2発現は、食事誘導性の脂肪肝、肥満

肝臓におけるシクロオキシゲナーゼ-2発現は、食事誘導性の脂肪肝、
肥満、そしてインスリン抵抗性を改善する
2015.0622 M1 松村明導
COX-2とは
アラキドン酸カスケードにおいてアラキドン酸からプロスタグランジンE2(PGE2)などを産生するために必要な酵素で、
炎症を惹起する物質の産生にかかわっている。この酵素はIL1a,TNFaなどによる刺激に対して誘導発現される。プロ
スタグランジンE2は炎症だけでなく、熱産生も行う。
アラキドン酸
シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)
プロスタグランジンG2
炎症性サイトカイン(PGE2など)
今回の研究の目的
今回はマウスの肝細胞にヒトCOX-2遺伝子を発現させ
たトランスジェニックマウスで実験を行う。通常の肝細
胞は成体になるとCOX-2を発現しなくなるため、このト
ランスジェニックマウスを用いることにより恒常的に
COX-2の発現を行うマウスで実験を行い、COX-2が高
脂肪食(HFD)摂取に与える影響を検討する。
Fig.1の実験手法
• マウスについて:B6D2/OlaHsdの野生型(Wt)とヒトCOX-2トランスジェ
ニックマウス(hCOX-2-Tg)を用いて実験を行った。
• 食餌には普通食(RFD)と高脂肪食(HFD)を用いた。
• h-COX-2Tgマウスを6時間絶食させ人組み換えインスリンを
0.75unit/kg注射して15分後に屠殺する。肝臓を摘出しRNAと総タン
パク質抽出物を計測する。
• 体重1kgあたり2gのグルコースを投与し、血中グルコース濃度を計
測する。
A:野生型とヒトCOX-2トラン
スジェニックマウス
B:野生型とヒトCOX-2トラン
スジェニックマウスの精巣
周囲白色脂肪と肝臓
C:高脂肪食摂取マウス群
の体重の推移
D:高脂肪食摂取マウス群
の実験開始時の体重と屠
殺前の体重
DFU:COX-2阻害剤
FigA,B:WtとTgの間の体重には差がない
が、肝臓重量には大きく差が出た。
FigC,D:開始時の体重や、日々の摂餌量
に大きな差はないが、終了時の体重に
は大きな差が出た。
E:インスリン抵抗性試験の
際の血中グルコース推移
F:糖負荷試験の際の血中
グルコースの推移の折れ線
グラフと糖負荷試験の曲線
下の面積を表した棒グラフ
高脂肪食においての血中グル
コースレベル
Wt 173.5±6.7
h-COX-2-Tg 159.2 ±12.1
h-COX2-Tg+DFU 177.3 ±21.2
A:普通食と高脂肪食マウスの肝臓をパラフィリン包理ヘマトキシンエ
オジン染色した画像
B:肝臓TG濃度測定結果
D:脂肪細胞の数とその面積
C:高脂肪食マウスの精巣周囲白色脂肪をパラフィリン包理ヘマトキ
シンエオジン染色した画像
E:高脂肪食摂取マウ
スの度数分布図
F:精巣周囲白色脂肪
と鼠径部周囲白色
脂肪の合計と体重と
脛骨の長さ
G:精巣周囲脂肪の
アディポカインと炎症
性サイトカインの
mRNA発現を36b4と
いうmRNAを1とした
脂肪細胞の肥大化が他
と比較してTgマウスでは
起こっておらず、炎症性
物質の発現も抑制され
ている。
アディポネクチン:脂
肪の蓄積で分泌が
抑制される
レプチン:摂食抑制
やエネルギー消費
の増加を起こす物
質
レプチン抵抗性によ
り血中濃度が高くな
ることが報告されて
いる。
高脂肪食下での昼夜の区別をつけた
環境でのエネルギー消費(EE)の変化
A:酸素の呼吸量
B:二酸化炭素の呼吸量
C:二酸化炭素の呼吸量/酸素の呼吸量
D:自発運動活性
E:エネルギー消費
F:ケージの気温
TgマウスとTg+DFUのマウスを比
較した際、酸素、二酸化炭素の
呼吸量、エネルギー消費の面で、
Tgマウスのほうが高い値を得た。
DFUを与えたマウスは、Tgと比
較してエネルギー消費の割合
が増大した。
A:常温の際のmRNA発現量
B:低温の際のmRNA発現量(6時
間4度の部屋に置いた後屠殺
C:ノルアドレナリンとプロスタグラ
ンジンの添加によるUCP1の発現
Akt:Aktのリン酸化の後にUCP-1が活性
化される。
AMPK:インスリン感受性の亢進
PTP1B:インスリン抵抗性の亢進
まとめ
• 肝臓のh-COX-2の発現は炎症やインスリン抵抗性、脂肪肝に対して
Wtと比較して改善した。
• マウスのHFDにおける脂肪肝の改善は、熱産生によるものと推測さ
れる。
• COX-2阻害剤の2型糖尿病患者や肥満の患者に対する処方は十分
に考慮すべきである。
A:常温
B:4度の気温
で6時間置い
た後屠殺
C:PGE2とノル
アドレナリンの
添加による
UCP-1の発現
量
A:ウエスタン
ブロッティング
の結果
B:リン酸化物/
リン酸化物+
非リン酸化物