ケア労働と外国人労働者 1036565c 塩川裕子 【目次】 グローバル化するケア労働 日本のケア労働の現状 看護師・介護士受け入れ現状 外国人労働者受け入れの議論 送り出し国が抱える問題 送り出し国の戦略的決定 他国の取り組みから①② 考察 提言 グローバル化するケア労働 ケア労働とは 介護、看護、子育て、家事手伝いなど広い意味でのケア 背景 少子化、高齢化、都市化、晩婚化、女性の社会進出 日本のケア労働の現状 看護師を例にとると… 離職率 常勤看護職員11.9%、新卒職員8.9%(2009) 求人率 3倍以上 ※大卒1.27(2013) 国家試験合格率 90.1%(2013) ・地方と都市の差 ・東日本大震災の被災地 4〜5倍以上 看護師・介護福祉士受け入れ現状 EPA(経済連携協定) 貿易の自由化に加え,投資,人の移動,知的財産の保護や競争政策に おけるルール作り,様々な分野での協力の要素等を含む,幅広い経済関 係の強化を目的とする協定 2008年より受け入れ開始 過去5年で累計892人 試験問題を解きやすく! ・平仮名をふる ・試験時間の延長 ・病名に英語で注釈 看護師国家試験合格率 2009年 0%→2010年 1.2%→2011年 4%→2012年 11.3% 外国人労働者の受け入れ議論 賛成 少子高齢化への対策 看護•介護分野への人材を補う 日本社会、アジアへの貢献 アジアの若者を日本の介護現場 に受け入れ、就労の機会を与え ることによって、知的、経済的 にアジアに貢献する(北桑会) 反対 日本人看護師の労働市場を狭めるのでは? 看護の質の低下を招くのでは? 安易な受け入れにより賃金や質 受け入れ病院の負担は? が低下し、看護師不足に拍車を かけ医療事故の危険が増大する (日本医労連) 日本では、受け入れの是非や、 どう制限的,選択的に受け入れていくかという議論が多い… 送り出し国が抱える問題 ケア流出 介護・介護の担い手の多くは女性。“移民の女性化” 送り出し国にとっては、母親の出稼ぎであり、母親のケアを受け られない子供を生み出す。 フィリピンにおける国際移動のジェンダー観 父親の出稼ぎ 家族を養うため、キャリアを追求するため 母親の出稼ぎ 貧困から逃れるため、労働市場に機会がないため フィリピンの移住家族の研究(ラセル・パレーニャス) 親が海外に移住したことの理由について、青少年期の子供はどのように語るのか? 送り出し国の戦略的決定 「海外送金」 発展のための重要要素となる。 送り出し国にとって、経常収支の改善から失業対策まで幅 広い課題に対処する処方箋となる。 送り出し国の景気に関わらず、最も安定的に直接に送り出 し国の国民に届く。 南北の経済格差の緩和に役立つ。 政策として送り出す! 他国の取り組みから①ドイツ ドイツ「就労促進法」 ドイツ人でない外国人労働者には、ドイツ国内の「労働市 場の状況と展開を考慮すること」(=国内の失業者に該当 者がいないことを調べる)を条件に外国人の労働を許可す る。 国内の労働市場を優先、外国人の就労を制限 2001年時点でドイツ国内350万人の失業者、看護•介護労働 者は5万人も不足。 他国の取り組みから②オランダ 従来から、「労働力の不足により看護師を輸入することは 政策の失敗を意味する」ととらえられてきた。 1998年〜2000年まで外国(スリナム、東ヨーロッパ、 フィリピン)からの看護師がいたが、看護師、政治家、雇 用者が反対し、メディアに取り上げられた。 →中でも目立った問題は、自国での専門職トレーニングの 不足、言語の問題 現在のオランダ看護師協会の見解 「政府や雇用者には、まずオランダの看護師が十分に働け る環境作りを検討して欲しい」 考察 日本より労働の国際移動が進むEU諸国においても、成功 モデルがない。 フィリピン、台湾、インドネシアなど、労働力を供給する 側の国もケア流出の問題を抱える。 送り出し国にとってケア労働は女性の社会進出に直結して いない。 受け入れを増やすことで、ケア労働は女性、外国人が行う 職業だという認識を強める。 提言 外国人労働者の受け入れにはもっと慎重になるべき。 受け入れた外国人が家族を呼び寄せ、2世3世…まで日本に定住 するかもしれない。◆外国人の権利、社会保障、教育… 自国のケア労働は自国でまかなえるよう、労働条件の改善 を急ぐべき。 ・東南アジアも高齢化に直面する。インドネシアやベトナム、タイ では2050年までに高齢者の割合が約20%に達する見込み。 ・過酷な労働環境を改善し、給与を上げる。(ケア労働の職業的地 位を高める) ・有資格者の再雇用 論点 日本はEPAに基づく看護師、介護福祉士などの外国人労働 者を積極的に受け入れるべきか。 受け入れるならば、その家族の問題(家族呼び寄せや親 の不在)はどう考えるか。 【参考文献】 「介護現場の外国人労働者」日本のケア現場はどう変わるのか 塚田典子 2010 明石書店 「国際移動と<連鎖するジェンダー>」 伊藤るり・足立真理子 2008 作品者 「開かれた日本の構想」 北脇保之 2011 ココ出版 「グローバルガバナンスの最前線」 遠藤乾 2008 東信堂
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