第1講

マクロ・マーケティング
流通とマッチングとマーケティング
交換の難しさ
• モノとモノの交換は容易ではない。
• 昔も現代も交換の困難さは変わらない。
• でも、欲しいものが有るとコンビニなどに出か
け買い物をする。
• そしてその店には、当たり前に自分の欲しい
ものが取り揃えられている。
• これらが実現するのは流通があるから。
• そこで流通を考察するために「交換」を検討
交換が困難な理由
• 異なる価値のものを交換するから
• 交換の条件
– 交換相手を探し出さなくてはならない
• あなたの持っているものを欲しがる人
• あなたが欲しがるものを持っている人
– 交換比率を決めなくてはならない
• 交換価値において合意するのは困難
• 使用価値はそれぞれ異なる
• 量的な比較ができない
自給経済から交換経済へ
• 自給自足から物々交換への移行は、余剰生
産物を持ったときにはじまる。
• 生産側は余剰生産物を見込みでより多く作る。
• 消費側はその商品をあてにするようになる。
• 交換の困難さを克服しなくてはならない。
• 交換相手や交換比率に伴う不確実性克服の
ために「市場(いちば)」が生まれた。
不確実性のプール
• 何らかの形でまとめることを「プール」
• 不確実性はプールすることで克服される。
• 「市場(いちば)」が交換を促進するのは、交
換に伴う不確実性がプールされるから
• コミュニティ紙における「売ります、買います」
コーナーは、一種の不確実性プールの場。
交換の困難さ克服のアイデア
• 「市・市場(いちば)」という交換の場
• 「お金」という一般的等価物
• 「商人」という取引仲介者
商人の存立根拠
• 取引回数節約
• 不確実性プール
• 時間的・場所的隔たり(懸隔)の克服
なぜ交換するのか?
• 人間は集団を作るから自給自足といっても交
換はあった。
• 共同体以外の世界との間は略奪で入手
• 略奪は犠牲を伴う。
• 平和的に同様の効果を生むものとして交換
が工夫された
• 「沈黙交易」は世界中に見られた。
沈黙交易
交換成立!
部族1
財1
交換台
A
交換台
B
部族2
部族3
財2
財3
沈黙交易
交換ならず!
部族1
財1
交換台
A
交換台
B
部族4
財4
交換のための3つの工夫
• 交換してもよいものを一カ所に集める
• 別の交換のために品物を手元にプールして
おく役割を果たす者の登場
• 次の交換に使える共通の価値尺度としての
「貨幣」誕生
場としての「市場(いちば)」
参加者1
市場
参加者4
参加者2
参加者5
参加者3
参加者6
貨幣を介しての交換
販売者21
購入者
販売者12
購入者
財1
貨幣
財
2
「商人」を介しての交換
売手1
商人
買手1
財1
売手2
買手2
財2
売手3
財3
買手3
交換範囲の拡大
• 「いちば」「貨幣」「商人」により交換の範囲は
拡大
• 「いちば」は小売市場として生活必需品の流
通を担当。
• 「大市(おおいち)」により遠隔地からの生産
物を流通。
• 地理的・時間的にも広がり、分業が一層進展。
• 流通機能を担当したものが「商人」
懸隔の種類
•
•
•
•
生産者と消費者との間の隔たり
生産の時点と消費の時点の隔たり
生産者の情報と消費者の情報の隔たり
生産量と消費量の隔たり
• 生産者の提供する質と消費者が求める質の
隔たり
商人の役割
•
•
•
•
取引数節約効果
情報縮約効果
販売の社会性
懸隔の克服
直接流通の取引回数
生産者1
消費者1
生産者2
消費者2
生産者3
消費者3
3 3  9
間接流通の取引回数
生産者1
生産者2
消費者1
商人
生産者3
消費者2
消費者3
3 3  6
情報縮約効果
生産者1
財1
生産者2
商人
消費者1
消費者2
財2
生産者3
財3
消費者3
販売の個別性
生産者1
財11
財12
財13
生産者2
財21
財22
財23
生産者3
財31
財32
財33
消費者
販売の社会性
生産者1
財11
財12
財13
生産者2
財21
財22
財23
生産者3
財31
財32
財33
商人
消費者
懸隔の克服
生産者
財
商人
消費者
流通の主導権争い
•
•
•
•
19世紀までは卸が流通の支配者
大規模小売業や大手通信販売業者の登場
巨大メーカーによるマーケティング
結果として、卸は流通から排除される傾向
• メーカーによる卸排除は、商業者の社会性を
排除する行為
• 流通の主導権は大手メーカーと大手小売業
流通は財の流れ
流通
財
売手
(メーカー)
買手
(消費者)
卸
小
売
物
流
金
融
流通を理解することの意味
• 商業者の社会的・経済的役割を明らかにするこ
とは
– 流通のメカニズムを明らかにすること
– 市場の需給調整メカニズムを明らかにすること
• 流通・商業を注目することは
– 「見えざる手」の働きを明らかにすることである。
• 流通を明らかにすることは市場メカニズムを明ら
かにすること
(注)市場の役割はアダムスミスによって「見えざる手」と表現された。
流通に関する研究
• マクロ・マーケティング
– 流通プロセス全体を明らかにしようとする研究
– 流通の仕組み全体を明らかにしようという研究
– 流通全体のマッチングを対象とする研究
• ミクロ・マーケティング
– 個別の企業、特にメーカーを中心としたマッチン
グを対象とする研究
– 個々の主体が果たしている役割を明らかにしよう
とする研究
マッチングの方法
色々なところで造られてきたモノを
集めて販売
消費者が求めているものを造る
商業者の行うマッチング
メーカーの行うマッチング
最近では明確に差はなく、小売業も造ることにまでかかわってきている
マーチャンダイジング
• 従来は
– 商業者のとるマッチングの方法
– 品揃えのための仕入政策
– セレクトショップ
• 今日では
–
–
–
–
–
商人が生産まで関わることでマッチングを促進
大手小売業がPBを保有
PBは小売業が自ら生産にかかわる
POSデータを活用しPBを造り、メーカーに提案
SPA
SPA
• Specialty Store Retailers of Private Label
Apparel
• PBのアパレルを売る専門小売店
• 小売業者が生産に関わる好例
• 単に仕入だけでなく、企画し造るところまで含
めてマーチャンダイジング(MD)と呼ぶ
チームMD
• 流通業者が生産にまで関わる仕入政策
• 仕入だけでなく、企画し、造ることがMD
• イトーヨーカドー では、納入先のメーカーと購
買担当者が共同して商品企画・生産計画など
を立案
流通の種類
• 商流
– 取引の流れ
• 物流
– モノの流れ
• 情報流
– 市場の動きに関する情報の流れ
流通機能の組み合わせ
• マッチングは誰が行ってもよく、メーカー・卸・
小売・消費者がそれぞれマーケティングを行
える。
• 商流・物流・情報流を多様に組み合わせると
– BtoC (企業対消費者)
– CtoC (消費者対消費者)
– CtoB (リバースオークション)
注)リバース・オークション:購入したい商品を消費者が提示して、それに企業が応札する形式
経済学の課題
• ドラッカーは流通を暗黒大陸と表現
• 近代経済学は、流通を担う商人がやってきたことを対象と
してこなかった。
• 経済学における均衡概念は、市場において需要と供給と
が釣り合うことを意味している。
• 需要と供給とが自然に市場で出会い、そこに価格が成立
するというわけではない。
• 市場参加者によるマッチングの努力があって初めて需要
と供給は出会う。
• 近代経済学では、需要と供給とを出会わせる上での商人
の役割を解明してこなかった。
• 流通の世界は、経済学では無視されてきた。
需要曲線と供給曲線
価
格
需要曲線
供給曲線
量