五井蘭洲の教学論 ―蘭洲は人にどのように学問を勧めたか― 大阪府立大学工業高等専門学校 湯城吉信 五井蘭洲 • 元禄十年(1697)~宝暦十二年(1762) • 江戸時代中期の儒学者、国学者。 ・五井持軒の子。名純禎(としさだ?)、字子祥、 通称藤九郎、号蘭洲、冽庵、梅塢。 ・懐徳堂創立期(1724~)に講義を任される。 ・懐徳堂を代表する中井竹山、履軒の師。 ・上田秋成も高く評価している。(1) 懐徳堂と講義 • 創立の際、幕府の官許を得る上で「日講」を 行うことを約束していたが、講義を行う者がい なかった。 →蘭洲に依頼される(2) 講義の内容(カリキュラム) 『懐徳堂内事記』の享保十一年(1726。創建 二年目、官許学問所となった年)十月の記録 「日講の書は、四書、書経、詩経、春秋胡伝、 小学、近思録等なり。」 (3) 五井蘭洲講義筆記六五種(4) • • • • • • • 『易経紀聞』『書経紀聞』『詩経紀聞』 『学庸論語紀聞』 『大学或問講義』 『中庸輯略講義』『中庸首章解』『中庸天命性図解』『中庸講義』 『論語解』 『孟子筆記』『孟子紀聞』 『二程全書講義』『朱子文集講義』『小学紀聞』『性理解』『通書講 義』『近思録紀聞』 『北渓先生性理字義講義』 • 『性論明備録』『玉講附録紀聞』 • 『老子経講義』 • 『日本書紀神代巻講義』『神代巻口訳紀聞』『中臣祓三種大祓附録 紀聞』 当時の学問不要論 「学問は役に立たない」 「学問をすると商売に差し障る」 • 「懐徳堂定約」第六条(「懐徳堂旧記」)(5) • 『蘭洲茗話』(5) →世間の評判のみならず、懐徳堂の学者も学 問をするとかえってろくでもない人間になること があることを認めていた。 天人合一論 ―道徳は自然の摂理― • 「太極図」に対する理解(7ー①) • 図の制作 「天人事物一貫之図」 「『中庸』天命性図」 (7ー②) • Cf.仏教は心に基づく←→儒教は天に基づく • Cf.神道に対する親近性 天人合一論 ―道徳は自分に備わっている― • 生来備わっており、発現すべきもの • 個々の人間に対する信頼 • ex.父持軒の臨終のことば(7-③) 「お前が善を行えば、それはお前の善。」 ex.荀子に対する反対(7―④) 聖人任せになる。 →より「自力本願」的 無為の治 • 自然の摂理に適う生活 →人がいちばん幸福になり、世の中も治まる • Cf.『老子』の無為 講義の実際 ―『論語』学而篇冒頭― • 「不亦説乎」の強調(8) →喜び・幸福 おわりに • Cf.説得の技法 「規範的説得」 そうすべき 「感情的説得」 ~が悲しむ 「功利的説得」 自分のためになる ・学問の目的
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