J.Invest.Dermatol vol.134,1332-1341 (2014) Efficient Keratinocyte Differentiation Strictly Depends on JNK-Induced Soluble Factors in Fibroblasts 2015/4/27 M1 小松 俊之 効率的なケラチノサイトの分化は、線維 芽細胞において、JNKによって誘導される 水溶性因子に厳密に依存する Marion Schumacher1, Christian Schuster1, Zbigniew M. Rogon2, Tobias Bauer2, Nevisa Caushaj1, Sebastian Baars1, Sibylle Szabowski1, Christine Bauer1, Marina Schorpp-Kistner1, Jochen Hess3,4,Stefan Holland-Cunz5, Erwin F. Wagner6, Roland Eils2, Peter Angel1 and Bettina Hartenstein 皮膚の構造 www.risou.com 表皮の構造 Nature publishing group vol6,328-340 表皮と真皮の相互作用1(共培養) J.Invest.Dermatol vol.127,998-1008(2007) 表皮と真皮の相互作用2 アトピー性線維芽&正常ケラチノ /正常 アトピー性ケラチノ&正常線維芽 /アトピー J.Allergy.Clin.Immunol. vol.131,1547-1554(2013) 線維芽細胞におけるJNKシグナル 表皮(ケラチノサイト) 真皮(線維芽細胞) TGF-β,IL-1α FAK,RAC MEKK1 MKK 4/7 (増殖)、分化 JNK C-JUN Soluble factors AP-1 背景と目的 ・以前の研究により線維芽細胞由来のJUN依存的な可溶性因子がケラチ ノサイトの増殖と分化に重要な役割を担っていることが分かっている。 ・Jun N-terminal kinase(JNKs)は、JUNをリン酸化することで、活性を制御 しており、JNK1と2は一様に発現しているが、JNK3は脳や精巣、心臓など に限られる。 ・JNK1,2-dKOマウスは、神経管形成不全のため、生後すぐ致死する。 JNK1あるいは2のKOマウスは皮膚の発達や創傷回復が遅れる。 本研究では、ケラチノサイトとJNK1,2-dKO線維芽細胞を共培養することで、 線維芽細胞のJNKシグナルがケラチノサイトに与える影響を調べた。 ケラチノサイトの分化は線維芽細胞のJNKに依存する1 ・ケラチノサイト(NHEKs)を野生型(Wt)またはJNK1/JNK2-double knockout(dKO)線維芽細胞(MEFs)と3日間共培養した。 aは、増殖マーカーKi67を発現する細胞の割合を表す。 bは、分化マーカーKeratin10(K10)を染色したものが緑、核を染色したものが青(Hoechest 33342) ・ケラチノサイトの増殖は、Wtと比べdKO線維芽細胞と共培養することでやや増加した。 ・ケラチノサイトの分化マーカーの発現は、dKO線維芽細胞との共培養のほうが減少した。 ケラチノサイトの分化は線維芽細胞のJNKに依存する1 ・ケラチノサイトを線維芽細胞とトランスウェルプレー トで分けて、6日間共培養あるいは単培養した。 ・K10やLoricrin(Lor)は免疫染色した。Hoechst33342で 核染色をした。 ・単培養やdKO線維芽細胞よりもWt線維芽細胞と共 培養することで、ケラチノサイトは分化マーカーの発 現が増加した。 ・単培養やdKO線維芽細胞よりもWt線維芽細胞と共 培養することで、ケラチノサイトは細胞が密に集まっ た。また、分化した中央付近の細胞はドーム状の構 造をとった。 ケラチノサイトの分化は線維芽細胞のJNKに依存する3 ・前スライドのケラチノサイトにおいて、遺伝子解析を行い、分化マーカーの発現を定量した。 ・単培養やdKO線維芽細胞よりもWt線維芽細胞と共培養することで、ケラチノサイトは分化マーカーの発 現が増加した。 ・wt線維芽細胞由来の水溶性成分によって分化マーカーの発現は上昇した(date not shown) JNK1と2の両方の欠損が、ケラチノサイトの終末分化の消失に必要1 ・JNK1と2のどちらか一方をノックアウトしたときの影響を調べるために、ケラチノサイトを野生型、JNK1-/,JNK2-/-,dKO線維芽細胞を48時間インキュベートした。KOがうまくいっているか調べた。 -Kはケラチノサイトなし、preはpre-cultivatedを表す。 ・IL-1αによって、Wt線維芽細胞においてP-JNKが増加した。また、dKOではJNKがなく、JUNもほとんど見ら れなかった。 ・これらの結果から、ノックアウトは上手くいったものと考えられた。 JNK1と2の両方の欠損が、ケラチノサイトの終末分化の消失に必要2 ・ ケラチノサイトを野生型、JNK1-/-,JNK2-/-dKO線維芽細胞と6日間共培養し、ケラチノサイトを免疫染色した。 ・Wt線維芽細胞の時と比べて、JNKのいずれか一方のノックアウトでは、Lorの発現に違いがみられなかった。 ・JNK1-/-線維芽細胞との共培養で、K10の発現が減少した。 JNK1と2の両方の欠損が、ケラチノサイトの終末分化の消失に必要3 ・DNAマイクロアレイの結果、ケラチノサイトとdKO線維芽 細胞を共培養するとK10,FLG,LORに加え、DSC1,CALML5 も減少したため、前スライドのケラチノサイトを用いてこ れらの分化マーカーの遺伝子解析を行った。 ・JNK2-/-は、細胞の分化マーカーの発現に影響を与え なかった。 ・JNK1-/-は、K10やDSC1の発現が減少した。 ・dKOでは、分化マーカーの発現が著しく減少した。 線維芽細胞において、JNKの欠損は遺伝子発現を著しく変化させる1 ・ケラチノサイトとWtまたはdKO線維芽細胞を共培養 を6日間共培養した。左図は、共培養後2日目の線維 芽細胞のDNAマイクロアレイの結果を示す。 ・黒はwt線維芽細胞の発現した遺伝子を、白はdKO 線維芽細胞が発現した遺伝子を示す。 ・線維芽細胞間で遺伝子発現が大きく変化した。 線維芽細胞において、JNKの欠損は遺伝子発現を著しく変化させる2 ・DNAマイクロアレイの結果を踏まえ、ケラチノサイトに影 響を与えると考えられる水溶性因子の発現を、WtとdKO 線維芽細胞でそれぞれ調べた。 ・黒が野生型、白がdKO ・左から共培養前、2日後、4日後、6日後 ・JNKノックアウトにおいて水溶性因子の発現も著しく異 なった。このため、ケラチノサイトの終末分化に影響が出 たと考えられる。 ケラチノサイトの終末分化には常に線維芽細胞由来のJNK依存的な水 溶性因子が必要である1 ・ケラチノサイトを、1,2,3の期間それぞれでWtまたはdKO線 維芽細胞と様々な組み合わせで共培養した。 ・6日後にケラチノサイトの分化を遺伝子解析によって調べ た。 ・分化マーカーの遺伝子発現が、dKOと培養したケラチノサ イトで減少した。また、ko-wt-wtの組み合わせでは、遺伝子 発現ではすべてWtと有意差がなかったものの、免疫染色 すると、LORの発現が減少していた。 ケラチノサイトの終末分化には常に線維芽細胞由来のJNK依存的な水 溶性因子が必要である2 まとめ ・JNK1と2のdKO線維芽細胞は、野生型線維芽細胞によって誘導されるケラチノサイトの終 末分化を誘導できない。 ・線維芽細胞によるケラチノサイトの分化の誘導は、直接接触してなくても起こるため、水溶 性因子を介していると考えられる。 ・JNK1-/-では、一部に分化マーカーのわずかな減少がみられ、JNK2-/-では、減少がみられ なかった。JNK1,2両方の欠損によって、分化マーカーの発現は著しく低下した。 ・野生型と比べ、dKO線維芽細胞において遺伝子発現が著しく変化しており、特に水溶性成 分の発現変化がケラチノサイトの分化に影響を与えたものと考えられる。 ・ケラチノサイトの終末分化を十分に促すには、JNK依存的な線維芽細胞由来水溶性因子 が存在し続ける必要がある。
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