ・水資源としての地下水利用 ・構造物建設による地下水流 動阻害 ・地すべり・斜面崩壊・液状化 等の地盤災害 ・構造物の維持管理,長期的 安定 ・地下空間有効利用,岩盤内 エネルギー貯蔵 ・土壌・地下水汚染 ・廃棄物処分場からの汚染物 質漏洩 ・地中熱利用・帯水層蓄熱 調査法で用いる地下水理論及び 解析方法の適用における合理化 各問題に対処する新たな調査 法の基準化 理論式誘導・適用条件整理 国内基準と国際規格(ISO)との棲み分け 現在 1850 1900 1950 不飽和地盤の原位置透水試験 1995 2003 2013 未来 【 アカデミックロードマップ <地下水調査>】 説明文 地下水調査における大半の調査・試験方法はDarcy(1856)が水頭の勾配に比例して地下水が浸透することを実験的に示した基礎理論が礎になってい る。その後の理論構築で代表的なものは,井戸への地下水の流れの方程式をDarcyの法則を用いて導いたDupuit(1863),Dupuitの式を修正して揚水試 験で井戸の近傍の観測井内の水位の計測から帯水層の浸透特性を求める方法を考察したThiem(1870),地下水の挙動をより数学的に解明した Forchheimer(1886)とSlichter(1899),地下水の分布図や川への地下水の流動を表す断面図を描いて地下水の浸透する方向を探求したKing(1881),数 学的な取り扱いを基に地下水開発に関する種々の探査方法を提案したMeinzer(1928)等である。 これらの基礎理論は,地下水の浸透を電気的モデルによって解明したHubbert(1940),地下水の最初の成書である“The Flow of Homogeneous Fluids through Porous Media”を出版したMuskat(1937),揚水試験の非定常解析式を発表したTheis(1935),被圧帯水層の完全貫入井を用いた揚水 試験結果よりグラフを用いて帯水層定数を求める方法を開発したJacob(1940),種々の境界条件での揚水試験の解を示したHantush(1960)らにより発 展した。なお,地下水と土の相互作用に関しては“Soil Mechanics in Engineering Practice”を出版したTerzaghiとPeck(1948),堤防の安定等に 関しては“Fundamentals of Soil Mechanics”においてTaylor(1948)によりまとめられた。日本で地下水を科学的に取り扱ったのは,君島(1919)に よって出版された「地下水」である。 その後は,これらの基礎理論が様々な地下水問題に対して応用されている。北米大陸の水文地下水を対象とした“Ground Water Hydrology”を出 版したTodd(1959),“Groundwater and Seepage”を出版したHarr(1962),“Concepts and Models in Groundwater Hydrogeology”を出版した Domenico(1972),“Dynamics of fluids in porous media”を出版したBear(1972)である。また,土壌学としては,不飽和領域も含む地下水学をま とめた“Physical Principles of Water Percolation and Seepage”を出版したIrmayら(1968),不飽和領域を対象として土壌の水理の基礎から応用 までを示した“Groundwater Hydrology”を出版したBouwer(1978)である。また,Scheidegger(1974)は石油工学分野で土壌・地下水汚染を基礎的に 取り扱った“The physics of flow through porous media”を出版している。 我が国における地下水調査は1940年代から発展を遂げており,それ以前に実施されていた地下水脈探査法からより科学的に地下水や帯水層の特性 を調査する方法を示した酒井(1941)による「地下水調査法」,山本(1953)による「地下水調査法」が基となっている。当初から実施されている地下 水調査の項目としては,地盤調査・透水試験のためのボーリング孔や観測井における水位・間隙水圧測定,地盤を対象とした透水特性調査である飽 和砂質・礫質地盤における単孔式透水試験,多孔を利用した揚水試験,締め固めた不飽和地盤における透水試験,岩盤を対象とした透水特性調査で ある水位回復や注水法による透水試験,ルジオン試験があり,1995年に土質工学会(現地盤工学会)で9基準が制定された。また,2003年には地下水流 動を測定するためのトレーサーによる地下水流動層検層の基準が制定され,現在,地下水調査関連の基準は10基準(土:7基準,岩:3基準)となっ ている。また,地盤調査の方法と解説には,深層の不飽和地盤を対象とした透水試験方法や地下水流動状況調査(トレーサー,水質分析,同位体・ 溶存ガス分析等)が掲載されており,これらのうち,不飽和地盤を対象とした新たな透水試験方法と単孔を利用した地下水流向流速測定方法の2つの 試験方法について新規基準化に向けた検討が行われている。 現在,地下水調査の対象は,水資源としての地下水利用,構造物建設による地下水流動阻害,地すべり・斜面崩壊・液状化等の地盤災害,構造物 の維持管理,長期的安定,地下空間有効利用,岩盤内エネルギー貯蔵,土壌・地下水汚染,廃棄物処分場からの汚染物質漏洩,地中熱利用・帯水層 蓄熱のように多様化かつ複雑化している。そのため,地下水分野に精通しているユーザー以外も調査に携わるケースが増えてきていることから,そ れぞれの調査法における基礎理論式の誘導過程や適用条件を整理しておくことが喫緊の課題であると言える。さらに,このような現状を鑑みた上で 今後50年を見据えると,調査法で用いる解析方法の適用における合理化,各問題に対処する新たな調査法の基準化,並びに国内基準と国際規格(ISO) との棲み分けが必要である。 (参考文献)地盤工学会編:地下水を知る,pp.205-222, 2008.
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