様相論理一般 村上祐子 東北大学 様相論理 • 様相演算子を持つ論理 • 様相演算子:真理値表では解釈できない(こ とがある)命題演算子 2012/11/20 CAPE上級論理学セミナー 2 様相演算子を適用したくなる例 • • • • • • そんなことはない。 そんなことは不可能だ。 昨日雨が降った。 次の場面では佐藤がコーヒーを飲んでいる。 先手必勝の局面だ。 宿題が終わったらおやつにしよう。 2012/11/20 CAPE上級論理学セミナー 3 先手必勝の局面だ • 後手がどんな手を打っても、先手には適切な 応手があって、そこでも先手必勝である。 • 「先手勝ち」状態に必ず到達できる(必至) • Cf.ゲーム意味論、記述集合論 2012/11/20 CAPE上級論理学セミナー 4 様相の文脈性 • 局面ごとに命題を評価する • この局面では成り立っていることが、他の局 面では成立しないかもしれない • 次の(ありうる)局面を俯瞰する必要がある – ある事態が成立する局面に到達するにはどの手 を打ったらいいのか? 2012/11/20 CAPE上級論理学セミナー 5 クリプキ意味論 • がさつな考え方:局面間の到達可能性関係を 考える • ところで局面って何? 2012/11/20 CAPE上級論理学セミナー 6 局面 • 二つの要素からなっている – 前の評価点と後ろの評価点との関係からなる構 造 – その評価点での世界のあり方 • 個別の局面で文の真理値が割り当てられている 2012/11/20 CAPE上級論理学セミナー 7 様相文 • 手はじめに1項の様相演算子□を持つ言語を 考え、その解釈をみる。 • 言語: – Prop: 命題記号 – ∧:2項命題演算子 – ¬、□:1項命題演算子 • 文 – p| p ∧q| ¬p|□p • 省略記号:→、∨、◇ 2012/11/20 CAPE上級論理学セミナー 8 クリプキフレーム • 評価点間の構造にだけ着目 – 評価点の(空でない)集合 W – 評価点の2項関係 R • <W,R> 2012/11/20 CAPE上級論理学セミナー 9 フレームだけではなにもいえない • 個別の評価点における世界の有り様の記述 – 命題記号に真理値を割り当てる • 付値関数 – クリプキフレームF=<W,R>上の付値関数とは、関 数 Prop×W→TruthValue である。 – (TruthValueとして当面のところ2値{1,0}を考える) 2012/11/20 CAPE上級論理学セミナー 10 クリプキモデル • F: クリプキフレーム<W,R> • v: F上の付値関数 のとき<F,v>=<W,R,v>をF上のクリプキモデルとい う。 2012/11/20 CAPE上級論理学セミナー 11 クリプキモデルでの様相言語解釈 • • • • w |= p iff v(p,w)=1 w |= A∧B iff w |= A かつw |= B w |= ¬A iff w |= A でない w |= □A iff Rwxであるすべてのxで x |= A お絵かきタイム 2012/11/20 CAPE上級論理学セミナー 12 モデル妥当性とフレーム妥当性 • クリプキモデルM=<W,R,v>で文Aが妥当であ るとは、Wのすべての元wで w |= Aのときに いう。 • クリプキフレームFで文Aが妥当であるとは、F 上のすべてのクリプキモデルで文Aが妥当で あるときにいう。 2012/11/20 CAPE上級論理学セミナー 13 三重の妥当性 • 付値関数はまだローカルな文脈相当。 • 構造も文脈のうち。 • 「論理」は文脈に依存しない。 – (変換に対して不変) – 評価点の間の構造が論理に相当する。 • フレームのあつまり(一般にクラスになる)を 考える必要がある 2012/11/20 CAPE上級論理学セミナー 14 フレームのクラスでの妥当性 • C:フレームのクラス • Cで妥当 iff Cのすべてのフレームで妥当 • Cで妥当な文のすべてからなる集合をこれか ら考える。 2012/11/20 CAPE上級論理学セミナー 15 論理体系 • (様相)論理体系:様相文の集合で、 – AとBが入っていたら、A∧Bが入っている(連言に ついて閉じている)。 – 命題論理について閉じている • 例:クリプキフレームのクラスCで妥当な文のすべてか らなる集合は論理体系になっている。 • 矛盾した論理体系:Aと¬Aの両方が入ってい る体系。 2012/11/20 CAPE上級論理学セミナー 16 論理体系と公理系 • 公理系:論理式と推論規則のセット • 論理体系が公理系を持つとは、その公理系で演 繹可能な文と論理体系が一致すること。 • 論理体系が(有限)公理化可能とは、有限個の 論理式スキームと推論規則からなる公理系を持 つこと。 • 自明な公理系(論理体系そのまんま)はつねに 存在する • 公理系と論理体系を同一視することがある 2012/11/20 CAPE上級論理学セミナー 17 論理体系と意味論 • ある意味論で妥当な式の集合と与えられた論理 体系を比べる • 一致していれば「完全」という • 完全性証明でやること 1. 証明可能な式の妥当性を示す 2. 証明できない式が妥当ではないことを示す=そ の否定である整合的な式がモデルを持つことを 示す 2012/11/20 CAPE上級論理学セミナー 18 クリプキフレーム全体のクラスと完全 な論理体系の公理系K • 古典命題論理の公理と推論規則(MP) • □(A→B) → (□A→ □B) • [必然化規則]Aが定理ならば□Aも定理であ る。 2012/11/20 CAPE上級論理学セミナー 19 フレーム全体のクラスの部分クラスC • 問題:C妥当な文の集合は公理化可能か。 • 言い換えると、 AがC妥当 iff AはLの定理 • となるような論理体系Lは公理化可能か。 2012/11/20 CAPE上級論理学セミナー 20 Negative answer • フレームのクラスならどれでも公理化可能と いうわけではないし、公理系が対応するクラ スを持たないこともある • Cf. – van Benthem – Companion of modal logic – Handbook of modal logic 2012/11/20 CAPE上級論理学セミナー 21 General frame(一般フレーム) • 「受容可能世界」を導入 • F=<W,R>上のモデルM=<F,v>によって生成さ れる一般フレームとは<F,N>のことである。 • ただしN={|A|M:Aは様相文} 2012/11/20 CAPE上級論理学セミナー 22 脇道:近傍意味論(Segerberg) • 到達可能性ではなく、近傍を考える • wの近傍:Wの部分集合 • N(w):wの近傍からなる集合 • w |=A iff |A|∈N(w) (|A|:Aが真であるWの元の集合) 2012/11/20 CAPE上級論理学セミナー 23 近傍意味論 • クラシカルな様相論理体系の意味論を与える – A↔Bが定理ならば□A ↔ □Bも定理 • 近傍に条件を追加することでより強い論理の 意味論を作ることができる – レギュラーな様相論理 • A → Bが定理ならば□A →□B – Upward closed • これが代数意味論における単調性に相当する 2012/11/20 CAPE上級論理学セミナー 24 一般フレームの受容可能世界 • 矛盾式については∅ • 定理についてはW • その間の構造は? • 当然のように整合的な式Aのモデルを構築で きる(|A|はある意味あらかじめ一般フレーム に含まれているので必ず反例を構成できる) 2012/11/20 CAPE上級論理学セミナー 25 受容可能世界の構造→(有界)束 • 受容可能世界だけ抜き出したような感じのも のが代数意味論 • 代数意味論のメリット: – (ちゃんとした構造を作れれば)必ず完全:自明す ぎて誰もやらない • どんな構造を作るかがポイント 2012/11/20 CAPE上級論理学セミナー 26
© Copyright 2024 ExpyDoc