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ドメインという概念及び
日本語文法ペダゴジーでの応用
Guohe Zheng, Ball State University
25th CATJ, April 12, 2015
The University of Findlay
初めに
 ドメインという概念は、どの言語でも大切だ。
(a) I didn’t deliberately ask her.
(b) I deliberately didn’t ask her.
 「わざと彼女に聞く」 / 「わざと彼女に聞かなかった」
 「修飾範囲」=ドメイン
 日本語の場合は、ドメインという概念は、特に大切
ドメインという概念の定義
 David Crystal は、Lyons (1968), Matthews (1974), and
Radford (1981) らの説に踏まえての定義
ーThe range of structures to which a rule was
applicable.
ーThe structure which a node dominates.
ドメインと日本語文法ペダゴジーでの応用:
学生たちの質問その一
(1) 図書館で本を読みます。
(2)x デパートでくつをかいに行きます。
 学生たちの、助詞「で」についての質問:なぜ(2)がだめだ
I will read books in the library. Genki, I, p. 90.
I will go buy shoes in a department store. Nakama,
I, p. 293
 注:The particle に must be used for the place of
destination, not the verb expressing the purpose.
ドメインと日本語文法ペダゴジーでの応用:
学生たちの質問その一
(3)ニューヨークでくつをかいに行きます。I will go buying
shoes in New York.
(4)ニューヨークにくつをかいに行きます。I will go buying
shoes in New York.
 (3)と(4)のような例は、普通の教科書では説明できない。
ドメインという概念で説明すれば、学生たちに納得してもらえ
る。
(1) 図書館で本を読みます。
(2) x デパートでくつをかいに行きます。
ドメインと日本語文法ペダゴジーでの応用:
学生たちの質問その一
(2)x デパートでくつをかいに行きます。
(2a) デパートにくつをかいに行きます。
(5)
メーシーというデパートで買い物をするために
ニューヨークに行きます。
(6)x
メーシーというデパートに買い物をするために
ニューヨークに行きます。
 動詞「行く」 :(2)の場合は「デパートで」のドメイン以内なので、
問題だ。(5)の場合はその以外にあるので、問題なし。
(6)が言えない具体的な理由もこれで突きつけられたのだ
ドメインと日本語文法ペダゴジーでの応用:
学生たちの質問その二
(7)石田さんは目がきれいです。
(8)スミスさんはテニスが上手です。
(9)Ishida-san has beautiful eyes. なかま1、331
(10)Smith-san is good at tennis.

学生の質問: 同じ「〜は〜が〜」という表現なのに、どう
してその共通点は英訳の時になくなってしまうのか 。
ドメインと日本語文法ペダゴジーでの応用:
学生たちの質問その二
 屁理屈のように聞こえる質問だが、満足に答えられないと正しい
使い方を納得してもらえず、次のような間違いはでかねない。
(11)?石田さんの目はきれいです。
(12)?スミスさんのテニスは上手です。
 (11ー12)は不自然だという注意にも拘わらずの間違いだ .
教科書のある程度の責任?
(13)As for Ishida-san, his eyes are beautiful.
(14)Tom’s hair is long. Genki I, 172.
NakamaI, 331.
ドメインと日本語文法ペダゴジーでの応用:
学生たちの質問その二
 ドメインでの「〜は〜が〜」という表現についての説明:
ー「は」のドメインは、文全体に延びる。
ー「が」のドメインは、その直後に来る述語にしか延びない。
言い換えれば、「〜が〜」という文の表す意味が 「〜は」の表す対
象にすぎない。
「As for Ishida-san, his eyes are beautiful」 と同じじゃないかとの
反論
答え:似ているが、同じではない。ドメインを使っての説明は、翻訳
経由なし、先入観も作らないからだ 。先入観が張本人だ。
ドメインと日本語文法ペダゴジーでの応用:
学生たちの質問その三
(16)先生が書いた手紙はこれだ。
(17)先生の書いた手紙はこれだ。
ー「主語助詞が」は「所有所属助詞の」に置き換えられること
ができるばかりでなく、置き換えられた方が自然だと、先生
ー「助詞のは動詞の行為者を表すこともある」と、辞書
ーどういうことなんだというのは、学生の質問
ー主語を表すには、いつ「が」を使えばいいか、いつ「の」を使
えばいいか、という説明がないのだ
ドメインと日本語文法ペダゴジーでの応用:
学生たちの質問その三

また、ドメインという概念で説明すれば、簡単に解決でき
ると思う
 まず、言語の目的は、人間同士の意思交流、意思交流さえ
達成すれば、それでいい。
ー「先生が書いた」はが次に出る名詞「手紙」を修飾する、
ー「先生が書いた」という文はかなり短い
 「主語の」は、上記の条件を二つとも満たさなければならな
いのではないか

(18) 先生が十年間にわたっていろいろ苦労して書
いた本はこれだ。

(19)? 先生の十年間にわたっていろいろ苦労して書
いた本はこれだ。

(20)??先生の十年間にわたっていろいろ苦労し三
度添削してようやく書いた本はこれだ。
(21)雪舟が子供の時の話です。
(22)家が本郷の人は近くていいです。
(23)今日は運転手が女性のタクシーで来た。普通は男性だが。
(24) x 雪舟の子供の時の話です。
(25)xx 雪舟の子供だった時の話です。
(26)x 家の本郷の人は近くていいです。
(27)x 運転手の女性のタクシーで来ました。
今後の課題
 なんとか、ドメインという概念を教科書の中に導入する