第4回 BOPビジネス研究会 概要① 【概要】 K-RIPは、2月15日、BOPビジネスに挑戦する地域企業への助言、支援方法等を検討する研究会『BOPビジネス 研究会』の第4回目を開催。 第4回目の研究会は、2部構成とし、第1部は研究会、第2部は報告会を兼ねたセミナーを開催。 第1部の研究会の前半では「九州地域でBOPビジネスの魅力を効果的に広め、挑戦する企業を創出するために必要 な仕組みとは」と題して、研究会メンバーで検討を実施。 第1部の後半には、BOPに挑戦している企業(資源リサイクル業)の取組について、事前に支援機関側から助言・提案 を行っており、その助言等内容に対する企業側の検討状況について、意見交換、追加の助言・提案を実施。 第2部のセミナーでは、(株)野村総合研究所 公共気鋭コンサルティング部の平本督太郎氏から、「中小・中堅企業によ るBoPビジネス推進に向けて」と題して、中小企業の強みを活かしたBoPビジネスの事業戦略などについて講演を行って 頂いた。 また、BOPビジネス研究会の活動結果について、事務局より報告を行った。 1.日時、場所等 ◇平成25年2月15日 13:30~15:00 ◇福岡合同庁舎5F 共用第中会議室 2.議事 【議事1】総合討論 ・九州地域でBOPビジネスの魅力を効果的に広め、挑戦する企業を創出するために必要な仕組みとは 【議事2】支援機関側からの事前の助言等内容に対する企業側の検討状況について意見交換 ・BOPビジネスに挑戦する企業1社(以下、D社と称す。廃棄物処理業)からプレゼン。 《参考;D社の概要》 D社:ゴミの収集、処分、資源リサイクルなどを行う企業で、途上国で現地の貧困層とともに廃棄物処理ビジネスに挑戦。 第4回 BOPビジネス研究会 概要② 3.【議事1】 九州地域でBOPビジネスの魅力を効果的に広め、挑戦する企業を創出するために必要な仕組みとは (1)BOPビジネスに挑戦する企業を創出するための取組方針(事務局) ◎BOPビジネスに挑戦する企業を次々に創出するためには、まず、BOPビジネスの魅力や可能性を訴える必要があり、挑 戦者をどのような機関がどのように支援しているのかを普及させることが重要。 ◎支援機関側は、1つの支援機関で、挑戦する企業の全ての事業ステージを支援できるわけではないので、支援機関ど うしがどのような支援ツールを持っているのかを情報共有し、支援ツールを連携させて、可能な限りシームレスに支援でき る体制を整えることが重要。(⇒疑似ワンストップ・サービス化) このためには、支援機関どうしの定期的な集まりが重要。 ◎成功事例を普及させるとともに、成功している企業の取り組みを分析し、ロール・モデルを生み出し、普及させることが 重要。また、地域全体で支援して成功させているモデルの創出が重要。 ◎支援機関側は、既存支援ツールや審査体制では、BOPビジネスに挑戦する企業を支援することが難しいため、既存支 援ツールを改変させていく努力が重要。 〔図表1〕BOPビジネスに挑戦する事業者と支援機関間の連携イメージ(K-RIPに相談があった場合の流れ) 第4回 BOPビジネス研究会 概要③ (2)フリーディスカッション ①自機関で対応できない相談案件の対応について ◆アジア低炭素化センター ・アジア低炭素化センターでは、市外から支援依頼があったときは、案件に応じてJICAやジェトロに対応してもらっている。 ◆九州経済産業局環境対策課 ・各機関がどのようなツールを持ち、何が強みで何が弱みかを明確に把握することが重要(図表2参考)。 ・図表2を俯瞰すると、コミュニティの場が少ないことがわかる。新たにBOP関係の専門コミュニティを設置するのは、非常 に大変なので、青年海外協力隊経験者の定期的な集まりの場を、企業が参加し、交流できるような場にするのが良いと と考える。 〔図表2〕 各支援機関の支援ツール ◆JICA ・青年海外協力隊のコミュニティについては、ご指摘のとおり、従来はクローズでやることが多かったが、内部で検討した 結果、外部との交流を指向することになった。今後、企業との交流の機会は増えていく見込み。 BOPビジネス研究会(第4回) 概要④ ②取組事例の普及について ◆JICA ・今までのJICAの支援事例は全て公開されている。今後も逐次公開されていく。公開情報は宝の山(例えば、NGOへのア プローチの経緯など)だと思うので、これを分析することで、相当の知見が蓄積できるはず。 ③新しい取組(BOPビジネス支援) ◆JICA ・JICAもミッションを始めた。BOPを意識したもので、主に、アフリカや中東地域への派遣を行っている。現在は手探りの状 況で進めている。 ・24年度の補正予算で新しい支援メニューができる予定なので、九経連IBC、アジア低炭素化センター等の支援機関を組 み合わせて、具体的に支援していくことが有効だと認識。 ④現地パートナーの発掘手法について ◆JICA ・もっとも難しいのは現地パートナーをどう見つけるかである。 ◆FUNN ・まずは、現地を見てもらうチャンスをつくることが重要。NGOではスタディツアーも実施しているので、良い機会になる。 ・スタディツアーを利用して、現地に行けば現地のNPOと知り合う機会もできる。 ◆北九大 ・現地のNGOの中には、ビジネスを意識していない団体もあり、そうした団体に、外国の企業が(BOP)ビジネスの話をす ると、パートナーシップを形成できないことも少なくない。このため、現地のNGOの考えを良く理解することが重要。 ⑤現地の実態把握について ◆北九大 ・現地の実態調査の方法はいろいろあるが、キーマンに聞く方法が1つの有効な方法。インドネシアなどは町内会がきち んとできているので、町内会長(エルテー長)に聞けばだいたいの事はわかると思う。 ・一方、インドやバングラディッシュは、日本の町内会のような組織ができていないので、調査は非常にむずかしい。 ◆IGES ・1日1$で過ごしている人がたくさんいる。そのような人のことを日本人が理解するのは難しい。現地訪問が重要。 BOPビジネス研究会(第4回) 概要⑤ ⑥支援機関の情報共有体制について ◆九州経済産業局環境対策課 ・支援機関の情報共有は、今後、関連イベントがあるときに(セミナー修了後など)併せて開催する等、事務的な負担を 軽減して対応すると良いと思う。(協議体などの設置は不要) ◆JICA ・JICAやジェトロは、九経連IBCのアドバイザリーに誘ってもらい、情報共有ができるようになってきた。こうした場の活用も 重要。 BOPビジネス研究会(第4回) 概要⑥ 3.【議事2】 支援機関側からの事前の助言等内容に対する企業側の検討状況について意見交換 D社は、ゴミの収集、処分、資源リサイクルなどを行う企業で、途上国で現地の貧困層とともに廃棄物処理ビジネスに挑 戦しようとしている。 具体的には、貧困層であるウエストピッカーと協働し、ゴミの収集、分別作業、資源リサイクル(堆肥 化)を行う計画。本事業計画について、専門家や支援機関等からの質問や助言等の概要は以下のとおり。 (機微な情報もあるので、一部のみ掲載) Q1;現地の市政府がやっているゴミ回収とのバッティングについて A1;従来スラバヤ市がやっている収集の一部で新しい試みをやるので、バッティングはしない。 Q2;ウエストピッカーの雇用は? A2;当初はウエストピッカーを雇用しようと思い、個々の収入をヒアリングしたが、個人によって差が大きいので適正値が 設定できなかった。(また、現地の既存の商慣行を壊してトラブルが発生しかねない)。このため、ウエストピッカーは 雇用せず、個々が分別した資源ゴミは、個々が販売するやりかたにした。 P1(助言);コンポストをやるなら生鮮市場などからも生ゴミを回収したら良いのでは。 P2(助言);コンポストのほかにも、関連する他の事業も並行的に実施して、事業収益の入口を複数持った方が良い。 P3(助言);ウエストピッカーのグループ同士の縄張り争いなどもあるので、抗争に巻き込まれないよう、現地のキーパーソ ンから情報を収集し、対策を取っておいた方が良い。現地NGOにアプローチするのも有効。 BOPビジネス研究会(第4回) 概要⑦ 「BOPアジア環境ビジネス戦略セミナー」 1.日時、場所等 ◇日時:平成25年2月15日(金)15:30~17:30 ◇場所:福岡合同庁舎5F 共用中会議室 (参加者;約40名) 2.プログラム ◇15:35-16:45 『中小・中堅企業によるBOPビジネス推進に向けて』 (株) 野村総合研究所 公共経営コンサルティング部 主任コンサルタント 平本 督太郎 氏 ◇15:45-17:20 『平成24年度K-RIP BOPビジネス研究会活動報告』 研究会事務局 九州テクノリサーチ 佐藤 明史 氏 〔参考(平本氏の講演要旨)〕 ・BOP層が所得向上していくことにより、2030年までの25年間で35.2億人がBOP(低所得)層からMOP(中所得)層へ移行。2030年における MOP層(約55億人)の家計支出総額は71.6兆ドル。将来のMOP市場を想定して、いかにBOP層に入っていくかが重要な企業戦略になりつつある。 ・従来の新興国・途上国ビジネスとBoPビジネスの違いはビジネスのあり方に関する“イノベーション”にある。 《従来の新興国・途上国ビジネス》 《BOPビジネス》 ◇富裕層・中間層のみアプローチ ←→ ◇BOP層という新たな市場にもアプローチ ◇社会課題解決を目的としない ←→ ◇貧困等のグローバル課題の解決に寄与する ◇主に既存市場への進出に注力 ←→ ◇新たな市場を創造することに注力 ◇先進国市場での成功体験がベース ←→ ◇革新的な製品、ビジネスモデル ◇金融機関からの資金調達や企業間連携 ←→ ◇寄付等の社会的な資金やNGO等との連携による新たな資源活用 ・BOPビジネスは、従来は「貧困層の顧客化」がテーマであったが、今は、「相互価値の創造」がテーマ。BOP層との協働が重要。 ・BOPビジネスの持続可能性を高めるためには、BOP層を対象とするビジネス以外での収益源を持つことが重要。 ・成長している国は、生活環境が短い間に大きく変化。そうした変化の受け皿となる事業を幅広く展開していくことが継続な成長の鍵。 ・ダイナミズムを把握することで、新たな事業を次々に生み出すリズムを作り出すことが可能。 ・中小・中堅企業の強みを生かすことで、大企業には難しいBOPビジネスのポテンシャルを引 き出すことが可能である。例えば、中小企業特有の「迅速な意思決定」は、現地での新鮮な 情報の収集、経験とネットワークの形成に寄与する。また、「実利主義」は、自社製品に固執 しないことから、有望な新技術と複製可能なビジネスモデルの創造の可能性を高める。 「オープン・マインド」の特性も、新たなリソースへのアクセスと活用の可能性を高めうる。 ・最後には確固たる信念、信念を支える個人的な経験・思い、支えあえる仲間が最も大事な 成功要因。 〔講演会場風景〕
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